第十学区を歩く麦野。彼女はたまにサバを供えにこの学区へ来る。
その目に見覚えのある姿が映る。第三位、美琴である。
とは言え、昔みたいに見つけたら殺すというほどの理由は今の麦野にはない。
とはいえ、美琴の方から殺意を放つなら話は別である。
もっとも、取るに足らない存在だと言わんばかりの扱いをしてくれた第二位と比べれば、遥かに敵意は薄いが。
「良くもまぁ、私の前に顔を出せたわね、」
勝手にそっちから来たんだろと言う言葉を飲み込む。最近、浜面と滝壺に幸せオーラを撒き散らされて、苛立っているのだ。
戦うのも悪くはない。そう軽く考えた彼女を本気にさせるには十分な言葉が美琴から放たれた。
「テレスティーナ!」
麦野の中で何かが切れる音がした。
「誰と間違えやがった、第三位!」
超能力者同士の戦いに巻き込まれた上条さんが大変な目に遭うのは、また別の話。