フレメアに抱きつかれた。
「大体、浜面は、」
言いながら俺の頭を引き寄せ唇を重ねる。フレメアが日本出身でない事を差し引いても挨拶とは思えない、長くて深いキス。
「脇役だなんて言って、」
空気を吸い込むと貪るようにもう一度キスされる。
「そんなことない。大体、私にとってはヒーロー。にゃあ」
そう言ってすり寄ってくる。
まあ、ヒーローを演じること位はできるか。ヒロインがちびっこいのが残念だけどな。
フレメアの方が体温が高いのか暖かい。とにかく、無事で良かった。
「大丈夫」
抱き合い、お互いの体温を感じ合う俺たちに水を差すように冷たい声がかかる。
一方通行達は気をつかったのかとっくに離れてる。それに聞き覚えのあるこの声は、
「私はそんなはまづらを応援してる」
滝壺。これはその、なんと言えば良いんだ?
フレメアの国ではハグは挨拶みたいなもので……って、どこから見られてたんだ。
「きぬはた」
短く名前だけ呼ぶ滝壺。それを聞いた絹旗はため息を吐いて動く。お前もいたのか。
「まったく、超人使いが荒いですね」
足を引きずりながら俺に近づく。そして、俺の頭を掴むと無理やり首を回し唇を重ねて来た。もしかしてフレメアにキスされたところから見られていたのか。
ほどなくして意識が白むのを感じた。
俺が気づいた時には天井が変わっていた。要するに違う場所だ。
「ここは……」
辺りを見渡すと、そこには絹旗しかいなかった。
「そうだ、俺はどうして、」
面倒くさそうに絹旗が口を開く。
「窒素装甲の応用ですよ。超浜面は窒素だけ吸って呼吸できますか?」
意識を少しでも呼び戻そうと頭を振る。待て、そんなことよりフレメアはどうした。滝壺は?
「おい絹旗、フレメアと滝壺は……」
絹旗の目が冷たくなる。まるで、猛獣の檻に迷い込んだ小動物を見るような憐憫を帯びたものに。
何か変な事を言っただろうか。
「隣の部屋です。超行かない方が良いと思いますけどね」
絹旗の言葉を無視して、扉を開ける。後ろから絹旗がついて来てるようだ。
部屋を見て固まった。フレメアが寝かされているベッドは詰めれば四人は寝れそうで、さらに枕元には訳のわからないスイッチが沢山ついている。壁紙やインテリアは全体的にピンク系で統一。
これではまるで、と考えてるところで後ろから蹴られた。
「行くのなら超諦めてとっとと入って下さい」
扉を閉めた絹旗は溜め息を漏らす。
「何しやがる。いや、滝壺はどこだ?」
なぜこの部屋から人の動く気配がしないのか、わからない。滝壺がいるはずじゃないのかよ。
その答えは別の扉が開いたことで明かされる。
「滝壺?」
疑問符がついてしまうのも無理はない。俺が知る滝壺とは別人とも思える雰囲気だ。
「どうしたの? はまづら」
しかし、言葉だけを聞けば普段と変わらない。
「いや、そうか。あんな事があった後だから、フレメアも疲れて寝ちまったんだな。それを絹旗が運んで……」
そうであれと言わんばかりにまくし立てる。しかし、そこに冷たい返しが飛ぶ。
「違うよ。ふれめあには眠って貰った」
口をパクパクさせる。何を言って良いかわからない。
「滝壺さんが超言いませんでしたっけ? 応援してるって」
それはただのイヤミではなかったのか。いや、果たして俺の知る滝壺は真顔でイヤミを言える人物だったか。
「まぁ、応援の仕方が超荒っぽいですけど気にしないで下さい」
言いながら絹旗に突き飛ばされる。体を捻りベッドの端に着地するとその衝撃でフレメアが不快そうな声を上げる。
のしかからなかっただけ良かった。
フレメアが俺を認識したのか、近づいてくる。
「助けて、」
その言葉に俺の心臓は脈打った。フレメアの紅潮した顔、潤んだ瞳。まるで、
「身体が熱いの。大体、溶けちゃいそう」
絹旗を睨み付け、問いかける。
「フレメアに何をした?」
呆れた表情で首を振られる。
「私は超浜面の見張りでここに運んだ後はずっと隣の部屋に居たんですけどね」
恐る恐る滝壺の方を見れば、問いかけずとも答えてくれた。その答えに救いがあるかは別にしてな。
「媚薬を少し飲ませただけだよ。助けてあげなよふれめあのヒーロー?」
身震いした。冷たく浮気者と罵られた方がいかに楽だったか。
滝壺は恐らく怒っている。ただ、麦野や絹旗と取り合うのとは違う冷たい怒り方。
俺が十人以上の女性を手玉に取るような人物、あるいは本物のヒーローなら、この場をうまく収める事が出来たのかも知れない。
もちろん、そんなわけはない。最近までモテなかった、ただの三下の俺はまごついてしまう。
この場合、フレメアを助けるというのは、おそらくそういうことをすることになる。
そんなこと、この幼い少女にして良いのか? だけど、それ以外にどうすれば……
「浜面、フレメアを気遣うのは超構いませんが……」
絹旗が何を濁したのか、鈍い俺にも充分に伝わった。この場で戸惑うというのはつまり、滝壺よりフレメアを優先していることにはならないだろうか。
