浜面仕上がアジトでのんびりしていると神妙な面持ちの絹旗最愛とフレンダがやって来た。
「浜面、超ちょっと話が……」
「ん? どうしたお前ら、何か仕事……」
「いやいーから浜面には顔を貸して欲しいわけよ」
「は? 何だよ一体……」
そして訳も分からず連れてこられた場所には、不機嫌さ満載の麦野沈理と困惑顔の滝壺理后が待っていた。
「はーまづらぁ、これ一体どうオトシマエ付けるつもりだ?」
そう言って目の前に漫画雑誌の様な――それにしては薄い――モノが数冊投げられる。
「は? いや何いきなりキレてんだ麦野、おりゃ思い当たる節がひとっつも無いんだが?」
「大丈夫。私はそんなはまづらでも受け入れ……」
そう言って訳が分からないと言う顔をする浜面の手を握った滝壺だったが、
「しゃしゃんじゃないよ滝壺。今私が話してるんだから引っ込んでな」
「きゃっ!?」
滝壺は麦野に突き飛ばされて絹旗とフレンダに受け止められる。
「おい麦野、乱暴は止せ!?」
「うるせえんだよこの腐れ無能力者が!! 無能だと思って下出に出てりゃあ仲間だと勘違いして調子に乗りやがってぇ……」
「!?」
嗜めようとした浜面は麦野の何時に無い剣幕にギョッする。更にそこへ麦野の回りに淡い輝きが集まる。
「ちょ、麦野さん?」
「うわ、麦野がヤバイ訳よ!?」
「はーまづらあああああああああああああああああああ!!」
麦野がそう絶叫した瞬間、光は収束され光線の様に放たれる。
それは浜面の足元をゴバッと言う破壊音で吹き飛ばす。
「うおっ、おわあッ!?」
「ッ!?」
「ひぇぇッ!!」
浜面のみならず絹旗、フレンダも驚く中、怒りが蜃気楼となって立ち上りそうな程の形相の麦野は、
「テメエは今から私たちにノンケだって証明してみせな」
「はあ?」
「私たちとセックスすんだよ」
「……何だって?」
またも意味の解らない、しかも聞き違いかと思う様な内容に浜面は麦野に聞き返した。
しかし麦野にはそんな浜面の態度が余計癪に障る。
「テメエは頭だけじゃ無くて耳も悪いのか……ああん?」
片眉をギッと持ち上げた麦野は、とぼけた顔をした浜面の耳を引っ張った。
「い゛だだだだだだだああああああああああ、千切れる千切れる千切れるッ!!」
浜面が痛みに振るった手が偶然麦野の手を打ち払った。
「!」
その事に凍り付く麦野、「畜生何のつもりだよ……」
とそんな事に気付かず浜面は自分の耳を心配していた。
とその時、
「私を拒絶したな……」
絶望が声を出すとこうなるかも……そう思うような麦野の声に、浜面を始め全員が凍り付いた。
「あ、ああ……」
(浜面の超マヌケ)
(結局こうなるしか無かった訳よ、バイバイ浜面)
(大丈夫、はまづらは私が――)
三者三様の思いの中、怒りを超えて能面と化した麦野は、
「うわああああああああああああああああああああああああああん!!」
泣きながら走っていってしまった。
「あ、あれ?」
(この超展開)
(流石に想像してなかったって訳よ)
(むぎの)
「馬鹿俺にホモ疑惑なんかあってたまるか!!」
「ほ、本当なの、はーまづら?」
「ああマジだよマジ。大真面目だぜ」
力強く頷きながらも浜面は、
(俺と駒場さんとか、半蔵だとか何の冗談だ?)
「ほら、帰りにシャケ弁でも買って帰ろうぜ」
「うん」
この後アイテムメンバー全員に言い訳をする羽目になる事を浜面は知らない。