(やる事もないし適当に買い物して帰るか。今日の晩飯何にすっかなー)
昼間と夕方の間にある時間帯、上条当麻は薄っぺらい財布をズボンに突っ込みふらふらとスーパーの方に向かって歩いていた
(タイムセールは……着いたらちょうど終わりそうな時間だな。はあ、万年金欠だというのに、不幸だ)
溜息を吐きながら1人で勝手に落ち込んだ後中身を確認するため財布を取り出そうとしたその時
「突撃ー!ってミサカはミサカは勝手に決めた定位置に乗っかってみたり!」
軽快な足音が鳴り響きその直後ドシッっと音と共に上条の背中に衝撃と重量が加わった
「うわっ!?な、何だ!?」
何とか前に倒れるのを堪えていると今度は視界が真っ暗になる
「だ〜れだ!ってミサカはミサカはお約束を実行してみたり!」
「うわっ、ちょ、前が見えねえ!」
ただでさえふらふらしてたところに視界を防がれ平衡感覚を失った結果、上条は前のめりに倒れた
「いてて……。不幸だ……。何なんだよもう」
「大丈夫?ってミサカはミサカは自分の責任を放り投げてあなたの心配をしてみる」
「ああ、何とか。その声は……えっと、打ち止め……だっけか?」
「当たり!ってミサカはミサカは覚えてもらえてた喜びを体で表現してみる」
「ぐおっ!?ひょ、表現するのはいいからとりあえず俺の上から降りてくれないか……?」
上条の言葉に従い打ち止めは地に足を付け立ち上がる
それに伴い上条も立ち上がり簡単に服に付いた砂などを払う
そしてようやく正面から対峙する
「久しぶりだな、打ち止め」
「久しぶりってミサカはミサカは元気に挨拶してみる」
そこにはどこかで見たような顔を幼くした10歳前後の少女が立っていた
「今日はどうしたんだ?また御坂妹と遊んでいるのか?」
「ううん、今日は一人ってミサカはミサカは悲しい事実を告げてみる
あなたを探してここまで来たの、ってミサカはミサカは何か恋人っぽい発言をしてみたり」
「遊ぶ相手がいなくて寂しくふらついてたら俺を見つけたっと、そんな感じか」
「ムカーッ!実際そうだけど本当の事言われると腹が立つ!ってミサカはミサカは怒りを露わにしてみる」
「はいはい、でも俺今から晩飯の買い物に「ミサカとデートしよっ!ってミサカはミサカは提案してみる」
「晩飯の買い物に「ミサカとデートしよっ!ってミサカはミサカは再び繰り返してみる」
「ば「ミサカとデートしよっ!ってミサカはミサカは再三に渡り告げてみる」
どうやら打ち止めの中ではすでに決定事項らしく上条に反論の余地は与えないつもりのようだ
上条は、はあっと軽い溜息をついた後打ち止めの方を向き直して観念したように告げる
「わかったよ。じゃあ金下して来るからちょっと待っててくれ」
「逃げちゃめだよってミサカはミサカは警告してみる」
警告を背に上条は近くのコンビニに入りATMの前に立つといつもの一言を発した
「不幸だ……」
所変わって以前御坂妹にネックレスをプレゼントしたことのある地下街の入り口
そこに少し厚くなった財布を装備した上条当麻と打ち止めは立っていた
「で、デートって何をすればいいんだ?上条さんにはそんなうらやましい経験はないから何をすればいいかなんてわからないぞ?」
「前一〇〇三二号に色々物とか買ってあげてたでしょ?ってミサカはミサカはネットワークから記録を拾い上げてみる
あんなことやってみたい!ってミサカはミサカは目を輝かせてみる」
「あんなのがデートなのか?ただの買い物だった気が……」
「本で手に入れた知識によるとあれがデートらしいってミサカはミサカは自分でも半信半疑になりながら答えてみる」
「そんな曖昧な知識なのに誘ったのか」
「だってしょうがないじゃんミサカだって経験ないんだもんってミサカはミサカはうな垂れてみる」
「そんな事されても上条さんにはどうしようもないが……
で、これからどうするんだ?二人ともわからないんじゃデートのなんかできないと思うんだが」
「それでもやーりーたーいーのー!ってミサカはミサカは一度否定された駄々っ子交渉術を再度行使してみたり!」
「それは一部の人達には効果抜群かもしれないが上条さんの守備範囲からは外れてますよっと
