※軽い鬱展開に付き閲覧注意
上条当麻は両手に巨大なビニール袋を下げてホクホク顔で歩いていた。
「いやぁー! まさかスーパーへの近道と思って入りこんだ路地裏で不良(バカ)どもに絡まれて逃げ回ってるうちに道に迷って、出た所の見知らぬスーパーが店内在庫一掃セールなんかやっているなんて!?」
普段不幸にばかり見舞われている上条にとって、それは信じられない出来事だった。
思わず月の初めなのに財布が空っぽになってしまった事も、帰りの足が確保出来ずに重い荷物を下げて歩く羽目になった事も気にならない。それ位今の上条の気分はハイだった。
「いや何ですかこのラッキーデー!? 今カミジョーさんは幸せすぎてこの先の振り戻しを考えると、不幸だああああああああああああああああああああ♪ ぬぁんてね! わはははははははははははは!!」
突然大声を出したかと思えば馬鹿笑いする上条の姿に、道行く人たちは視線を逸らしてそそくさと立ち去って行く。
と、そんな上条の背後にすっと寄り添う様に影が現れた。
「よし、今晩は何にしようかな? 肉じゃが? ハンバーグ? オムライス? それとも中華でいってみるか!?」
重い袋を持っている筈なのにそんな事も苦にならないのか、器用に指を折りながらそんな事を呟く――先ほどの影が何か棒の様なものを振り上げたとも知らずに。
「いや、カミジョーさんのクッキングスキルをアップさせる為にもここはありきたりの料理では満足できませ――」
ぐおっと、上条がビニール袋を片手に拳を握り締めた瞬間、ゴスッと鈍い音がして上条はその場に崩れ落ちた。
そして上条が立っていたその場所に居たのは、
「ア、アンタが何時までも私に振り向かないのがいけないんだから……そ、そう! アンタが全部悪いんだからね!」
御坂美琴。
彼女は金属バットを振り上げたままそうぶつぶつと独り言を呟いた後、手にした得物を放り出した。
そして気を失った上条をその姿に似合わない力で抱きかかえると、その場を立ち去ってしまう。
後に残された買い物袋の山と、金属バットだけが虚しくその場に取り残されていた。