背中に生暖かい液体が落ちて来た。その後、背中に感じていた存在が消える。  
それに続き、走り去る足音が聞こえた。  
慌てて振り向く前に俺の鼓膜を絹旗の声が揺らした。  
「超歯を食いしばって下さい」  
ほどなく頬に衝撃を受けた。  
真っ直ぐな怒り。滝壺もこうして殴ってくれたらいかに楽だったか。  
そうは思うがその前に。  
「殴るなとは言わねえが、せめて抜くまで待て!」  
折れそうな恐怖もそうだが、どう考えてもフレメアも危ないだろ。  
慌てて抜いて、ついでにゴムを処理する。  
ものすごい呆れ顔の絹旗。変な事は言ってないぞ。  
「浜面、何で私が超怒ってるか分かります?」  
いや、滝壺の代わりに怒ってるのだとは思うが、それ以上は分からない。待て、このタイミングでため息を吐くな、地味に凹む。  
「そもそも、滝壺さんが本当に怒っているなら、なんでこうしなかったんですかね?」  
眼前に迫る絹旗の顔を避けそこなう。唇同士が重ねられ、俺の口の中に液体が流れこんだ。  
それを追って、息が吹き込まれる。そのせいでそれを嚥下してしまった。  
「何するんだ!」  
怒声を上げた俺をさほど気にしない態度で話を続ける。  
「浜面、私なら、超本気で怒っていたなら、『それを飲ませるべき相手は浜面だった』んですよ」  
絹旗は何を言ってるんだ? クソ、頭の中が無理矢理かき回されるみたいに考えがまとまらない。  
目の前にいる絹旗に欲望を吐き出せと、頭の中で得体の知れないものが暴れる。  
「フレメアの事がどうでもいいのなら浜面は超アホ面を晒しながらフレメアを襲います」  
だから、そんな仮定に何の意味があるのか分からない。  
冗長な語りを聞く余裕を奪ったのは誰だ。  
「そうでなければ、超、何もしないですよね?」  
下半身は主張を初めているし、頭には靄がかかっている。それでも確かに、喉を引っ掻いてでも襲わないだろう。  
だけど、絹旗は? 媚薬を飲ませるのだから覚悟しているのか?  
「ええ、ですがフレメアの方に飲ませた場合、どちらにしても浜面はフレメアを犯すんですよ」  
いや、そんなはずはない。  
いくら何でも、葛藤した。拒絶しようとした。滝壺が許すなら目を背けたかった。  
少なくとも、あの瞬間、その行為を望んではいない。  
「だって浜面は超童貞ですから機会があれば捨てたいでしょうから」  
 
滝壺と合う前にそう聞かれたら、多分、頷いている。  
相手が犯罪的に幼くなければな。後、親友の妹のようなものだぞ。いくら何でも無理だ。  
「それに、滝壺さんがわざわざ後押ししてます。さあ、いよいよおかしくないですか?」  
フレメアが滅茶苦茶にされるのが目的だった、のか?  
なぜ、それを自分でしなかった。本気で怒っている人間が何かを見るために動くか?  
やろうと思えば、俺の目の前でフレメアを壊せたのに。  
「そもそも、滝壺さんは初めから怒っていたのでしょうか?」  
……初め、あの『応援してる』の意味、か? クソ、分からない。  
「聞き方を変えます。滝壺さんが怒っていたとしたら、何に対してですか? 『誰』に対してですか?」  
フレメアと抱き合ったり、キスした事に対してだよな。『誰』? 俺じゃないのかよ。  
「滝壺さんがただの嫉妬深い女なら浜面を怒ります。  
でも、そうなら麦野さんや私と普通に話なんかできるはずがありません。  
だって、超冗談とは言え浜面にアプローチしてるように見えるはずです」  
少なくとも、フレメアと他の二人では対応が違ったな。  
「考えていられるのも、長くはなさそうなんだ、速めに話を進めてくれないか?」  
刻一刻と絹旗を襲いたくなる時点でまともではない。  
どうせ返り討ちだが、話があるなら速くしてくれ。  
「『滝壺さんが浜面に抱いていたのは怒りではない』んですよ」  
それじゃあ、理由が分からない。滝壺が凶行に出た理由が。  
フレメアに対して怒っていても、少々妙だ。  
「ちょっと待て! じゃあ何で、」  
詰め寄るが絹旗は表情を変えもしない。  
「疑っていたんですよ。浜面はヒーローになりたかっただけじゃないかって」  
ヒーローになれる訳ないのは分かってるのにか?  
フレメアと同じかあるいはそれ以上にヒーローからかけ離れた俺が?  
必死にヒーローにを演じようとしたらご覧の有り様だよ!  
「意味が分かんないぜ!」  
ただ、淡々と絹旗の口から言葉が紡がれる。  
 
