「ん……ぅ…… はあ、あぁ……」  
簡素なベッドの上で、番外個体の切ないような嬌声を上げる。  
一方通行に後ろから抱きかかえられるような体勢になった彼女は、その姿勢のまま彼の愛撫を受けていた。  
 
一方通行の雪のように白い指が、番外個体の胸をぐにぐにと揉みしだく。  
指を動かす度にふにふにと面白いように形を変えるそれに、一方通行は思わず夢中になる。  
「ふぅ…… はぁ、ん……」  
下から持ち上げるように揉んでみたり、ぐりぐりと回すように弄んでみたり。  
決して大きいほうではないが、柔らかく形の良い番外個体の乳房が、力を入れるたびに自在に形を変えていく。  
つい先程、何度も味わったはずのこの感触がやけに新鮮で、そして官能的だった。  
「ん、もっと激しくしてよ…… ミサカ、ずっと焦らされてたんだからさ」  
後ろにいる一方通行のほうを振り返り、熱っぽい瞳で番外個体は彼を見上げた。  
その誘うような表情と台詞に、思わず一方通行の心臓がドクン、と高鳴る。  
 
指を先端へ伸ばし、既に硬くなった先端部分を優しく擦りあげる。  
「は、ぁぁ、だめ、それ……」  
人差し指の先で、擽るように転がしてやると、番外個体の声が一際甘くなった。  
その反応があまりにも可愛らしくて、一方通行は指先で何度もこちょこちょと、彼女の桜色の乳首を弄ぶ。  
「ぅん…… ぅぅ」  
その可愛らしい先端を爪先で優しく引っ掻いてやると、番外個体は一方通行の肩にくにゃあ、と甘えるように頭を乗せてきた。  
 
一瞬、二人の視線が交差する。  
一方通行の瞳に映った彼女の表情は、彼女のものとは思えないほど力の抜けた、安らかなものだった。  
瞳は快楽にとろんと蕩けて、口元は微笑を浮かべているかのように緩んでいる。  
息を荒げてこちらを見つめているその顔は、彼女のものとはまるで思えない程安らかで、淫らだった。  
対して、番外個体の瞳に映った少年の顔も、またいつもとは違ったものだった。  
歳相応に顔を赤く染め、若干緊張しているような、戸惑っているようなその表情。  
 
なんだ。 いつもは腹が立つくらいに憎たらしいが、こうして見てみると意外と可愛らしい顔をしているものだ、と。  
二人は顔を見合わせ、ほぼ同時にそう思った。  
 
番外個体の柔らかい首筋に、そっと左手の指を這わせる。  
「ん、ふ、んぅ……」  
指先で静かに、優しく撫ぜまわしてやると、番外個体はくすぐったいような、それでいて気持ちよさそうな声を上げた。  
今度は、喉のあたりを人差し指で刺激してみる。  
まるで、甘えてくる飼い猫をかわいがるかのように、ぐりぐり、こちょこちょと。  
「ちょっと、それ…… あなた、ミサカのこと何だと思って…… んぅ……」  
その行為に番外個体は思わず抗議の声を上げようとするも、喉のあたりから来る心地よい感覚に惑わされ、思わず口を噤んでしまう。  
直接的な性感ではないが、なぜかそれがとても気持ちよかった。  
 
ぐりぐりと、指先で彼女の喉を刺激していく。  
それだけの行為が、なぜかとても楽しかった。  
優しく首を撫ぜてやると、番外個体はくたあ、と力を抜いて、一方通行に寄りかかってくる。  
その普段とは違う彼女の表情に、思わず心臓がドキンとしてしまう。  
 
「それ、くすぐった…… は、ん……」  
今度は首の横側に、軽く口付けしてみる。  
番外個体の首筋からは、首の裏に貼られているガーゼの消毒液の臭いと、ほんのちょっとの汗の香りがした。  
優しく吸い上げながら、ふと目を開けてみると、茶色い髪に可愛らしい耳が埋もれていた。  
心なしか、ほんの少し赤くなっているようにも見えるその耳。  
それに触れたら、彼女はどんな反応をするだろうか。  
 
