「それじゃあ、いっただっきまーす」  
そして番外個体は、何の予兆も無しに、一方通行の性器をぱくっと口に咥えた。  
独特の刺激臭と、熱を持った粘膜の感覚が彼女の口内に充満する。  
「―――――ッ〜〜!」  
「ん…… おいひい。 悪くないよ、第一位」  
ペロリと亀頭を舌で舐めまわしてみると、一方通行は声にならない声を上げて、快楽に抵抗しようとする。  
「はむっ…… ん、んー…… む、ちゅるっ……」  
今度は彼の性器を右側の頬に寄せて、奥歯で甘噛みしながら側面を舌と頬の内側で刺激する。  
上下から襲い掛かってくる硬い歯の触感と、左右から加わる柔らかい肉の質感が、一方通行を容赦なく攻め立てた。  
頭の中がチカチカしてきて、視界がぐるぐると回っているような錯覚に囚われる一方通行。  
そうこうしている間にも、番外個体の口は様々な方法で一方通行を弄ぶ。  
「ぁ…… ぐ……」  
舌を蛇のように絡めてみたり、カリを前歯で甘噛みしてやったりすると、一方通行が切ない声を上げた。  
普段の彼とは程遠い、羞恥に満ちたその表情が、番外個体の心を更に掻き立てる。  
「ちゅぱ…… じゅるっ、ずずず…… んー、んむぅぅ」  
「なっ……!! や、止めろこの……」  
喉の奥まで性器を咥え込んで、口内全体で刺激しながらわざと音を立てて思い切り吸い上げる。  
いつもは彼を睨みつけている彼女の瞳が、熱を孕んだまま一方通行を見上げている。  
そして彼女は、一方通行のそれを喉から引き抜き、亀頭の部分を唇で挟んで吸い上げながら、口からそれを解放した。  
ちゅぽんっ、という小気味のいい水音とともに、膨張した性器が外気に晒される。  
 
「て、テメエ…… ンなこと、どこで覚えやがったンだ……」  
「聞かないほうがいいと思うよ? まあ、ミサカにも色々あっただけ」  
一方通行が照れ隠しに放ったその一言に、番外個体はほんの少し顔を曇らせた。  
「三流ポルノ小説みたいな展開で、研究所で変態の研究員に好き勝手されてたとか  
 用済みになったら『そういう事』にも使えるように、学習装置でそういう情報を書き込まれたとか、好きなように妄想してくれればいいんじゃないかな。  
 本当のことを言って、あまりの内容に萎えられても困るからこれ以上は言わないけど」  
今度は逆に、一方通行の顔が曇る。  
その言葉はもしかしたら、彼の心を引っ掻き回すための嘘かもしれない。  
だが学園都市暗部の連中が、人の命をいかに弄んできたかを嫌と言うほど見てきた彼にとって、その言葉は何の冗談にも聞こえなかった。  
実際にあり得る、どころの話ではない。 非人道的な扱いを受けている女性など、何度も見たことがある。  
ましてや彼女のように人として扱われないような者がどう扱われてきたかなど、考えてみるだけで胸糞が悪くなる話だった。  
「まあ貧乏くじを引いたのは、使い潰される予定だったこのミサカだけだったみたいだけどね。  
 ミサカにとっては残念な話だけど、上位個体や実験に関わったミサカ達は『実験に支障を与える可能性を考慮』されて、下手なことはされなかったみたいだし」  
「……クソったれどもが」  
小さく舌打ちをしながら、苦々しくそう吐き捨てる一方通行。  
番外個体は何を考えていたのかほんの一瞬だけ瞼を閉じていたが、すぐに歪んだ微笑を取り戻し、こう言った。  
 
「まあ、そういう思い出すだけで腹の立つ話は今は置いておいてさ、楽しもうよ。  
 残念ながら、楽しむのは主にミサカのほうだけどね」  
 
ぺちゃぺちゃと番外個体の舌が、一方通行の先端部分を舐め回す。  
先程までのように口に咥えながらではなく、左腕で根元を固定しながら、まるでアイスキャンデーでも味わうように。  
時折、竿の側面部に舌をつつーっと走らせたり、裏スジを唇で咥えながら吸い上げたり。  
「く……そが! 今すぐやめやがれッ……」  
一方通行が声を荒げる。  
とにかく何か抵抗していなければ、このまま快楽に飲み込まれてしまいそうだった。  
だがその些細な抵抗は、番外個体の嗜虐心を更に煽るだけに終わる。  
 