「言い方を変えましょうか? 浜面は手の届く範囲にか弱い女の子がいれば助けに行くんじゃないかって思ったんですよ」  
そんなことはないと否定する言葉が、喉から先に出て行かない。  
今回だけを見ればその通りなのではないか?  
「そして、浜面が滝壺さんと付き合ってる理由にも超疑います。  
浜面が好きなのは守られるべき、絵に書いたようなヒロインではないのかと。  
かつてそうだったから惰性で関係を続けているだけではないのか、と。  
だって、浜面はキスより先に進んでないそうですし」  
「違う!」  
声を荒げ、否定する。流石に看過出来る言葉ではない。  
「俺はそんな理由で滝壺を選んでなんかいない!  
強いところも知ってる、もちろん弱いところもだ!  
全部、全部含めて滝壺が好きなんだよ!  
だから、大事にする! ゆっくり歩んで何が悪い!」  
絹旗はまたしてもため息を吐く。呆れを通り過ぎて冷たい目で。  
「じゃあ、今日それを一度でも伝えましたか? フレメアに迫られただけで何ともないと、一度でも言いましたか?」  
慌てて、ギスギス言いそうな頭から記憶を引きずり出そうとする。  
しかし、それは叶わなかった。そんな記憶存在しないのだから。  
「浜面は、ただの一度もそれをしてないんですよ。二人の居場所を私に尋ねた時すら、フレメアが先でした」  
だから、あの時の絹旗はあんな目を、  
「浜面、超正直に答えて下さい。浜面は滝壺さんを裏切れるのですか?」  
思考が飛ぶような鋭い言葉だった。裏切るつもりなどなかった。  
でも、知らない間に裏切り続けたのではないか?  
「滝壺さんは、きっと、言って欲しかったんですよ。『俺は悪くない』と」  
そんな、そんな簡単な事を、  
「そもそも、浜面は超受け入れすぎなんですよ。私に襲われても抵抗しないんじゃないですか?」  
「それは、無駄だからじゃないのか」  
「恋とか愛って端から見れば無駄を積み上げることですよ?」  
そんな、理屈を今は聞きたくなかった。  
爆発しそうな欲望を抑えながらこれだけ話ができれば頑張った方だろ。  
「二人だから幸せ、って言うのは超、」  
小難しい話を続けようとする絹旗の口に唇を重ね無理矢理ふさぐ。  
「犯されたくなければ少し黙れ!」  
唇を離して、直ぐに啖呵を切る。  
 
さあ、意識を刈り取るなりなんなりしてくれ。俺がこの部屋にいる二人に何かする前に。  
「浜面、本当に出来るなら良いですよ」  
こいつは絹旗、なのか? 少なくとも、こんな絹旗を俺は知らない。  
暗い笑みを浮かべ、何かを受け入れようとする絹旗なんて。  
俺がその一言を言った途端に目が変わった。光が消えるようにだ。  
「ま、待て、お前、俺のことなんて、」  
俺の言葉に被せるように絹旗が遮る。  
「超失礼なんですけど。嫌いな相手とキス出来る訳がないですよ」  
それは確かにその通りだ。そして間違っている。  
嫌いではないと好きの間にある齟齬をあえて無視している。  
「別に『愛してる』はいりません。浜面は滝壺さんが好きです。そしてこれは薬のせいです。さあ、どうぞ?」  
たたみかけるように矢継ぎ早に話す絹旗。もしかして、やけっぱちなのか? いや、そうなる理由なんて、  
クソ、頭に向けて下半身がメッセージを送ってきやがる。  
今の絹旗はまともじゃないんだ! 少し黙れ!  
って、何で絹旗が俺の下半身に触れようとしてるんだよ。  
「ねぇ、浜面。超勝手な言い分なのは分かります。抱いてくれませんか?」  
普段のお前からその言葉が出ていたら、小躍りしてやる。  
だから、落ち着け、な?  
「良いから落ち着けよ」  
そんな言葉を聞くはずもなく、絹旗は話を進める。  
「私はアイテムにしか居場所がありません。でも、滝壺さんの様子では超長くはないかも知れませんね」  
暗い、底無しに暗い笑い。闇色とでも表現するべきだろうか?  
少なくとも俺はこんな笑い方をする奴を知らない。ロシアで会った麦野だって、幾許かマシだ。  
「闇からの解放、それは結構です」  
絹旗の一人語りは続く。彼女は何を言おうとしているんだ?  
「でも、同じように居場所を守る術が分からないんですよ。何となく続く以外には」  
絹旗はいつから闇の中にいたのだろうか。そして、いつからそれを日常としていたのだろうか。  
日の当たる場所に居場所を作れることさえ忘れるほど、昔からなのは確かだろう。  
「私には能力しかありませんから。滝壺さんを泣かせる事なんて出来ません。浜面も私なんてなんとも思ってませんよね? 二人がいないなら麦野さんだって、直ぐにいなくなりますよ」  
震える声。弱くて守らなくちゃいけないのは、絹旗もだったのか。目に見えない、恐怖から。  
 
