「と、とうま…じゃ、な、なくってご主人さま、これ…」  
 耳まで真っ赤に染めて上条に肌を摺り寄せる少女が、その腰の下にあるもののことに言及  
する。聞かれるまでもない、のだが。  
 最初は驚いたように腰を跳ねさせたインデックスだったが、たった今は――感極まったような  
潤んだ瞳で上条を見つめつつ、ショーツ越しのその奥を上条に押し付けるように跨っている。  
 対する上条も涙目だ。  
「い、いんでっくすサン…、はい、ご推察のとおりです、でも、し、自然の摂理ってやつですから、  
か…噛まないで……」  
 しかし、インデックスは上目遣いに頬を染めて上条を見つめたまま、噛み付こうとする素振り  
さえ見せない。  
「そ、そうじゃなくって、あ、あのね、わ、私を見て、こ、こうなったの?」  
「ううっ、他にどんな理由がありますかッ…。こう見えて上条当麻、健全なオトコノコです…」  
 体の力が抜けてしまっているのがかえって幸いしたとでも言おうか、インデックスに対する衝  
動を実際の行動に移さない、いや、移せないことで理性がギリギリ保たれていた上条なのだ  
が、その腰に跨った銀髪の少女は逆に気持ちを煽られたのか、  
「とうまっ! うれしいっ! やっぱり私を選んでくれたんだねっ!」  
 と、上条の首に腕を巻きつけた。そしてその体勢のまま、耳元で囁く。  
 その吐息が熱い。  
「待っててね、いま綺麗にしてあげるから」  
 腕を伸ばして、上条の背後から石鹸を拾い上げた。それから、腰を浮かせてシャワーヘッド  
に手を伸ばす。  
 少女の下腹部に圧迫されていた、本人いわくカミジョー2号が一瞬開放された。が、シャワー  
に手を伸ばした少女の裸の胸元が眼前を通り、その視覚的刺激にカミジョー2号はさらにいき  
り立つ。シャワーヘッドを掴んだ少女が再び腰を下ろすと、2号はその頭部から胴部に少女の  
下腹部の強襲を受け、  
「あっ、あひゃいっ」  
 カミジョー1号に大打撃を与えた。  
「と、とうま、どうしたの?」  
 上条の悲鳴に、インデックスがその顔を覗き込む。  
 しかし、インデックスが動くたびにはっきりばっちりその裸体が視界を埋め、すでに張り詰め  
すぎて痛みすら覚える2号が擦れる。上条の心情は――まあ、察してやって欲しい。  
「にゃ、にゃんでもありまひぇん、ほんとうでひゅ」  
「本当? なら、始めるね?」  
 
 そう言うと、インデックスはシャワーで自分の胸元と石鹸を濡らし、泡立てるとその泡を自分  
の胸に撫でつけ――  
「ちょ、ちょ、ちょひまちインデックしゅ! にゃ、にゃにしてまひゅかッ」  
 何をしようとしているかは判った。しかし、である。  
 真っ赤な顔で、インデックスが答えた。  
「え、だって、とうまの本に載ってたから、とうま、喜んでくれるかもって…」  
 
 隠していたはずなのに。ああ隠していたはずなのに。  
 
 いまさら捨てても、この完全記憶を持つ少女に対しては無駄な抵抗である。しかも、インデッ  
クスが言っているアレでアレな本を思い返すと、本当は年上好みな上条ながら、やっぱり身近  
にいる西洋ロリータが気になって思わず入手しちゃったああいう本のようないやそうだよやっぱ  
りアレだと記憶が蘇る。  
 勘違いもクソもそういうオンナノコが写ってんだもんそう思っちゃうよねいやほらボクだって思  
春期の健全なオトコノコですから一番身近なオンナノコには興味だって示しますよでもさ、と、  
滂沱の涙を流しつつも、もうどこまで流されちゃっても良いや、などと諦めの心境に上条が到  
達しようとしたそのとき、  
 
