全ての始まりは、いつも通りの日常だった。
昼休み、上条当麻、土御門元春、青髪ピアスのデルタフォースが、例の如く馬鹿騒ぎを起こしていた。それを止めようと仲裁に入ったのが、姫神秋沙だ。
この時。
この時に仲裁に入ったのが吹寄制里や他の生徒だったら、あんな自体にはならなかった。
――――三つの世界が入り乱れた、異能力者同士の戦いには。
仲裁に入った姫神だが、そんなのお構いなしに、三人は殴るは蹴るは投げるは踏むはのケンカまっしぐら。
その時に運悪く、異能の力なら善悪を問わず打ち消す力である『幻想殺し』が宿った上条の右手が、姫神のペンダントに触れてしまった。
そのペンダントは、単にファッションの為に付けている代物ではなく、姫神の能力『吸血殺し』の能力を封じるためのペンダントだった。
幻想殺しに触れたことによって、ペンダントは粉々に砕けてしまった。
その時は上条も姫神も取り乱したが、運よく神裂とステイルがいたため、二人に頼んで同じものを取り寄せてもらうことになった。
そしてその間姫神は、神裂が作った能力を封じる結界内にいることになった。
神裂が結界を施している間。
少しの間なら大丈夫かと思っていたが、その油断が命取りになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時を同じくして、とある魔術師がある魔術を行使した。
それは正確に言うと魔術ではなく魔法、第二魔法である『並行世界の運営』であった。
宝石翁ことキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの直弟子に当たるこの魔術師は、長い研究の末第二魔法を不完全だが体得、そしてかねてからの計画を実行した。
魔術師のいる並行世界とは別の世界にいる、ある少女を捕らえるという計画を。
少女の名前はインデックス。
頭の中に十万三千冊の魔導書を記憶している特異な少女だ。
その少女の頭の中の魔導書を目的に、魔術師は魔術、正確には魔法を行使した。
しかし、その魔法はまだまだ不完全。
本来は繋がらない筈の他の2つの世界も、インデックスのいる世界とつながってしまった。
そして。
繋がるはずの無かった一つの世界では、そのことによりある一つの問題が起こる。
姫神の吸血殺し、その能力によって吸血衝動を抑えられなくなった人物がいる。
その人物の名はアルクエィド・ブリュンスタッド。
唯でさえ吸血衝動に呑まれそうになっていた彼女である、姫神の吸血殺しにより、完全に吸血衝動を抑えられなくなった。
衝動の赴くまま、彼女は獣の様に走り出す。
それを目撃した一人の少年、眼鏡をかけている遠野志貴は、アルクエィドのただならぬ雰囲気に迷わず彼女の後を追いかけた。
文字通りの吸血鬼になったアルクエィドと、その彼女を追う志貴が向かう先は言うまでも無く、姫神が居る学園都市だった。
そして。
もう一つの繋がるはずのなかった世界では、時を同じくして、魔術行使の術的余波を感じ取った魔術師がいた。
冬木の地の管理を魔術協会から任されている、セカンド・オーナーである遠坂家、その家の現当主である遠坂凛である。
凛はすぐさま魔術協会に連絡、そしてそのことにより協会から調査を依頼されてそれを受託した。
勿論、凛の弟子でもある衞宮士朗も同行することになる。
向かうは言うまでも無く、魔術行使の中心点である学園都市だった。
そして。
魔術師が不完全な魔法を発動したことにより、学園都市全体に異変が生じていた。
それは、学園都市に居る全能力者のAIM拡散力場の暴走。
これにより、世界全体にRSPK症候群、俗に言うポルターガイストが発生するという予測が学園都市のパソコンで予想された。
それも地球を破壊するほどの大規模なポルターガイストが。
加えて、吸血衝動に呑まれたアルクエィドによる破壊行動も甚大だった。
それら二つを防ぐには、学園都市に居る全能力者の鏖殺と、吸血殺しである姫神秋沙の抹殺。
殺人貴は告げる。
「悪いな、アルクエィドにこれ以上悲しいことはさせられないし、あんな姿は見ていられない。死んでもらうぞ、能力者。邪魔をするならお前も殺すぞ、無能力者」
半人前の魔術師は告げる。
「悪いな、これ以上被害を広げるわけにもいかない。だから、俺は世界を守るために行動する。抵抗するならお前も敵だ、無能力者」
無能力者は告げる。
「自分の大切な人の為に邪魔な人を殺す?多くを助けるために少ない方を切り捨てる?冗談じゃねえよ!そんなことを本気で思っているなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」
三つの世界、三通りの物語、三人の主人公が交わる時、世界の存亡を賭けた本当の物語が始まる――――