だけど、どうすれば良いんだ。絹旗の言うとおりにしたところで誰一人救えない気がする。  
誰かを守るとか救うとか、そんなことおこがましいとでもいうのだろうか。  
「もう、超一人ぼっちは嫌なんです」  
俺たちがロシアに行っていた間は決して長くはない。けれど短くもない。  
その間、絹旗は何を考えていたのだろうか。果たして新チームに彼女の居場所はあったのだろうか。  
いや、なかったのだろう。だからこんなにも居場所を求めているんだ。  
「浜面にこうするのが一番簡単で確実なんですよ」  
考える暇さえ与えてくれないらしく、絹旗は服を脱ぎ始めていた。  
「お前を捨てたりしない、だから止めてくれ。友達、だろ? 滝壺だってそう思ってるはずだぜ?」  
今更、遅いのは分かってる。それでも、これ以上滝壺を裏切りたくはない。  
そして、損な役目を押し付けてきた絹旗をこれ以上傷つけたくもない。  
「友達、それがどんなに細い糸か知ってますか? 私の友達は、第10学区ですよ」  
誰の事を言っているのか分かってしまった。だから次の言葉が出ない。  
「別に浜面は裏切る必要はないですよ」  
なら、どうしてその肌を晒すんだ。どうして、俺に迫るんだ。  
「だって、浜面は『大能力者に犯される』んですから」  
 
床に押し倒される。  
力を加減する余裕すらあるのか大した衝撃ではなかった。  
慌てて、跳ねのけようとするが、全く動かない。  
「あれ? 無駄なのに抵抗するんですか?」  
当たり前だ。絶対に越えてはいけないものもあるんだ。  
俺の思考程度で無駄と思ったところで絶対ではない。だから、抵抗くらいは、する。させてくれ。  
絹旗の唇が迫る。押し倒された俺に避ける術があるはずもなく、二人の唇が重なる。  
少しして、意識が浮遊するような感覚を覚えた。まともに思考する機能を放棄したように頭が働かない。これが意識を奪おうというのなら良かった。  
その手前、抵抗する術だけを奪われる。そもそも、前と違い息苦しさを覚えた。  
それでも媚薬の力で空気を読む事を拒否した俺の息子はいきり立ち、それが絹旗に突き刺さるのをただ見ているしかなかった。  
いや、見てさえいなかったかも知れない。ふわふわとした意識と焦点の合わない目に映るものを見ていると言えるだろうか。  
かろうじて快楽に耐えるために食いしばった歯は別の意味で役に立った。  
脳髄に響きそうな強烈な痛みが襲ってきた。おかげで意識が引き戻される。  
絹旗から短い呻きが聞こえた。それでも止まろうとは、しない。まるで、戻る道を見失ったように腰を動かす。  
「バ、お前止まれ!」  
絹旗の蜜壷から蜜など溢れてなく、まるで無味乾燥としていた。  
無理矢理、性行為をしたがる男ですらこれでは思わず引き抜くだろう。  
「何でですか?」  
何でも何もないだろ。こんな麻酔もなしに神経を抉るような真似、まともにできるはずはない。  
そもそも、媚薬が効いてなお痛みに悶えるほどの行為だ。  
 
