折檻プレイ?
A、 単純に食事抜き
→B、 父なる神である前に食べさせてもらている相手に敬意を払える様になるまで教育
と言う訳で始まる苛烈な折檻。
インデックスは何処とも判らない所に監禁された。
壁も床も天井も磨かれたガラスの様な光沢を放つ材質不明の物質で出来た部屋。
寒くも暑くも無いが、それでも彼女が身につけるのは首輪と手枷足枷のみ。
しかもそれらは微妙な長さで繋がれていて思う様に身動きが取れない始末。
訳も判らず状況も掴めず、「ううっ」と呻き声を上げて芋虫の様にもぞもぞしていると現れたのは上条当麻。
見知った顔に笑顔を浮かべるも状況を思い出して顔を真っ赤にして身体をちぢこませたインデックスの耳に、「これからお前をしっかりとした一人前の、少なくとも人に感謝が出来る位に教育してやるよ」と言う声が聞えて来た。
我が耳を疑って顔を上げると目の前にフランクフルトが差し出された。
まだ焼き上がったばかりの様な香ばしい肉の香りに思わず何時もの様に飛び付くが、目前でひょいっと手を引っ込められてしまう。
スカされた格好になったインデックスは顔を真っ赤にして「酷いよとうま!! 食べ物の恨みはマリアナ海溝より深いかも!!」と怒る。
しかし上条は何時もの様に怯えてそれを差し出すどころか部屋を出て行ってしまった。
1人になると初めてここに居る事を認識した時以上に心細い。
急に不安になり身体を丸めて涙ぐんでいると、どれくらい立ったのか上条が戻って来た。
今度はその手にパンが載った皿が。
上目遣いに上条と皿に載ったパンを見比べて、「食べてもいいの?」と聞くと、「いいよ」と返事が返って来た。
それを聞いてインデックスはもそもそと芋虫の様に這って来てパンにかじり付こうとした。
だがしかしすんでの所で上条がその皿を持ち上げてしまう。
インデックスは空腹よりも何か恐ろしい気持ちになって「どうしてそう言う事をするのかな?」と聞いてみた。
すると上条は、「一度見聞きした事は忘れないんだろ?」とだけ言って出て行ってしまった。
心地よい温かさだが優しさの無い床にごちんと頭を打ち付けでインデックスは言葉の意味を考えた。
そして暫くしてまた上条が、湯気の立つスープを持って現れた。
その臭いだけでお腹がぐぅっと鳴ってインデックスは恥ずかしさに全身を朱色に染める。
それ以前に裸なのだが、空腹と不安のせいでそこまで頭が回らない。
また「それを私にくれるのかな?」と聞くと、「ああ食べてもいいよ」とスプーンにひとすくいのスープが差し出された。
インデックスは思わずそれに喰らい付こうと口を大きく開けたが、そこで「あぐ」と呻くと一度口を噤んでから「あ、ありがとう、とうま」と言ってみた。
そしておっかなびっくり可愛らしい舌を差し出すと、その上に優しくスプーンがあてがわれ、そのスプーンから芳醇なコンソメスープが口の中に流れ込んだ。
ひと口、ふた口、み口……と、あっという間にスープは胃袋の中に消えて「ご馳走様でした」と言った後に頭を撫でられた。
そのあんまりの優しい感じに、何かがぷっつりと切れたのかわんわんと泣き出したインデックスを上条は優しく抱きしめる。
そして抱きしめながら「もう少し頑張ろうなインデックス」と耳元で囁いた。
1週間後――。
「天にいます我らの父といつもご飯を食べさせてくれるとうまに感謝していただきます」
そう言って手と手の指を組み合わせて祈りを捧げるインデックスの姿に上条は一応の満足を得ていた。
ただしとある例外が、
「あの……とうまぁ……」
「何だインデックス?」
食事の後片付けまで手伝ってさて洗っちまおうかと言う所で服の腰の辺りを引っ張られて振り向くと顔も真っ赤にした少女が俯いていた。
「あの……おトイレ……」
その言葉に上条は「あぁ……」と言って天を仰ぐ。
あの折檻でインデックスには変な癖と言うか性癖が付いてしまった。
それは――、
「とうまちゃんとこっちを見ていてくれないと困るかも」
「いや見ろってって言われてもだな……」
「とうまが私のおしっこをする所を見てくれて感謝しています」
上目遣いでそう言われてしまえば、教育してしまった手前拒否のしようも無い。
「不幸だ」
「泣きたいのはこっちかも。だから一生面倒見てね、とうま♪」
こんな感じかな? 大変だな上条さん。自業自得だけど。