なぜこんなことになったのだろうか。  
彼女は、自らの完璧な記憶をたどって、原因を探ってみる。  
 
彼は今日寝る前、友人から貰った、なんとか、という、怪しげなドリンクを飲んでいた。  
もしかしたら、あれに何かおかしな成分が含まれていたのかもしれない。  
だが、彼女には、そんなことはわからなかった。  
 
彼が今日見ていたドラマでは、男女がそういった行為を行う場面が多かった。  
もしかしたら、それらのテレビ番組が、彼の心に何か影響を与えたのかもしれない。  
だが、彼女は、そんなことを思いつきもしなかった。  
 
5日前から、ユニットバスがの空調が壊れていて、蒸し風呂同然の状態だったため、彼は彼女と同じ部屋で眠っていた。  
その間、彼女は何度も彼の布団に、無意識のうちに潜り込んでは、彼に追い出されていた。  
進入を防ぐため、彼は鞄や机でバリケードを構築していたが、彼女はそれすらも的確に回避し、彼の寝床に潜り込んでいた。  
もしかしたら、その無意識のうちの行動が、彼を精神的に追い込んでいたのかもしれない。  
だが、彼女は、その行為が、彼の心臓をどれだけ跳ね上げていたのか、考えもしなかった。  
 
客観的に見れば、二人の男女が一つ屋根の下で同棲している、というだけで、こうなる理由としては充分すぎるのである。  
事実、彼は何度か彼女の寝姿に欲情してしまったこともある。  
下着にYシャツ1枚という、彼女の無防備な寝姿に、生唾を飲み込んだことも珍しくはない。  
そういうことが起きる度、彼は鉄の理性で性衝動を押し殺してきたが、もうそろそろ限界が来ていたのかもしれない。  
それに加えて、ここ数日、上記のようなイベントが連続して起きていたとなれば、こうなるのは必然であろう。  
 
もちろん彼女とて、こういった場面を想像したことが無いわけではない。  
彼女とて、10万3000冊の禁書悪書の全てを、その頭に仕舞いこんだ『禁書目録(インデックス)』とて、年頃の女の子である。  
彼と自分がこうなることを少しだけ想像して、自己嫌悪に陥り、枕に顔をうずめてジタバタとしてしまったことも何度かある。  
だが、もし仮に、こうなることがあったとしても、それは互いの合意のうえであり、もう少し時が進んでから、だと思っていた。  
互いに好意を抱きあい、それを伝え合い、恋人として長い時間を過ごしてからだと。  
彼女は、日ごろ、自分が無意識のうちに、彼をどれだけ誘惑していたのか、全く気づいていなかった。  
それゆえ、なぜこんなことになってしまったのか、全くわからなかったのである。  
 
インデックスは、自分の(元はと言えば、自分のものではないが)ベッドの上で、上条当麻に押し倒されていた。  
 
上条の瞳は、どこか血走っているようで、普段彼女に見せるような、優しい面影は消えうせていて、まるで獣のようだった。  
彼は、インデックスの寝巻きのYシャツの襟元に手をかけると、その手を一気に下に下ろす。  
Yシャツのボタンが音を立てて弾け飛び、インデックスの、雪のように白い肌が露になる。  
その間、インデックスは、何が起きているのかすら、よく理解できていなかった。  
目の前で起きていることを、ただ呆然と見ているだけである。  
 
不意に、インデックスを押し倒していた上条が、顔を寄せ、口付けをする。  
唇と唇が触れ合い、互いの唾液が、口内で混ざり合う。  
やっと何が起きているのかを察知したインデックスは、彼の顔に手をあて、逃れようとする。  
だが、上条は、インデックスの頭の後ろに手を巻きつけ、唇に執拗に吸い付き、離れようとしない。  
そのうちに、上条の舌が、インデックスの口内に侵入してきた。  
必死に口を閉じようとするインデックスだったが、上条の舌が、彼女の歯を蹂躙しだすと、思わず口をが緩んでしまう。  
いつもは、彼の頭に傷をつける、彼女の歯を、上条の舌先が執拗に舐る。  
その奇妙な感覚に、インデックスの思考は少しとろけてしまい、硬く閉じていたはずの歯が開いてしまう。  
彼の舌が、インデックスの柔らかい舌を、根元から絡めとる。  
粘膜同士が触れ合う感覚に、彼女の思考は乱され、視界は蕩け始めてきた。  
 
