†††
とりあえず、今の状況をもう一度整理してみよう。
先程一方通行たちが関わってしまった強姦事件の影響で、打ち止めの精神はひどく不安定になっていた。
今はまだ小さな芽でしかないその不安は、しかし放置しておけば彼女に『性への恐怖』を植え付けてしまう
危険性を孕んでいる。平凡な未来を目指す彼女にとって、それは大きな障害となりかねない。
対処に悩む一方通行へ与えられた、打ち止めの裏人格とも言える存在である番外個体からのアドバイス。
それは――彼自らが打ち止めを抱いて、彼女が持つ性交へのバッドイメージを払拭する程のイイ思いを
させてやれ……という無理難題極まりないものだった。
†††
(……………………不幸だ)
個人的に因縁がある善人野郎の口癖が、今猛烈に一方通行の脳裏をよぎっていた。
元々の出だしからして良い日だとは到底思えなかった本日であるが、禁書目録に絡まれたり超電磁砲から
説教を喰らったりウザったい事件に出会ったり警備員に危険人物扱いされたり、挙げ句の果てには号泣中の
打ち止めをどうにかして宥めろという無理難題を与えられてしまっては、いよいよ神様というヤツは本気で
一方通行をおちょくっているのだとしか思えない。
そんな中、少女の揺らいだ声が続く。
「……なんで、かなぁ……ミサカね、今すごく、あなたにここにいてほしいんだ、って、ミサカはミサカは、
我が儘だと知りつつも、本音を吐露してみる」
一方通行のシャツの裾をぎゅっと握り締め、しゃくりあげながら小声で囁く打ち止め。
睫毛に縁取られた大きな瞳は限界まで涙を溜め、その透明な粒が次々と頬を伝い零れていく。
「……、」
一方通行は、こんなにも静かに泣く彼女の姿を初めて見た。
うるさいくらい大袈裟に笑ったり、怒ったり、泣いたり拗ねたり――彼の記憶の中で、幼かった打ち止めは
いつだって自分の感情に素直になって行動していた。
だから、このように感情を抑えながらも彼を引き止める少女の様子に、一方通行は違和感を覚えているのだ。
いつの間に、打ち止めの内面はこうも大人びていたのだろう。馬鹿馬鹿しい話だが、ここに来て彼はようやく
そんな事を考えていた。
……しかし、無理をして嗚咽を堪えようとする彼女の姿を見ているのは、正直不愉快だった。
迂闊に触れたら壊れそうなくらい弱っているのは打ち止め自身だというのに、どうして彼女は一方通行を相手に
『遠慮』などという生意気な選択を採るのか。
「……ガキが何やせ我慢してンだ」
「っ、ガキじゃ、ないもん、ってミサカは――」
もっとも――そういったことに苛立っている一方通行の方が、実は一番大人げないだけなのかもしれないが。
深く息を吐き出し、彼は被さったフード越しに打ち止めの髪の毛をグシャグシャとかき混ぜた。
「はにゃ、あ」
「どこにも行きやしねェよ。だからイイ加減に手ェ離せ」
シャツに皺が出来るほど強く握り込まれた右手の上に自身の手を乗せ、いつぞやのように指一本一本を
丁寧に外していく。
一瞬固まった後、はっと我に返ったように肩を震わせ、慌てて瞼を乱雑に拭い始めた打ち止め。
その隙に、やや早歩きでキッチンに向かった一方通行は、コンビニのビニール袋を片手に持って彼女の
傍らへと戻ってきた。
白色のソファに腰掛け、彼はガサガサと音を鳴らして中身を漁りだす。
いつも彼が買い占める缶コーヒーは、すでに夕方コンビニに立ち寄っていたため、今回は購入していない。
その代わりに、袋の中にはサンドイッチやおにぎりなどの比較的食べやすい食事や、断じて一方通行の
趣味ではない甘ったるいミルクティーが詰め込まれていた。しばらく前にこの少女が好んで飲んでいた銘柄だ。
「ンな強く目ェ擦ってンじゃねェよ。眼球傷付けたら面倒臭せェことになるぞ」
「っ、だって、拭いても拭いてもっ、涙が止まってくれないんだよ、ってミサカはミサカは、途方に暮れてみる」
自分でもコントロールしきれなくなっている心の動きにただ翻弄され、彼女は頬を濡らし続ける。
こういう時こそヒーローの出番だろうと一方通行は内心毒づいてみるが、生憎ここには自分しかいない。
彼はろくに目も合わせぬまま、いかにも面倒臭そうな態度でこう呟いた。
「……無理に泣き止もうとする必要は無ェンじゃねェの」
「?」
「別に、俺の前で虚勢を張ることになンざ意味無ェだろ、って話だ」
要するに『今無理をすると後々心に深い傷を負うことになってしまうから、今のうちに泣けるだけ泣いて