じゃあどうするんだよ。このまま突っ立ってても日が暮れるだけだぞ」
「うー……、あっ!ってミサカはミサカはいけないと教わったのに人を指さしてみる
あの人達もデートだよね?ってミサカはミサカは他の意見も取り入れようとしてみる」
「どれどれ、あーそれっぽいな。であの人達がどうかしたのか?」
「あの人達もどこで買い物しようかって言ってるよ!ってミサカはミサカは自分の持っていた情報の正しさに胸を張ってみたり」
「そんなもんなのか……、じゃあまあとりあえず俺達も適当に店とか見て回ってみるか」
「うん!ってミサカはミサカは喜んでみる」
傍から見ると兄妹としか見られない程見た目の年齢が離れた二人はデートという名目で
打ち止めは元気いっぱいに、上条はゆっくりと地下街を歩き始めた
が、打ち止めは数歩先ですぐに歩みを止めた
「あ、そうだってミサカはミサカは振り返ってみる」
「ん?どうした?」
「手、ってミサカはミサカは左手を差し出してみる」
「手?」
「デートなんだから繋いで歩こ?ってミサカはミサカはなんかそれっぽい事を要求してみる」
「……そうだな。デートだしな。手、繋ぐか」
「ありがとう!ってミサカはミサカはお礼を言ってみる」
「いや、こっちこそ気が付かなくてすまなかったな。じゃあ、行くか」
「うん!ってミサカはミサカは心を躍らせてみる」
二人は手を繋ぎ今度こそデートの為に二人一緒に歩き始めた
「うわ〜、かわいい服がいっぱい!ってミサカはミサカははしゃいでみたり」
「……この空間に男が居るのは少々辛い物があるな」
とりあえず一番近くにあった服屋に足を運んだ二人
上条当麻はバーゲン品などのやっすい服を好むオシャレ度の低い人間なので必然的に打ち止めの為の服を探すことになった
この店は子供服で纏めておらず完全にレディースとメンズとで分けられているようで
打ち止めの服を探すためには女の子濃度の高い空間にお邪魔するしか方法がなかったようだ
「まあ、楽しそうだしいっか」
打ち止めはああでもない、こうでもないと服を手に取り唸っている
その後ろ姿を見ているとこの空間に居るのもそんな悪くないと思えてきた
「ねえ、どっちがいいと思う?ってミサカはミサカはすでに答えが決まっているのに尋ねるという女の子特有の質問をしてみる」
「ん?どっちがいいか決まってるなら俺に聞く必要ないだろ?」
「共感を得たいの!ってミサカはミサカは女の子の機微を理解しないあなたを怒ってみる」
つまり当たりか外れの二択の選択肢を選べという事か、と上条は考える
当たりを引けば二人とも同じ事を考えてたとわかり嬉しくなる、が
(外れを引いたら何とも言えない空気になるよなあ……。不幸な上条さんに当たりが引けるのか?)
外れた時の事を考えると気軽に選べずつい黙り考え込んでしまう
「は〜や〜く〜ってミサカはミサカは催促してみる」
(うっ)
どうやら時間切れのようだ。打ち止めは黙り込んだ上条に対して二種類の服を突き出してくる
(えーい、どうにでもなれ!)
「こっち……かな……?」
「わ〜、同じ考えだ!ってミサカはミサカはくるくる回って喜びを表してみる」
どうやら当たりだったようで打ち止めは上機嫌に服を抱きしめ回っている
(ほっ、なんとか当たったか)
上条はそっと胸をなで下ろした
少しすると打ち止めは回るのを止め持っていた服を片付ける。……上条が選んだ方も含めて
「えっ?お前それ気にいったんじゃないのか?」
「うん、だけどちょっと高いからってミサカはミサカは謙虚な心を見せてみる」
服の値札を見ると、成程どこかのブランドの物なのか少々お高い値段だった
上条は少し思考を巡らせた後
「いいよ、買ってやる。せっかくのデートなんだ気にするな」
「えっ、でもってミサカはミサカは」
「いいんだよ。男には見栄ってのがあるんだよ」
打ち止めの言葉を遮ると打ち止めが片付けた服を手に取りレジに向かった
(しばらく財布は薄くなるけど……、こんな時に考える事じゃないか)
「ほら、買ってきたぞ」
服の入った紙袋を手渡された打ち止めは目を輝かせて中身を見る
「うわ〜、本当だ!ってミサカはミサカは大喜びしてみる!