ぷはっ、という音とともに、唇が離れたかと思うと、上条はもう一度唇に吸い付いてきた。  
完全に無防備になった、インデックスの口内を、上条の舌が再び蹂躙する。  
歯茎の裏側を、口内の天井を、舌の根元を、前歯を、奥歯を、犬歯を、味わいつくすように、何度も何度も舐め取る。  
そんな口付けが、3度ばかり続くと、ようやく彼は顔を離した。  
唾液でできた透明なアーチが、二人の唇の間にかかっていた。  
 
インデックスの思考は、もはや完全にまとまらなくなっていた。  
頭の中はふわふわとして、心臓はドックンドックンと高鳴っていて、目には涙が浮かんでいて、背筋にはうすら寒いものを感じていて。  
とにかく、目の前の彼が愛しくて、そして怖かった。  
ベッドの後ろに後ずさり、逃げ出したいという恐怖と、彼に身を任せたいという感情が、同時に彼女の脳内に浮かんでくる。  
このままでは危ないという、危険信号と、このまま身を任せてしまえばいいという、ゴーサインが、同時に彼女にかかる。  
今の彼はどこかおかしい、という疑念と、やっと自分の思いに気づいてくれたのではないか、という淡い期待が、同時に彼女の頭を支配する。  
結局、彼女は何も出来ずに、ただベッドの上で呆然としていた。  
 
上条の手が、インデックスの上の下着に延びる。  
呆けた彼女は、何の抵抗もできず、薄いレースのブラは、乱暴に引きちぎられた。  
そして、そこまできて、インデックスはようやく思考力を取り戻す。  
彼女は思わず身体を起こし、上条の頭を手で振り払おうとした。  
だが、その手は振り下ろす前に、上条の手によって掴まれ、阻止され、そのまま両手を掴まれ、再びベッドに押し倒される。  
 
 
上条当麻は、自分が何をしているのか、よく理解できていなかった。  
今の彼を突き動かしているのは、極度に高まった、性的欲求だけだった。  
 
彼がインデックスを襲うに至った直接の原因は、お察しの通り、寝る前に飲んだ謎の健康ドリンクである。  
これは、今日偶然出合った、御坂美琴が、上条に渡したものだった。  
「寝る前に飲むと、ぐっすり眠れるらしい」と言って、彼女はこれを上条に渡したのである。  
だが、その中には、性的欲求を高めるための、数々の薬品が山ほど入っていたのだ。  
彼女の名誉のために言っておくが、御坂のほうに、何かの意図があったわけではない。  
これを彼女に渡したのは、白井黒子である。  
こう書けば、恐らく殆どの人間は経緯を想像できるだろう。  
彼女は『パソコン部品』を注文し、それをその時、軽い不眠症に悩まされていた御坂美琴が、たまたま使用していた「安眠作用がある」ドリンク剤に偽装した。  
なぜそんなことをしたかまでは、もちろん書く必要もないことなので、割愛させて頂く。  
それが回りに回って、寝不足で悩んでいる上条に回ってきた、というだけである。  
 
結局のところ、彼にとっては、いつもどおりの『不幸』となるはずだった。  
安眠作用があるというドリンクを飲んだはずが、目が冴えて眠れず、下のモノはフルパワーで全開状態という、最悪な夜を過ごすだけのはずだった。  
もっともこれは、彼が、普通の男子学生のように、学生寮に一人で暮らしている場合は、の話だが。  
だが、彼は年頃の女の子と、一つ屋根の下、同棲生活を送っていた。  
これで、全く意識するな、というのは無理なもので、彼女の寝顔に、何度もドギマギしてしまったこともある。  
更に、ちょうどその数日前から、彼の唯一のプライベートな空間であった、ユニットバスが使用不能に陥っていた。  
このままユニットバスで眠れば、次の日には乾燥ミイラ間違いなしだったため、不本意ながらも、彼はインデックスと同じ部屋で眠っていた。  
更に更に、インデックスが毎日のように、寝ぼけて彼の寝床に入り込んでくる始末。  
彼女の身体の柔らかい感触に、理性が押し負けてしまいそうになったことが、何度あったことか。  
 
