土御門舞夏は、ちょうどこの学生寮に入ってこようとするところだった。  
「おー、どうしたー、あわてて」  
 のんびりしたいつもの口調で、舞夏がインデックスに話しかける。しかし、インデックス  
はその声にも引きつった表情を変えることなくメイド少女を捕まえると、  
「まいかっ! その服、貸していますぐ! すぐ! はやくっ!」  
 と叫んで、舞夏の襟元に手を伸ばす。  
「こらっ、いきなり脱がしにかかるなーっ、早まるなシスター、落ち着いてワケを言えー」  
 悲鳴も間延びしているのが何とも言えないが、ともかくもインデックスは手を止めて『ワ  
ケ』をまくし立てだした。  
 理解に苦しむ――というか、前後も内容も支離滅裂で理解不能なのだが、  
「つまりは上条当麻の気を引くのにメイド服が着たいのかー?」  
 と言う結論に達した。ここまで約30分。ぶんぶんと頷く純白のシスターがさらに早口で  
まくし立てだしたが、それを右手で制する。それでも話をとぎれさせるまで、さらに10分  
を要した。  
「しかしー、この服は制服だから貸せないなー、でも」  
「でもっ?」  
 インデックスがメイド候補生に詰め寄る。  
「アホ兄貴がメイド服をたくさん隠してるからー、どうも義妹に着せようとアホなことを考え  
てそうなワケだがー、全部新品だからそれを着たらいいぞー」  
 本人の意志を考慮されることなくつまびらかにされるシスコン軍曹の趣味だったが、こ  
の際インデックスには土御門元春の異常性向などはどうでも良い話である。  
「じゃあ、はやくそれを出して欲しいかもっ」  
「おー、アホ兄貴はまたどっか出かけてるからなー、掃除に来たから鍵なら持ってるぞ、  
行くかー。留守の方が都合も良いしなー」  
 その言葉を聞くと、インデックスは舞夏の手を取って駆け出す。清掃ロボの上に正座して  
いた舞夏だったが、いきなり引っ張られて慌てて飛び降りると、半ば蹴躓きながら純白の  
シスターに引きずられていった。  
 
                     −*-  
 
「あ、あの子っ…」  
 さんざん駆け回って、それでもあきらめきれずに御坂美琴が交差点を曲がると、いつか  
見た純白の修道服の少女が家政学校の制服――要するにメイド服を着た少女を引っ張っ  
てとある学生寮に駆け込んでいくところだった。  
「ひょっとして、あそこ…っ!」  
 学生寮に駆け込む。集合ポストが目に入った。  
 駆け寄って、頭の中を支配するたったひとつの名前を探す。  
 そのとき、廊下の奥から男子学生らしい複数の声がした。さすがにこの格好でポストを凝  
視しているのは怪しすぎる。慌てて学生寮を飛び出た。  
 入り口で作業服を着た一団とすれ違ったが、美琴はそれには気が付かなかった。  
 学生寮から少し離れて、声の主が出て行くのを見守る。  
 しかし、その一団はそのまま学生寮の入り口の前でなにやら話し込み始めた。  
(なっ、何してんのよーっ、出かけるんならさっさと行きなさいよっ)  
 焦りとイライラが募る。どれくらい過ぎたろうか、男子学生の一団が移動を始める。十分に  
距離を取ったのを見てから、再び学生寮に入った。  
 もう一度ポストの名前を一から見直す。  
「あった…!」  
 7階。  
 上条当麻の名前を発見する。エレベーターを見やった。  
 
『調整中 階段をご利用下さい』  
 
 エレベーターの前に掛けられた札が風に揺れる。  
「な、何よこれっ」  
 思わず半泣きになる。慌てて周りを見回して、階段を見つけると息を深く吸い込んで駆け  
上がり始めた。こんなことで負けてなるモノか。御坂美琴の決意は固い。  
 