考えるまでもなく、好奇心が身体が動かしていた。  
「ひ、ひゃぁ!」  
番外個体の小さな耳朶を唇で挟んで、舌先でつんつんと刺激する一方通行。  
前歯で優しく甘噛みしながら、ぺろぺろと耳朶を嘗め回していく。  
「ちょ、ちょっと…… それ、それだめ、反則…… ひぅ!」  
言葉を遮るように、耳穴に息を吹きかけてやると、何とも面白い反応が帰ってきた。  
年頃の少女らしい、可愛らしい悲鳴が。  
このまま耳元で甘い愛の言葉でも囁いてやれば、もっと面白いことになるかもしれない。  
だが一方通行は、生憎ながら彼女に対してそんな言葉も、感情も持ち合わせていない。  
仕方が無いから、ただ黙って可愛がってやるだけで我慢することにする。  
胸を撫で回しながら、喉をぐりぐりと転がしてしてやり、音を立てながら耳を嘗め回してやる。  
 
番外個体の視界は、ぼんやり、ゆらりゆらりと蕩けていた。  
そして彼女の心に、未知の感覚が生まれてくる。  
それは空っぽだった心の器が、何かに満たされていくような感覚だった。  
乾いた砂地に水が染み込むように、その感覚はあっという間に心の底まで染み込んでいく。  
 
こんなものは知らない。  
今までの短い人生の中で、こんな感情は味わったことが無い。  
このおかしな満足感が何なのか、彼女には全く理解できない。  
ミサカネットワークの中の知識にだって、該当する感情データは無い。  
なぜ、一方通行の手がこんなにも心を安らかにするのか、彼女にはその理由がわからない。  
不器用に手を動かすこの少年に抱かれていると、なぜこうも心が満たされるのか、彼女には見当も付かない。  
 
何が何だかよくわからない。 よくわからないが、とにかく気持ちいい。  
気持ちいいから、もっとして欲しい。 もっと気持ちよくして欲しい。  
そう思った途端、口と手が勝手に動いていた。  
 
「もっと、もっとしてよ…… ミサカのこと、これ以上焦らさないでよ、第一位」  
首筋を愛撫していた、少年の白く小さな左手を、番外個体がぎゅっと握り締める。  
甘えた、それでいて艶を含んだ声でそう呟きながら。  
 
番外個体は、握り締めた手をそのまま下へ、下へと滑らせていく。  
彼の白い指を、先程から疼いてたまらない、桜色のクレヴァスへと誘導する。  
そこは既に、汗と愛液でぐちゃぐちゃになっていた。  
溢れた蜜がベッドのシーツを濡らし、小さな茶色の茂みは愛液で濡れ、艶かしい艶を出している。  
「早く…… ミサカのそこ、ぐちゃぐちゃに掻き回して。  
 さっきからずっと待ってたんだから。 熱くて、疼いて、もうおかしくなりそう」  
誘惑するように、懇願するように。 番外個体が熱っぽくそう囁く。  
 
番外個体に促されるままに、一方通行が指をゆっくりと突き入れる。  
「ん、はぁぁぁ…… あ、あ、ぁん……」  
ぐちゅり、と湿った媚肉が掻き回される音と共に、番外個体の嬌声が部屋に響いた。  
腰の下あたりから電流のような、強烈な刺激が伝わってくる。  
すっと待ち焦がれていたこの感覚に、番外個体は声を抑えることができなかった。  
「ふぁ、あ、あっ……! あ、あぁ、あ……」  
一方通行が中指を出し入れする度に、ぴちゃぴちゃと淫らな音が響く。  
そしてその度に、一方通行のズボンの裾をぎゅぅ、と強く握り締め、小刻みに震えながら切ない声を上げる番外個体。  
 
