とあるビルの給水タンクの近くに絹旗最愛はいた。  
 
より正確にいえば絹旗自身が数百メートルの距離から給水タンクに激突した際にできた巨大な水溜りの中に倒れていた。  
 
(まさかあんなことをやるとは…超予想もつかなかったです…)  
鈍い思考を働かせながら、とりあえず自分を吹っ飛ばした相手に悪態をつく。  
(ああいうタイプは超加減をしないから、相手をするのが超面倒です)  
心の中で呟きながら四肢に力を入れて起き上がろうとする。  
 
 
が、直後、空から降ってきた透明な槍が彼女の近くをえぐる。その衝撃で絹旗は再び水たまりに突っ伏した。  
 
そんな絹旗のもとに一人の少女が歩いてきた  
年齢は12歳程度。長く伸びた黒髪は先のほうの色が抜けている。黒いパンクスーツに白いコートのフード部分だけを被った服装。  
 
そして背後についている無数の歪な機械の『腕』。絹旗を数百m吹っ飛ばした原因でもある。  
 
そんな少女、黒夜海鳥は絹旗を見下すように水溜りの近くまで歩いてきた。  
 
「あっれえ?絹旗ちゃーン?さっきまでの威勢はどこ行ったァ?」  
そしてニヤニヤしながら絹旗のそばに寄って来ると、  
「優等生ちゃんが劣等生にぼこぼこにされるってのはどンな気分か…なァ!」  
絹旗の腹部を鋭く蹴り飛ばした。  
 
「かっ…はぁぁ!」  
水溜りを転がる絹旗を見て、黒夜は薄く笑う。  
「無様だなァ。もうちょっと頑張ってくれよ。ブッ殺す楽しみが減るだろォ」  
 
「…そんなに私を超殺したいんですか。超恨まれたものですね」  
もはや立ち上がる力すら残されていない絹旗はせめても言葉で反論する。  
「別に恨みとか理由とかは要らないンだよ。ただいたぶって殺したい。それだけの話」  
対する黒夜は気負わず、自らの行動を口にする。反論が無意味だというように。  
 
 
プルプルプル…プルプルプル…  
 
とその時、場違いな電子音が屋上に響く。絹旗の携帯電話だ  
 
思わず驚きが顔に出る絹旗。それを見て黒夜は嘲笑を浮かべると  
「誰だろうなァ。こんなお取り込み中の時によォ」  
動けない絹旗の携帯電話を奪って、通話ボタンを押した。  
 
「絹旗か!?今、麦野や滝壺と合流した!そうしたらお前がなんか厄介な奴を見つけたって…」  
「厄介な奴とはひでェ言われようだ。否定はしねェど」  
「!?…お前、個室サロンの!?」  
「黒夜海鳥。自己紹介してなかったっけ。浜面仕上くン」  
「絹旗は!?あいつをどうしやがった!?」  
「今は何もしてない。今からするけど。探しまわってみれば?間に合うかどうかは知らねェけど」  
「なっ!?おい、ふざけんなテメェ―」  
 
「なんか今からお仲間が来るらしいよ。よかったなァ」  
そう言いながら黒夜は地面に落とした携帯電話を踏み砕くと  
 
「さっさとブッ殺そうと思ったけどよォ、もっとイイことをしてやる」  
歪んだ笑いを浮かべた。  
 
「絹旗ちゃンって性行為をシたことってあるのかなァ?」  
「なっ!」  
あまりにぶしつけな質問に思わず赤面する絹旗。その隙に黒夜は絹旗の上に覆いかぶさる。  
「フーン。シたことないわけだ。その方が壊し甲斐はあるな」  
言いながら自分の両手を絹旗のスカートに近づける。  
「私の能力、知ってるよなァ?」  
 
 
一瞬、何を言われたか理解できなかった。  
「まさか…超ありえないです。そんなこと…」  
『窒素爆槍』、黒夜海鳥の持つ能力。両の掌から発生する窒素の槍。  
 
そんなものを秘部に当てたらどうなるか。  
 
「威力は調節するから、せいぜい子宮口が大きく開いちまうぐらいかなァ?大したことねェだろ?」  
「超…ふざけんなッ!」  
 
絹旗は必死に彼女の能力、『窒素装甲』を発動する。装甲は彼女の体を覆うようにして出現した。当然、秘部も覆うように。  
 
「チッ!」  
発動の瞬間、黒夜は危険を回避するため後方に下がった。生身で戦うには絹旗最愛の持つ能力は危険すぎる。  
 
「無駄なあがきを…そんなもン、こいつでブッ壊してやる」  
 
ぞわわ、と。  
黒夜の後ろにマントのようにあった『腕』が上方に展開し、下の絹旗へとその掌が向いた。  
 
そして黒夜の能力、攻撃性に特化したその能力が一斉に放たれた。  
能力を発動しつつ立っているだけで手一杯だった絹旗は、槍によって盾を崩されその衝撃で地面にたたきつけられた。  
「が…あっ…は」  
 