口を開きかけた俺より先に滝壺が動いた。手元にあったドリンクに口をつけるとベッドに近づきフレメアの唇を奪った。
フレメアは慌てて突き放そうとするが、上から覆い被さる自分より体格の良い人物をはねのけられるはずもなく、やがてドリンクを嚥下したように見えた。
滝壺が離れたから多分そうだろう。
「はまづらがそっちが好みなら両手を縛って出かけようか?」
それを聞いた絹旗が呆れた表情になる。フレメアの顔は恐怖で歪む。
「やったことないから超どうなるかわかりませんよ」
その言葉である疑問に思い至る。媚薬を飲ませたりするだけなら、やったのかと。
絹旗を睨み付けると直ぐに応じる。何が聞きたいのか分かっているといった表情だ。
「まあ、麦野さんの趣味の範囲なら。そもそもここ、麦野さんが超用意したお仕置き部屋ですし。媚薬は超あんまり使ったことありませんけど」
被害者は果たして誰だったのか。絹旗だろうか。いや、もしそうならこんなに軽く話せるのか。違う。
なら滝壺か。違う、アイテムのメンバーの中で唯一足を引っ張るのが許されるのが滝壺だ。サーチ能力さえしっかりしていれば、そうされる理由がない。つまり、
「なら、ふれんだと同じようにしてあげるよ」
そう言って棚からバイブを取り出す。それを見て慌てる。
俺のソレが大きいかわからないが、それでもその倍以上あるのはまともではない。
真珠のような形の凹凸も、その太さも、先端に付いてるブラシのようなものも全てがフレメアのような幼い少女に使うべきものではない。
というか本気でジョークグッツとしか思えない。
「うわ、それまだ残ってたんですか……超悪趣味です」
用意したものではなく、残っていたもの。ソレが意味するのは、
「ふれんだと『姉妹』になろう、ふれめあ?」
その言葉を聞くと慌ててフレメアに覆い被さる。
最悪か最悪に限りなく近い選択肢しかないならと、迷わずマシな方を選ぶ。
ズボンを脱いで、ふと気づく。
「滝壺、ゴムはどこだ? 絹旗……子供が見るものじゃない、隣行ってろ」
滝壺は無言でゴムを投げる。軽くショックな対応だけどこの際、仕方ない。ちなみに絹旗は不機嫌そうにする。
「今更、子供扱いされても超困るんですけど。なんなら昔みたいに攻めるの手伝いましょうか?」
昔みたいに、それが意味する事を考え、首を振る。
絹旗は面白くないのかさらに追撃をしかけて来た。
「ところで、浜面が超臨戦態勢な事を滝壺さんに教えても構いませんか?」
台詞だけは疑問文だが、隣に滝壺がいる時点でただの嫌がらせだろ。
ゴムを装着しながら俺は叫んだ。
「滝壺とフレメアのキスを見せられて興奮するなって方が無理だろ」
絹旗は思いっきり顔をしかめる。滝壺は、微妙だな。
何が悪いんだよ。背徳的な香りがすごかったぞ。
「超気持ち悪いです」
しかめるのみならず言葉に出す。
それをスルーして自分のモノをフレメアの蕾に添える。
「入れるぞ」
それを聞いたフレメアに急かされた。
「速く、速くして。頭が沸騰しそう」
息子がフレメアの中に侵入する。何かに当たる感触を感じ、そこまでで抽送しようとする。息子はだいぶ余ってるがそもそも狭くて仕方ない。
本来ならキツいはずだが、媚薬が効いているのかフレメアは気持ちよさそうにしている。
何度目かに、耳元で滝壺の声が聞こえた。
「優しいんだね、はまづら?」
腰を引いて息子がほとんど露出している瞬間に滝壺に体重をかけられた。瞬間、俺が奥だと思っていた場所を破り、更に中へ進む。
「にゃ、にゃ、にゃ」
短く意味のない言葉を発するフレメア。トロトロに蜜壷が溶けていたとはいえ、痛みは相当なものだろう。
「さ、はまづら?」
背中に感じる膨らみを味わう間もなく抽送を続けさせられる。せめて、俺のペースでヤらせて欲しい。
少しして、フレメアの吐息が浅くなる。
「にゃ、怖い、何か来る」
自慰経験は定かではないが、高みに登るのは初めてなのだろう。
恐怖に染まる顔を見たら思わず唇を重ねてしまった。視界の端に呆れ顔の絹旗が映る。
やっちまったのは分かってる、何も言うな。
安心した顔で達したフレメアを見たら、後で殴られても良いくらいの覚悟はできた。てか殴ってくれた方が楽かもしれない。
何せ滝壺は今も俺の抽送を促してるからな。フレメアがイったのは関係ないみたいだ。
無言だからもの凄く怖い。何か喋って欲しい。
気まずいのは俺だけだったのか息子が限界に近づく。元々キツかったのにイった後は更に圧力が高くなった。
もしかして、高みから降りてきてないのか。そうだとしたら休ませたい。が、背後の滝壺が許してくれるのか。
そんなはずもなく俺の息子が欲望を吐き出すまで理不尽な抽送が繰り返された。
止めてと怖い。それから意味をなさないフレメアの言葉が心に刺さった。恐怖に歪む顔はしばらく頭から離れそうにない。
「何で、こんな事したんだよ滝壺……」
泣きそうになるのを必死にこらえて問いかける。童貞を卒業したことなんてどうでも……良くないな。「初めては滝壺としたかった」から。