「も、っと…… うえ、こすって…… 奥まで、かきまわして、第一位ッ……!」  
浅いところを焦らすような、一方通行のもどかしい責めに、番外個体がたまらず懇願の声を上げた。  
その言葉に応えるように、少々躊躇いながらも一方通行が、指を更に奥に突き入れる。  
「あ、ああぁ…… そ、それいぃ…… もっと、もっとぐちゃぐちゃにして、早く……ッ!」  
まだ足りない、この全身を支配する疼きを止めるにはまだ刺激が足りない。  
狂いそうなほどの渇望が、彼女の口を勝手に動かす。  
既に彼女の口元は極限まで緩んでおり、半開きになった唇は小刻みに震え、断続的に甘い嬌声が上がるようになっていた。  
その淫らな表情に、思わずゴクリと生唾を飲み込む一方通行。  
思わず、言われるがままに膣内に挿入している中指を折り曲げ、内壁を抉るように擦ってやる。  
「ひ、あ、あぁっ! はぁ、あ、んんっ、んっ! すごっ、それ、すごい! すごいぃ!  
 もっとして! ミサカのこと、もっと滅茶苦茶にしてぇ!」  
天井を指先で擦ってやる度に、番外個体は面白いようによがり狂う。  
ぐちゃぐちゃ、くちゅくちゅという淫らな水音と共に、飛沫になった愛液がシーツを汚していく。  
脳を焼ききらんばかりの快楽がひっきりなしに押し寄せてきて、番外個体の意識を上へ上へと押し上げていく。  
目の前がチカチカして、心臓がドクンドクンと大きな音を立てているのが自分でもわかった。  
 
一方通行は指を動かしながら、番外個体の姿をじっと見下ろしていた。  
暖かい膣内の肉を掻き回すと、番外個体は半開きになった口から舌を覗かせながら、切ない声で求めてくる。  
 
もっと、この少女が淫れる様を見ていたい。 思う存分、よがり狂わせたい。  
熱に支配され、うまく回らなくなっていた一方通行の頭の中は、その気持ちに支配されていた。  
 
指を、もう一本増やしてみる。  
中指に添えるようにして、人差し指をゆっくりとクレヴァスに沈めていく。  
ゆっくり、ゆっくりと。 焦らすように、焦がれるように。  
「――――――――――――ッ!!」  
奥の奥まで指を沈めていくと、番外個体は声にならないような、弱弱しい吐息を漏らした。  
このまま膣内を指先で蹂躙してやれば、恐らく彼女は簡単に達するだろう。  
だが、快楽のあまりに、自分のズボンの裾を慎ましく握り締めてくる番外個体を見ていると、もう少し意地悪をしたやりたくなってくる。  
 
「ふぁ、ふ…… あん、んっ…… やめ、そんな、ゆっくり……」  
指をゆっくりと引き抜きながら、膣内を指先で優しく擦っていく。  
わざと緩慢に、まるで硝子細工でも扱うかのように、力をこめずに番外個体の中を擽る。  
「は、ん…… ぁ、あん…… もっと、もっと、ちゃんとしてよ第一位ぃ……  
 早くイかせて…… ずっと待たされて、おかしくなりそうなんだから…… ん、ふぅ、んっ…… あ……」  
彼女の要求を無視し、指を出し入れしながら、膣内のいろいろな場所を刺激してみる。  
擦ってやる場所によって、番外個体の声の調子が変化していくのもまた面白い。  
まるで楽器を演奏しているような気分にさえなってくる。  
意地悪く焦らしてやりながら、番外個体の反応を楽しんでいたその時だった。  
 
「ひゃ、ひ―――――――――――― ッ!!」  
一方通行の指先が、番外個体の膣壁の少し奥の、上側の天井に触れた瞬間。  
彼女の口から、今までとは明らかに調子が違う、肺の奥から搾り出したような嬌声が漏れた。  
その愉快な反応を確かめるように、もう一度擦ってみる。  
「ぁ―――――ッッ!! そ、それ、そこ、そこは、だめ…… ミサカ、また狂っちゃう…… おかしくなる……」  
だらしなく開いた口元から涎を僅かに垂らしながら、番外個体は息も絶え絶えにそう呟く。  
だがそんなものは、一方通行の劣情を煽る材料にしかならない。  
弱点を自分からアピールするような、自殺行為そのものだ。  
 
遠慮無しに、膣内を二本の指で掻き回してやる。  
「――――――ッ!! ひ、ぃッ! すご、すごぃ……ッ!」  
先程見つけた、少女の一番敏感な部分を指先で擦りながら、音を立てて指を動かす。  
「や、やぁ! だめ、だめだめッ! ミサ、ミサカ、おかしくなる! は、ああ、あ……っ!!」  
指を出し入れしながら責め立ててやると、番外個体は縋り付くように身を預けてきた。  
「だめ」とは言いつつも、その恍惚とした表情や甘ったるい声の様子からは、否定の意思は全く見られない。  
だから、止まってやる必要など全く無い。  
「ミサカ、もう、あたま、狂って、ひ、いいいいっ!」  
ぐちゅぐちゅと音を立てながら、思う存分蜜壷を嬲ってやると、番外個体は身体を痙攣させながら、身体を跳ねさせる。  
彼女に絶頂が近いであろうことは、火を見るよりも明らかだ。  
 