本当にありがとうってミサカはミサカはお礼を告げてみる!」
「いいよ。その代り今日はその服の値段分くらいは楽しませてくれよ?」
「うん!ってミサカはミサカはあなたの手を引っ張っぱりながら告げてみる!」
「あれなに?ってミサカはミサカは質問してみる」
「動物の形をしたベビーカステラかな?へー、色つきのを作る実験なのか。買ってみるか?」
「うん、ってミサカはミサカはよくわかんないけどとりあえず肯定してみる」
「ほい、どうぞ」
「うおー、学園都市はここまで動物を小さくできるのか、ってミサカはミサカは驚いてみる
でもどうしてどの子も鳴かないの、ってミサカはミサカは不思議に思ってみたり」
「なんだ、食わないなら俺が食っちまうぞ。冷めたらもったいなぐおっ!?」
「た、たとえ実験品であっても!ミサカはこの子たちの命を守ってみせる、ってミサカはミサカはぁあっ!!!」
「わ、わき腹にドロップキックはさすがにキツイ……。ていうか前もこんな事があったような……?」
「喉が渇いてきたかも、ってミサカはミサカは暗に催促してみる」
「暗にはなってないな……。自販機、自販機っとあったあった。何が飲みたい?」
「何かまともに飲めそうなのがほとんどないんだけど、ってミサカはミサカはミサカの少ない経験でも
判断できる異常っぷりに驚いてみる。あなたのおすすめは何?ってミサカはミサカは聞いてみたり」
「えっと、ちょっとクセがあるがヤシの実サイダーならまだ比較的まともに飲めたはずだ」
「じゃあそれでいいや、ってミサカはミサカは消極的選択しかできない現状を嘆いてみたり」
「うおー、ゲームがいっぱいだ!ってミサカはミサカは興味を惹かれてみたり」
「何だ、ゲーセン初めてなのか?」
「うん、あの人達こういうとこ連れてきてくれないのってミサカはミサカは陰口を叩いてみる」
「よしっ、じゃあ遊ぶか!」
「やったー!ってミサカはミサカは突撃してみる」
「っと、もうこんな時間か。そろそろ帰らないと完全に日が暮れちまうな」
色々回っていたら思った以上に時間が経過していたようだ
地下街だから分かり辛いが外ではもうそろそろ街灯もつき始まる頃だろう
「えー、もっと遊びたい!ってミサカはミサカは駄々を捏ねてみる」
だが打ち止めはまだ遊び足らないようで不満げな顔で文句を垂れていた
「そんなこと言ってもなあ。あんまり暗くなると保護者さんが心配するだろ?俺も晩飯の準備しないといけないし」
「うー、じゃあ最後にアクセサリー買って、ってミサカはミサカは譲歩してみる」
アクセサリーぐらいで機嫌をとれるならいいか、と上条は考える
今日一日でだいぶ薄くなった財布だがそれぐらいは持ちこたえてくれるだろう
「別にいいけど、あんま高いのは買えないぞ?」
「こういうのは値段より気持ちが大切なんだよ、ってミサカはミサカは知ったような口を聞いてみる」
「ふ〜ん、じゃまあ行くか」
「やったー!ってミサカはミサカはあなたの手を引っ張ってみる」
打ち止めが上条の手を引く形でアクセサリーショップへ歩み始めた
アクセサリーショップまでの簡単な場繋ぎにと上条が話題を振る
「ところでアクセサリーってどんなのが欲しいんだ?御坂妹と同じようなペンダントか?」
「ううん、このミサカは指輪が欲しい!ってミサカはミサカは要望を告げてみる」
「指輪ねえ。何か理由はあるのか?」
「えっとね、薬指にはめる特別な指輪を異性に買ってもらうと
勝ち組になれるらしいの!ってミサカはミサカはネットワークで拾った知識を自慢げに披露してみたり」
「薬指に指輪…………!ら、打ち止め、ちょっと待って。お前に教えなくちゃいけないことがある」
打ち止めの言葉に反応して上条は歩みを止めた
手を繋いでる打ち止めも引っ張られる要領で必然的に立ち止まる事となる
「うわっ!ってミサカはミサカは予想外の行動に驚いてみたり
教えなくちゃいけない事って何?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
「えっとな、その薬指につける指輪ってのは好きな人から貰う物なんだよ」
「?このミサカはあなたのこと好きだよ、ってミサカはミサカは再び首を傾げてみる」
上条の発言の意図がわからなかったようで打ち止めは再度首をひねった
上条の方もなんと説明していいのか分からず頭を悩ませている