スッキリしてしまいなさい』というような内容を伝えたかったのだが、どうもこういう時に限って上手い言葉が
出てこない一方通行である。
彼は、自分がデリカシーに欠けることを自覚しているため、泣き続ける少女を励ますなどという立場には
正直苦手意識があった。不器用な態度でしか接することができない自分に妙なもどかしさを感じる。
『野郎のツンデレとかマジで誰得カッコ悪ーい☆』と、すこぶる頭が悪そうな番外個体の台詞が脳内再生されて
セルフ苛々モードに突入しかけた一方通行であったが、
「……っく、ふぇええええええ……!」
なんか、先程までの三倍ぐらいの勢いで泣き出した子供の姿があった。
「ンなっ……!!?」
ピーピーと甲高い声で泣き喚く打ち止めを前に、思わずソファから飛び上がる一方通行。
顔の筋肉を不自然に引き攣らせる彼の様子を察して、打ち止めが泣きじゃくる勢いそのままに叫びだした。
「だっ、だってだってだってだってぇ! 泣いていいんだよってあなたが言ったんじゃないのーっ! って
ミサカはミサカは溢れる涙をもはや抑えようともせずに絶叫してみる!! うわーん!」
「泣き止まなくてイイたァ確かに言ったがそれ以上泣けとまでは言ってねェ!! あァくそ鼻水垂らしたまま
抱きついてきてンじゃねェよクソったれがァァああああああああああああああああああ!!」
どんがらがっしゃーん、と漫画のような効果音と共に、ソファの上でもみくちゃになって暴れる馬鹿二名。
しかしまぁ、通常運転の騒々しい打ち止めに戻してやることが出来ただけでも僥倖かと思いつつも、
五歳も年下のガキに押し倒されている不甲斐ない現状に意識が遠のきはじめた一方通行であった。
†††
今日は呑みたい気分なのである。
弱冠ハタチにして早くも人生の酸いも甘いも噛み分けたかのような淡い心境に陥っていた番外個体は、
つい最近見つけたお気に入りの居酒屋(学園都市内だから当然リーマンがグダグダになっているような店の
数自体が少ないため、若者向けのいたってオサレな店なのだが)を目指して夜の街道をテクテク歩いている。
夜道を一人で出歩いたりアルコール目的で居酒屋に向かったり、何かと不良少女的行動が目立つ番外個体で
あるが、学園都市でも貴重な大能力者である彼女が万一にもごろつきなどに蹂躙されることなど無いだろうし、
悪意満点の彼女にとってもそういうギスギスした空気に巻き込まれるのは快い刺激であった。保護者たちも
彼女に関しては放任主義が基本であり、家に戻るのは三日に一回ぐらいが当たり前となっている(以前一週間
家出していた時は流石にぶん殴られた)。だからこそ、今日家を空けることになった時、黄泉川達は番外個体が
アテにならないことを前提にして一方通行に打ち止めの世話を頼んだ訳だ。
そして、保護者や打ち止めが留守にしている今日は、番外個体には絶好の夜遊び日和なのである。
(……さーて、第一位のヤツは果たして上手くやれているのかなぁ。今最終信号はネットワークの接続を
切っちゃってるから、様子を伺うことも出来ないんだけれど)
ふんふーん、と適当なリズムで鼻歌を奏でながら歩みを進める番外個体の背中に、声をかけてくる人物がいた。
「あれ? お前こんな夜遅くに何してるんだ?」
「……おや。今回ヒーローの出番はなさそうだなって幻想を見事ぶち殺してくれたご登場だね」
「で、出番?」
振り返った番外個体の視線の先には、外見だけはいたって普通の男子大学生・上条当麻が突っ立っていた。
「ミサカは今晩カクテル味比べ大会を開催する予定なんだなー。まぁ連れはいないけど」
「は? ……あぁなるほどな」
すぐ目の前に見えてきた彼女の目的地を知った上条は頭を掻きながら、やれやれと言った調子で口を開く。
「お前も一応女の子だろ。あんまり黄泉川先生たちに心配かけるようなことするなよな」
「説教とかミサカ大っ嫌ーい。ってか、そんなに面倒見がいいこと言ってくれるんならあなたがお相手してよね」
「いや俺もどうせインデックス達とあそこで待ち合わせしてんだよ。ついさっき、女二人で呑むのは寂しいから
混ざれって連絡が来て」
「……お姉様たちってまだ未成年じゃなかったっけ」
「いやいやまさか、御坂はともかくインデックスの見た目じゃ酒は売ってもらえねーだろ……多分」
「うわー超テキトー安心できねー」
日頃の自分の行いは棚に上げてオリジナルのモラルを疑いはじめる番外個体だったが、どうやら上条が
