※こっちの方が酷いかも……
休日の午後。
珍しく寮の部屋で1人、教科書とノート相手に格闘していた上条当麻の目の前で、携帯電話が電子音と共にメール着信を知らせて来た。
初めてものの10分足らずで、既に勉強に飽きていた上条は、すぐさまそれに飛びついた。
サブモニターを観るとそこには御坂の文字が。
「何だあいつ? メールだなんて珍しい」
せっかちなのか電話が掛かって来る事が殆んどの御坂美琴からのメールに、上条は一瞬いぶかしむ様な表情を浮かべたが、
「とにかく見てみりゃ判るだろ」
と言う事で携帯電話を開いて、すぐさま美琴のメールを開いてみた。
だが、
「何だこれ?」
そこには題名も無ければ、本文に『MIKOTO』とあるだけで他には何も無い。代わりに動画の添付データが1つ付いているだけ。
「おいおい。せめて題名か本文のどっちかに何か書くのが礼儀だろ? ったく……お嬢様ってのはどっかそう言う所が抜けてんのかねぇ……」
ふっと溜息を吐いた上条は、それでも唯一何かあるかもしれない添付データを開いてみる事にした。
「うお!? 何だよこの重さ……これは俺の携帯が古いってのを実感させる為の嫌がらせか!? 不幸だ……」
そんな事を呟きながら待つ事数分。軽快な電子音と共に画面に動画が再生され始める。
それは少し薄暗くて、ベッドの様なものと、その奥に机の様なものが見えた。そして上条はこの部屋を何と無く憶えていた。
「これ……常盤台の……ビリビリの部屋じゃ……」
と、画面がぐらぐらと揺れながら少しベッドにズームしてその動きを止めると、カメラを回り込むようにしてベッドにボスンと音を立てて誰かが飛び乗った。
暗い室内に浮かび上がる様な白い肌。華奢で、そして長い手足が幼い感じと、将来この少女が大きく成長するであろう事を感じさせた。
それは、まだ膨らみかけの胸にも同じように期待させるものが……。
「み、さか……」
辛うじてそう声を絞り出した上条の視線の先――小さな画面の中で美琴は頬を染めてはにかんで見せた。
『観てる? アンタ……私の裸……どう……かな……』
その言葉に上条はごくりと生唾を飲み込もうとして、自分の喉がカラカラに干上がっている事に気が付いた。
『アンタに……、アンタの事ばっかり考えてたらね……、私……我慢できなくなっちゃったんだ……』
何を言っているのだろう御坂は――いや、そんな事よりもっと何か悪い予感がしてならない。
今すぐ美琴のもとに駆けつけなければいけない筈なのに、上条の身体は、まるで金縛りにでもあったかのように動かない。
『初めは怖いし……それに痛くてね……指も駄目だったんだ……』
そう言って美琴は今まで閉じていた両の脚をゆっくりと、レンズの向こうで観ている上条をじらす様に開いて見せた。
両の脚の付け根。決して人には見せない秘密の場所が露わになる。
こんな小さな画面なのに、それは妙に艶めかしく上条の視線を捉えた。
『うふ……、見てるでしょ? 見てるよね? ここに……ここにアンタが入るのを想像してみて……』
そう言って美琴は自分の割れ目を人差し指と中指で器用に開いて見せた。
白い肌に咲いたピンクの花に上条の瞳が更に大きく見開かれる。
『今からアンタに凄いのを見せてあげる』
凄い事――これ以上何が凄い事があると言うのだろう。
上条がそう思っていると、画面の中の美琴が一瞬画面から消えた。
そして美琴が次に画面に戻って来た時、その手に持っていたものとは――。
『見て。凄いでしょ? アンタのあれがこれくらい凄かったら嬉しいんだけど……』
それを見た瞬間、上条は携帯電話を閉じてポケットに押し込むと部屋を飛び出した。
まず間に合わないのは判っていた。
それでも走らずにはいられなかった。
「御坂の野郎……」
小さく呟くと最後の瞬間が脳裏に浮かび、股間が妖しく疼いた。
その事に腹立たしい程の嫌悪を感じてギリッと奥歯を噛締めると、上条は鍵を閉めるのもそこそこに玄関を飛び出して行く。あのバットの様なものが美琴の全てを壊してしまうのを止める為に。