 バタンッ!! と浴室の扉が開いた。  
 
「脱いでまで当麻さん、いえご主人さまの気を引こうとは卑怯です。しかしここで引くわけには行き  
ません、とミサカはその覚悟をあなたとご主人さまに見せ付けますっ」  
 普段なら感情の起伏がほとんど無い御坂妹が、どんな心境に至ったか語気も強く叫ぶ。  
 それから両手を背中に回すと、ジッパーを一気に引き下げた。すとん、とエプロンドレスが下に  
落ちる。  
(!! しっ、しましまっ!!)  
 ピンクの縞々の上下が白い肌に映えて眩しい。その上、黒のオーバーニーソックスだ。その猛烈  
な破壊力に鼻血を噴きそうになる。ショーツがちょっとローライズなのも見逃さない。上条は結構ア  
キバ系にマニアックだった。  
 エプロンドレスを脱ぎ捨てた御坂妹は、バスルームに入って上条の横に回りこむと、インデックス  
の刺すような視線を無視して少年の腕に絡みつく。上条の目を見据えつつも、しっかりとお腹や太腿  
が上条の腕を圧迫していることを確認して、  
「そんな洗濯板でご主人さまを誘惑しようとは笑止千万、女の魅力というものを見せ付けてやります  
とミサカは余裕の笑みを浮かべます」  
 と言い放つ。当然、インデックスからは反論の怒号が上がる訳だが、  
「何ですってっ! そんなぺったんこで私が洗濯板だなんてよく言えたものかもっ!」  
 その言葉を耳に入れる様子も無く、ブラのホックに手を掛けた。  
 肩紐がずれて落ち、ピンクの縞々の布切れが隠していた双丘とその頂上を顕わにする。  
 インデックスと比較してより大きいのがどうかは微妙だが、東洋人特有のきめ細かな肌が浴室の  
照明になまめかしく輝く。はらりと落ちていったブラの奥には、インデックスのそれよりも少し赤みの  
強い小さな蕾が膨らんでいた。  
「恥ずかしいですけど、ご主人さまのためだったら何だって出来ます、とミサカは耳元でその決意  
を囁きます」  
 顔を赤らめた御坂妹が、インデックスに劣らぬ艶やかで熱い息を上条の耳元に送る。  
 
 4つの慎ましくも艶かしい膨らみに囲まれ、心臓が跳ねた。  
 両カミジョーの頭部に向かって血流がなだれ込んで、カミジョー1号がとうとう鼻血を吹き、同2号  
は怒号を上げんばかりの勢いでいきり立った。  
 
「と、とうまっ、だめっ! わ、私だけ見てくれないとやだっ!」  
「押し付けは奉仕でも愛でもありません、私は愛を持ってご主人さまにご奉仕するので、あなたに  
勝ち目はありません、とミサカは勝利の宣告をします」  
 上条を挟んで、石鹸とボディスポンジとシャワーヘッドの奪い合いが始まった。  
 それぞれ発展途上とは言え、美少女二人の生肌が体を押してこすっていつの間にやら泡がぶく  
ぶくと立って、触れられるだけで思春期真っ盛りの上条はどこか遠く旅立ってしまいそうになる。も  
はや抵抗する力も――無い。本当に無い。  
 
 泡とシャワーと嬌声と、か細い悲鳴がバスルームを満たした。  
 
                     −*-  
 
「は、はっ、はあ、はあ、な、七階…、ここね…」  
 階段を全力で七階まで駆け上がると、さすがの御坂美琴も息も絶え絶えである。しかし、  
「な、何かやらかしてたら……許さないんだから……あ、アイツは…」  
 息を整えるより先に、御坂妹のことを思い出す。それから、上条と密着しているところばかり  
見かける銀髪の少女。  
 自慢するつもりは無いけれど、自分は結構可愛いと思う。ちょっと気になる部分もあるけど。  
 だから自分と瓜二つの御坂妹は当然美少女なワケで、ひょっとしたらアイツは清楚な感じな  
ほうが好きなのかも、それだとひょっとしてあの子の方が有利じゃないの…とか、あの銀髪の  
子の密着の仕方はもう一線越えちゃってるのかも…等々、『アイツ』を中心に頭が回って、  
 
「だ、だから違うううーーーーーっ!」  
 
 思わず叫び声を上げていた。叫んでみてから、我に返る。  
 周りを見回した。無人だった。ホッとする。顔が熱いのは――気のせいだ。  
 アイツの部屋は、と廊下を歩く。  
(土御門…あ、この変わった苗字の隣っ!)  
 表札は出ていなかったが、間違いない。この部屋だ。部屋番も確認した。  
 呼び鈴を押すか、直接ドアノブに手を掛けるか悩んで、備え付けの給湯装置が動いているの  
に気が付く。そして、換気扇から吐き出される湯気。  
「か、換気扇っ? この換気扇って、お、お風呂っ!?」  
 そう思ったら、なんだかシャワーの音が聞こえる気がする。  
 そんな気がすると、今度は泡々でくんずほぐれつでチョメチョメがゴニョゴニョで純情女子中  
学生の想像力がパンクした。  
 乱暴にドアノブを捻った。鍵は掛かっていない。ドアを開く。  
 