気にしているのはそこではないらしい。
「そうそう、お前御坂妹に何があったのか知ってる?」
「え? この局面で一〇〇三二号?」
番外個体は意外な固有名詞を聞き、わずかに眉を動かした。
おう、と上条は首を縦に振り、
「さっき大学内で浜面のヤツとすれ違った時に、御坂妹が俺のこと探してたとか言っててさ。メールか電話で
用事があるのか聞いてみようとも思ったんだけど……」
「けど?」
「……その時浜面が言いやがったんだ……『生きて帰ってこいよヒーロー』って」
「……そりゃまた、大層ご立派な死亡フラグだね」
上条当麻の天性の不幸体質を鑑みるに、いくら人の不幸は蜜の味を体現する番外個体といえど流石に
爆笑することは出来なかった。せいぜい苦笑いしてやるのが関の山である。
誕生から早幾年、ようやく『空気を読む』という日本文化を学びはじめた彼女であった。
「それならまぁ、このミサカの方から聞いてやってもいいけど……」
ふー、と溜め息を吐きながらもミサカネットワークへの接続を始めた番外個体だが、
そのすぐ左隣で、上条当麻が真正面からのタックルによって潰される瞬間を目撃してしまった。
「ごふぉッッッ!?」
情けない悲鳴を発して、あっけなくコンクリートに頭をぶつける羽目となった我らが主人公。
なんだなんだこれどういう状況だ、と目を白黒させる番外個体の前には、妹達至上最大の負のオーラを
身にまとう検体番号一〇〇三二号――通称御坂妹の姿がある。
先程からなーんかこのミサカが訳もなくイライラしていた原因はコイツかよ、と意識の片隅で呟く彼女には
目もくれず、御坂妹はノロノロと起き上がろうとする上条の胸ぐらを掴んで、その唇を小さく動かす。
「……あなたはこのミサカ達を全員救ったヒーローなのでしょう。一万人近くいるミサカ達を、片っ端から
助け出した、本物のヒーローなのでしょう、とミサカは詰め寄ります」
「いやあの、み、御坂妹さん?」
無表情の瞳に本気の怒りを燃やしブツブツと言葉を吐き出す御坂妹の威圧に怯えながら、上条が呼び掛ける。
が、思い人の困惑顔すら、今の彼女には無意味なのであった。
今は、もっと重要なことがある。
「だったら、二〇〇〇一号の貞操だって救ってやってください!! 何故上位個体だけが、何も悪い事など
していないのに、あんなもやし野郎とベッドインしなければならないのですかァァァあああああああ!!!!!!
とミサカは最悪の未来図を思い描いてあなたの頭を揺さぶり続けます!!」
「アレぇなんかそれどっかで聞いたことがあるような台詞だけど痛だだだだ!? たっ助けてくれ番外個体ーっ!!」
「あ、もしもしお姉様? 早く店の外に出てきてよ。ミサカもう無理手に負えない」
……数十秒後、学園都市第三位の全力を出しきって御坂妹を確保した御坂美琴は、ぜーはーぜーはーと
肩を上下させながらこんな言葉を漏らしていた。
「わ、私の妹がこんなにバイオレンスなわけがない……」
「いやいや、どう見てもお姉様の血でしょアレ」
†††
「……正気に戻ったかクソガキ」
「……はい、ってミサカはミサカは素直にお返事してみたり」
色々年甲斐もなくハシャぎまくった数分後、一方通行と打ち止めの間には妙なやっちまった感が漂っていた。
ぐったりと背もたれに身体を預けながらもボサボサになった髪を手櫛で直そうと足掻いている彼の横では、
またも微妙に距離を離しつつ体育座りでうずくまる打ち止めが、ようやく食べ物に手を伸ばしている。
だがしかし、どうにもまだ彼女は乗り気でないらしい。
「……どうしても、食べなきゃ駄目かな? ってミサカはミサカは鼻先に近付いたおにぎりを見つめてみる」
「ガキが色気づいてンじゃねェよ。何ならその腹ァ開きにして詰め込ンでやろォか」
「だっ、ダイエットとかじゃなくて……本当に食べる気がしないんだよう、ってミサカはミサカは自分でも
どうしたらいいのか困り果ててみたり」
犬の垂れ耳が付いたフードからはみ出した頭頂部のアホ毛をも萎れさせて俯く打ち止めだが、結局は
観念したのか、やがて手の中に持ったおにぎりをゆっくりとかじり始めた。
もぐもぐもぐもぐ、と咀嚼する音のみが小さく響く部屋の中。
本日二度目のやるせない沈黙に、一方通行はどこか所在なく脚を組み直す。我ながら自分勝手な話だが、
普段騒がしいガキが不意に黙り込むとかなり対処に困るものだと再認識する。