これだけの条件に、薬物によるドーピングが加わっては、彼の理性も、耐え切れなかったようである。  
 
彼は、根っからの善人である。  
彼の理性が少しでも残っていれば、恐怖に押しつぶされ、泣きそうになっているインデックスを見て、瞬時に手を引いただろう。  
だが、その少しの理性ですら、彼には残されていなかった。  
とにかく、目の前の愛おしい少女を、滅茶苦茶にしたい。  
その白い肌に吸い付き、むしゃぶりたい。  
この少女を、自分の手で好き放題に嬲ってやりたい。  
そんな思考だけが、彼の脳内を支配していた。  
 
 
 
もう彼は、自分で自分を止めることもできなかった。  
 
 
上条は、インデックスをベッドに組み伏せたまま、彼女の肢体に、口付けの雨を降らせる。  
熱を帯びたインデックスの肌は、絹のようにやわらかく、上条の唇を刺激する。  
上条の舌先が、彼女の皮膚が触れると、しょっぱい汗の味が、彼の舌を刺激した。  
インデックスは、両手を押さえられ、暴れることもできず、ただ震えながら、目の前で起きていることを眺めていた。  
上条が、彼女の肌に吸い付く度に、そのくすぐったいような感覚に、思わず吐息が漏れる。  
 
上条は、彼女の小さな右の膨らみにしゃぶりつき、その先端部分を、舌で転がした。  
彼の舌が、彼女の乳頭を刺激する度に、痺れるような感覚が、彼女の頭に伝わってくる。  
舌先で、淡い桜色の乳首をコロコロと転がされ、唇で挟むように吸い上げられると、彼女の唇から、甘い声が上がった。  
その嬌声が、上条の欲望を、更に加速させる。  
彼は、インデックスの腕を一度放し、右手を、彼女の空いた左胸に伸ばす。  
汗で湿った、柔らかく、熱い皮膚の感覚が、指を通して、彼の脳を更に溶かす。  
早まる欲求に耐え切れず、指を乱暴に動かすと、彼女のほんの小さな膨らみは、面白いように形を変える。  
インデックスの胸は、その大きさにしては、驚くほど柔らかく、心地よい触感だった。  
 
「あ……あぁ……」  
インデックスは、何も抵抗できず、ただ喉から、そう声を漏らすのみだった。  
「いぎっ……や、やめて……」  
上条の指が、インデックスの乳首を抓り上げると、彼女は思わず苦痛の声を上げる  
胸の先が、じんじんと痛むが、彼女はその中に、ほんの少し快楽を感じてしまっていた。  
目の前の上条当麻は、息を荒げながら、インデックスの身体を蹂躙し尽くそうとしている。  
今の上条は、普段の彼からは、想像もできないほど乱暴で、インデックスには、彼がいつもの上条とは、全くの別人に見えた。  
だが、目の前の上条当麻も、彼女の良く知っている、優しい上条当麻のはずである。  
インデックスが「やめて」と言えば、すぐにその手を引いてくれるはずである。  
そう考えた彼女は、上条当麻に抗議の声を上げようと、何度も試みていた。  
だが、声を上げようとしても、喉から上手く声が出てこない。  
 
それに、心のどこかでは、このまま流されてしまってもいい、という気持ちもあった。  
インデックスは、自分が上条当麻に心を惹かれていたということを、だいぶ前から自覚していた。  
このまま、上条当麻に滅茶苦茶にされてしまえ。  
本当は望んでいたんじゃないか。欲望に身を任せてしまえ。と、心のどこかで彼女に囁きかける。  
そのせいか、彼女は上条の行為に対して、何も抵抗することができなかった。  
 
 
インデックスの胸を弄んでいた、上条の手が、彼女の下半身へと伸びる。  
彼は、下着の端を指でつまみ、そのまま一気に下に引き摺り下ろした。  
ひんやりとした外気が、彼女のむき出しになった敏感な部分に触れると同時に、上条の指が入り込んできた。  
「やぁ……はふっ…やらぁ……」  
彼女の、桜色のそこは、既にほんの少し湿っていて、上条の指が上下する度に、くちゅくちゅと淫らな水音を撒き散らす。  
 
