暖色照明の下、無防備に柔肌を晒していた。
首の汗が滴り落ちて、乳ぶさの膨らみを撫でていく。太ももを滑り落ちて、膝をついたタイルに流れた。シャワーの水と一緒になる。
わしゃ、わしゃ。
ユニットバスに髪を洗う音が響く。洗っているのは滝壺理后。洗われているのは、浜面仕上。
胡坐をかいた浜面の背中に、膝立ちの滝壺が体を寄せた。
「気持ちいい?」
「あぁー……いいなぁ、人に洗ってもらうの」
背中を抱き締めたい気持ちをこっそりと持て余しつつ、滝壺は奉仕に専念する。ヘアカラーで少し痛んだ髪が指にくすぐったい。
体格のいい背中の肌色をじっと見つめた。自分のつけた爪痕を探してしまう。見つけた。四本指。
「……」
愛し合った痕。叫んでしまうぐらいの快感を思い出してしまい、赤面する。
(……大丈夫。あれは、私じゃない)
あんな淫らな声が自分の喉から出たとは思いたくなかった。思考を打ち払って、滝壺は顔を近づける。
ちゅっ。ちゅっ。背中に、動物的なキス。傷跡を唾液で濡らす。
「滝壺?」
中断したシャンプーと別の感触に、目を瞑ったまま浜面が振り返った。
「ごめんなさい。痛くした」
「いや、いいって。俺も無理させたと思うし……」
「うん。でも、したいから」
「あー……わかった」
前髪が瞼を塞ぐほどに舌を這わす。顔をこすりつけるのを気持ちいいと感じていたのは、秘密。
しばらくキスの雨を降らせた後、洗い終えた髪をシャワーで流した。行為の痕跡が全て排水口に消えたので、二人で湯船に入った。
浜面が広く足を伸ばす。その間に滝壺が座った。お尻に当たる感触も、今となってはもう嫌じゃない。
「ふぅー……」
肩まで浸かって、浜面が大きく息を吐いた。滝壺も小さく吐息を漏らす。黒髪から垂れた水滴の音が、ぴちゃんと鳴った。
温かい。
背中を浜面の胸板にくっつける。それから、肩に頬を預けた。ぴったりと密着する。
鎖骨が視界に入った。しばらく見入った後、またキスをする。そして甘噛み。かぷ、かぷ。
浜面が滝壺の胸に手を伸ばした。湯の中で乳房を揉まれる。人差し指と親指で乳首を刺激されて、滝壺が身をよじった。
「あっ……あっ……」
物欲しそうな顔で浜面を見上げた。浜面がそれに応えて、キスを落とす。首筋がぴりぴりと痺れた。
唇が離れる。くてんと滝壺の体から力が抜けた。切なそうに肩が上下している。浜面は乳房に伸ばしていた手を降ろして、腰に回した。
「はぁっ……はぁっ……上がったら、もう一回……」
「待て待て、それだと風呂入った意味がだな……」
「明日の朝シャワー浴びればいいから……はまづら、お願い……」
滝壺が振り向いた。首に手を回してすがりつく。浜面は苦笑しながら、落ち着くまで頭を撫でてやった。
贅沢なぐらいの静寂だった。