                     −*-  
 
 土御門舞夏の出してきた衣装を着込むと、インデックスは息も荒く上条の部屋のドアを開  
け放った。  
 部屋の奥では、上条がなにやらポーっとした表情で、御坂妹にお茶を注がれている。  
「とうまっ! じゃなくてご、ご主人さま、わ、わ、私がちゃんとまわりのことするからっ」  
 その声に振り向いた上条が、インデックスの姿を見て固まった。  
 インデックスは上条の元に近づくと、紅潮した顔で、その目をそらして――目を合わせられ  
ないのだ――上条に話しかける。  
「に、似合わない? やっぱりダメ…かな」  
 本場物の銀髪碧眼の白人少女が羞恥に顔を染めながら、やや装飾過剰気味にも見える  
ゴスロリ風味のエプロンドレスを纏って、胸の前で恥ずかしげに手を合わせる。  
 その、まるで名人作のアンティークドールのような姿は、けして少女趣味ではない上条の  
心臓さえも跳ね上がらせた。  
「……に、似合ってる…」  
「ほんと…っ?!」  
 気が付くと、思わず上条に抱きついていた。上条が赤くなっていた顔をさらに赤くする。  
「目いっぱいサービスしてあげるからっ」  
 
 インデックスに抱きつかれて赤面する上条に、御坂妹が不機嫌そうな表情を顕わにする。  
抱きつかれたままの上条の腕を取ると、インデックスを無視して話しかけた。  
「ご主人様、疲れがたまって体が硬くなっているのでマッサージをして差し上げますと言って  
いたのを、善は急げと申しますから今からいたしましょう、とミサカは次のご奉仕を提案しま  
す」  
 虚を突かれたか、上条の口から思わず出たのはそれに対する肯定だった。  
「あ、ああ、頼もうかな」  
「なっ…」  
 反射的に上条に噛み付こうとして体が止まる。ここで噛み付いたりして、御坂妹に点差を  
付けられては意味がない。  
 面白くないが、上条がベッドにうつ伏せになるのを見守った。そこに御坂妹が跨る。上条の  
尻の辺りに、少女のお尻とか太腿とかの感触が伝わる。  
「ちょ、御坂妹さん?」  
 上条が真っ赤になって振り向こうとしたが、御坂妹の手が上条の背中を押し始めたことで  
妨げられた。  
 どこで覚えたのだろうか、御坂妹のマッサージは上手すぎる。  
 ほぐれて気持ちいいのを通り過ぎて、揉まれたところからふにゃふにゃに力が抜けて体が  
動かない。しかし、気分は極楽である。インデックスの刺すような視線も気にならなかったと  
いうか、気づかなかった。  
「汗をかかれていますね、あと失礼を承知で言いますが少し汚れているようです、これが終  
わったらお背中でも流しましょう、とミサカは新たな提案をします」  
「あ? ああ、昨日はシャワーだけで適当に済ませちゃったからな…って…ちょっと今すごい  
事言わなかった?!」  
 
 御坂妹の台詞に、インデックスがバスルームに駆け込む。お風呂の掃除は上条が寝る前に  
済ましてしまっているから、湯を張るだけだ。インデックスの覚えた数少ない機械操作――給  
湯ユニットのスイッチを入れる。  
「と、とうまっ! せ、背中は私が流してあげるからっ!」  
「ちょ、ちょ、ちょっとまて二人ともっ! そういう内容で張り合うのはっ…」  
 反論しようとした上条の肩を御坂妹がほぐす。その感触に、声が出なくなった。  
「今日は当麻さん、いえご主人さまのお世話を全てすると決めてやってきました、あなたに  
邪魔はさせません、あなたのおせっかいは要りませんとミサカはきっぱり答えます」  
 二人の少女のにらみ合いが続く。  
 どれくらい経ったのだろうか、給湯ユニットが風呂に湯の溜まったことを知らせるブザーが  
鳴った。その音に、にらみ合いの均衡を破ったのはインデックスである。  
 