追い討ちをかけるように、奥の奥まで指を突っ込んで、あたりを蹂躙する。  
甘い吐息を漏らしながらビクンビクンと跳ね回る番外個体を、優しく押さえつけながら愛撫を続ける。  
番外個体を逃がさないように、左手で腰を抱き止めながら、右手で絶頂へと導いてやる。  
ぐちゃぐちゃ、くちゅくちゅと執拗に膣内の弱点を擦って、嬲って、掻き回す。  
「ふぁ、あ、ああ、あああッ!!」  
番外個体の口からは、もうまともな言葉など出てこない。  
口をパクパクと動かしながら、声にならない声をあげるのが精一杯だ。  
「ッ……!  だめ、も、い、く…………ッ!」  
どうにかなってしまいそうな快楽に、番外個体は思わず左手を後ろに回し、彼の華奢な身体にぎゅうとしがみつく。  
番外個体はもう、何も考えられない。  
認識できるのは窓から入ってくる僅かな光と、一方通行の身体の感触だけ。  
そして、一方通行の指が一際強く奥を突き上げた瞬間、  
「――――――――――――――――――――――――ッ!!」  
番外個体は身体を大きく痙攣させ、甘い嬌声を上げながら絶頂した。  
 
番外個体はどさり、とベッドの上に力なく倒れこむ。  
絶頂の余韻か、手足に力が入らない。  
身体を支配していたのは、痺れるような快楽の残り香と、言い様の無い満足感。  
 
だが、まだ足りない。 こんなものでは、全然足りないのだ。  
 
番外個体の頭の中は、漆黒で塗りつぶされていた。  
彼女は生まれてきてからずっと、禄でもないものばかり目にしてきた。  
そのように『作られた』のだし、それ以外の使い道など考えられてもいなかったから。  
ネットワークの中からマイナス感情を優先して拾うように作られたため、プラスの感情を感じたことなどほとんど無い。  
 
だからこそ、彼女にはこの『満たされる』という感覚が、余計新鮮に感じる。  
だからこそ、彼女はこの不思議なプラスの感情を渇望している。  
絶食していた人間がそれを解かれた瞬間、空腹感を満たすために暴食をするかのように、この充足感を貪ろうとしているのだろう。  
 
「もっと、もっと……」  
気が付けば、そんな言葉を口走っていた。  
まどろんだ、恍惚とした表情を浮かべながら、番外個体は一方通行を誘惑する。  
「もっとしてよ、第一位…… まだ、まだ全然足りないよ」  
自分の口が、まるで自分のものでないかのように、独りでに動き出す。  
普段ならば絶対に出ないような、うっとりとした声で懇願する。  
「ミサカのこと、もっと気持ちよくして…… 早く」  
そして一方通行の身体に手を伸ばし、上目遣いで見上げてそう囁いた。  
 
「気持ち悪ィな…… 急に甘えてきやがって」  
野暮な台詞だとは思いつつも、一方通行は思ったまま、ばつが悪そうにそう呟いてしまった。  
彼なりの照れ隠しのつもりなのか、ほんの少し番外個体からは目を逸らしたままである。  
ベッドの上の番外個体は、先程までの悪意に塗れた少女の姿とは、全く似つかないものだった。  
いったい何が彼女をここまで豹変させたのか。 不思議に思っていた矢先、頭の中でも見透かされたかのように、不意に答えが返ってきた。  
 、、、、、、、  
「あなたのせいだ」  
少女はポツリと、ただそれだけ呟く。  
 
全て、あなたのせいだ。  
自分が今、狂おしいほどに何かを求めているのもあなたのせい。  
悪意に塗れた自分が、こんな無様な姿になっているのもあなたのせい。  
死ぬはずだったはずの自分が今、生きてここにいるのもあなたのせい。  
全部、何から何まで、あの時あなたが手を差し伸べたせいだ。  
 