しかし数分前のような汗と涙の取っ組み合いへと持ち込む訳にもいかず、彼はなかなか昔通りに接することが
出来ない相手へ、再び歯がゆさを感じずにはいられなかった。
難攻不落だ――学園都市最強の超能力者は今素直にそう思う。
静寂の打破に(どうせ馬鹿馬鹿しいバラエティ番組しかやっていないだろうが)テレビでも点けてみようかと
右手の中でくるくると回転させ弄んでいたチャンネルに意識を移す彼だったが、
「……、」
空中を漂っていた一方通行の視線の背景に、ふと打ち止めの横顔が映る。
艶がある茶色の髪は小さな水滴を垂らし、赤みを帯びた柔らかそうな頬にしっとりと張り付いている。
伏し目がちな睫毛は想像以上に長く、隙間から垣間見せる瞳をわずかに潤ませていた。
一見すれば――いやどう見ても、無心に食べ物を頬張る他愛もない構図である筈なのだが。
「(……図体ばっかデカくなりやがって、クソガキが)」
一瞬でもそんな彼女の姿に『女』を見いだしてしまった自分の目玉を潰してやりたい心境に陥る。
どれもこれも、余計なことを進言してきた番外個体のせいだ。あんなことを言われた直後に、そういう方面を
全く意識しないヤツなどいる筈がないだろう。実際に下心があるか無いかに関わらず(いや、勿論そんなものは
ある訳ないと声高に主張するが)、人間が人間である限りはどうしようもない心理作用なのだ。
だから、打ち止めが突然言葉を発した時に、不意を突かれたようにみっともなく肩を震わせてしまったのは
仕方がないことだと言える。
「……あなたもまだ何も食べてないよね、ってミサカはミサカは返す刃で反撃して……な、何をそんなに
びっくりしているの? ってミサカはミサカは一見無表情なあなたの顔から深層心理を分析してみる」
恐る恐るといった調子で尋ねてくる打ち止めを前にして、彼は適当に返答した。
「放っとけ。……食欲無ェンだよ」
直後、彼は再び年下少女に押し倒されることとなる。
「それはミサカがさっき言ってスルーされた台詞と同じじゃないーっ! ってミサカはミサカは食べかけの
おにぎりをあなたのお口に押し付けてみたり!!」
「脈絡も無くキレてンじゃねェこのクソガキ!! 第一、成長期のオマエとじゃ栄養摂取量違うのは当然だろォが!」
「そのもやしっぷりから察するにあなたはまだまだ栄養が必要! というかもうミサカをあんまり太らせないで!!
ってミサカはミサカは断固主張しつつも強引に押し込んでみる!」
「こンな骨と皮だけのカラダになるのが本気でお望みですかァクソ馬鹿むがもぐッ!!?」
悪代官に迫られた町娘のように死に物狂いで抵抗する一方通行だが、叫んでいる途中で口に突っ込まれた
純和風携帯食物に喉を塞がれて、割とガチの呼吸困難に陥ってしまう。
ソファに倒れたまま、顔面蒼白になりながらも十数秒かけて何とかご飯を飲み下した彼が、真上に乗った
少女の顔をきつく睨み上げると、
「……ミサカ、もう大きくなりたくないんだもん」
ポツリと呟き、打ち止めは唇をぎゅっと噛み締める。
気がつくと、一方通行の胸元を掴んだ両手は、小さく震えていた。
「……?」
思考に突拍子もない空白が生じた一方通行を前に、彼女は、ずっとずっと体内に押し込めていた苦痛の塊を
吐き出すかのように、こう言い放つ。
「こんな気持ちになるぐらいなら……もう成長なんてしたくないよ、って、ミサカはミサカは心情を吐露してみる」
†††
つい先ほど一方通行に『いいからさっさと打ち止めを抱け』と言ってみた、と番外個体に打ち明けられた時の
関係者各位の反応は以下の通りである。
上条当麻は赤面した後「え、えっとあーそうか、今後の打ち止めの精神衛生のことを考えれば、うーん、
まあ良い方向に行ってる……って言ってもいいのか……?」と、頭を掻きながら不明瞭に呟いた。
インデックスは赤面した後「あ、えと、まっまままだあの二人にそういう事は早すぎると思うんだよ! 大体
らすとおーだーはまだ高校生にもなってないんだし、もっと清いお付き合いを重ねてから、か、考えるべき
ことかも……!」と、早口でごにょごにょと憤慨していた。
御坂美琴は赤面した後「……い、いくらなんでもそれはちょっと飛躍しすぎなんじゃないの? そりゃいつかは
そうなりかねないって覚悟はしてたけど……やっぱりショックよ……うう、打ち止めがアイツなんかと……」
と、二日酔いのサラリーマンのように頭を抱えていた。
