〜某ファミレスにて〜
時間帯は昼。
とあるファミレスにて3人の少女が集まっていた。
皆が同じ学校と言うわけではなく、縁あって機会があれば集まり談話している。
本来であれば3人ではなく4人なのだが、その少女は事情があって今はいない。
そして、女3人集まればなんとやら、といった風になるはずなのだが…
「はぁぁー」
1人の少女が漏らしたため息によってあまり会話が成り立っていなかった。
その少女の名前は御坂 美琴。とある名門中学に通う二年生である。
先ほどからぼんやりと何かを考え込んでため息をつく、というサイクルを繰り返している。
もちろん、そんな彼女を残りの2人が放っておけるはずがない。
「えーっと、御坂さん?」
頭に花飾りをつけた少女 初春が尋ねる。
これで何回目だろうか?
しかし美琴は答えない。たとえ答えたとしても、
「え?ううん、何でもない」
と答えるだけだ。
さすがにここまで来ると心配になってくる。
“あの”美琴がここまで悩んでいるのだ。
もしかしたらなにか大変なことがあったのかもしれない。
「ねえ、初春。御坂さん、ホントどーしたんだろ?」
黒いロングヘアーの少女、佐天が初春に尋ねるも、彼女は首を横に振るだけだ。
「白井さんなら何か知っているのかもしれませんが……」
今はここにいない少女の名前は白井。彼女は美琴の後輩であり、相棒でもある人物だ。
白井は美琴を敬愛しており(若干逝き過ぎな面もある)、詳しい事情も知っているかもしれない。
だが彼女は仕事で今は忙しいのだ。その事実が悔やまれる。
「御坂さん!」
意を決して佐天が大きな声で呼んだ。
「えっ?何?どうしたの?」
佐天にとって美琴は恩人でもある大切な人だ。だからこそ悩んでいるなら助けになりたい。
自身がたとえLevel0であったとしても出来ることは必ずあるはず、そう思うのはいけないことだろうか。
「何か悩みがあるんじゃないですか?」
「無い無い。大丈夫だから」
このやりとりにもいい加減飽きてきた。
「大丈夫なわけないじゃないですか。さっきからずっとそれですよ?」
「ごめん……」
うなだれてしまった。少し強く言いすぎたかもしれない。
その気持ちを読み取ったのか、今度は初春が話を続ける。
「御坂さん。私たちにとって御坂さんは大切な友達です」
「卑怯な言い方ですけれど、信頼していただけるなら打ち明けていただけませんか?」
卑怯だな、そう、思ってしまう。
しかしこんな言い方をしなければきっと教えてはくれないだろう。
「うん……二人ともありがとう」
ここまで想われているのだ、話したほうが良いのかもしれない。
美琴はおそるおそるソ悩みを打ち明けた。
「えっと…ね――――――――――
「――――――つまり御坂さんは恋をしてらっしゃると」
「……うん」
初春と佐天は愕然とした。想像していたものとはかなりかけ離れていたからだ。
しかし、よりにもよって恋とは……
失礼だが安堵してしまう。そして同時に可愛いと思ってしまった。
「ならここで私たちと時間を過ごしてる暇なんてないですよっ!」
「片思いなら尚更じゃないですか、デートと誘ったりしないと!」
「デッデデデート!?無理!!そんにゃの無理!!」
取り乱す美琴。
そういえば彼女は先ほど話してくれた内容から察するに――――――かなり純情過ぎる。
ちなみに悩んでいた内容は大きく分けて3つ。
@相手はかなり鈍感
A美琴が素直になれない
B相手の周りには魅力的な女性が多い
と、いったものだ。
途中でのろけ話になりそうになったことが多々あったがそこは割愛。
「でもこのままじゃ難しいですよ……」
佐天は正直に言ってしまった。
その言葉に涙ぐむ美琴。その様子は普段からは想像できない。
すると、なにやら初春の様子がおかしくなった。
どうやら美琴の弱々しい態度に嗜虐心がそそられたらしい。
「御坂さん……考えても見てください」
「何を?」
美琴は初春に目を向ける。
「その人はかなり鈍感なんですよね?」
「しかも御坂さんが素直になれないせいでかなり損をしていると思います」