番外個体は今の状況を、とてもとても、とても楽しんでいた。  
あの雪原では全く歯の立たなかったこの少年を、いいように玩具にできるのが楽しかった。  
自分に手を差し伸べてきたこの少年を、自分の手で狂わせることが面白かった。  
悪意の対象としてしか見ていなかったこの少年が、まるで別人のように変化していくのが愉快だった。  
歳相応に頬を赤くして羞恥に染まる表情、瞼を閉じて快楽に抵抗しようとする表情、こちらのからかいをムキになって否定してくる表情。  
そのどれもが、自分にインプットされた『学園都市第一位』とは違うものだったから。  
 
殺し合っていた宿敵同士の男女がいつの間にか和解し、危険地帯のど真ん中で、有限である時間を無駄にして行為に耽っている。  
その様子は、B級スパイ映画あたりによくありがちな、不自然なラブシーンそのものだった。  
本来ならば、こんな行為に耽っている時間では無いのかもしれない。  
生き残るために体力の回復を図り、今後の方針を決め、対策を立てるべき時間なのかもしれない。  
だが彼女にはもう、止まってやる気などさらさら無くなっていた。  
 
気が付けば一方通行の怒張を支えていたはずの左手が、自身の性器に伸びていた。  
身体の奥からまるで火でも焚いているかのように、次から次へと熱が湧いて出てくる。  
その衝動に抗いきれず、彼女は中指と薬指を一まとめにして奥まで一気に突き入れた。  
そこは既に充分すぎるくらいに湿っていて、二本の指をすんなりと受け入れる。  
「あはっ…… は、ふ……」  
喉の奥から、自然と嬌声が漏れた。  
悪意の塊である彼女らしくない、甘く切ない嬌声が。  
「はむ、んふ…… んぐ、んぐぅ、ぐ……」  
そして再び、一方通行の性器を口に咥え込む。  
手を使わないのであれば、このほうがずっとやりやすい。  
 
女性に無理矢理押し倒されているという逆レイプに近い惨めな状況であっても、身体のほうは正直に反応するらしい。  
番外個体はまるで一方通行の弱点を全て知り尽くしているかのように、的確な愛撫を加えてくる。  
普段は一方通行に向かって毒しか吐かない舌が、彼の欲望を甘く刺激してくるというのも、また皮肉なものである。  
視線を下げてみれば、番外個体が自分の秘貝を指で弄り、一心不乱に彼の性器にむしゃぶりついていた。  
水音がする度に甘い声を上げる彼女の様子が、堪らなく官能的だった。  
ペニスを咥え込みながら頭を上下させる度にぷるんと揺れる整った形の胸が、凄まじく扇情的だった。  
いつもは彼を睨みつけている吊り上がった獣のような瞳が、快楽に蕩けてとろんとなっているその表情が、この上なく男心を擽った。  
 
「んふ、うむぅ……う、んん……」  
一方通行の男根を淫らに舐め回しながら、番外個体は自分の陰核を指で弄ぶ。  
膣内にぐちゃぐちゃと指を出し入れしながら、親指と人差し指でくりくりと撫で回す。  
頭の中にぴりぴりと電撃のような快楽が走る。  
「はむ、ふぅ……ん、んふ、ふ、うぅ……」  
そして喉の奥に亀頭を打ちつけながら、じゅるるるるっ、と下品な音を立てて思い切り吸い上げた。  
「ぐ……ッ〜〜!」  
先程から爆発寸前だったというのに更に過激に攻め立てられ、一方通行は思わず喘いでしまいそうになる。  
だが、目の前のこの少女にいいようにされるというのも癪だったので、声を押し殺して耐えようとする。  
 
「うむ、ぅん…… ふぅ、中々頑張るね、第一位」  
口からペニスを一度取り出して、上目遣いでそう尋ねかける番外個体。  
「本当は今にでも射精したいんじゃない? すごいビクビクしてるし、たぶんもう限界だね」  
自らの秘部を弄っていた左手を移動させ、一方通行の裏スジを人差し指でつつーっとなぞる。  
「くぅ…… い、いい加減にしやがれ……」  
「射精したい? 射精したいよね? もう先っぽこんなに膨らんでるもんね。  
 ミサカとしてはそろそろ射精させてあげてもいいんだけど、せっかくだからさ」  
そう言いながら舌を伸ばし、鈴口をつんつんと突く様に弄ぶ番外個体。  
その微妙な刺激に、思わず顔をゆがめる一方通行。  
 
