「ねえ」  
麦野沈利は、裸の胸にシーツを引き寄せながら隣で寝ている男に声をかける。垣根帝督。学園都市第二位の超能力者だ。  
「何で私たち、こんなことしてるのかしら」  
「そりゃあれだろ」  
彼は彼女のゆるくウェーブがかかった髪を、自分の指に絡み付けるという一人遊びをしながら、気のない様子で言葉を返す。  
「顔も頭もスタイルも悪くねえし、後腐れもない。身体の相性だって悪くない。利害が互いに一致した結果だろ。何だよ突然。まさか俺に惚れた?」  
「んなわけないでしょ」  
麦野はありえもしない垣根の予想をばっさりと切り捨てる。  
「冷てえなあ、おい。さっきまであんなによがってたくせに」  
揶揄するような口調の垣根に対し、麦野は鼻で笑って肩を竦めて見せた。  
「何つーかあれよね。『俺はこんなにテクニックがあるんだぜ凄えだろ俺』って感じ。あんたって」  
「じゃああれか? 『愛情たっぷり込めましたー』みたいなガムシロップを砂糖の上にぶちまけたみてえなのが好みなのか?」  
想像したらしく、垣根は眉間に皺を寄せる。  
「ありえねえ」  
「同感よ」  
麦野も同じく、微妙な表情を浮かべている。想像したらしい。  
「そんなの気持ち悪すぎて吐きそうだわ」  
 
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