燃え尽きてぐったりとテーブルに突っ伏す御坂妹をつつきながら、番外個体は梅サワーのグラスを口に運び、
「……分かっちゃいたけれど、あなた達って最終信号が一番大事で第一位のことは二の次三の次なんだね」
「当たり前でしょ。あの子も今じゃ立派な女の子なんだから、大事にされて然るべきじゃないの」
「というか、何年もらすとおーだーの好意をスルーし続けてたあくせられーたに同情の余地なんかないんだよ」
即座に女尊男卑発言を振りかざす美琴とインデックスだが、二人のキツい眼差しは上条にのみ注がれている。
一方、やはりそれにも全く気付かないフラグゲッター上条当麻はというと、
「だよなぁ……俺とかから見てもあんなに丸わかりなのに、よく今の今まで何にも発展しなかったもんだよ」
「「「えっ」」」
「え?」
間違ってもお前が言うな馬鹿野郎的視線を各方向から浴び、「……あ、あれ? 俺今なんか変な事言った?」
と首を傾げている。
「……あなたの罪作りっぷりは重々承知していますが、とミサカは切り出します」
むくりと顔を上げた御坂妹は、相変わらずの無表情のままこう続ける。
「ミサカ達は二〇〇〇一号の恋心だけは何故か実ってほしくないのです、とミサカは身体の内から沸き起こる
嫌悪感に全身を震わせます」
「それは……まぁ、ネットワークで直接惚気られるのは誰でも嫌かもしれないわね」
しかし、数年前の彼女達なら例え彼らの間に何があっても無関心を貫いていたであろう。それが今こうして
取り乱してしまうということは、紛れもなく妹達の精神面は以前より成長しているのである。
海老チリをほっそりとした指先でつまみ上げた番外個体は訳知り顔で頷くと、
「ま、このミサカの知ったことじゃあないよ。ミサカはネットワークにある負の感情の中から一番『大きいもの』
に従ったまでなんだからさ」
「……その路線で行くと、あなたはミサカ達の総意に基づいて、むしろ二人が接近するのを食い止めていた
筈ではないのですか、とミサカは恨めしげに問いかけます」
だからさぁ、と前置きして、彼女は何でもないことのようにサラッと宣言する。
「九九六八人分のミサカの嫌悪感よりも、最終信号の無意識な欲求のが圧倒的に強かったってことでしょ」
天真爛漫少女打ち止めの意外な一面を番外個体の言葉から垣間見て、女子高生の貞操観念に抱いていた
淡い幻想をぶち殺された大学生達は、次の瞬間ワッと泣き崩れた。
「何を皆して絶望してんの? あなた達だってあれぐらいの年頃の時は好きなヤツとエロい事したいってばかり
考えてただろうに」
「そっそそそんなこと……無くも無いかもだけどっ! 客観的に見ると生々しくてすごくイヤなんだよっ!!」
大体、かくいうみさかわーすとにも実はこっそりそんなこと考えてた頃があった訳!? と叫んだ銀髪シスターの
口に、番外個体は有無を言わさずものすごい勢いで特大餃子を突っ込んでいた。
†††
「ミサカね、さっきあなたを止めることが出来たのに、止めなかったんだ、ってミサカはミサカは懺悔してみる」
打ち止めの独白は、そんな言葉から始まった。
「……オマエ、ナニ言って」
「聞いて」
振り絞るような一声に、一方通行の抵抗は完全に鎮圧された。
すらりと伸びた腕によって身体をソファに押し付けられた一方通行は、ただそれを黙って聞くことしか出来ない。
「……ミサカは今まで、誰かが危ない目に逢うことが怖かったの。それがどういう人かなんて関係なくて、
ただ目の前で誰かが傷付いていくのが、怖くて怖くて仕方なかったはずなの、ってミサカはミサカは慎重に
思い返してみたり」
「……、」
そうだった、と一方通行は意識の奥底で肯定する。
打ち止めという少女は、少なくとも彼の知る限りは、他の誰よりも平和を愛していた。
誰もがただ幸せに笑って暮らしていける、そんな世界を誰よりも望んでいた。
だがその主義は、有り体に言ってしまえば、ろくに発達していなかった彼女の拙い感情が、彼女らの本来の
製造理由――すなわち殺し合いに必要な憎しみを知らなかっただけなのだとも取れる。
だからこそ、彼女はこれまで、愚直なまでに全てを受け入れてこられた。
DNAマップを提供した御坂美琴も、妹達を無秩序に量産し続けた研究者達も、甘さゆえに一万人もの妹達を
見殺しにしてきた芳川桔梗も、打ち止めを不良品だと罵り殺そうとした番外個体も、軍用クローンという偏見で
妹達を嘲笑った世界中の人間も、――そして、一〇〇三一回の死をその手で直接引き起こした一方通行をも、
