ここはとあるカラオケボックス。  
 学校帰りにスーパーへ向かおうとしていた上条当麻は、白井黒子を中心にした少女たちの一団に捕まってここに連れて来られていた。  
 メンバーは、先の白井と、その白井と同じ風紀委員(ジャッジメント)だと言う初春飾利、そして初春の友達の佐天涙子の3人だった。  
 風紀委員が2人も居てカラオケボックスは無いだろうと思った上条だったが、  
「それは偏見ですの。わたくしだってたまには大声で歌いたい事がありまの」  
 それはもっともだと思うのだが何だかしっくりこない。  
 取り合えず買い物の事も有るし、うちに待っているインデックスの事も心配だった上条は、取り合えず1周だけ付き合ってから帰ろうと決めて席に着いた。  
 しかし、計画はそう上手く行かないもので、マイクが2周しても3周しても上条が帰れる様な隙が無い。  
 それどころか気が付けば酒まで飲まされている始末で、  
「お、お前らぁ!! 俺酔わせてどうするつもり、っくぃッ、うぅ……」  
「だ、大丈夫ですか上条さん!?」  
 ソファーからずり落ちて叫ぶ上条を助け起こそうと、佐天が駆け寄って手助けをするが中々立ち上がれない。  
 そんな時、  
「佐天さん。わたくしちょっとお花つみに行って参りますわ。初春、あなたもお付き合いなさい」  
「何ですか白井さん、トイレならここを出て左に行った……」  
「いいからぐずぐず言ってないで付いて来なさい!!」  
「ちょ、ちょっとし、しら、あっ、引っ張らないで下さい!? 自分で歩けますからぁ……」  
 そう言ってにぎやかに2人が出て行ってしまうと、カラオケボックスの中は上条と佐天の2人だけになってしまう。  
 今は音楽も掛かっていないので、ミラーボールがキラキラしている以外静かなものだ。  
 と、  
「う゛ぅー、俺もトイレ行って来る……」  
「大丈夫ですか上条さん。立てますか?」  
「だぁーいじょぉーぶ。それより佐天さんはやさしぃなぁ」  
「あはははは、そんな事もありますけど――さ、一気に行きますよ、3、2、1、えいッ!!」  
 佐天は全体重を掛けて上条の手を引っ張る。  
 上条もそれに合わせる様にふらつく両足に鞭を打って踏ん張る。  
 2人の力のバランスが上手く相まって、上条の腰が浮いた――と次の瞬間、一歩後ろに下がった佐天の足が何故か床に転がっていたグラスを踏んでしまい、  
「うわッ!?」  
「うおおッ!?」  
 倒れた拍子に上条を巻き込んで、2人は仲良くソファーの上に倒れ込んだ。  
 それが幸いしたか佐天はどこも痛い所は無い。痛い所は無いのだが――、  
(何これ?)  
 余りに近くにそれが有ったので、佐天は一瞬何が起きたのか判らなかった。  
 ただ何となく、唇に湿った感触と、口の中に不思議な柔らかい感触がして……。  
 
「ん゛ん゛ッ!!」  
 気が付けば上条に唇を奪われていた。  
 しかもいきなりのディープな大人のヤツ。  
 思わずくぐもった悲鳴を上げるが、上条は一向に退いてくれる気配は無いし、口の中の舌は何かを探す様にふにふにと佐天の中を動き回る。  
 取り合えず舌(これ)にはお帰り願おうと、佐天は大胆な行動に出た。  
「んっ」  
 佐天は息苦しさに胸を喘がせながらも、自分の舌を上条のそれに押し付けると、ぐいっぐいっと力を加えて行く。  
 後少し、後もう少しで押しだせる――と佐天が安堵したその時、上条の舌はするりと佐天をかわすと、あろう事かその佐天の舌にぐるりと絡み付いたのだ。  
「ふぶうううううううううううううううううううう!!」  
 仰天した佐天が叫ぶ中、上条の舌は、まるで何かの生き物のように佐天の舌、特に敏感な根元をぎゅうぎゅうと扱いて来る。  
 息苦しさに変な刺激が加わって、佐天の体が無意識に跳ね上がる。  
 段々と遠退く意識の中、ああ、大人のキスってすごいんだね、と佐天はそんな他人事の様な事を頭の隅で感じるのだった。  
 
 
 そんな2人を別室からモニターでこっそりと覗くのは、  
「うっわぁー! 佐天さんビクビクいってますね。大丈夫でしょうか?」  
 そう言って顔を真っ赤にするのは初春。  
 そして、  
「まあ、この程度でしたら何とか立ち直れるでしょう」  
 そう言って冷静に分析するのは白井。  
「この程度って……、最後までされたら私が困ります!!」  
「そこはそれ、もうすぐ救世主が……来たッ!!」  
 モニターの向こうで、バンッと音が聞えそうな勢いでドアが開いて、部屋の中に入って来たのは御坂美琴だった。  
 足元もおぼつかないままフラフラになって佐天から離れた上条に向かって何かを叫んでいる様子だ。  
「ふふふふ。これでお姉様は殿方に幻滅する事でしょうね。そうしたらわたくしが誠心誠意、全身余す事無く愛して差し上げますわ」  
「私は、ショックを受けた佐天さんを――」  
 そう。2人は上条をダシにして、それぞれの思い人をゲットする作戦を立てて居たのだ。  
「「うふ、うふふふふ」」  
 2人が顔を見合わせて笑う向こうで、何が起きたのかモニターが一瞬強い光を放った――と思ったのもつかの間、それきりモニターはブラックアウトし、それ以後二度と映像を映す事は無かった。  
 
 
 それから十数分後。  
 モニターも壊れてしまってあちらの様子が判らなくなってしまった2人がそっと例のカラオケボックスを覗くと、そこには上条と佐天、美琴の3人が3Pの真っ最中で、しかもクライマックスを迎える所だった。  
 
 
 
END  
 
 

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