上条の指先が、インデックスの秘所に潜り込むと、一際強い刺激が、インデックスの身体を駆け巡った。  
「ひっ……!!」  
指の第一関節が入っただけで、腰の下から、痺れるような痛みと、甘い感覚が、背筋を伝わって、全身に駆け巡る。  
そして上条は、そのまま指を、少々乱暴に、上下に動かした。  
「あ…ひぃっ! とう……それ、それ……」  
上条の指の感触が、敏感な粘膜を通して伝わってくる。  
その指が動くたびに、頭がおかしくなりそうなほどの、強烈な刺激が、脳内を駆け巡る。  
その中には、痛みも含まれていたが、彼女の脳は、それすらも快楽として感じていた。  
 
インデックスの頭の中で、またも、二つの想いが交錯する。  
一方は、もっと上条当麻に触れられて欲しい。 このまま、最後まで続けて欲しいという想い。  
もう一方は、今の上条当麻は、明らかに普通ではない。 何とかして止めなければ、という想い。  
その2つの考えが、頭の中をぐるぐるぐるぐると駆け巡る。  
このままではいけない、と思った矢先に、上条の指が、インデックスの敏感な部分を嬲る。  
甘い感覚に思考が支配され、理性的な思考ができなくなり、全てがどうでもよくなる。  
だが、ちらっと見えた上条の姿は、どこからどう見ても、いつものそれではなかった。  
息を荒げ、目を血走らせて、自分の身体を犯しつくそうとするその姿を見ると、背筋に冷たいものが走る。  
だが、理性的な感情が戻っても、脳がすぐに快楽に支配され、再び全てがどうでもよくなる。 完全な堂々巡りだった。  
 
上条の指が、インデックスの粘膜をかき回すと、淫らな水音が、室内に響き渡る。  
先ほどとは違い、彼女のそこは、すっかりと濡れそぼっている。  
秘所の入り口は開き始め、包皮に包まれた陰核は、既に硬くなっていた。  
ほんの少しだけ生えている、銀色の茂みは、愛液によって濡れ、淫猥な光沢を放っている。  
インデックスに、もはや明確な抵抗の意思は無くなっており、ただ拳を握り、目を閉じて、されるがままになっていた。  
理性の部分では、どうにかしなくてはならないとは思っていても、身体が上手く動かない。  
制止の言葉をかけようとしても、喉が上手く動かず、舌が上手く回らない。  
どうしようもない、と思った矢先。  
 
不意に、上条の手が引き、ベルトを外す金属音が響いた。  
 
「ひ……いっ!」  
インデックスにも、その音がどういう意味を持つかくらいは、理解できる。  
閉じていた目を開けると、そこには、既にガチガチに硬くなった「モノ」が、インデックスの性器に押し付けられていた。  
「だ、だめっ! だめ、だめ! だめかもっ!」  
やっと、まともな制止の言葉が出たが、上条は全く躊躇う様子は無い。  
片手で自分の「それ」を押さえ、もう片方の手で、インデックスの花弁を広げ、そのまま一気に突き入れようとする。  
「とうまっ! やめっ、やめて! それはだめ!」  
上条のそれを目の当たりにして、インデックスは思わずそう叫んだ。  
だが、上条の動きが止まる様子は無い。  
上条の怒張の先端部分が、インデックスを貫くと思ったその時。  
 
 
インデックスの両腕が、上条当麻を、思い切り突き飛ばした。  
 
 
考えもしなかった衝撃に、上条の身体は僅かな時間宙を舞い、そのまま後ろの壁の角に激突する。  
ゴン、という、聞くだけで頭を抱えたくなるような鈍い轟音が、部屋の中に響き渡った。  
上条は、そのまま地面に勢いよく倒れこみ、そのままピクリとも動かなくなった。  
 
「あ、あ……」  
最も驚いたのは、突き飛ばした張本人である、インデックスその人だった。  
彼女からすれば、恐怖のあまり、思わず手を出してしまった、という感じだったのだろう。  
だが、どうやら想像以上の力が出てしまったようで、上条当麻はごらんの有様である。  
先ほどから、ズボンをずり下ろしたままの格好で倒れ、ピクリとも動かない。  
傍から見れば、なんともマヌケな格好である。  
だが、襲われていたインデックス当人としては、全く笑えない話である。  
 