(こういうのは小萌先生とかそっちのタイプの人の仕事だよなあ。保護者さんちゃんとやっといてくれよ……)
どこの誰かもわからない打ち止めの保護者に心の中で恨み言を言いながら思考を巡らす
が結局愚直に言い続けるしか方法が見つからずあきらめる
「その指輪は本当に好きな人から貰う物で……」
「だから本当に好きだよ、ってミサカはミサカは繰り返し告げてみる」
「えっとそうじゃなくてな、恋人にしたいとか結婚したいとかそういう好きな人から貰うんだよ」
「そうなんだ、じゃあもっと欲しなっちゃったかも、ってミサカはミサカは微笑んでみたり」
上条の言葉を聞いた打ち止めは手を離し数歩前に進んでから振り返る
「だってこのミサカはそういう意味であなたが好きなんだもん、ってミサカはミサカは告白してみる」
その言葉に驚き反応できない上条を置いてきぼりにして打ち止めは語り続ける
「その好きってその人に見て欲しいとか、その人に気にかけて欲しいとか、その人とずっと一緒にいたいとか
もっといくとその人に自分の事だけを考えて欲しいとかそういう気持ちの事だよね?ってミサカはミサカは確認してみる
このミサカは、ううん、このミサカだけじゃない他のミサカ達もみんな
あなたにそういう感情を持ってる、ってミサカはミサカは許可も取らずみんなの気持ちを代弁してみたり
あの日、あなたに助けられたあの夜、ミサカ達が大きな一つじゃなくて小さな個人に分かれた瞬間
本当に小さかったけどミサカ達はあなたにそういう感情を持ったの、ミサカはミサカは語ってみる
あの時はまだミサカ達は幼くてあの温かい気持ちがなんなのかわからなかったけど今ならわかるよ
あの時ミサカ達はあなたを好きになったんだ、ってミサカはミサカは思い出を反芻してみる
あなたはミサカ達の光なんだよ、太陽より大きくて温かくて優しいそんな光、ってミサカはミサカはあなたの感想を述べてみる
今は違うけれどあなたに合うまではミサカ達はお世辞にも日の当たる暖かい所にいなかった、
だからその光が欲しくてしょうがないんだよ、ってミサカはミサカは欲張ってみたり」
そして一呼吸し最後に凛として告げる
「だからミサカ達はあなたに照らし続けて欲しいんだよ、ってミサカはミサカは綺麗に纏めてみたり」
そう言い切るともう話したい事は全て話したといった風に上条の顔を見つめる
上条の言葉を待つように、約束した相手を待つ恋する乙女の顔つきをしながら
対する上条は瞳を閉じて思いを、感情を、打ち止めの真摯な気持ちを頭の中に巡らせ考える
少し、だが上条の中では何時間にも及ぶような時間が経過した後目を開け、打ち止めを見、口を開く
「なあ、1つ、本当に失礼かもしれないけど1つだけ質問してもいいか?」
「うん、いいよってミサカはミサカは許可してみる」
「その気持ち、俺に助けられた時に芽生えたって言ったよな。それは本当に純粋に俺が好きでそう思ったのか?
命を救われたからとか個人の命の価値を見出してくれたからとかそんな理由で義務的に思ってるだけじゃないのか?
もしそうだとしたら俺はその気持ちは受け取れない。俺はそんなものは求めた訳じゃないからな」
失礼だとわかっていても聞かずにはいれなかった
そんな洗脳じみた感情を上条当麻は求めてるわけではないからだ
もしそれを受け入れてしまったら御坂妹たちにあんな実験を強いた連中と同じになってしまう
そんな上条の問いを聞いた打ち止めは俯き少し顔を曇らせる
そしてゆっくりと言葉を紡ぐ
「確かに切っ掛けはそうかもしれない、ってミサカはミサカは少し肯定してみる
ミサカ達はまだ経験が全然足りないから違う感情を好きという感情に
勘違いしちゃうかもしれないし、ってミサカはミサカは情けない自分達を見て落ち込んでみたり
だからあなたの言うような純粋な気持ちじゃなかったかもしれない、ってミサカはミサカは後ろめたくなってみる
でも今は、その思いを育てて大きくした今は!純粋な気持ちだって、ミサカはっ!!ミサカは……」
自信を持って上条に主張したかったのだろう
だが根っこの部分では自分自身でも確信が持てなかったのか、不安な気持ちを抑える為に次第に声を荒げ
言い切ろうとしたが結局最後まで吐き出すことができずに言葉を口内に留めるしかなかった
やり場のない大きな感情をその小さな体に抱え込んだ結果歯を食いしばり手を強く握りしめることしかできなかった