打ち止めは認め、赦し、その小さな両手で包み込み続けた。
それを『優しさ』と採るか『無知』と採るかは、おそらく誰にも決めかねる事だろう。
しかし、そんな彼女もいつまでも無垢なままではいられなかった。
歳月を重ね、帳尻を合わせ、少しずつ成長してきた打ち止めは、人間らしい様々な感情を学んだ。
喜び、怒り、悲しみ、安らぎ、それから悪意。かつて番外個体が予言した通り、彼女は段々と、自分の中で
肥大していくどす黒いモノを意識し始めた。
打ち止めは少しずつ、だが確実に、あらゆる害悪を受け入れきれなくなってきていた。
以前ならどんな人間とでも平常心で会話できたのに、今では自分によく意地悪を言う人の顔を見たりすると、
『あぁ、嫌だな』と自然に思うようになっている。
それは、普通の人間としてなら当たり前の感情なのかもしれない。
ごく普通の生活を望む彼女にとっては、むしろ喜ぶべき成長の証なのかもしれない。
これで打ち止めは、いたって人間らしく――誰かを憎むことが出来るようになったのだから。
「最初は止めようとしたの。あなたが路地裏に入る前から、きっとあなたは暴力で解決するつもりだろうって
分かってたから、その場で演算能力を奪って、路地裏のことは全部警備員に任せちゃおうって。きっとそれが
一番誰も傷付かない方法だって、分かってはいたんだよ、ってミサカはミサカは打ち明けてみる」
けど出来なかった、と少女は語る。
「あなたが何人もの男の人を傷付けてる時も、ミサカは近くでそれを見てたのに、結局最後まで止めなかった。
ボロボロになった女の子を手当てしてるうちに……あの人たちは殴られて当然の、悪い人間なんだなって、
そう思っちゃったんだ、って、ミサカはミサカは……」
ぱたぱたと音を立て、一方通行のワイシャツに透明の水滴が降り注ぐ。
声を震わせ、それでも打ち止めは懺悔を止めなかった。
「……ミサカ、自分がこんな酷いこと出来るなんて知らなかったなぁ、ってミサカはミサカは自嘲してみたり」
「……もうイイ、言うな」
「だって、そうでしょう!?」
耐えかねて口を開く一方通行を前に、血が滲むような声で打ち止めが叫ぶ。
「どんな理由があっても、あの人たちが死にかけている姿を見て、いい気味だって思ったのは事実なんだから!
守れるのはミサカしか居なかったのに、守ろうともしなかった……あの人たちを、見殺しにしたも同然なんだよ!?」
「黙れって言ってンだろォがクソったれ!!」
「ッ……!?」
突然怒鳴り返され、打ち止めの肩がびくりと震える。
ソファに身体を押さえつけられたまま、一方通行はその言葉の意味を一つ一つ噛み締めるように語りかけた。
「……あァいう人種を嫌悪したってンなら、それはごく自然で当たり前な事だろ。恥じるよォな事じゃねェ」
手を伸ばし、涙で濡れた打ち止めの頬をゆったりとした動作で拭う。
眉間を歪ませていた力は段々と抜けていき、彼女の表情が少しずつ、自分の気持ちに素直なものになっていく。
「断言してやる。そンな外道共のために今馬鹿みてェに泣いてるオマエは、これ以上無ェ程のお人好しだ。
せいぜい大手を振って自分の甘っちょろさを誇れ。加害者気取るにゃ十年早えェンだよ」
「っ……、」
緩んだ瞼から雨のように流れ落ちる涙の粒が、一方通行の顔にポタポタと降りかかってくる。
その温度は、彼が想像していたよりもずっと、熱を帯びたものだった。
おそらくは、これこそが今まで彼女が抱え込んできた痛みの一端なのだろう。成長するにつれ変化していく
自分自身の内面に戸惑い、人間らしい感情を悪だと思い込み、ただそれに怯えることしか出来ないという無力感に
苛まれた打ち止めは、今こうして自分の生き方に葛藤しているのだ。
その苦しさは理解できない事もない。だが一方通行からすれば、打ち止めは今まで色々な物を背負いすぎて
いつ潰れてしまってもおかしくないように見えていた。その重たい荷物を今少しくらい下ろしてみたところで、
誰も彼女を責められるわけがない。
「……でもっ、ミサカ、は」
――それでも、打ち止めだけは、そんな自分自身を責めずにはいられなかった。
「ミサカは、自分が変わっちゃうのが怖いよ。たとえ、人間らしくなくても、どんなに馬鹿みたいでも、
それでもやっぱり、前のままのミサカでいたかったの、ってミサカはミサカは、打ち明けてみたり」
「……何で」
何故そこまで固執する?
