「ただいまー…ってあーっインデックス!」
帰宅した上条当麻が玄関のドアを開けるのと、居候の純白の修道衣の少女が幸せそうにス
プーンを口に運んだのは、まったく同じタイミングだった。
「く、黒蜜堂のプリン…しかも高いほう……なんでふたつとも食べてるんですかインデックス!」
少年の懐事情からいえば相当に奮発して買ってきたデザート、それも同居人の分もきちんと
買って冷蔵庫に収めていたのだが――今、目の前にある光景は、
卓袱台の上で空になったふたつのカップと、手に持ったスプーンを口に入れたまま、ほんの
ちょっとだけ気まずそうな表情を浮かべたインデックスの姿だった。
愕然と膝を落とす。
「…ちょっと考えればっ…こうなるのは予想できてたのに…上条当麻一生の不覚……」
肩を震わす少年の姿にさすがに気まずくなったらしい。少女が語りかかる。
「お、おなかがすいてたし…美味しかったからガマンできなかったんだよ…ごめんね」
誤られてもモノが帰ってくるわけではない。むしろこのハラペコ少女がどんな行動に出るか、
容易に想像ができたはずのにそうでなかった自分に対して呆れるやら悲しいやら、いずれにせ
よ少女に対する怒りはないものの上条の落胆は深い。
「と、とうま…ごめんね、あ、あのね、甘いもので返したらいいかな…?」
インデックスが舌を噛みそうな話しかたで声をかけてくる。何事、と顔を上げると、
目の前に銀髪の少女の少し上気した顔が迫っていた。
「え、何…んっ」
上条が口を開くよりも早く、純白の修道服に包まれた腕が上条の首に絡む。
そしてそのまま、瞳を閉じたインデックスの端正な顔が迫り――
奪われました。
少女の柔らかな唇が上条のそれに重なる。
目を閉じることさえできずに、女の子の唇って柔らかいんだなとかインデックスの睫毛も銀色な
んだとか頬を染めててチクショー可愛いじゃないかとかサテンの修道衣越しの体温とかフードか
らこぼれた髪が良い匂いだとかワケの判らないことが頭の中を巡って、呼吸が止まっていたこと
に思考が辿り着いて、唇を薄く開いた。
(んっ! い、インデックスっ)
上条の口が開いた瞬間に、少女の小さな舌が隙を逃すまいと侵入する。
同時に、上条の意識も飛んでしまった。目を閉じて、口腔内に入ってきた少女の舌を自分の舌
で絡め取る。そのまま押し戻すと、インデックスの舌の裏や歯茎、口腔内を蹂躙する。
「んっ、ふあふっ……ぁ、ふぁん」
切なげな声が唇の隙間から漏れ出すと同時に、首に絡みついたインデックスの腕が緩む。
唇を離すと、思う存分に少女の口腔を蹂躙した証のようにキラキラと二人の間に糸が光った。
余韻に浸っているのか、息を荒げながら上気した顔のまま呆然としていたインデックスだったが、
しばらくすると未だ若干焦点のあっていなさそうな瞳で上条を見つめると、
「…ねえとうま、甘かった…?」
と体を摺り寄せながら尋ねてくる。
あ、ああ…と、上条は顔を真っ赤にしながら何とか言葉を搾り出したが、碧眼を潤ませて迫る少
女が上条の理性にとどめを刺そうと爆弾を投下した。
「私は、ふたつ食べたよ…? とうまはおかわり、いらない…?」