「ごめん、嫌な事聞いちまったな」
上条は打ち止めの前に膝立ちになり強く抱きしめながら背中をトントン、っと叩く
それで少し落ち着いたのか打ち止めは強く握った手をゆっくりと開き上条に力無く寄りかかる
「ううん、むしろお礼を言わなきゃ、ってミサカはミサカはあなたの暖かさを感じながら返事をしてみる」
「お礼?」
「うん、だってあなたはこのミサカを子供扱いしたり適当に流したりするんじゃなくて
正面から気持ちを受け止めてくれた、ってミサカはミサカは喜んでみたり
それにあの質問はすぐに否定できなきゃおかしい質問だもん、ってミサカはミサカは自虐してみる」
そう告げると打ち止めは上条の背に手を回す。そして強く、強く抱きしめる
凍えた心を温めるために、暖かい光を逃がさないように、精一杯の力を込めて
「でもねあなたが好きだってのは本当だよ、ってミサカはミサカは譲れない一線を示してみる」
「ああ、そこを疑うようなことはしないよ。お前達が俺を好きだってのはわかったよ」
「ならいいか、ってミサカはミサカは妥協してみる」
満足できたのか打ち止めは上条から離れる
そして上条も簡単に膝を払ってから立ち上がり打ち止めに向き直る
「もう落ち着いたか?」
「うん、ありがとう、ってミサカはミサカはお礼を言ってみる」
「よかった。……アクセサリー、どうする?」
「今は薬指の指輪はいいや、ってミサカはミサカは我慢してみる」
「そうか。じゃあ今日は帰ろうか」
「うん、途中まで一緒に帰ろう、ってミサカはミサカは誘ってみる」
「ああ、いいよ」
そして二人はまた手を繋ぎ歩き始めた
「ミサカはこっちなの、ってミサカはミサカは家の方を指さしてみたり」
曲がり角で打ち止めは上条の家とは違う方角を指さす
「そうか。じゃあここでお別れだな」
「寂しいけどしょうがないね、ってミサカはミサカは呟いてみる」
だが打ち止めは何時まで経っても手を離そうとしない
上条はそんな打ち止めを急かしたりせず無言で見守っている
ゆっくりとした時間が二人の間に流れていた
少し経った頃打ち止めは顔を上げ上条の方を見る
「ねえ、もしミサカ達がもっと経験を積んで純粋な気持ちであなたの事を好きになれたら
その時は薬指の指輪をくれる?ってミサカはミサカはおそるおそる聞いてみる」
「その時はゆっくり時間をかけて答えを出してやる」
「あはははは、簡単にはくれないんだ、ってミサカはミサカは笑ってみたり」
「こう言う事は簡単に答えを出していい事じゃないからな。お前ももっと魅力的にならなきゃな」
「あははは、そうかでも希望は見えてきたかも、ってミサカはミサカは心を躍らせてみたり」
打ち止めの顔には笑顔が戻りしばらくの間笑い続けた
ひとしきり笑い終えた後上条の正面に移動し上条に告げる
「ねえ、ちょっとお辞儀してみて、ってミサカはミサカはお願いしてみたり」
「ん?別にいいけど何だ?俺はゴーグルなんてつけてないぞ?」
ちゅ
お辞儀した上条の唇に柔らかくしっとりしたものが触れる
「はっ?えっ……えっと……?」
「えへへ、初めてをあげちゃった、ってミサカはミサカは他の人が聞いたら勘違いしそうなセリフを吐いてみる」
何が起こったかわからない上条とは対照的に打ち止めはしたり顔でにやにやしている
「な、何で……?」
「今日のお礼!ってミサカはミサカは重い物をあげて逃がさない作戦をとってみる」
未だ呆然としている上条に背を向け打ち止めは走り出す
そして少し離れてから立ち止まりもう一度だけ振り返った
「おっと忘れてた、ってミサカはミサカはドジっ娘アピールしてみる
またねー!ってミサカはミサカは再開を希望する意味を持つ言葉で別れを告げてみたり」
言い終えると打ち止めは再び走りだし雑踏の中へ身を隠してしまった
それからしばらくしてようやく上条に理解が追い付く
「えっとあれって、そ、そういうことなんだよな……?す、好きだって言ってたもんな」
深い深呼吸して早鐘の様に鳴っている鼓動を落ち着かせる
少ししてようやく緊張が取れたのかいつものように頭を軽く掻き独り言を呟く
「はあ、不幸……じゃないな。あんな気持ち寄せられたのは初めてだからわかんないけど、こういうのを幸福って呼ぶんだろうな」
そして人から好意を寄せられた幸せを噛みしめ笑顔のまま帰路に着くのであった