「もし常盤台中学の超電磁砲が彼女やったらカミやんは何したいん?」
隣を歩いていた青髪ピアスからの、何の脈絡も無く投げかけられた質問に、上条当麻はようよう暫くしてから「ついにイカレタか青髪ぃ……」とため息混じりに相槌を打つ。
すると、
「乗りが悪いでカミやん」
「乗りが悪いにゃーカミやん」
青髪ピアスと、上条を挟んで反対側を歩いていた土御門元春が、全く同じタイミングで上条のとげとげ頭を派手に小突いた。
「おぶッ!!」
小突かれた勢いで、2歩、3歩とたたらを踏む上条の背中に向けて、青髪ピアスは何事もなかった様に話しかける。
「で、どうなんよ?」
「どうなんよって何だよっ?」
「チッ、カミやんはマジでイケずやなぁ」
「仕方ないぜよ青髪。なんせカミやんと来たら筋金入りのドンでカンですからにゃー」
そう言って2人が揃ってお手上げのポーズをとってため息をつく。
何時もならここから意味不明のトリオ漫才が始まるのだが、今回は違っていた。
「人を太鼓か鐘みたいに例えて語ってんじゃねえよ!! ああッ!? ビリビリがどうしたって? あいつが彼女になったらってか? だったらどうしたッ!!」
「やっ!? もう、そんな冗談やのにそないにキレんでもいいやん!!」
青髪ピアスは、怒声と共に急に飛び掛る様なそぶりを見せた上条にビビってのけ反る。
「ど、どうどう!! 落ち付け落ち付け!! 取り合えず暴力反対にゃーカミやぁん!!」
土御門は今にも青髪に殴りかかりそうな上条に、慌てて羽交い絞めにするとなだめにかかった。
すると上条はそんな土御門を振り払うと、2人の前に拳を握り締めて仁王立ちになる。
「おう、じゃあ言ってやるッ!! あいつは妹キャラだからまずは頭を嫌って言う程撫でてやる!! それから白スク水着せて、膝の上でチョコレートパフェを食べさせたり、一緒にビデオを見たり、後はその格好でおさんどんやら三助やらさせてやるぜッ!!
どうだ!! 羨ましいか!! テメエらこれで満足しやがったかよッ!!」
そう言ってギロッと睨みつけると、冷や汗を滝のように流した2人が無言でコクコクと頷く。
「チッ。俺は今日用事があるからここで帰る!! じゃなッ!!」
そう言って踵を返すと立ち去って行く上条の背中を、青髪ピアスと土御門は無言のまま見送ったのだった。
鬼気迫る様相を示す少年の姿に、街行く人が道を開ける。
そんな中を堂々と突っ切って行く上条だったが、突然ピタッとその場に立ち止まッ高と思うと、後ろを振り返る。
その顔には先ほどの鬼気迫る様な様子は感じられない。
「ふぅ。何とか誤魔化せたか?」
上条はそう小さく呟きながらガックリと力無く肩を落とす。
「しっかし青髪のやろう、いきなり御坂が彼女だったらなんてぬかしやがって……。今日はあいつがジュースおごる番だったってのに……、クソッ、不幸だ……」
そう言ってもう一度後ろを振り返ってから、さて歩き出そうとしたその時、何かがトンと胸にぶつかって来た。
「あ!? ご、ごめ……」
咄嗟に前を向いて謝ろうとした上条は、目の前にある見覚えのある栗毛頭に思わず言葉が詰まる。
と、
「頭……」
「へ?」
「あ、頭……、な、撫でなさいよ……」
顔を上げずに小さな声でそう言った栗毛頭の主――御坂美琴に、上条は「あ、ああ……」とたどたどしく返事を返すと、右手で美琴の頭をくしゃくしゃっと撫でまわす。
初めはサラサラとした手触りに感動すら覚えていた上条だったが、やがてその綺麗な髪が寝癖の様に右に左に飛び出すに至って、
「も、もういいだろ?」
上条は恐る恐る美琴の頭から手を引こうとした。
所が、その手を美琴ががっちりと掴んだ。
「ッ!?」
ビクッとして腰が引ける上条。
美琴はそんな上条を真っ赤な顔に潤んだ瞳で睨みつけると、
「水着買いに行く……」
「そ、それ……、何処で聞いてたんだおまえ……?」
「何処だっていいでしょッ!! わ、私が白いスクール水着来たら……、アンタの膝の上にだっこされたり……、そ、それでチョコパフェ食べさせてくれたり……、私の作った料理食べてくれたり……、そ、それから……、い、一緒に、お、おふ、おふ……」
「ほ、ほら、俺たちまだ付き合い始めたばかりだし……、む、無理はお肌に良く無いかと……」
「無理なんかしてないわよッ!! い、いいからアンタは黙って付いて来なさいってぇえの!!」
「ぬぅおぇえええ!? ちょ、おいッ!! ちょっと……」
美琴のか細い体の何処にそんな力が有るのか? 上条は美琴にずるずると引き摺られて行く。
「アンタが言いだした事なんだから、きぃぃぃぃいっちり実行してもらうんだからねッ!!」
(……何か俺、御坂相手にいっつもこんな感じだよな。不幸だ……)
おわし。