「と、とうま? 大丈夫?」  
恐る恐る、インデックスは動かなくなった少年のもとに駆け寄る。  
もし意識を取り戻して、また自分が襲われるというのも困るのだが、このまま動かなくなってしまったほうが、もっと困る。  
彼女は、上条が動きださないかどうか、ビクビクしながら、そーっと近づいていき、肩を叩く。  
「と、とうま……? とうま?」  
肩を揺すってみるも、返事は無い。  
もしかしたら、頭の打ち所が悪くて、大事に至ってしまったのではないかという、寒気のする想像が、彼女の脳裏を掠める。  
なぜか、新聞の三面記事に『美少女シスターTさん(仮名)、同居人の高校生殺害』という見出しと共に、自分の顔(目に黒線入り)が映っている様子が目に浮かんだ。  
背筋に冷たいものが走り、その考えを消すべく、上条の身体を必死に揺する。  
「起きて、とうま! とうまったら!」  
 
「…ぁぁ……ぅ…ん?」  
両肩を掴み、これでもか、というほど横に揺さぶると、上条の口から、僅かな呻き声が漏れた。  
「と…… とうま?」  
インデックスが肩を強く揺すると、上条当麻が、床に右手をつき、ゆっくりと起き上がる。  
彼がが起き上がったことで、少しは安心したインデックスだったが、先ほどの彼の姿を思い出し、思わず後ろに下がってしまった。  
 
「……ぁ? な、なぁっ!」  
上条当麻が、意識を取り戻して、最初に目の当たりにしたもの。  
それは、裸にYシャツのみ、という全裸同然の格好で、自分から逃げようとしている、同居人のシスターの姿だった。  
「インデックス!? お前、何だその格好! お、女の子なんだから、下着くらい……」  
「とうまが引きちぎったかも!! そ、それに…… とうまも、それ!それ仕舞って!」  
「そ、それ!?」  
一方の上条は、ジーンズのファスナーから、隆起した肉棒が、天を仰いでいた。  
だが、上条本人は、全く気づく様子がなく、インデックスの姿から目を逸らそうと、必死になっている。  
「それって何だよ!? というか、そんなことよりインデックス!   
 俺のことより、少しは自分の姿に疑問を持って欲しいと、上条さんは思うのです!」  
その台詞が、説得力ゼロの台詞であることに、彼は気づいているのだろうか。  
この状況を他人が見れば、100人中99人は「お前もな、つーかお前がな」と言いたくなる状況であることは、恐らく間違いない。  
「それはこっちの台詞かも!  
 だ、だから! それ! その…… とにかく、それなんだよ!」  
痺れを切らしたインデックスは、問題の「それ」から顔を背けながら、上条の股間を指差した。  
二人の顔は、既に、クレヨンで塗りたくったかのように、綺麗な真っ赤になっている。  
 
「……………………へ? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 」  
上条がやっと、自分の状況に気づいたようである。  
隣の部屋の住人どころか、近隣住民全てに怒られること必須の、大絶叫を放つとともに、いきり立った性器を、急いでズボンに押し込んだ。  
 
上条は、自分がなぜこんな格好になっているかを考えてみた。  
すると、先ほどまでは熟れたトマトよりも真っ赤だった、彼の顔色が、一瞬で、B級映画のゾンビも真っ青の青色に変化する。  
「ちょ、ちょっと待て、インデックス! ってことは、まさか、あれ夢じゃ……」  
一縷の希望をかけて、恐る恐るインデックスにそう尋ねる。  
だが、返答は、彼が予想したとおりの、残酷なものだった。  
 
「えっと、「あれ」が何かはわからないけど…… ぜ、全部とうまがやったんだよ……?」  
目の前のインデックスは、自らの胸の頂きにある、桜色の突起を隠そうともせずに、そう告げた。  
後ろのベッドに目をやれば、乱暴に毟り取られたブラジャーやショーツ、千切りとんだボタンが散乱している。  
それに、自分の身体を支配する謎の熱さと、痛いほどに勃起した自身のモノ。  
この状況から見れば、上条自身がどう否定的に見ても、自分がインデックスを襲ったのは、確定的に明らかだった。  
 
続く  
 

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