「上条、落ち着いて聞いてくれ。インデックスの記憶が失われた」
ロシアで『神の右席』フィアンマを撃破して霊装を持ち帰った俺を待ち構えていた現実は厳しいものだった。
「あなたは誰?」
病室で再開したインデックスの表情は今でも脳裏を離れない。
あれは……、あの目は……、あの碧い瞳に有ったのは警戒心だけだった。
そんなインデックスが間もなく姿を消した。
神裂に言わせれば、一種の防衛本能の様なもので、記憶が失われるとインデックスは必ずこう言う行動に出るのだと言う。
それなら何故毎回逃げられるのか?
そう問いただしてもあいつらは顔をそむけて口をつぐむばかりで何も答えてはくれなかった。
何処まで行っても後ろ向きな連中には構っていられない。まずインデックスを見つけなければ。
ロンドン、イギリス全土、ヨーロッパ……。俺は方々を走り回った。
やがて季節が二回りほどした頃、俺はやっとの事でインデックスを見つける事が出来た。
しかし、それは同時にある事が終わった事を悟る結果になった。
インデックスは新しいパートナーに出会っていたのだ。
俺よりも金持ちそうなそのパートナーはインデックスを心から愛していると言った。
インデックスもはにかむ顔をその相手にだけ向けながら、その言葉を肯定した。
俺にはもう出番は無かった。
何を言い繕った所で、インデックスの今をブチ壊す事になるのは明らかだった。
こんな時に役に立つ力は持ち合わせていない。
あるのはこの右手だけ。
あらゆる異能を触れただけで消し飛ばせる力も過ぎた時間は巻き戻せや……、
「いや、待てよ」
フィアンマはかつて何と言ったのか。
あいつは俺の力の本質は自分と一緒と言ったのではなかったか?
と、言う事は……。
俺はインデックスの住む町から離れた。
それは決して諦めた訳じゃない。むしろ、諦めない為に離れたんだ。
フィアンマが言う通り、俺にあいつと同じ力が有るのなら……いや、俺にはあの力が有る。
今は眠っている力。
それを引き出す方法はインデックスが持っている。
そしてその知識を引き出す方法はあそこにある事も俺は知っている。
「待ってろよインデックス。今全てを巻き戻してやるからな。俺にはそれを出来る力が有る。こんなふざけた現実はすぐにブチ壊してやるからな」
そこには何の不安も無い。
全ては俺の思うままに帰結する。
今までも、そして、これからも……。