それはとても不幸な出来事だった――。  
 古びたアパート。その一室に居を構えるのは、とある高校の教師を務める月詠小萌。  
 だが今回の主役は彼女では無い。  
 主役は彼女の家に一緒に住んでいる少女、姫神秋沙。  
 この少女は、とある理由から小萌先生と一緒に暮らしていた。  
 姫神は、どこぞの誰とわ言わないがただ養われるだけの居候では無く、炊事洗濯からはては夜のお相手まで……、  
「先生の花びらが喜んでいる」  
 月明かりに浮かぶ組み敷かれた小さな裸体。その体つきと同じく小さな秘裂のぬめりを指に感じながら、姫神は小萌の耳元でそっと囁く。  
「ひ、い、言わないで……下さい……姫神ちゃ……ん……」  
 聞きたくないと身体を捩る小萌。だが、  
「ほら。小さな芽もこんなにぷっくり」  
「あ、ふ、や、だめですぅー……」  
 姫神の指に容易く翻弄される自分が悔しいのか、小萌は閉じた目じりから涙を零した。  
 それでも姫神の手が止まる事は無く、  
「固い。これなら摘まめそう」  
「ひうッ!?」  
 器用にむき出しにされたそこだけは歳相応に……不釣り合いなほど大きな肉芽に、姫神の細い爪が。  
 
 
 と、まあそんな他愛ない日々を送りながらも、姫神は今まで味わう事の無かった人並みの生活を謳歌していた。  
 そして今日もそんな他愛の無い学園生活を終えてアパートに帰って来た。  
 ドアを開け、真っ直ぐ部屋の奥に向かうと彼女専用の洋服箪笥がある。  
 そこから白小袖に緋袴を取り出すと、さっと制服を脱いでそれに着換えた。  
 どこから見ても巫女。それが姫神の普段着だった。  
 今日も小萌は遅くなると言う。  
 姫神は、彼女が一緒に住む様になってから中身が充実するようになった冷蔵庫の中を覗き込んでうーんと唸る。  
 小萌は人に教えられる位に料理上手なのだが、1人暮らしでしかも多忙。なので食事はもっぱら姫神が作っていた。  
「よし。今日はカレーにしよう」  
 ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、豚肉、その他色々を冷蔵庫から取り出して手際よく下ごしらえして順番に火に掛けて行く。  
 時間も有るのでルーから作り始めたカレーは、やがて小一時間ほどで一通り形になった。  
「後は煮込むだけ」  
 姫神は鍋の火を弱火に調節すると、しゃもじで鍋の中身が焦げない様に定期的にゆっくりとかき混ぜる。  
 と、暫くして背筋に寒いものが駆け上がる。  
 尿意だ……。  
「う」  
 とは言えすぐ出てしまうと言う訳でも無い。幸いこの家は台所とトイレは近いからもう少し鍋の様子を見てからでも間に合う――そう姫神は判断した。  
 それから十数分後。  
「ちょっと我慢しすぎた」  
 鍋の火を止める手ももどかしく、すぐさまその場で袴を脱ぎ捨ててトイレに走る。  
 と、扉に張り紙がしてある。  
 
『姫神ちゃん。おトイレは壊れてしまって使えません。近所のコンビニさんにお願いしておきましたから借りて下さいねー』  
 
「小萌先生。よくもやってくれた」  
 姫神は慌てて台所に引き返すとモジモジと袴を穿き直す。  
 だが、そんな姫神を尿意の大きな波が襲う。  
 
「ふ。く」  
 唇を噛んで身体を屈めてじっと波が去る事を待つ。  
(大丈夫。オシッコなんかしたくない。私はオシッコなんかしたくない)  
 心の中で唱えた暗示が効いたのか、すぐさま尿意は収まる。  
 一応下着を確認してみたが、  
「大丈夫」  
 そして姫神は袴を穿いて――帯は緩くそっと締めると――、あえて刺激を加えない様にゆっくりと、まずは足袋を履く為に居間に向う。  
 箪笥から足袋をだした。  
 無理に屈むと出そうになるが、そこは歯を食いしばって我慢する。  
「足袋を。履くのが。こんなに。長い。なんてぇ」  
 全身を脂汗にまみれさせながら足袋を履き終えた姫神は玄関に向う。  
 靴箱から出した草履を玄関のたたきに、何時もならそっと置くのも待てずに投げると、引っ掛ける様に履く。  
「あ。鍵」  
 鍵を忘れた――その事を思い出して上がろうとするが、またもそこで尿意が彼女を襲った。  
「は。あぁ」  
 ギュッと瞑った目の奥で星が瞬く。  
「出ない。出ない。出ない。出ない。出ない。出ない。出ない。出ない。出ない」  
 今度は声に出して暗示を掛けると、少しだけ尿意は収まったが、もう次が来れば漏らすしかない事は確実だった。  
(――鍵は諦めよう)  
「ごめん。小萌先生」  
 多分泥棒は大丈夫だと思うし、本人はここに居ないのだが、姫神の口からそんな言葉が零れた。  
 ここからコンビニまでは5分。何とか間に合うギリギリのライン。  
 姫神はドアノブに手を掛けて、回そうとしたその手がドアノブ……いや、ドアごと引かれた。  
「え?」  
 そう思った時には身体も一緒に付いて行っていた。  
 そして、  
「ただいまなのです、姫神ちゃぶッ!!」  
 姫神の聞き覚えのある可愛らしい声と共に、お腹の辺りに何かがドスンとぶつかった。  
「は――」  
 その瞬間、姫神は頭の中が真っ白になった。  
 
 
 
「はぶっ!? ひ、姫神ちゃん、せ、先生はもうお水は沢山なのですよー!?」  
「遠慮しなくていい」  
「そ、それに先生そろそろお腹が張って……その……おトイレに……。だからこのロープを解いて欲しいのですよー」  
「それも問題無い」  
「問題無いって、せ、先生このままじゃ椅子の上でお漏らしなのですよー!?」  
「大丈夫。小萌先生のお漏らしは。ばっちりカメラに収めるから」  
「いいいいいいやああああああああああああああああ、姫神ちゃんごめんなさいなのですよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」  
 
 
おしまい。  
 
 

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