昂りもしていない絹旗にどれほどの痛みが与えられているのか。  
絹旗が腰を振る度、肉と肉が削り合う音が聞こえてくるようだ。柔らかい粘膜に肉でヤスリをかけるように、破滅的な抽送が続けられる。  
「絹旗、な、なんで動けるんだよ」  
なんともないように、いやむしろ普段より淡白な答えが返ってきた。  
「別に、痛みには慣れてますから」  
それは俺の耳か頭、あるいは絹旗の正気を疑った。そうは言っても絹旗が慣れているのは外面に対するものだろ。  
それに、考えたくはないが、本当に慣れていたとしてそれを自分で出来るものか。  
殴られるのに慣れている人間は壁に自分の身を打てるか考えれば分かる。そんなはずない。  
例外はいるが、絹旗がそうでないのは結合部から感じ取れる。  
「狂ってる……」  
絹旗は笑った。乾いた笑い方で。感情なんて、まるで感じられない。そう、目からは色を感じ取れない。  
「当たり前ですよ闇に染まった人間がまともな方がよほどおかしいですから」  
目を瞑りこの暴虐が終わるのを待とうとした。少なくとも今、俺が感じているのは痛みばかりで、絹旗に欲望を吐き出すような事はないと思ったから。  
絹旗が気が済むまで付き合うしかないのなら、それは僅かな救いだろう。箱に取り残された希望のような。  
「そうそう、超意識が揺らぐと人は痛みに鈍くなれますよ?」  
絹旗が唇を重ねて来た感触。そして、思考がまとまらなくなり、痛みをまともに感じなくなる。  
またか。息苦しさと浮遊感は確かに快感に似ているかも知れないな。だけど、まだ痛みが十二分に勝っている。  
というより、感覚自体が鈍くなっているのか、快感も感じない。  
絹旗はそれを見て立ち上がる。花弁は赤に染まっていた。初めてだったのか、単に裂けたのかは分からない。  
最近まで絹旗の言う通り童貞だった俺の、その行為に対する幻想を殺すには十分な惨状だ。滝壺が許すなら二度としたくはないかも知れない。  
視界の端で絹旗は見覚えのあるドリンクを口にした。  
ああ、そうすればこのばかげた行為がほんの少しマシになる。そう思った俺にまたしても口づけて、それを流し込んできた。  
本当に何を考えているのか分からない。ここまでして、まだ俺をつなぎ止めるのに足りないとでも思っているのだろうか。  
 
だとしたら、買いかぶりが過ぎるだろう。俺にはもう、滝壺だけでなく、フレメアも絹旗も手放せやしないだろうのに。  
「さあ、浜面? 続きをしましょう」  
痛々しい花弁に俺の息子が突き刺さると今度は僅かに快楽が混ざった感覚を覚える。いや、違う。僅かに快楽が強い。  
ほどなくして欲望を吐き出すであろう自分に嫌悪した。ゴムを外した事を後悔した。  
「止めて、止めてくれ、お願いだ」  
譫言のように繰り返す。その言葉に何の力もないのを知りながら。  
はは、フレメアはこんな気分だったのかな。無力で、明確に拒絶することさえはばかれて、弱々しく呟き続けるしかないんだ。止めて、と。  
ほんの僅かずつ高みへ近づく俺と引き換えに絹旗はどれほどの痛みを、傷を、感じ、付け、それでも続けるのだろうか。  
「ねぇ浜面、超二人でこういうことするの、初めてですよね」  
そういえば、フレメアとした時は滝壺が促していた。だとしたら、まともな体験はこれが初だろうか。  
はは、何が『まとも』だ。正気な奴は一人もいないぜ。  
「だから、何だ?」  
強張る声で言葉を紡ぐ。今の絹旗とキャッチボール出来る訳ないのに……  
「次は滝壺さんですね。超頑張って下さい」  
止めてくれ。滝壺はキスしても不思議がるんだ。多分、準備もなくそれをしたらこの二の舞だ。  
俺の手で何かを壊すことなんて、もう感じたくはない。二人で映画を見て、クレープでも食べさせあって、そういうのが先だろ。ゆっくり、幸せに二人で歩きたいんだ。  
「止めてくれ」  
止まらない。絹旗は止まる気などないだろう。  
「滝壺さんはこういうの超苦手そうですし、腰を振るのは浜面の仕事ですよ」  
 
