神裂火織はその日、イギリス清教最大主教ローラ=スチュアートから渡された包みを抱えて自室に籠っていた。  
 中身は学園都市から送られてきたものらしく、いくつも持っているから子女の嗜みとして1つやろうと無理やりローラに押し付けられたのだ。  
 その包みを破り中の物――長さ30センチ程の女性のボディラインの様な滑らかな形をした太い棒状の器具――を取りだした神裂は、説明書を読むのもそこそこにそれを手に取ってベッドへ移動した。  
 ごくりと生唾を飲む。そして手に持ったそれの丸みを帯びた先端をジーンズ生地の上から股間にあてがい、親指に当たるダイヤル部分をその指の腹で少しだけ回してみた。  
 するとそれ――電動マッサージ器は突如命を吹き込まれたかのように振動を開始したのだ。  
「あうっ」  
 まるで大事な個所に電気でも走った様な感覚に神裂は思わず声を漏らすとマッサージ器の先端を股間から離す。  
「まだ少ししか動かしてはいないのにこの刺激……」  
 音も無く振動する先端とメモリのが指す「弱」の文字に神裂は愕然とした。  
「ですが使ってみないと感想も言えません。あの馬鹿女なんて物を……」  
 とは言え律儀な神裂は何処かでローラがほくそ笑んでいるかもと思いつつも、再び股間にマッサージ器をあてがった。  
「んっ」  
 威力は先程身をもって経験していたので今度はそっと押し当てる。  
 すると布越しの大事な部分に心地よい振動が伝わって来て、神裂は急にリラックスした気分になって来た。  
「ふぅ。これなら大丈夫かもしれません」  
 何を安堵しての呟きだったのかそうひとりごちる神裂だが、それが間違いと気付くのにさほど時間はかからなかった。  
 最初は神裂も気付かなかった小さな熱が、マッサージ器を当てた股間から、徐々に体中に広がって、気が付けば神裂の露出した肌と言う肌は艶やかなピンク色に染まっていた。  
「ふっ、ふっ、ふっ、ふあっ、はっ、あっ、あっ」  
 呼吸も脈拍も速くなり、時折つくため息はどこまでも熱く艶めかしい。  
 しかし、そんな体調よりも深刻だった変化……それは身体の変調に気付いてもマッサージ器を止めようと言う気が一向に起こらない事だ。  
 むしろもっと激しくと言う思いが親指のダイヤルを回させる。  
「あっぐぅ!?」  
 普段は誰にも見られぬ場所でひっそりと花開く時を待つつぼみが無粋で強引な愛撫に散らされる……その激しさに神裂は太ももをきつく閉じて仰け反った。  
 秘所からこぼれる……いや既に溢れる状態になった蜜は、薄手の布地を超えて、ジーンズの上にも恥ずかしい染みを広げている。  
 それでもなお神裂は快楽を求めた。  
「はっ、はっ、ひぅ、ぐ、う、ぎぃぃ……」  
 自分の胸を引き千切らんばかりに鷲掴みにして、固く尖った先端を自分の白い歯でぎりぎりと噛締めながら声を殺す。  
 固く閉じた瞼の裏に、快楽の波とともにチカチカと星が瞬く。  
「くひっ、んぐ、く、い、も、も、つぅ、ぅ」  
 貪欲に快楽を求める本能が越えてはいけない一線――ダイヤルを強に回させた瞬間、マッサージ器が今までに無いうなりを上げた。  
「!!」  
  驚きのあまり引きちぎらんばかりに先端に歯を立てるがそれどころではない。その時神裂は女性の最も神秘的な部分を超高速で揺さぶられる様な、そんな感覚を味あわされていたのだ。  
 先程に倍する速度でジーンズに黒ずんだシミが広がり、それでも吸い切れなかった分が布を超え、またジーンズの切れ目から黄色い滝となって溢れだす。  
 そして既に血の滲んだ先端を噛みしめる歯の隙間からは、粘度の高い唾液が泡となって唇にこびり付く。  
 そんな凄惨な情景の中、神裂は大きく見開いた眼を反転させると自分がベッドの上に作った大洪水の跡にばったりと倒れこむのだった。  
 
 
 
「女教皇様?」  
 五和は大きな箱を抱えて歩く神裂の背中にそう話しかけた。  
「何ですか五和?」  
「どうなさったのですかその箱?」  
「ああ、これ」  
 そう言って神裂は大きな箱を軽々と揺すって見せる。  
 決して軽くはない箱だが、聖人の力を持つ神裂にとってこの程度の重さはどうと言う事は無い。  
「先日、最大教主からある頂き物をしまして。とても良かったので幾つかまた分けていただいたのです」  
「はあ、あの最大教主が? あ、いえ、失言でした」  
「いえいいのです。言われても反論もありません――ところで五和」  
「はい、何でしょう?」  
「今から少し時間はありますか?」  
「問題ありません」  
 その返事に神裂はにっこりとほほ笑むと、  
「見ての通り最大教主からずいぶんと沢山いただいたので」  
 そう言って箱を揺する様子に、  
「そうですか! でしたら是非」  
 神裂が良いもの言うのだからおかしな物は無い筈だと、五和は満面の笑みをたたえて頷いた。  
「きっと五和も気に入りますよ」  
 その言葉に五和は何故か鳥肌が立った。  
 おかしいなと腕をさすりながら神裂の跡を追う五和は気が付かない。  
 神裂の歩いた後に続く、黒いシミの跡に……。  
 
 
END  
 

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