番外個体はこっそり、頭の中でそう呟いた。  
声には出さなかった。 こんなことを言うのは、いくら何でも柄では無い。  
 
「あなたのせいだ。 だから、責任取ってよ」  
今までに無い、真っ直ぐな瞳で一方通行をじっと見据える番外個体。  
「取り方くらいはわかるよね? さっきまで散々やってたわけだし。  
 今までみたいに、童貞丸出しのヘタクソなやり方でもいいからさ。 まあ、後で文句くらいは言わせてもらうけど」  
少女の瞳と赤い瞳と交差し、部屋が沈黙に包まれる。  
そして数秒ほど経った時、番外個体はほんの少しの恥じらいと共に口を開いた。  
 
「あなたの童貞、ミサカが貰ってあげる。   
 だから、早くこの疼きをどうにかして。 抱いてよ、第一位」  
 
本当に彼女らしくない、自分でも腹を抱えて笑ってしまうような、悪戯気味で可愛らしい笑みを浮かべながら  
番外個体は、ゆっくりと瞼を閉じ、力を抜いた。  
 
一方通行の心臓は、既に破裂しそうなほど高鳴っていた。  
さっきまではあんな邪悪な顔をしていたというのに、あんなに自分を憎んでいたというのに。  
番外個体の安らいだような表情が、やけに可愛らしく、そして艶っぽく見えた。  
 
そしてこの顔を見ていると、やはり、とある少女を思い出す。  
決して傷つけてはいけない、自分の存在理由そのものと言ってもいい、あの少女を。  
そのせいか、番外個体の表情にやけに背徳的なものを感じてしまい、一方通行の興奮が思い切り煽られる。  
背筋のあたりを、何かがゾクゾクと這い回っている感じが止まらなくなる。  
 
乾いた空気の中に、一方通行がベルトを外す音が響いた。  
ガチャガチャという無機質な金属音が、番外個体にはやけに淫靡に聞こえた。  
早くしてほしい。 もう待ちきれない。  
そんなことで頭がいっぱいになっていると、不意に両足を脚が持ち上げられた。  
既に蜜で溢れかえった彼女の秘裂に、熱いモノが当てがわれる。  
互いの粘膜が触れ合う感触に、二人はほぼ同時にゴクリ、唾を飲み込んだ。  
そして、一瞬の間の後……  
 
「〜〜〜〜〜〜ッッ!」  
「は、ぁ……ッ! あは、ぁ……」  
二人の切ない声が、部屋に木霊した。  
 
快楽のあまり、思い切り顔を歪ませたのは、意外にも一方通行の方だった。  
どちらかがほんの少し身体を動かすだけで、番外個体の粘膜のヒダが、一方通行の性器を刺激する。  
彼女の中は既にとろとろの蜜で溢れていて、熱い膣壁がきゅうきゅうと吸い付いてくる。  
それこそ、腰の下が溶けて無くなってしまいそうな、想像を絶するような快楽。  
それは頭の中がぐちゃぐちゃになって、そのまま戻らなくなってしまいそうな、甘美な感覚。  
 
できるだけゆっくりと、自身を番外個体の奥に沈めていく。  
少しでも気をやってしまえば暴発してしまいそうな快楽が、一方通行の脳内を駆け巡る。  
はやる気持ちを抑えながら、徐々に奥へ、奥へと自身を突き入れていく。  
 
「ぐ、うっ…… は……」  
根元まで突き入れたあたりで、思わず呻き声が出た。  
腰を動かす度に、頭の中が真っ白に染まってしまいそうだ。  
 
その様子を、番外個体はどこか艶のある、かつ人の悪い笑顔を浮かべて眺めていた。  
「ぁ、は…… その様子だと、やっぱり初めてだったみたいだね……っ」  
彼女はほんの僅かに息を荒げ、顔を赤く染めながら、ニヤニヤとこちらを見つめている。  
この少女は本当に、一方通行を困らせることが大好きらしい。  
「っ…… どうかな…… ミサカみたいな女に、後生大事に守ってきた貞操を捧げた感想は?」  
「…… 知るか、ンなもン……ッ! 動くぞ……!」  
人の悪い質問をしてくる番外個体をあえて無視し、一方通行が再び動き出した。  
この人の神経を逆撫でする、性質の悪い笑顔を、とっとと消し飛ばしてやりたかったから。  
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
 