番外個体の言うように、彼は既に限界だった。  
頭の中がクラクラするほどの性的快感を押し付けられ、思考が定まらない。  
下を見れば番外個体が、扇情的な表情でこちらを見つめている。  
だが彼女はすぐにその表情を消し去り、再び頬を吊り上げて悪意たっぷりの嫌な笑みを浮かべ  
 
「学園都市最強の能力者が、ミサカみたいな使い捨てで作られたクローンに懇願する所とか見てみたいかな?  
 射精したいなら、ミサカに向かって無様に『おねだり』してみてよ、第一位」  
 
心の底から楽しむようにそう言った。  
 
「ふ、ふざけてンじゃねェ…… 誰がンなことするか」  
「あ、そう? ミサカはもっとあなたで遊んでてもいいけど、辛いのはあなたのほうじゃない?」  
彼女はそう言いながら一方通行の性器の先端にふうっ、と熱い吐息を吹きかける。  
「う……ぐッ」  
「見せてよ。 学園都市最強が羞恥と快楽に負けて、泣きながら『イかせてください』って無様にお願いする様子をさ。  
 考えただけでゾクゾクするよ。 ミサカ、それを想像するだけでイッちゃいそう」  
「だ、誰がテメエなンかに……」  
「ほーら、ぐりぐり」  
「ッッ―――!」  
彼の言葉を遮るように、指先で尿道口を捏ねるように刺激した。  
限界近くまで張り詰めた怒張を、その限界を超えない程度に刺激し続けてやる。  
声を出さないよう、口を硬く閉めて快楽に耐えようとしているその様子が、番外個体の嗜虐心をどうしようもなく掻き立てる。  
腰骨の下あたりから何かが凄まじい速度で這い上がってくるような、ゾクゾクとした感じがした。  
自分の脳内で、脳内麻薬が過剰に分泌されているのが実感できた。  
 
「我慢は身体に悪いよ? たった一言、ミサカに『イかせてください、お願いします』って言えばいいんだからさ」  
陰嚢をぐにぐにと弄びながら、番外個体は恍惚の表情を浮かべている。  
彼女は、自分が一方通行を弄んでいるという事実に、どうしようもない快感を見出していた。  
子宮の奥から、身体全体が熱くなっていくのがわかる。  
一方通行を嬲る度に、じゅんと愛液が染み出てくる。  
もっとこの少年を虐めてみたいと、明確にそう思っていた。  
 
「ぐッ―――! ッッ!」  
まるでフルートでも吹き鳴らすように、番外個体が竿の側面部を咥えた。  
敏感な部分は刺激しないよう細心の注意を払いながら、一方通行を嬲り続ける。  
両手が使えないのがもどかしかったが、寸止めを続けるにはこれで充分である。  
「はむ、んむ…… ちゅるちゅる、じゅる……」  
陰茎の付け根の部分を舌でしつこく舐め回してやったり、陰嚢にキスをしてやったりと。  
彼が絶頂に達しようとすると口を離して責めを中断し、十数秒後にまた再開する。  
 
一方通行の頭の中は、快楽と羞恥と屈辱で埋め尽くされていた。  
今すぐにでも番外個体に屈したい程に切羽詰ってはいたのだが、理性がそれを許さない。  
先程から針金をどうにかして外そうと手をがむしゃらに動かしてはいるものの、一向に外れる様子は無い。  
そうこうしている間にも、番外個体の容赦の無い寸止めは続く。  
先程までの過激すぎるほど直接的な責めではなく、極めて慎重な、それでいて底意地の悪い責め方だ。  
本来なら、罵声の一つや二つでも浴びせて気を紛らわせたかった。  
なのに声を必死に押し殺しているのは、こうでもしていないと口が勝手に「お願いします」と言ってしまいそうだからである。  
シーツを握り締めて快楽に耐えようとする彼の姿は、とても学園都市最強の能力者には見えなかった。  
 
番外個体が、一方通行を責め立てる。  
性器に対する愛撫だけではなく太腿や陰嚢、下腹部などに対する刺激や、色っぽい言葉などで一方通行の官能を刺激し続ける。  
だがそれによって彼が絶頂するようなことは無く、ギリギリの所で全ての責めを停止させていた。  
そして少し休ませた後は、再び彼を快楽の底に叩き込む。  
休ませている間も微妙な刺激を与え続け、一方通行の興奮が冷めないようにするというオマケ付きだ。  
 