 聞こえるのは、シャワー音と、複数のオンナノコの嬌声。  
 繰り返します。  
 シャワー音と、複数のオンナノコの嬌声。  
 
「さ、させるかあーーーーっ」  
 顔面を沸騰させて、半泣きになりつつも上条の部屋に飛び込んだ。  
 
                     −*-  
 
 にゅるにゅるぷにぷにと泡まみれの少女の裸体が上条の肌を蹂躙する。  
「と、とうま、気持ちいい? と、当然私のほうがき、気持ち、いいよねっ?!」  
「あ、あなたのような、はふっ、乱雑なやり方で、ご主人さまを満足させることなどできませんっ、  
もちろん私のほうが当麻さん、いえご主人さまに満足していただいているに違いありませんと  
ミサカはっ!」  
 上条の耳元で、頬を染めた二人の少女が、疲れたというよりは艶が出てきたといったほうが  
ふさわしい声で囁く。当の上条はと言えば…、気持ちいいやら恥ずかしいやら、それでいても  
はや抵抗する意思すら奪われてしまった。  
 少女二人の苛烈に過ぎる攻めに、果ててしまうことだけを耐えている。それだけが、自分を  
自分のまま保ってくれるような気がするのだ。理性の最後の砦とでも言おうか。  
 しかし、少女の攻めは止まることはない。  
「ねえ、とうま、あのね、わ、私も…気持ち、いいんだよ…?」  
 インデックスが胸元までピンクに染めて、熱い吐息を注ぐ。  
 逆の耳では、御坂妹がそれと同じくらい艶かしい声を囁きかけた。  
「はふっ…当麻さん……私もご主人さまと同じくらいドキドキ感じていますと…み、ミサカは…」  
 二人の手が、艶かしく上条の胸元を這い回り、そして、徐々に下に降りていき――  
 
「さ、させるかあーーーーっ」  
 
 叫び声とともに、上条の学生寮に駆け込む少女の足音。続けて、大きな音を立てて浴室のド  
アが引きちぎられんばかりの勢いで開かれる。  
 ドアを正面にしていた上条の目の前に現れたのは、自分に裸体を絡ませる少女のオリジナル  
体、御坂美琴が顔を真っ赤に染め、半泣きの涙目でぜえぜえと息を切らす姿だった。  
 驚くヒマもなく、絡み付いていた二人が美琴を睨みつける。  
「短髪? 何の用? いま取り込み中なんだから邪魔しないでッ!」  
「オリジナルはご主人さまに興味などないのでは無かったのですか? 邪魔をしに来たのなら  
さっさと帰って下さいとミサカはきっぱり言い渡しますっ」  
 いきなりの暴言に後ずさった美琴だったが、ここで引き下がったりする訳には行かない。  
 何より、頭に上った血が引き下がることを許さない。  
「な、何してるのよあんたたちっ…、特にあんたよあんたっ!」  
 真っ赤な顔のまま、御坂妹をびしっと指差す。  
「ひ、人の裸勝手に晒してんじゃないわよっ!!」  
 
 その台詞に、妄想力を刺激された上条の目がかっと見開かれたのだが、  
「あんたは変な想像しないでっ!」  
 と美琴が頬染め涙目で怒鳴りつける。逆にそれが妄想を助長したりするわけだが、  
そこまで頭が回らないのか、上条を睨みつけるのもそこそこに浴室に踏み込む。  
 
「あ、あ、あたしとおんなじ裸、さ、晒して何やってくれんのよっ!」  
 自らのクローン体に食って掛かるオリジナル体。掴みかかるというより、晒された体を  
隠すようにして上条から引き剥がそうとした。  
 ここに来て、上条自身もインデックスの白いショーツが濡れ透けになってお尻の肌の  
色とか足の付け根と付け根の間の部分の細かな造作がくっきりしていたり、御坂妹の  
若い茂みが透けかけてたりするのに気が付いてしまった。  
 さらには、御坂妹を引き剥がそうとしてシャワーを被った御坂美琴の透けたブラウスの  
向こうに目が行く。が、それらに興奮してみるヒマもなく、引き剥がされようとした御坂妹  
が信じられない暴挙に出た。  
「お、オリジナルにだって私の邪魔はできませんっ!とミサカは最大限の抵抗をっ!」  
 瞬間、雷光が浴室内に閃き。  
 御坂美琴の体が弾き飛ばされた。  
(ひいっ! 暴挙というにしても、これはあまりにも暴挙っ!)  
 美琴の心配をする前に、思わず御坂妹の行動に恐怖感すら覚える上条だったが、  
「ふふ、ふふふふふ、やってくれるじゃないの」  
 只ならぬ様相の御坂美琴が、ゆらりと立ち上がる。  
「雷撃使いのあたしに…レディオノイズごときが何しようってのよ…」  
 
「――そうよ、そいつの…こと、だって」  
 
 顔だけをうつむけたまま、小さな声で、しかしはっきりと呟く。そして、  
 
「ハグよりキスより裸見せちゃうほうが先だったからってどうだって言うのっ! そんなの、  
あんたたちなんかに抜け駆けされるよりよっぽどましよっ!」  
 叫び声を上げると、ボタンを外すのももどかしく、豪快に制服を脱ぎ始めた。  
(みっ、御坂さんっ! 目が、目が逝っちゃってますよっ!)  
 顔を上げた御坂美琴は、完全にどこかへぶっ飛んでいるようだった。  
 
 

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