「ハァハァ……くっ!」
まさかこんな事になるだなんて誰が予想し得ただろうか
今はなき樹形図の設計者でもきっと不可能だったに違いない、いやそうでなければ困る
もしも予測できていたのならこんな事はしなかった
最初はほんの気まぐれだったのだ
お姉様を誑かすあの男を見かけた。日頃の鬱憤を晴らすためのちょっとした嫌がらせ
実際そこに落ちていた空き缶を頭の上に移動させブツケ、その反応を見て楽しむ
それで終わっていたはずだったのに
その缶が缶コーヒーのものでスチールだったこと、側面ではなく底の淵だったこと、とかまぁ様々な要因が重なったことが現状に繋がった
「なんでこんな…あぁもう!本当にこの殿方に関わると碌な事になりませんわ!」
そう誰にも聞こえない音量で独り言ちる
こんな所を誰かに見られようものなら今まで築きあげてきたものが崩れ落ちるどころか地盤沈下までしかねない
それが、もし、愛しのお姉様だったら、レベル4の空間移動能力者の脳はその先を考えることを拒否する
(本当にどうすればいいのでしょうか)
「なんというか、もう、言うなれば―――――不幸ですわ…」