何故自分はこんな映像を食い入るように見つめているのか――。
麦野沈利はそんな事を考えながらも盗撮単眼鏡(スパイアイ)が送って来る映像――浜面仕上と滝壺理后の情事――から目が離せないでいた。
今しも画面の中では浜面が滝壺の股間に顔を埋める所だ。
暗い筈の室内も暗視カメラにかかれば日中のそれと変わらない。自分の前では一度も見せた事の無い蕩けた様な表情で、滝壺の歳相応の茂りに覆われた淫唇に口付をする。
その余りの卑猥さにごくりと生唾を飲み込んだ麦野は、
「うわぁ、きっついわねぇ……」
押し殺した声で嫌悪に似た言葉を吐くが、視線は画面上の行為を見逃すまいと片時も外れる事は無い。
そもそもこの映像だって、麦野が浜面の部屋に送り込んだ盗撮単眼鏡(スパイアイ)からのものなのだ。
浜面と滝壺の仲が本格的に発展したらしいと聞いたのだ何時、誰からだったのだろう……?
その日から麦野は浜面の立ち寄りそうな場所のいくつかにこの様な装置を配していたのだ。
「さてもうちょっとだけはーまづらのお手並み拝見☆」
麦野はトラックボールを操作して角度を変えてより行為が見やすい様にして行く。
すると、丁度浜面が舌を伸ばして秘所を下から上へとなぞり上げる所だった。
「ぺろぺろぺろぺろってか? 笑わせんじゃないわよ、はーまづらぁ。まるで犬っコロみたい……、ギャハハハハハハハハ!」
デスクをバンバン叩いて1人で馬鹿笑いする麦野だった。
所が浜面の舌の動きが徐々に、そして大胆になって行くにつれ、その笑いも徐々に収まって行き、
「いいなぁ……」
ぼそっと呟いてからハッと我に帰る。
「ば、馬鹿言わないでよ!? は、ははは……何で私がそんな……羨ましい……?」
気が付けば滝壺は逆立ちの様な状態――いわゆるまんぐり返しの格好にされて更に激しい責めに嫌々をするかの様に頭を振っている状態。そして、
「すごい、滝壺のアソコがあんなになって……」
熟れた果実が独りでに割れる様にぱっくりと中を覗かせた秘裂。そのピンクの肉は内側から僅かに盛り上がり、唾液と愛液でぬらぬらと妖しい光を放っている。
その生々しさに目が釘付けになりながら、麦野の手は別の意志を持った様に自らの股間に伸びて行く。
スカートの裾をまくり、短パンの隙間から忍び込ませた指で、ストッキングの上から秘所の辺りをなぞる。
(濡れてる)
確認する様にもう一度。更にもう一度。
「んぅ」
やがて指の動きは早く、そしてリズミカルになり、麦野の体に確実に快感をインプットして行く。
「ん、ん、ん、ん、ん、ん、ん」
快感を追う様に小さく息を吐きながら、それでも画面からは目を放さない。
その画面ではそろそろ限界なのか滝壺が徐々に四肢を折り曲げて体を小さく折りたたみ始めた。
「ん、滝壺ぉ、イクの? いいな、あ、私も、ん、私も、イキた、い、ん、ん」
その言葉通りに指の動きを更に激しくさせる麦野。しかし、画面の中の滝壺は、
「あ、待って滝壺!? わ、私もすぐ、直ぐにイクから待っ――」
その言葉が届く訳も無く、滝壺は体を大きく痙攣させるとぐったりと体を弛緩させた。
「や、やだ、私だけ置いてけぼりなんて……くっそ、はーまづらの野郎後で……」
そんな八つ当たりもしつつ麦野はある事に気付いていた。
「やっぱ、足り無い。刺激よ。刺激が足りない……。やっぱり……」
そう言うと麦野はすっくと椅子から立ち上がり、何をするかと思えば短パン、ストッキング、そして下着を一気にずるっと自ら引き下ろして、ポーンと部屋の隅に投げ飛ばしてしまった。
「は、どうだってのよ! これでアンタたちとの差は無くなったわね!」
そうディスプレイを指さして勝ち誇った麦野だったが、向こうはそんな事など知らずに最終局面に突入しようとしていた。
即ち、血管を浮かべてパンパンに膨らんだ浜面自身が、こちらもぱっくりと口を開いた滝壺の肉穴に押し付けられる。
「は、ま、づ、ら」
その先の事を想像して凍りついた麦野の目の前で、それは――、
「あれ? 入れないの?」
妙な間が凍りついた麦野の呪縛を解く。
「何してんのよアンタたちは!? 大体、アンタは何滝壺またしてんのよ!? ぐずぐずしないでズブっとやりなさ――」
この時ばかりはその叱咤が通じたのか、唐突に浜面自身が滝壺の中に着えた。
それを見た瞬間、麦野の腰がすとんと落ちた。
「は、あ」
幸い椅子の上だったので大事は無いが、ピクンピクンと体を痙攣させているのは何故なのか?
と、次の瞬間麦野の体は前のめりにデスクの上にどっと倒れ込む。そのままピクピクと体を痙攣させながら――麦野は滝壺と自分を重ね合わせて、そしてイッたのだった。
そんな麦野を置いて画面の中では浜面が滝壺を激しく突き上げている。
そんな姿を見ながらこちらもいつの間にか添えた指で自分を擦りながらイキっぱなしの麦野は、
「い、いな、むぎ、い、あ、わ、わたし、は、はま、づ、ら、あ、あ゛、あ゛、あ゛、あ゛」
結局彼女は2人の最後を見届ける前に、自分の幻想の中に深く深く沈んで行くのだった。
「おい、はーまづら。ちょっと面かしなよ」
「おう、何の様だ麦のおおおおおおおおおおおおおッ!?」
浜面は麦野に声を掛けられたと思ったら、ソファーに押し倒された上に麦野に馬乗りにされていた。
浜面には一瞬何が起こったのか判らなかったが、
「は、はまづらっ!」
顔を真っ赤にした麦野の姿にただならぬモノを感じて思わず保身に走ってしまう。
「お、落ち付け麦野!? 何か気に入らない事が有ったんなら直す様に努力するから先に訳を話せ!」
すると麦野は、「い、いきなりそう来る訳ね」と意味不明な事を呟いた後、
「……して」
「は?」
「あ、あんたに、ク、クン、ニ……」
それっきり顔を両手で覆い隠して嫌々をする様に体をくねくねさせる麦野。
その姿になんか可愛いな麦野と思いつつも、
「ク、クニ……?」
すると麦野の動きがピタッと止んで、両手の下から出て来たのは顔を真っ赤にして涙目、唇を噛締めわなわなと震える姿。
「何がクニだよ! クンニしろオラァァ!! つか、2回も言わせたテメエはオシオキだはああああああああああああああああまあああづうううううううらあああああああああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」