一方通行の知る限り、全ての妹達は過去から脱却して『人間らしく』生きていくことを望んでいた筈なのに。
どうして、打ち止めだけはその『人間らしさ』を、こんなにも憂うのか。
誰かを嫌い、憎むことすら出来なかった妹達の過去には、彼女にとってどんな価値があったというのだろう。
今の方が――自分たちに『誰か』を憎むということが出来るのだと知りはじめた現在の妹達の方が、
本来あるべき真っ当な姿ではないか。
「いやだ、よ、」
そんな彼の思考を読み取ったかのように、打ち止めが声を震わせる。
「あなたまで……そんなミサカを認めようとしないで、ってミサカはミサカは、懇願してみたり」
「……ッ!」
ここに来て、彼はようやく打ち止めがそれを恐れる理由に気が付いた。
そして気付いた瞬間、一方通行は自分の愚鈍さを呪った。
何が学園都市第一位だ。
どうしようもないクソ野郎だとは思っていたが、どうやらこの男は想像していた以上のクソ野郎だったらしい。
打ち止めは、他の誰でもない一方通行を守るために、自分の精神の成長を押さえ込んできていたというのに。
けれど、まだ理解出来ない。
『その感情』には、そうまでして大事にするほどの価値など無いだろう。
それを抱え込んでいることで彼女が傷付いていくのなら、迷わずに捨ててしまえばいい。
一緒に居たい、などという感情は、所詮は一方通行の独り善がりな我が儘なのだから。
彼女には、一方通行を切り捨てる権利がある。
かつて人形だった彼女らに命を与え、好き勝手に殺し、今なお彼女らを苦しめ続ける一方通行を。
「捨てろよ」
唾棄するように呟く声を聞いて、彼女は表情を痛切に歪めた。
しかし一方通行は、打ち止めがきっと望んでいないであろう台詞を、あえて突きつける。
「存分に俺を憎んで、真っ当な人間としての生き方を選択しろ。オマエにはそォするだけの理由がある」
†††
母体すら存在しないクローン人間ではあるものの、打ち止めには『家族』と呼べる人たちがいた。
大雑把だけれども優しくて暖かい黄泉川愛穂。
どんなことにでも相談に乗って、頼りにさせてくれる芳川桔梗。
全ての妹達を『妹』だと言って、支えてくれた御坂美琴。
いつだって陰日向から打ち止めの助けになっていた妹達。
ミサカの中で一番強く、それでいて一番寂しがりな末妹の番外個体。
しかし、いつからか、『家族』という枠の中から一方通行だけが剥離して、その存在が巨きくなっていった。
打ち止めの意思が生まれた時から、誰よりも近くに感じていた存在。彼が打ち止めを守ろうとする根底には、
確かに贖罪と自己満足の気持ちがあったのかもしれないが、二人にとってそれは紛れもない繋がりだった。
他人からは歪な関係に見られようとも、その繋がりがやがて本物の絆に変わる日がやってくることを、
打ち止めはずっと信じていたのだ。
――だからこそ、いつか自分の方から一方通行を憎む日が来るかもしれないという可能性に、気付けなかった。
身も心も成長した妹達には自我が芽生え、各ミサカ固有の主義主張が発生しだした。
打ち止めが気が付いた時には、自分たちが一方通行の代理演算を引き受けることを厭う妹達が現れていた。
一方通行本人は気付いていないかもしれないが、彼を支える演算性能は以前よりほんの僅かに縮小されている。
それは、彼への憎しみに目覚めた数人の妹達が打ち止めに懇願し、自分の計算領域の貸与を中断したからだ。
『酷い事を言っているのは承知の上だ。けれどもう、彼の平穏の為に自分の力を貸すという現状に耐えられない』
――打ち止めはとある妹達の一人からそう打ち明けられ、彼女に代理演算からの離脱を許可した。
上位個体である打ち止めにとっては、妹達の主張を叩き潰し、上位命令を用いて無理矢理に従わせることは
容易いことだ。しかし、妹達へのこの上ない屈辱とも言えるその手段を、打ち止めが行使できる筈もなかった。
彼女は結局、一足先に『憎悪』の味を知った妹達の背中を、何も言わずに見送ったのだった。
打ち止めが何よりも大切にしてきた『家族』の繋がりが、ブチブチと音を立てて千切れていく。
それと同時に、少女はとある未来の可能性に怯えた。このままネットワーク上に憎悪の感情が広がれば、
妹達全員が一方通行を憎むようになる日が訪れるかもしれない。そうなれば、もう彼の代理演算は成立しない。
一方通行の命を狙う個体だって出てくるだろう。いや、それ以前の問題として、彼女らに『死んでくれ』とでも
頼まれたら、一方通行は恐らく本当に自分の首を刎ね飛ばす。常に妹達への贖罪を望む彼にとって、それは
崖っ淵で背中を押されることに他ならない。
そうなってしまうことは、打ち止めにとって純粋な恐怖だった。
だから、たとえ一方通行の味方が自分だけになったとしても、彼女一人ででも代理演算を続けてみせる――、