 
「あ、ふ…… ぁ、あん、っ…… あは、んっ……」  
肉がぶつかる音や、淫らな水音に混じって、番外個体の嬌声が断続的に部屋に響く。  
甲高く、甘い、男を狂わせるような淫らな声だ。  
「ひ、ゃ…… だめ、そこ、そこ……」  
一方通行が突き上げるたびに口元が緩み、切なそうな声で番外個体が鳴く。  
彼女は先程から、敏感な部分を執拗に突き上げられ、息も絶え絶えになっていた。  
頭の中は既に快楽でぐちゃぐちゃになっているし、身体は頭以上に言うことを聞いてくれない。  
 
一方通行も、正直な話、快感で頭がどうにかなりそうだった。  
番外個体の膣が的確に、搾り取るように締め上げてくるし、彼女の嬌声は官能に対する最高の調味料だった。  
今までに味わったことの無い快楽に、気を抜けばすぐに果ててしまいそうな快感に、頭がクラクラとしてくる。  
 
正面から番外個体を突き上げていた一方通行だが、ふとあることを思いつき、体勢を入れ替える。  
一度性器を番外個体の膣内から引き抜いて、彼女の身体を掴み、ぐるりと逆向きに回転させる。  
快楽に蕩けた番外個体は、特に何の抵抗もせずに、彼に後ろ向きで腰を突き出す形になった。  
 
そして後背位のまま、彼女の秘裂に自身を当て、一気に奥まで貫いた。  
「あ、ああっ! これ、すご…… おく、ミサカのおくまで、とどいてる……」  
こつん、と、一方通行のペニスの先端部分が、子宮口をノックすると、番外個体は一際大きな声を上げた。  
なるほど、ここも弱いのか。 などと思いながら、一方通行は再びピストン運動を再開する。  
番外個体の腰に手をあて、弱点を執拗に、しつこすぎる程に責め立てる。  
甘い声を上げて淫れる番外個体の姿は、本当に官能的で、何より可愛らしかった。  
 
番外個体は、もう何が何だかわからなかった。  
一方通行に奥まで突き上げられるたびに、元々ぐちゃぐちゃになっていた思考が、更にぐちゃぐちゃになる。  
耳に入ってくるのは、自分のものとは思えない、だらしなく甘ったるい嬌声だけ。  
肌に感じるのは、服越しに伝わってくる、一方通行の身体の華奢な感触。  
「ぁ、あ……っ! ひゃ、みさか、こんな、こんな、ひ……」  
そんな意味のわからない言葉を、必死で紡ごうとしていると  
 
「ふ、ひゅ…… ぃぃ!」  
不意に、一方通行に耳を甘噛みされた。  
どうやら先程の前戯の際に、番外個体の弱点は知り尽くされてしまっていたらしい。  
耳朶に優しく息を吹きかけられるだけで、彼女の意識は一瞬で真っ白にされた。  
「おいおい……っ! どンだけ感じてやがンだ、このインラン女ッ……!」  
耳元で一方通行が呟いたその言葉が、番外個体の羞恥と被虐願望を煽る。  
背筋が無性にゾクゾクして、頭がぼぅっとして、彼女は何も答えることができなかった。  
 
「ん、んむぅっ!」  
今度は、右手で唇をなぞられた。  
白く細い指が、寒さで少し荒れた唇を、内側まで蹂躙する。  
「う、んぅぅ…… ん……む ぅぅぅ!」  
四方八方から責め立てられ、いよいよもって、本当に訳がわからない。  
一方通行の指は口内にまで侵入し、柔らかい舌を捏ね回している。  
耳からはぴちゃぴちゃと、耳朶を嘗め回し、甘噛みする音。  
腰から下は既に蕩けきっていて、頭がおかしくなりそうなほど気持ちよかったが、拒否感は微塵も無かった。  
自分でもなぜかはわからないが、身体だけではなく、心が満たされていくような気分。  
生まれて初めての充足感。 女としての満足感。 待ち望んでいた、プラスの感情。  
その感情に、番外個体が抗うことなどできるわけが無かった。  
 