その生殺しを何度も繰り返した頃、番外個体はあることを思いついた。  
自身でも天才的だと思うような、一方通行を羞恥と屈辱のどん底に落とす責め方を。  
思わず口元が吊り上がる。  
これをしてやったら、一方通行はどんな顔をするのだろうか。  
無様に自分に懇願してくるのか、意地でも耐え抜こうと必死になるのか、いずれにせよ最高に面白そうだ。  
そう考えた彼女は、崩れた笑みを隠そうともしないでゆっくりと立ち上がり  
 
右足で一方通行の性器をぎゅっと踏みつけた。  
 
「ぐ…… あ、ああ……ッ」  
予想だにしなかった強い衝撃に、思わず無様な声を上げてしまった一方通行。  
局部を踏まれたことによる痛みだけでなく、その中に快楽が混じっていることに気が付き、自分が情けなくなる。  
屈辱のあまり、頭がどうにかなりそうだった、  
「ぷっ…… く、くく…… もしかして、これ気持ちいいとかじゃないよね?  
 学園都市最強の能力者が、ミサカの足に踏まれて感じてるとかそんな訳無いよね?」  
「ンな訳ねェだろうがァッ!とっととその汚ェ足…… ぐゥゥッ!」  
言葉を遮るように、番外個体が親指と人差し指の間で亀頭を挟み込み、ぐりぐりと捏ね回すように刺激する。  
すると一方通行は歯を食いしばって声を抑えながら、快楽に耐え切れずに顔を歪める。  
その様子が余りにも面白くて  
 
「……ぶっ、ひゃひゃひゃひゃひゃ! あっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!  
 ひゃははあはははっあははあははははあはははははははははは!」  
 
番外個体は突然、火がついたように笑い出した。  
 
「何それ! あなた本当にミサカに踏まれて感じてるの!?  
 ひゃひゃひゃひゃひゃ! やっばい、マジで面白すぎるんだけど、それ!  
 情け無いったらありゃしない、ってまさにこういう状態のことだよ!」  
トチ狂ったように笑いながら、一方通行のペニスをぐりぐりと踏みつける番外個体。  
足で刺激を与えるたびに、まるで初心な女子のように顔を歪め、羞恥に耐え切れずに顔を背けようとする。  
その顔を見る度に番外個体は、自身のサディズムが面白いように擽られていくのがはっきりと自覚できた。  
「ミサカに踏まれて顔真っ赤にしてるとか何これ、ギャグなの!? ねえ、どんな気持ち? 自分よりずっと弱い相手にチ○ポ踏まれて感じてるのってどんな気持ち?  
 『悔しい、能力さえ使えればこんな奴に…… でも……』とか、そういう気分だったりする? ひゃひゃひゃひゃ!」  
今度は踵で、竿の部分を優しく踏みつける。  
苦痛をあまり感じないように加減しながら、足の裏で転がすように性器全体を嬲る。  
先端部に足の裏が当たると、一方通行は面白いように身体を跳ねさせた。  
 
「ぅ、あ…… あ、あ……」  
堪えきれずに、一方通行が声を漏らす。  
番外個体の腰の下あたりから首の裏にかけて、ゾクゾクがひっきりなしに押し寄せてくる。  
快楽に耐え切れずに声を漏らす一方通行の顔を見ていると、まるで自分が純な乙女を手篭めにしているような錯覚に囚われた。  
子宮がきゅんと疼いていくのが、自分が欲情しているのがよくわかった。  
 
左手を腰に当てながら、右足で器用に一方通行を甚振る。  
絶頂しないように、それでいて性感が途切れることが無いように。  
「ほらほら、ほらほらほら! もう我慢の限界じゃないの?  
 そろそろミサカに、あなたの無様な鳴き声聞かせてくれないかな!?」  
番外個体がそう言いながら、踵で竿の部分をを思い切り踏みつける。  
親指で、亀頭の先端部分を執拗に攻め立てる。  
 
 
『ブチン』と、何かが切れる音がした。  
 
 
「ぉ……ぃ、く、……ぅ」  
一方通行の口から、弱弱しい言葉が漏れた。  
聞き取れない程のか細い声が、番外個体の鼓膜を心地よく刺激する。  
「ん、聞こえないよ? もう1回言ってみてよ」  
悪意と恍惚に塗れた笑みを浮かべながら、一方通行の口元に耳を近づける。  
 
次の瞬間、番外個体の耳に響いたのは無様な懇願の言葉ではなく  
 
 
 
「お仕置きの時間だクソ野郎が、ッつッたンだよォッ!」  
 
 
 
