「きぬはたばっかりずるい」
二人でファミレスにいる時に突然そんな事を言われれば、固まるのは仕方ないだろう。
てか、何がだ? これじゃまるで浮気を問い詰められてるみたいじゃないか。
「先週の土日、何してた?」
先週は確か土曜は新アイテムの仕事で絹旗と出動してたな。で、日曜は一人で映画見に行ってなぜか絹旗がいて……うわぁ。
「すすす、すまん滝壺。俺に出来る事なら何でもする」
拗ねた滝壺の顔色を必死に窺う。
「なら、今週の土曜日空けといった」
それに即答で頷く。その後で「何をするんだ?」と問いかける。
「趣味に付き合って」
ああ、絹旗と映画鑑賞っていう共通の趣味があるのが気になったのか。
勿論、一も二もなく同意。俺も滝壺の趣味が知りたいし。
土曜日、普段なら来ないような学区で普段と比べれば大荷物の滝壺と合流した。
俺が荷物を持つと、滝壺は携帯端末を使い地図を見る。
「こっち、はまづら」
滝壺に案内されるままに進むと小さな森林公園にたどり着いた。先客はいない。
「で、何をするんだ?」
滝壺がアウトドアな趣味を持っているのには驚いた。イメージだと編み物とか読書とか言いそうだった。……それに付き合うのはちとキツいが。
「AIM拡散力場浴」
はっ? 今、何か聞き覚えのない言葉が……
呆然としていると、下ろした荷物からレジャーシートを取り出し横になる滝壺が見えた。
その真似をして、横に転がる。
ゆるい時間が流れる。会話は無いが、いつの間にか繋いだ手が心地よい。
小春日和のいい天気の中、滝壺と二人。心がポカポカになるのを感じた。