言われてフレメアの方を見てしまう。絹旗は笑ったように見えた。次の瞬間には無味無臭に変わったが。  
「ええ、ちょうど良い練習だったですね。『あんな風にすれば良い』んですよ」  
滝壺を壊していく自分を幻視し、吐きたくなった。滝壺の声で再生される、止めて、怖い、それから、助けて。  
萎えかけた俺にもう一度、媚薬が口移しされる。  
「駄目ですよ浜面。今は私です」  
絹旗はきっと、俺が欲望を吐き出すまで止まらない。だったら、少しでも速めるべきだろう。  
「絹旗、さっきの奴くれないか? 喉が乾いて仕方ない」  
嘘ではない。血すら啜れそうなほど水分を欲してはいる。それが緊張から来るか、媚薬から来るかは定かではない。  
「どうぞ」  
絹旗から渡されたドリンクを一気に煽り、腰を振る。胸に手を伸ばし刺激する。  
絹旗は冷たい目で俺を見た。今更何をしているのかと問いかけるように。  
エゴだとしても、絹旗を感じさせる可能性があるなら賭けたいんだ。  
「ノって来ましたね浜面」  
体位を入れ替え、上になる。抵抗はなかった。  
キスをして舌を絡ませ、胸を愛撫し吸う。  
手慣れていれば他に出来る事があったかも知れない。けど、俺にはこれが限界だった。  
「絹旗、好きだ」  
耳許で囁く。好きだ、可愛い、綺麗だ、そんな言葉を。少しでも昂ぶるように。心を揺らすように。  
「お世辞は結構です。浜面らしく超腰を振れば良いんですよ」  
冷めてる。俺が出来る事なんて無駄、なのか? それでも足掻く。  
「お世辞じゃない。絹旗が好きなんだ」  
僅かに微笑んだように見えた。そして直ぐに息子にかかる圧力が僅かに下がる。どういうことだ?  
「力、超入り過ぎてたみたいですね」  
なるほど、濡れてない云々以前の問題もあったのか。  
「浜面、来て下さい」  
 
その言葉の後、絹旗と口づけを交わす。舌を絡ませ、僅かに絹旗がノって来たのを感じる。  
潤滑油の変わりは相変わらず血だが、無駄な圧力がかからないおかげでスムーズに動く。  
薄い微笑みを浮かべる絹旗に愛の言葉を囁いては、腰を振る。これは、俺が犯されたんじゃない。そう思いたかったから。  
おかしなかかりかたをしたテンションが切れた時、絹旗を繋げる可能性にしたかった。  
だから、俺から動く。初めこそ無理矢理だとしても、これは和姦だ。そう、俺も望んでいたんだ。  
「絹旗、『ありがとう』」  
絹旗は驚いた後、笑みを浮かべた。今までのような色のない笑みではなく。いつもの絹旗の。  
腰を動かす速度を上げる。欲望が限界まで込み上げていた。  
吐き出す瞬間、抜こうとした俺を絹旗は足を絡めて制した。絹旗の中に白い欲望が吐き出された。白と赤は混ざり合うことなく絹旗の蜜壷から溢れている。  
一度吐き出したからか、あるいはもう沢山だと心がざわめいているのか定かではないが息子も普段の調子に戻った。  
正気に戻り、慌てて棚を漁るとやはりそれはあった。麦野が用意しないはずはないと踏んで正解だ。  
都合のよい事に、後で使うタイプ。あるいは、これすら脅し、罰に使われていたというのだろうか。いや、考えるな。都合が良かった。それで良いだろ。  
「絹旗」  
呼んだが、首を横に振り拒絶される。  
仕方ない。水とそれを口に含むと絹旗の唇を奪い、流し込んだ。  
 
「全く、超わがままですね」  
今までの事などなかったかのような絹旗に安堵する。  
「当たり前だろ」  
お互いに服を着ていると扉の開く音がした。振り返るとバニー姿の滝壺が呆然としていた。  
「思ったより超遅かったですね、滝壺さん。もう終わりましたよ」  
また、あの目だ。色のない暗い目。  
「そうそう、言うまでもないと思いますが、」  
一呼吸開けたのはその言葉がより強く響くようにするためだろうか。そして、おれが弁明の言葉を考えるには余りも短い。  
「私、浜面と寝ましたから」  
 
 

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