拘束されていたはずの一方通行の手が首筋の電極に伸び、バチンとスイッチを切り替える。  
瞬間、番外個体の身体が宙を舞った。  
くるんと宙を半回転した彼女は、そのままベッドに仰向けになって倒れこむ。  
番外個体はその一瞬で何が起きたのかわからず、呆気にとられた表情をしていた。  
先程の『ブチン』という音は、彼の手を拘束していた針金が切れた音だった。  
あまりに一方通行が手を激しく動かしたので、安っぽい針金が耐え切れずに捻じ切られたのだ。  
 
能力一つを使うだけで、立場が一瞬で逆転した。  
まるで先程の、あの雪原の戦いの時と同じように。  
番外個体にとっては、予想すらしていなかった出来事だろう。  
今まで屈辱に塗れていたはずの赤い瞳が、それまでとはまるで違う光を放ちながら、自分を見下ろしている。  
彼女はつい最近どこかで、この瞳を見たことがあるような気がした。  
 
「随分と好き放題してくれやがったな、このインランがァ」  
一方通行は気が付けば、番外個体に跨るような体勢になっていた。  
両肩を腕で押さえつけ、彼女の両足の間に自分の足を入れて強制的に足を開かせている。  
番外個体の現状を理解できていないような、ぽかんという顔が妙に彼の加虐心をそそった。  
今まで自分を死ぬほど憎んでいた悪意の塊である少女が、とても弱く小さく感じられた。  
 
気分が高揚する。  
本来は、このまま蹴飛ばして部屋から閉め出すだけのつもりだった。  
だがいつしか彼の頭からは、そんな考えは綺麗に抜け落ちていた。  
 
目の前の少女をただ滅茶苦茶に壊したいという衝動が、彼の心を支配する。  
彼の心の底に潜んでいる、狂気じみたサディズムの箍が外れる。  
 
「お返しだ、天国までブッ飛ばしてやる」  
そう言って赤い瞳を爛々と輝かせながら、白色の狂気は口元を吊り上げて笑っていた。  
 
「それはどういう意味なのかな?」  
番外個体が平静を装いながら、しかし僅かに震えた声でそう言った。  
「女も抱いたことの無い童貞坊やが、ミサカを満足させてくれるって言いたいの? だとしたら面白い冗談だよ」  
喉の奥から声を絞り出す。 でなければ、どうにかなってしまいそうだった。  
目の前の少年を見ていると、心が恐怖で押しつぶされてしまいそうな気分になる。  
 
番外個体はただ単純に、目の前の少年が恐ろしかった。  
彼のその笑みは、絶対能力進化の実験で妹達を虐殺している時の、あの笑顔に似ていた。  
猟犬部隊を追い詰めて恐怖を煽るように殺害していた時の、あの赤い瞳そっくりだった。  
あの雪原で全てに絶望して狂ってしまいそうになった時の、狂気に染まったあの姿そのものだ。  
顎が思わず上下に震え、歯がガチガチと無様な音を立てて鳴ってしまいそうだった。  
 
それを悟られないよう、歯を食いしばって真正面を見据える。  
だが、ほんの数秒だって一方通行の表情を直視することができない。  
「やるなら早くやってくれない? それとも押し倒したはいいけど、やり方がわからないのかな?」  
目を逸らしながら、震える声を押し殺して強気な言葉を搾り出す。  
頭から血の気がサーッと引いていき、首の裏の辺りを冷たい汗が下りていくのが自分でもわかった。  
 
一方通行が肩に当てていた手を彼女の柔らかな胸へと動かし、手の平で彼女の胸を包み込むと、彼はゆっくりと瞼を閉じる。  
そして数秒ほど何か考え込んでいた様子だった。  
番外個体は最初は身構えていたが、いつまで待っても何の刺激も来ない。  
ますますもって、頭の中が混乱する。  
「……どうしたの? ミサカのことを天国までブッ飛ばしてくれるんじゃなかったの?」  
軽口を叩いてみるが、一方通行が動く様子は無い。  
だが先程までの彼の姿が目に焼きついていて、相変わらず身動き一つ取ることはできなかった。  
 
これから自分は、一体何をされるのだろうか。  
前言の通り、この白い狂気に滅茶苦茶にされてしまうのだろうか。  
そう考えると底知れない程の恐怖と不安が、心の底から湧き出てくる。  
だがその湧き出てくる感情の中に、ほんの少しの期待が入り混じっていることに彼女自身は気づいていなかった。  
 