「も、と…… もっと、して、第一位……! ミサカのこと、天国までフッ飛ばして……っ!」  
口内を指で愛撫されながら、番外個体が舌足らずにそう懇願した。  
きっと、指で舌の動きを邪魔されて、まともな言葉には聞こえなかっただろう。  
だがそれでも、一方通行をもう一押しするには充分だった。  
 
今までで一番深く、番外個体を突き上げる。  
「ッッッ!! い、ぃ……」  
子宮をノックされる衝撃に、番外個体は痙攣したように身体を震わせた。  
それと同時に、口内を嬲っていた一方通行の指が、奥歯でガリッと押しつぶされそうになる。  
その刺激を痛いと思う前に、一方通行はあることを思い出していた。  
そういえば実験の時、興味本位で妹達の指を食べてみようとしたな、と。  
もしかして、あのときのツケが今更回ってきたのかなどと思い、存分に指を齧らせてやる。  
「ん、むぅぅ! ん、ぐ、む…… んん!」  
指を押し返そうとしているのか、番外個体の柔らかい舌が指に巻きついてくる。  
まるで舌の代わりに指でディープキスをしているような感覚に、一方通行は思わず夢中になってしまっていた。  
奥歯で指をがりがりと齧られる感覚も意外と心地良いものだったし、思うように言葉を発することができない番外個体の様子も、とても官能的だった。  
 
「ふ、んん! んむ、むぅぅ!」  
番外個体の瞳はもう虚ろとしていて、どこを見ているのかさえよくわからない。  
奥歯や歯茎を指でなぞられながら、言葉にすらなっていない、切ない声をただ上げるだけ。  
上も下も、右も左もよくわからない。  
気が付けば自由になっている左手で、一方通行の左手を握っていた。  
ぎゅう、と音がするくらいに強く。 離さないように。  
 
「あ、あ……  ――――――――――――――ッ!!」  
 
目を見開いて、身体を数度大きく跳ねさせるように痙攣させながら、番外個体は絶頂に達した。  
一際高い絶叫の後、番外個体は力なくどさり、とベッドに倒れこむ。  
左手は、一方通行の手を握り締めたまま、決して離さないで。  
 
一方通行も、既に限界寸前だった。  
番外個体が達したのを確認したと同時に、我慢していた射精感が急速にこみ上げてくる。  
「ぐ、ぅっ……!」  
ぐらり、と揺らぎそうになった意識の中、やっとの思いで番外個体の膣内から性器を引き抜く。  
そしてそのまま自身の欲望をベッドのシーツに撒き散らし、番外個体と同じようにベッドに倒れこんだ。  
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
 
 
妙な肌寒さを感じて、番外個体は目を覚ました。  
全身を包むこの気だるさと、まだ身体の芯に残っている甘い痺れ。  
妙に硬い安物の毛布のゴワゴワした感触が、直接地肌を刺激してきて不快極まりない。  
枕も妙に硬い。 それこそ、中に石でも入っているんじゃないかと思うほどに。 これも不快極まりない。  
 
横を見てみると、一方通行が静かな寝息を立てて眠っていた。  
横にはバッテリー充電用の装置が置かれており、どうやら無駄遣いした分の充電は済んだようである。  
電極のスイッチに手をやり、警戒しながらではあるが、一方通行はこちらを向いて実に気持ちよさそうに眠っていた。  
よくもまあ、自分の前でこんな無防備な姿を晒すことができるものだ、と番外個体は失笑してしまった。  
一度寝た女だからと言って油断してると、いつかあっさりと寝首をかかれるぞ、と心の中で警告する。  
最も、何かしようものならすぐにでも飛び起きそうな様子ではあるが。  
 