そう決意していた。……それが、彼女の脳のスペックでは安全に実行出来る訳がないという現実には目もくれずに。
が、ここで彼女は恐ろしい疑問に思い当たってしまう。
もし、かつて番外個体が言及したように、打ち止めすらも一方通行への憎悪に気が付いてしまったら。
――打ち止めが、一方通行を捨てるという選択を採ってしまったら、彼は一体どうなるのか。
打ち止めの中に『悪を憎む心』があることは、今日ハッキリしてしまった。暴行される強姦魔を見て、心中で
良い気味だとせせら笑える程度には、彼女の悪意は肥大しているのだ。
あの事件は単なるキッカケにすぎない。しかし、その悪意を、いつ一方通行に向けてしまうのかは彼女にも
予測がつかない。そしてその時こそが二人の末路だ。
今の打ち止めなら、その選択を採ることは有り得ない。だが、このまま成長してしまえば、『有り得ない』とは
言い切れなくなってくる。未来の自分がまだ一方通行を好きでいてくれているか、確証など持てない。
そして、もし彼女の成長の先にそんな最悪な結末しか待っていないというならば。
彼女は、成長などしない方がマシだと――人間らしくなんてならない方が良いと、そう思う。
†††
「捨てろよ」
全てを悟ったような顔をした一方通行の声が、打ち止めの脳に直接突き刺さる。
今の彼女がそれを望んでいないと知っていながら、それでも未来の彼女の平穏と幸福を守るためだけに、
一方通行は、打ち止めに自分を拒絶させようとする。
「存分に俺を憎んで、真っ当な人間としての生き方を選択しろ。オマエにはそォするだけの理由がある」
幾重にも涙を落としながら、彼女はぼんやりと思った。この人はいつもそうだ。自分の都合なんて頭の片隅にも
置かずに、ただただ妹達の未来のことだけを考えている。代理演算を無くして彼が生きていける筈がないのに。
打ち止め達を救った結果、自分が独りきりになるのだったらそれでいいと、彼は本気でそう思っているのだ。
昔から全く変わっていないその不器用な自己犠牲に、彼女は胸を酷く締め付けられる。
自分を含む妹達は、こんなにも変わってしまったというのに。
何故彼は、こんなにも真っ直ぐで脆いまま――進歩していないのか。
一方通行は知らないのだ。
打ち止めが彼を庇い続けている、その理由を。
知らないからこそ、彼はこうもあっさりと打ち止めに彼自身を見捨てさせようとする。
誇張でもなんでもなく、一方通行は何も分かっていない。
そんな選択の先に、打ち止めの幸せなどある訳がないのに。
――打ち止めが望む未来の景色には、絶対に彼が必要だということが、一方通行には見えていないのだ。
「……、ばか……」
気が付くと、勝手に口が動いていた。
「――この馬鹿根暗自己満足短絡思考ヘタレ鈍感もやし!! ってミサカはミサカは好き勝手になじってみる!!」
腹に力を込めて叫んだ打ち止めを前にして、一方通行は驚愕するように両面を見開く。
普段の減らず口が嘘のように言葉を無くした彼には構わず、ただ彼女はまくし立て続けた。
「いつもいつもなんであなたはミサカのことを解ってくれないの!? 自分だけ傷付けばいいだなんて、そんなの
鼻で笑っちゃうくらい間抜けな勘違い野郎だよ! あなたが傷付いたらミサカだって沢山傷付くんだってことに
どうして気が付いてくれないのかな!? ってミサカはミサカは非難してみたり!」
少女は怒っていた。いつだって己の幸せを簡単に捨てようとする一方通行に対して。一番抱き締めて欲しい時に
突き放そうとする一方通行に対して。こんな事を叫ばせるほどに打ち止めを追い詰めた一方通行に対して。
そして何より、いつまでも自分自身の影に怯えて何も出来ずにいた、打ち止め当人に対して。
これから先、どんなに二人が変わってもずっと一緒にいられる。そう断言できるための絆を作りたかったのに。
今日、打ち止めは、ただ逃げているだけだったではないか。
恥ずかしくて、怖くて、痛くて、辛くて、そんな理由で一方通行を遠ざけていたのは、自分だったではないか。
側にいる自分が辛い思いをするのが嫌だからと。
――誰よりも大切な人に、『離れる』という最悪な結末を、選ばせかけてしまったではないか!
次の瞬間、怒りに身を任せた彼女がとった行動は、一方通行にとってあまりにも予測不能なものだった。
音すら立つこともなく。
塩辛い唇と唇が、一瞬だけ重ね合わされた。
「……な、」
打ち止めが頭を上げてから少しのタイムラグを挟んで、一方通行の息が詰まった。
「――、……だよ」
そして、彼女の口元が小さく動く。
涙に焼けて赤くなった瞳を揺らしながら、囁きかけた単語の羅列は、彼の思考を停止させるには十分すぎた。
あなたのことが好きだから、ずっと側にいて、触れていてほしいんだよ――と。
†††