「電気をぶつけたりしたら、好感なんて持ってもらえるわけないですよ」
「最悪、嫌われているかもしれません」
顔面蒼白、な、美琴。
だが、初春は止まらない。
「その人の周りには御坂さんより綺麗な人もいるのなら奪われちゃいますよ」
「いや、既に奪われているのかもしれませんね……」
そう言って、初春はカップを手にとって中身をすする。
ちょっ!?という佐天の制止も彼女には聞こえない。
「御坂さん?」
「……」
その呼びかけには美琴は答えられなかった。
色々と頭の中で想像してしまっている。
だが、それは明確な形で像を成していないだろう。
だから初春は美琴の耳元で囁いた。逃がさないように、逃げられないように。
「これから先、御坂さんがどれだけ想いを募らせようとその人はあなたを見てくれません」
「他の女と一緒に愛を育みます」
「御坂さんじゃない女性と抱き合ったり、キスしたり、その先までも……」
「そのうち彼は御坂さんの存在を忘れていきます、他の女性によって塗りつぶされていくんです」
「そしてその女性は“こう”思うでしょうね」
「ああ、本当に、あの女は愚かだったな、って」
「それで良いんですか?」
初春の囁きによって明確な未来が見えてしまったのか、美琴は恐怖に震えている。
「嫌よ……そんなの……いや…いや…」
佐天も初春の豹変にガタガタと震えている。
「じゃあ…どうすればいいか…わかりますよね、御坂さん?」
「どうすれば…どうすればいいの?」
藁にもすがる思いなのか、美琴は初春に答えを求めた。
「簡単なことですよ。素直になれば良いんです。」
「……………それだけで………いいの?」
意外な答えなのか、美琴は驚いている。
「ええ、それが一番大切です。御坂さんはその人とどんなことがシたいですか?」
「当麻と一緒に抱き合ったり、キスしたり、望まれるんだったら……その先までだって……でも……」
相手の名前はトウマというらしい。
しかし、なにか不安要素があったのか、逆接が続いた。
「もしかしたら、またスル―されちゃうんじゃないかって思うと……」
すると初春は呆れたようにため息をついた。
「それがいけないんですよ。奪われてもいいんですね?」
「嫌っ!!」
即答する美琴。しかし今の初春はなんなんだろう?
彼女は年上のハズの美琴を優しくなでながら、助言する。
「無理矢理でもいいじゃないですか」
「そんなことしたら…嫌われちゃうんじゃ……」
優しく優しく甘く甘く初春は美琴に囁く。
「どうだっていいんですよ……そんなこと」
「え?でも……」
戸惑う美琴に初春は続ける。
「大切なのは“結果”ですよ?」
「強引にその人を御坂さんのモノにすればいいんです」
「そうすれば彼は御坂さんをスルー出来なくなります」
「トウマさんの中に御坂さんの存在が刻まれるんです」
それを想像してしまったのか、美琴の表情にわずかな恍惚が浮かんだ。
「後はじっくり、嬲るように、ねぶるように」
「その人の心を汚し、犯し、堕とすんです」
「いいえ」
「トウマさんの心を御坂さんで満たして上げればいいんですよ」
この言い換えが効いたのか、美琴の罪悪感は薄れていく。
そして初春は鞄から手錠を差し出して、こういった。
「御坂さん、良かったらコレ使って下さい」
「うん。ありがとう」
「(ういはる!?手錠って!?御坂さんも受け入れているし!?)」
佐天の突っ込みは届かない。
「連絡先を知ってるなら早いほうがいいですね。悠長にしていると他の女に犯されちゃいますよ」
「ありがとう、初春さん。じゃあ行ってくる」
「(いやいやいやいやおかしいよ絶対)」
美琴は財布から現金を抜き出しテーブルにおいて、迅雷の如く去って行った。
「ねえ、初春」
「なんですか、佐天さん」
「ちょっとやりすぎなんじゃ……」
「ダメですねぇ、佐天さん。そんなこと言っちゃあ……」
「え?初春?なんで手錠用意してんの?ねえ?」
「大丈夫ですよ、気持ち良くシてあげますから……」
「初春!?ここはファミレ――――――――
続かない?