ここはグループのアジトの1つ。
「暇ね」
そう呟いた結標淡希は開いていた携帯を閉じると隣を振り向いた。
そこには一方通行が何かの雑誌を熱心に読んでいる。
「ねえ、何か事件でも起きないかしらね」
「…………」
やはり反応はない。
普段ならそれで諦めるのだが、今日は2人だけだし、最近人間味が出て来たこの化け物とコミュニケーションをしてみようかしらと要らぬ冒険心が湧く。
まあ、要はさきの言葉通り結標は暇を持て余していたのだ。
「一方通行。ねえ、ちょっといい?」
「…………………………………………………、あァ?」
やっとの反応に内心握りこぶしを作りながらも、結標はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべて椅子から立ち上がった。
そんな結標を目で追いかける一方通行。
そんな視線を感じながら、結標は一方通行の正面に回り込んだ。
ここから慎重に行かねばならない――少女は内心覚悟を決めて短いスカートに手を添えると、
「ぴらーん」
効果音まで口ずさんで自らのスカートを捲る。
ローライズな上に付け根は切れ込みが深くサイドは紐ときては布地は僅かしか無い。
そのピンクの布地もレースがメインで肌が透けるようで目を覆いたくなる。
きっかり30秒、一方通行はマジマジとそれを眺めた後、
「何のつもりだテメエ? いよいよ頭がイカレタのかクソッタレ」
何時もと何も変わらない反応――結標はその事に確信を感じながらもがっかりしながら溜息付く。
「貴方、本当に女に興味が無いのね」
「はァ?」
訳が分からないと言う顔の一方通行に、結標は考え込むようなポーズをすると、
「貴方が触れたのは……確か私が殴られた時だったかしら……」
「…………」
「もしかして女が怖い?」
確信を改めてぶつけるように一方通行を指差す。
すると、
「くっだらねェ」
それきり見向きもされなくなった結標は、肩を竦めてこの好奇心と暇潰しに終止符を打つことにした。
だが、
「おいクソ女ァ」
背中を向けた結標に向かって、
「何時買ったンだか知らねェそのクソデザイン遅れのだっせェブランドもンなァ、馬鹿にされっからあンま自慢気にほいほい人様に見せンじゃねェぞ」
「!?」
その言葉にビクッと肩を震わせた結標が慌てて振り返る。
「い、今、貴方何て」
ツカツカと靴音に動揺を現して結標が近付いてくるが、一方通行は顔を上げようとしない。
「ねえっ!」
やや声を荒げた結標に一方通行は面倒くさそうに顔を上げると、
「そのクソッタレなダセエパンツがそこのブランドじゃデザイン遅れだっつったンだ。何度も言わせンな」