ロードサービスの勉強をするため、本を読んでいると隣の部屋が騒がしい。
麦野は寝てるはずだから、文句を良いに行く。
「うるさいぞ、なにやってるんだ?」
今にも喧嘩しそうなフレメアと絹旗を止める。
「「私の方が、(超)(大体)胸が大きい(です)よね、浜面?」」
ステレオで言われても、
「んな微妙なもん測らないと分からん」
イライラしてたせいで適当な応対なのは仕方ないだろう。
「浜面、はいメジャー」
フレメアに手渡され、戸惑う。
例え服の上から測るにしても男にやらせて良いものなのか。
「って、私は超いやですからね」
ほらな。これが普通の、
「逃げるの? 大体、私は構わないけど」
小憎たらしい笑顔もフレメアがすればかわいいのだが、時と場合にもよる。プライドに火矢を撃ち込まれた絹旗と正直、目を合わせたくない。
結論から言おう、ギリギリ絹旗の方がでかかった。それはともかくなんでたんこぶ作らされたのかね、俺は。測れと言われたからだぞ、たく。
絹旗のキライな食べ物を夕食に出してやろうかと考える。
ちなみに絹旗は胸囲をネタにフレメアをからかっている。精神年齢が近いのか滝壺達といるよりも自然だ。ある意味、良い関係かもな。
「はまづら、うるさい」
愛しの滝壺がベランダから戻って来た。いつも通り、日光浴をしてたのだろうけど……、言うとおりうるさいからな。
「って、俺じゃなくてこいつらに言え」
滝壺は何があったか聞いて来た。いや順番逆だろ。俺はかいつまんで説明する。
「どうやって計ったの?」
説明に困り、フレメアを呼び寄せ実演する。流石に滝壺の前だし、服の上からだけど。
や、やるなら超正確に計れとのお達しですから。と心の中で弁解する。
滝壺が呆れ顔になる。
「はまづら、それチェストの測り方」
強烈なボディブローを頂戴し、ソファーに寝かされている。
ちなみに胸囲は別室で滝壺が測ってる。
トップとアンダーなんて普通の男が知るかよ。
あまりの騒がしさに起きたのか、目をこすりながら麦野が部屋から出てきた。
「はまづら、シャケ弁買ってきて」
第一声がそれかよ。おはよーとかもなしに。
少し待つように頼むと浜面だから仕方ないかとのお言葉を頂いた。自分で買いに行っても良いと思うぞ。
二人して無言だと気まずいからさっきまでの出来事を話すとおかしそうに笑った。
「ある意味合ってるわ、それ」
どういうことか問いかけると、チェストは男の胸、『ではなく』平らな胸という意味らしい。
笑いそうになるのをこらえる。何故かって? 滝壺に睨まれてるから。
「はまづら」
名前を呼ばれ、正座いや土下座しそうになる。
「は、はい」
悪いこと、してないよな。
「きぬはたの胸、どうだった?」
こういう時、下手な嘘をつくのは三流だ。やましい事はないんだから正直に答えれば良い。
「膨らみかけでも柔らかいんだ、な……」
あの、滝壺さん? 何で急に冷凍イカみたいな目に?
「浜面、超殺します!」
その言葉を聞いた俺は走り出す。
「シャケ弁買ってくる!」
ありがとう麦野。最高の助け舟を着岸させててくれて。
「詳しいね。流石、おばさん。にゃあ」
あ、帰って来ても部屋があると良いな。