とりあえず服でも着ておこう、と起き上がろうとすると、彼女はあることに気が付いた。  
自身の左手が、一方通行の手をずっと握り締めていたことに。  
 
そういえばあの時、何でかはわからないがそんなことをしていたなぁ、などと思い出してみる。  
それと同時に、先刻の『行為』を思い出して、番外個体は色々と複雑な気分になった。  
(あー…… 無いね。 無い。 ミサカが言うのもあれだけど、無いね)  
目の前の少年にいいように責め立てられたこととか、だらしない声を上げながら散々喘ぎまくっていたことを思い出して、思わず否定の言葉を思い浮かべる。  
そもそも、本来ならばこんな行為に行き着いてしまうこと自体が想定の範囲外だ。  
できることなら、悪戯半分で一方通行をからかっていた自分を殺しに、過去に戻りたいくらいだとまで思っている。  
全く持って腹立たしい。 一方通行が無駄に上手くて、自分がそれこそ淫されきってしまったことも含めて腹立たしい。  
もしかして学園都市最強の能力者は、そっちの方でも最強なのか、天然の女殺しなのか。  
何と言うチート設定だろう、あまりにも卑怯だ。 などと心の中で悪態をつく。  
 
だが、左手から伝わってくる彼の手の感触は、何故か妙に心地よかった。  
本当は女の子なんじゃないか、と思えるほど華奢で細い指や、ちょっと乾いてカサカサになった手の甲。  
ずっと握り締めていたせいなのか、汗がにじんでいる柔らかい手の平。  
この少年と寝てしまったこと自体は腹立たしかったが、これは悪くない。  
この意味のわからない、何だかふわふわと宙を漂っているような不思議な幸福感は悪くないな、と彼女は心の中で思っていた。  
何だかんだ言って、行為そのものも気持ちよかったし。 今回の件をネタにして、散々からかってやることもできるだろうし。  
そう思えば、意外と悪い気分はしなかった。  
 
そうだ、生きて帰ったらもう1回だ。  
今度は自分が主導権を握って、散々に弄んでやろう。  
 
ふと思い立ったが、いったいどれくらいの時間眠っていたのだろうか。  
日はまだ昇っていることから、それほどの時間は経っていないだろうことはわかる。  
恐らく20〜30分程度だろうが、一応ミサカネットワークで現在の時間を……  
待てよ? ミサカネットワーク? そういえば……  
 
   、  、 、  、 、  、 、  、 、  
  ミ サ カ ネ ッ ト ワ ー ク  ?  
 
 
ぎゃあ、という身も蓋も無い悲鳴を上げながら、思わず頭を抱える。  
気づきたくないことに気づいてしまった番外個体の嫌な悲鳴が、無駄に大きく、部屋の中に響き渡った。  
 
「ンだこらァ、敵か!?」  
一方通行はそう言いながら電極のスイッチを切り替え、ガバッと飛び起きた。  
辺りを見回してみるものの、部屋の景色は数十分前と何の変わりも無い。  
ワナワナと震えながら、乾いた笑いをしている番外固体がいるだけだ。  
「どォした! 何があった!」  
これから告げられる報告など露知らず、極めて真剣な表情で、一方通行がそう尋ねかける。  
番外個体はそれこそ、この世の終わりでも見てきたかのような絶望の表情をしながら、絶望的事実を彼に告げた。  
 
 
「ミサカネットワークのこと忘れてた。  
 してる間中ずっと、色々と世界中のミサカに生中継ライブ放送されてたみたい」  
 
 
その言葉を聞いて、学園都市最強の能力者は今度こそ完全に骨の髄まで打ちのめされ、ベッドに力無く崩れ落ちた。  
意識的にせよ無意識の上でにせよ、この女は本当に自分を困らせることしか考えていない。 そんなことを思いながら。  
 
 
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その後、別の病室で打ち止めが「う〜ん、その女は誰なの、ってミサカはミサカは今入ってきた衝撃映像に対して嫉妬を隠せなくなってみたり……」などとうなされていたとか  
外の喧騒が聞こえるくらい防音性の薄い壁を通して、部屋の中の様子が浜面たちに丸聞こえになってたとか  
そのせいか、諸事情で遅れて起動した『ベツレヘムの星』事件の際に一方通行が浜面たちの部屋に入ったとき、四方八方から白い目でじろじろと見られたり  
そこに番外個体が空気を読まず「自分は無理矢理襲われた」だの「協力を見返りに身体を要求された」だの、あること無いことをその場にいた皆に吹き込んで  
彼を見る目が、『白い目』から『汚物を見るような目』にレベルアップして、一方通行の精神がまたもや打ちのめされたとか  
お前ら緊急事態なのに何をやってるんだ、的なイベントが多数あったようであるが、一方通行の心情を考え、あえて叙述はしないことにする。  
 

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