「あ、あなたはさっきのマッサージで思う存分とうまに触りまくったんだからっ! そうそうとう  
まを好きにさせたりしないのっ」  
 顔を真っ赤に染めたインデックスが御坂妹に人差し指を突きつける。  
 その気迫に、うっ、と御坂妹が尻ごんだ隙を見て、マッサージで体の力の抜けきった上条を  
バスルームに引きずり込んだ。火事場のなんたら、というアレであろうか、インデックスの一  
瞬の早業に御坂妹も手が出ない。  
「お、おいインデックス…」  
「と、とうまはおとなしく面倒を見られたらいいのっ! 私じゃ嫌だなんて言わせないんだから  
っ!」  
 体がほぐれたと言うより、すっかり力が抜けて軟体動物状態の上条がなにか訴えようとし  
たが、もはや上条の意思よりも、頭に血が上って『女の意地』がインデックスの体を突き動か  
している。  
 反論を封じ込めて、まずは無理やりにTシャツを剥ぎ取った。  
 続けてGパンに手を掛ける。  
 一瞬手が止まるが、顔を耳まで赤く染めたインデックスは下を向いてううう、と唸ると、その  
デニム生地の着衣も上条の下半身から抜き取った。  
「――――っ、ちょっ……」  
 インデックスと同じように顔を赤く染めていた上条だったが、もはや声も出ない。  
 突き抜けてしまって笑っているのかあるいは泣いているのか、表情も判別しがたい状態だ。  
 銀髪のゴスロリメイド少女が上条のトランクスに手を伸ばした。  
(いやーっ、駄目ええっ、インデックスさんそこはカミジョーさんの男の尊厳最後の砦っ)  
 上条の心の悲鳴が聞こえたのか否か、インデックスの手が止まる。  
 そのまま泣き笑い、といった表情の上条を真っ赤に染まった顔のまま見つめて、  
「ふ、服着たままだと濡れちゃって大変だし――」  
 憮然とした表情になってみたり、上目遣いに上条を見つめてみたり、逆に目を逸らしたり顔  
を両手で覆ったりした後、それまで以上に赤く、沸騰しそうなほど顔を染めると、  
 
 おもむろにエプロンドレスを脱ぎ捨てる。  
「と、と、とうまは、わ、私の、は、裸、知ってるんだし――」  
 純白のショーツにガーターベルト、カチューシャのみという実にマニアックな姿の裸体を上条  
に晒す。はじめからブラは付けていなかったようで、微妙に胸を隠すように腕を寄せたが、胸  
元まで紅潮させたその恥じらいの表情と、かすかながら乳房であることを主張する真っ白なふ  
たつの膨らみに、腕を寄せてもまったく隠れていないその先端の淡いピンクの蕾が、上条の  
目に、彼の本能の部分を呼び覚まそうと襲い掛かった。  
 
(そんないきなりインデックスさんっ! あううっ、カミジョー2号っ、勃つな、勃つな勃つな勃つ  
んじゃないーっ、ジョーっ!!)  
 上条の理性が人知れぬ戦いに挑もうとするその間にも、インデックスが肌を摺り寄せながら  
再びトランクスに手を掛ける。  
「ちゃ、ちゃんと私がとうまを、じゃなくって、ご主人さまを隅々まできれいにしてあげるから…  
…」  
 少女の暑い息が顔をかかる。ぎりぎりまで跨って擦り寄ってきたために、その胸のふたつの  
膨らみが上条の胸板を押した。  
 その感触に、上条の理性はその本能の前に、実に、実にあっけなく敗れ去る。  
 要するに、そうなるべきところが大きくなった。  
 そして、その上には、運悪く――かどうかはこの際言及しないが、ショーツに包まれたイン  
デックスの下腹部が当たっていて――  
「きゃうんっ」  
 銀髪を揺らして、少女が腰を跳ねさせた。  
 

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