「余計な手間を掛けさせンなよォ」  
 
再び黒夜の背後にあった無数の『腕』が蠢き、一か所に狙いを定めた。  
能力で発生した障壁に守られている絹旗の秘部へと。  
 
そして、  
「さて、遠慮なくブチ抜かせてもらうかァ」  
 
ボンッ!!!!!と無数の『腕』から無数の窒素の槍が吹き出した。  
それらはやすやすと窒素の障壁を破り、絹旗の純潔を貫いた。  
 
「があああああああああああ!!!」  
襲ってきた圧倒的な痛み。純潔を無理やりに破られ、本来受け入れるはずのないものが入っている激痛に絹旗は絶叫した。  
 
「いちばん奥までは到達してねェのか。まァいいや。もう一発ブチ込ンじまえば」  
 
直後、今度は一本の太い槍が子宮口をこじ開けて、最奥まで到達した。  
 
「うああああああああああ!!!」  
再び襲ってきた膣内を犯される痛みとそれを超えるほどのおぞましい感覚。  
 
二度の蹂躙で絹旗の膣内はボロボロになっていた。  
いや、体だけでなく精神も壊されようとしていた。学園都市の暗部にいる身とはいえ、中学生。自分の好きな相手に純潔は捧げると思っていた。  
しかし、そんな些細な願望が単なる超能力の作用によって呆気なく壊されたのだ。  
その衝撃は絹旗のまだ未熟な精神を壊すには十分だった。  
 
「あ…う、あ…」  
もはや絹旗の瞳からは生気が消え、涙が半開きになった口へ流れていた。  
「脆いな、もう壊れたのかァ?ちょーっと早すぎるだろォが…よォ!」  
 
黒夜自身の腕から窒素の槍が発射された。右腕は絹旗の秘部に、左腕は菊門に。  
 
「あ…あぁぁぁぁぁ…」  
痛みではなく絶望が絹旗に突き刺さった。自分はどうしようもなく醜い存在だとぼんやりと思った。もしかしたら、自分は暗部よりも穢れてしまったのかもしれない。  
 
「チッ、本当にイカれちまったのか。つまんねェな」  
黒夜は絹旗を踏みつけながらつまらなさそうに言うと  
「もう殺しちまえばいいか。」  
右手を絹旗の心臓の位置に向けた。  
 
そうして、まさに発射されようとしたその時―  
 
 
「絹旗!!!」  
そう怒鳴りこんで屋上へ一人の男が突入してきた。  
 
浜面仕上。彼は『アイテム』の仲間と協力しながらここまでたどり着いたのだ。  
 
「なんだ。今、殺してやろうと思ったとこなのによォ。」  
黒夜は薄笑いを浮かべ、浜面を見た。  
「テメェ…絹旗に何をしやがった!!!」  
嘲笑を受け、浜面は怒りを爆発させた。  
 
しかし、黒夜はすでに目の前の彼を見ていなかった。  
(浜面仕上がここに到着した。ということは、麦野沈理、滝壺理后も同伴している可能性が高い。ここらで退いておくか…。)  
 
「さて、そろそろ退くか。まだやるべきことがあるんでね」  
そう言った黒夜の顔には先ほどまでの狂気はなく、代わりに恐ろしく冷静な顔を見せていた。  
「おい待てよ、テメェ―」  
浜面が言葉を発する前に、黒夜は屋上から飛び降りていた。  
 
浜面は一瞬屋上の淵へと足を踏み出したが、すぐに絹旗の方へと走っていくと彼女を抱えあげた。  
「絹旗!おい、しっかりしろ!絹旗!」  
しかし、彼女は先ほどの騒ぎの前と変わらぬ虚ろな顔をしていた。  
 
ビルの下は一面、真っ暗だった。まるで先ほどの事件を覆い隠すように、静かな闇が蠢いていた。  
 
 
 
 

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