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学校の帰り道。
奇跡としか言い様のない偶然でスーパーのタイムサービスに遭遇し、買い物袋を抱えな
がら上機嫌で学生寮のドアを開けると、なぜか猛烈に不機嫌そうな表情のインデックスが
ムスー、と部屋の奥に座り込んでおり、
その前には、さらにどういうワケか、羽をむしられた鳥のような露出度の高い修道服を
着たアニェーゼ・サンクティスがこっちを向いて立っていた。
「や、お帰んなさい上条当麻さン! お元気そうでなによりです」
「……なんでお前がここにいるんだ?」
最近では、上条自身何が起きても驚かなくなりつつある。アニェーゼへの質問も妙に冷
静に口から出ていた。
「ガードの堅いところに潜入するのはお手のモンなんですがね、さすがに学園都市ともな
ると苦労しましたよ。実際のところは泳がされてンのかもしれませんけど――、自分たち
の事件は学園都市でもどうせ把握されてると見た方が正解でしょうし、こっちも何か厄介
を起こそうとここに来たワケじゃないですから、ちょっとの間ここにいるのは見逃しても
らえるでしょうよ」
そう言いながら赤毛の少女は玄関の上条のところまで歩み寄ると、荷物を上条の手から
取ってキッチンへと置く。
「あ、悪ぃな…って、そうじゃなくって! 質問の答えになってないだろうが!」
アニェーゼの自然な動きに身体が無意識に反応していた上条だが、さすがに突っ込み返
す位の余裕は残っている。
上条の追い打ちに振り向いた少女は、一瞬だけ目を合わせると頬を赤く染めながら俯き、
少年の制服の端をちょんと掴んで、
「女の口から言わせるなんて…結構意地悪なんですね……あの、その、命の恩人に…お礼
がしたいって…もっと言わないとだめですかね?」
ぴったりと寄り添いながら恥ずかしそうにもぞもぞと呟くアニェーゼの姿に、さすがに
上条の余裕も吹き飛ぶ。自分も赤面していることに気が付き、慌ててアニェーゼから視線
を逸らすと、部屋の奥にいる居候シスターが漆黒のオーラを背負いながらこちらを睨んで
いるのが見えた。というか見えてしまった。
「とーうーまー…」
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