(どうしてこうなった……)
麦野は車の後部座席で毛布に包まったまま背もたれを見つめつつ一人ごちた。
つい15分前の浜面の「麦野、寝たか……?」という問い掛けをスルーしたばっかりに
浜面と滝壺のイチャイチャっぷりがエスカレートするのを止められなくなってしまったのだ。
このまま放っておくと間違いなくギシギシしはじめる……!
(でもここで『やっぱり起きてましたー、テヘッ☆』とやるのも気まずいわよね)
悩んだ末、ちょっと寝返りをうってみることにした。
「う、うぅん……」
「うひゃ!!」「はまづら、シー」「わ、ワリぃ」
浜面の慌てっぷりに多少溜飲が下がった麦野だったが、今度は別の問題が発生した。
(み、見えてる……)
寝返りをうったことで前の二人の姿が暗闇の中で薄ぼんやりと感じられるようになってしまったのだ。
ちなみに、浜面と滝壺はいつの間にか合体していた。
(ええええええ)
しかも滝壺が浜面の上に対面座位だった。
(はまづらぁ!テメーがマグロかよ!)
その一瞬、滝壺の目が麦野の方を捕らえたかのように細まった。
(ゲッ、気付かれた……?)
続かない