滝壺に料理をご馳走してくれると言われれば否が応でもテンションが上がる。きっと『好き』だからとも言われたし。  
まあ、その前のデートのお誘いからしてテンションは限界ギリギリだけどな。滝壺って、あんまり趣味とかないのか一緒にいるけど何をしようとか誘っては来なかったからな。  
待ち合わせ場所で、テンションが限界を超えた。  
清楚な滝壺にピッタリの白ワンピ。アクセントの黄色いリボンも眩しい。  
以前のデートでジャージだったことから考えれば、テンションドン、さらにドンだ。  
「行こう、はまづら」  
自然に腕を組んで来る滝壺に、俺、彼氏名乗って良いかもと思えた。  
 
初めは映画館に向かった。この後を考えてショートフィルムだ。  
絹旗と違い有名なのをチョイスしたらしく無難に面白い。こういう奇をてらわない恋愛ものも良い。というかカップルで見るならこういうのだな、うん。  
当たり外れが激しいのは『友達』と見るのがベストだ。  
 
その後は遊園地に向かった。途中で小腹が空いたのが滝壺にバレてクレープを食べた。  
滝壺の手料理に比べれば、と思いたいが時折食べさせ合うのは良かった。俺たち幸せですって叫びたい位に。  
特に恥ずかしそうに「あ〜ん」と言う滝壺は映像に残したいくらいだ。  
 
 
遊園地ではメリーゴーランドに二人で乗り、その後俺だけ降りて写真に撮った。笑顔の滝壺の写真をパネルにしたら引かれるか本気で考えてる。  
まあ、一緒に乗った時の背中に感じた膨らみ、もとい暖かさだけで十分幸せだから気にしないことにしよう。  
お化け屋敷では、なんとなくそわそわする滝壺がかわいかった。きゃーとか言うのも悪くないが、滝壺にはこっちの方が似合う。  
ちなみにフレメアは鼻で笑いやがったからな、このお化け屋敷。自分で入りたいって言っときながら。  
観覧車も滝壺と乗るのが初めてだ。フレメアは絶叫三昧で『妹』に振り回される感じだったからな。  
「綺麗だな」  
それが窓の夕日か、それとも微笑む滝壺かは定かではない。  
ただ、にこやかな滝壺を見ればどちらでも良いか、と思えた。  
 
「大分遅いけど平気か?」  
手料理は楽しみだけど、少々不安になる。  
「うん準備は出来てるから」  
滝壺の部屋に行くと何故か炊飯器が三台稼働していた。  
滝壺は鍋に火を入れスープを温め、冷蔵庫から野菜を取り出してサラダを作る。  
それらを並べ終わった後、炊飯器を開ける。中からは煮込みハンバーグが良い匂いを漂わせる。だから、大丈夫か。確かに下拵えして味付け整えればタイマーと保温使えるからな。  
エプロン姿が見れないのは残念だけどうまそうで何よりだ。アイテム時代、多忙なだけにちょっと不安だったりしたんだよな。  
アイテムの一人は汚エプって感じだったしな。白いエプロン台無しだは、臭いだけで吐き気するし。命が惜しいから食べたけどな。  
「ご飯はこれくらいで平気?」  
小さめのお茶碗にこんもりとよそわれる。頷いて、まずはスープを一口。基本に忠実なコンソメスープは普通にうまい。  
取り分けられたハンバーグを箸で割れば、中まで染みてて食欲をそそる。  
一口、頬張って慌ててご飯を掻き込む。紙一重何か違えば究極っぽい味が口に広がったんだ。  
そんな俺を見て滝壺は、すまなそうにすると。  
「やっぱり外国産はダメだね」  
と言って、もう一つの炊飯器からハンバーグを取り分ける。こっちが学園都市産か。  
滝壺が立ち上がるのを見て、どうしたのかと聞く。  
「エプロン姿見たかったんでしょ?」  
その後、食べててと言われたため新しく配られた方を口にする。  
やっぱり、究極と紙一重の味がした。いや煮込み方は悪くなさそうだし、原因に悩む。汁を舐めたところ普通に美味いし。  
 
悩んでるうちに滝壺が戻って来た。裸エプロンで! 手にはフライパンという男の夢で!  
いや、落ち着け浜面。水着エプロンの可能性が七割だ。あるいは下着エプロンがほぼ三割。  
前から見れば桃源郷だけどな。  
「あれ、はまづら嫌いだった?」  
あまり減ってないハンバーグを見て、そう言われた。  
「いや、せっかくだから味わってたんだ」  
滝壺は嬉しそうに微笑んでくれた。その笑顔のためなら俺は明日、トイレの住人になっても構わない。  
「良かった、やっぱり『きぬはた』好きだよね」  
その言葉が脳に届く前に、滝壺の言葉が紡がれた。  
「後はこれでビンタでもすれば良いのかな? はーまづらー?」  
 
 

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