十数秒後、一方通行はその赤い瞳を再びゆっくりと開いた。  
そして口元を吊り上げ、番外個体の心を抉るような笑みを浮かべると  
「待たせたなァ、演算完了だ。 約束どおり天国までフッ飛ばしてやンよ」  
白い少年はそう言いながら、手にほんの少し力を込める。  
 
刹那、番外個体の身体がまるで雷鳴に打たれたように跳ね上がった。  
 
番外個体は、自分に何が起きたのか全く理解できなかった。  
一方通行が何かをしたかと思うとそれが何なのかを理解する間も無く、一瞬で頭の中が真っ白になっていた。  
まるで脳の中心に、強烈な電撃を放たれたような感覚。  
身体がいうことを利かずに、ビクンビクンと独りでに跳ねる。  
 
「はひ、ひぃ…… あぁは、は」  
気が付けば、喉の奥から情け無い声が漏れていた。  
自分の口元からだらしなく涎が垂れ、舌がだらんと口から出ているのがわかった。  
身体が燃えるように熱く、頭がどうにかなりそうだった。  
「ら、らにしたのかな……? みしゃかのからら、らんかおかひいんらけろ……」  
呂律が回らず、まともな言葉さえ口に出来ない。  
視界がぐるんぐるんを回って、窓から入ってくる光がチカチカと瞬いているような錯覚に囚われる。  
「おかひい、みしゃか、あたまおかひくなっれる…… あなた、みしゃかにらにしらの……?」  
一方通行の手が擦れるたびに、頭に強烈な刺激が走る。  
こんな感覚は知らない、今まで一度も体験したことが無い。  
 
「別に大したことはしてねェ。 ただ少し能力は使ったがなァ」  
「のう、りょく……?」  
一方通行の言葉を聞いた番外個体は、この感覚の原因が何なのかを、沸騰寸前の頭で考えてみる。  
彼の能力はベクトル操作。 力の向きを変え、攻撃を『反射』させるのが主な使い方。  
他にも血液の流れを逆流させて相手を殺害したり、生体電流を操作して脳そのものを書き換えることもできる。  
……生体電流? 血流操作?  
 
「まさ、か、あなた、ミサカの身体の……」  
「ご名答だ。 俺の能力でテメェの生体電流の向きを色々と変えたり、血液や神経系伝達物質の流れも操作してやって  
 それによって快楽系神経伝達物質の分泌を高めてやることで、身体が極度の性的刺激を受けてる、って錯覚させてやったンだよ。  
 こんなに簡単にできるとは思わなかったが、その様子見てるとずいぶん良さそうじゃねェか、これ」  
彼はそう言うと、再び彼女の胸に手を当てた。  
逃げようとして身体を動かすものの、力など入ろうはずも無い。  
「あがががっ! が、がが、がぁぁぁ!」  
再び、強烈な快楽が彼女の脳を揺さぶった。  
頭が一瞬でフラッシュバックし、全身が勝手にビクンビクンと飛び跳ねる。  
喉から搾り出されたのはは、声の様相を呈していないただの音の塊だった。  
一方通行は微笑を浮かべながら、もう一度手に力を込める。  
 
「あー! あ、あぁぁぁー…… あ、あ、あぁーー!!」  
能力を使用する度に、番外個体は面白いように涎を垂らして飛び跳ねる。  
その様子があまりにも面白いので、もう一度能力を使う。  
「が…… はひ、ひ…… んお、おぁぁぁ!!」  
獣のようによがり狂う番外個体がとても面白いので、もう一度。  
「ひ、ひぬ! ひんじゃう! ひ、あ、ああ、あはぁぁぁ……」  
もはや目の前の少女には、悪意など欠片も見取ることができない。  
未知の快楽に目を白黒させ、よがり狂う少女がいるだけだった。  
 
「おいおい、ンなバカみてえな声出してンじゃねえよ。 そンなイイのか?」  
「こ、こんなの、ミサカ知らない…… すごい、すごいよそれ……」  
番外個体にはもはやロクに理性が働いていないのか、思ったことが勝手に口を突いて出て来ているようだ。  
普段の彼女であれば、絶対にこんな素直な発言はしないだろう。  
悪意も理性も全てを取り払われた、ただのか弱い少女の姿がそこにあった。  
 
一方通行の心臓が高鳴る。  
目の前の少女をもっと壊してやりたいという衝動に駆られる。  
先程あれだけ好き放題やってくれたのだから、遠慮する必要は無い。  
欲望の赴くままに、目の前の少女を陵辱してしまおう。  
 
時間なら、何故かたっぷりと余っているのだから。  
 

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