かみじょうとうま。  
みな元気にしていますか?  
じかんが立つのは早いもので、こちらの  
ようすはだいぶ落ち付きました。その  
うちまた、イギリスに来た  
ときには、是非ランベスにある女子りょ  
うにも寄って下さい。  
まだまだ話したい事は沢山ありま  
すが今回はここまでにしてお  
きます。  
ではまた、  
すきな時にでも連絡下さい。  
 
神裂火織  
 
 
「もしもし、神裂さんの携帯ですか?」  
「その声は上条当麻ッ!?」  
 その瞬間、神裂の手の中で携帯電話がミシリと悲鳴を上げた。  
 一方、上条の方は、スピーカーから突然響いた割れんばかりの悲鳴に一瞬意識が遠退き掛ける。  
「うぁ、っっぅ、お、俺の繊細なお耳がキーンとぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおッ!! ふ、不幸だ……」  
「も、申し訳ありません……」  
 そう言って自分の手の中にある携帯電話に向かって神裂は深々と頭を下げた。  
「いいって、俺が急に電話したのが悪かったんだ。だから謝らないでくれ」  
「そ、そうですか……? 申し訳ありません……」  
「だから謝るなっての」  
「あ!? も、申し訳あ……」  
 神裂がそこまで口にした所で、上条と神裂、どちらからともなしにプッと吹き出すと、2人は暫く電話を握り締めて楽しそうに笑い合う。  
「ははは、はは、はぁ――なあ神裂」  
「はぁ、はぁ、な、何ですか上条当麻?」  
 
「メールありがとうな」  
「あ?」  
 その言葉の意味が理解出来ずに電話越しにキョトンとする神裂だったのだが、直ぐに顔を真っ赤に染め上げると、おずおずと電話口に話しかける。  
「あ……、あ、あ、あれを見たから電話を?」  
「ああ。何かあれ見たら神裂の声が聞きたくなってな……」  
 電話のスピーカーからもはっきりと判る位に照れくさそうにそう答えた上条に、神裂は天にも昇る様な幸福感に包まれる。  
 そんな状態だったから、後に続いた「迷惑だったか?」の社交辞令とも取れる一言にも、  
「と、とんでもない!? 何時でも掛けて来ていいのですよ。あ、いや、たまに、いや稀に、出られない事も有るかもしれませんが、そんな時は『留守電』なる便利なものも有りますので、あ、しかし絶対出ますよ!!   
間違いありません!! で、ですから何時でも掛けて来て下さい!!」  
「あ、ああ……」  
 あまりのハイテンションぶりに上条はちょっぴり電話した事を後悔した。  
「じゃ、神裂の声も聞けたし今日はこれで切るわ」  
「は、はい!」  
「今度イギリス行く時はホントよろしく頼むぜ」  
「任せて下さい」  
「その時メールの打ち方も教えてやるよ」  
「え?」  
 またもや上条の放った一言にキョトンとしてしまう神裂。その疑問は続く言葉で直ぐに払しょくされた。  
「改行がガタガタなんだよ神裂のメール。後、漢字変換出来て無い所とかもいくつか有ったぞ」  
「え、えっと……」  
「聖人の神裂に勝てる所1つ見つけたと思ってな」  
「あ、あの……」  
「嘘嘘。また『ど素人がッ!!』とか言われたら凹むもんなマジで」  
「た、た……」  
「じゃ、またな神裂。体、気を付けろよな。聖人様だって病気にもなれば怪我だってするんだからな」  
 もう一度「またな」と上条の声が聞えたかと思うと、プツッと通話は途切れて、スピーカーからはツーツーと虚しい音が響いて来る。  
 携帯電話を持った手をだらりとぶら下げた神裂は、  
「立て読みなんですが……」  
 そうポツリと呟いてから大きく深ぁいため息と共に、ガックリと肩を落とすのだった。  
 
 
 
END  
 

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