それはある土曜日のこと。  
「うだー暇だ暇です暇なんですよー」  
上条当麻は部屋中に退屈オーラを振りまいていた。週末明けに提出する課題は珍しくないし、  
長期休暇でもないから補習もない。 外出しようにも某シスターのせいで家計は火の車。  
ゲーセンになんか使えるお金はびた一文なかった。その暇つぶしの相手になりそうな土御門や青髪ピアスは音信不通。  
同居人も召集令がかかり今はイギリスにいる。なんだか事件の予感がしないでもない。  
(あーインデックスの奴、いないならいないで困らせやがって。)  
あいつが帰ってきたらまた魔術云々に巻きまれるのかー不幸だー暇だー、と上条さんうんざり。  
当然そんなことしても事態に変化はなく、彼はゲーム機やマンガの散らばる床の上で寝返りを一つ。こうなったのはせっかくインデックスもいないことだし  
たまにはベッドで寝てみますかーと挑戦した結果である。  
元彼のベッドは今やダークマター溢れる空間になっているらしかった。  
他にすることも見つからずフローリングの上を所狭しと転がり回り、やがてゴンという鈍い音とともにローリンボーイ上条は止まった。  
彼は割りと気合いを入れて転がっていたのでそれが本棚にも伝わったようだった。  
音源に気づいた時にはもう手遅れ。  
そこに入っていた本がすべて上条に降り注いだ。  
「ちょ!これはマジでなしだって!」  
紙の濁流は彼におなじみの台詞を吐き出す暇すら与えなかった。  
「痛てー。ったく参考書にこんな破壊力があるとは上条さん予想外でしたよちくしょー」  
むくりと起き上がり、上条は夏休みに見栄を張って参考書を買ったことを後悔した。  
ピンポーンとチャイムが鳴ったのは彼が散らばった参考書を大方片した時だった。  
来客を知らせる福音に上条はすぐさま飛びついた。暇だった上に相変わらずの不幸っぷりを考えれば、誰かに愚痴の一つでも言いたくなるのは当然だろう。  
「はいはーい!上条さんの手持ち無沙汰を癒してくれるのは一体誰なんですかー?」  
今なら宅配便の兄ちゃん相手でも1時間は語るもとい愚痴ってやるぜーと息巻いて上条はドアを開けた。  
「って何だ御坂か」  
「…文句、ある?」  
「いやいや滅相もないですよー」  
来客は御坂美琴であった。彼女の装いはいつも通りのに常盤台中学の冬用制服だったが  
上条から見た彼女の様子は明らかにいつものそれではなかった。上条が目を合わせようとしてもぷいと背けてしまうし、  
顔もなんだか熱っぽい気がする。しばらく考えた後、それらを総合して彼はある結論を導いた。  
「帰れ」  
「ちょっとどういうこと!?」  
「いやお前だって風邪引いてんだろ」  
「どこをどう見たらそう判断できるわけ!?」  
「だって顔赤いし。熱はどうだ?」  
「あ」  
言うや否や上条は美琴の額と自分のそれとをくっつけた。  
「ん〜微熱ってとこだな。  
やっぱお前帰…あれ御坂センセー聞いてますかー?」  
「....にゃー!!」  
「うおっ!何故にビリビリするんですか!」  
上条宅の玄関が一瞬青白く光った。  
 
結局上条は美琴を家に入れた。何度説得しても帰ろうとはしないし、何より様子が変なので心配だった。  
現に家に上がってからというもの彼女はベッドを背後にしてテーブルの前で借りてきた猫の様におとなしく座っていた。  
「御坂さーん?」  
「…」  
「センセー?」  
返事なし。  
「美琴たん?」  
電撃。  
さすがにこれ以上ビリビリされるといつぞやのように電化製品がすべて駄目になってしまうかもしれないので上条は彼女  
をそっとしておくことにした。二人の間にしばし流れる沈黙。それを破ったのは美琴だった。  
「きき今日はあああ暑いわねー」  
やおら制服のリボンをとりながら言った。  
その動作に上条の顔が困惑で染まった。  
今は外歩くにはコート類が手放せない真冬ど真ん中。そして屋内とは言え節電のため日中あまり暖房をつけない上条の部屋では  
美琴の行動は上条には奇異に写った。  
「そうか?お前が熱っぽいだけだろ。」  
「そうよ。そうったらそう。」  
「じゃあ窓開けるか?」  
上条は美琴と向かいあって座っていたガラステーブルからあぐらを解いて立ち上がろうとした。しかし  
「ま、まあこれも悪くないから別にいいわ」  
彼女に割りと強い力で腕を捕まれて引き止められた。  
彼は困惑を顔から消さないまま座りなおした。  
「で、何しに来たんだ?」  
上条はテーブルでほお杖をつきながら聞いた。この常盤台のレベル5がただ遊びに来るわけがないのだ。  
いかに暇とは言え厄介事に持ち込まれるのは上条の本意ではない。  
「別にただなんとなくよ。って何よそのえーって目は。あたしが来ちゃなんかまずいわけ!?」  
「まだ何も言ってませんけど!?」  
ビリビリッと本日何度目かの電撃が走った。  
それを上条は右手の幻想殺しでなんとか無効化する。  
「ったくすぐにビリビリビリビリしやがって。ツンビリなんて上条さん感心しませんよー」  
右手をさすっていた上条が美琴を見るとまた電撃娘の様子が変わっていることに気づいた。  
彼女はいつの間にかブレザーを脱ぎ捨ていてさらにその下に  
着ていたカッターのようなもののボタンを三つほど開けていた。  
「御坂、やっぱり熱でもあるんだろ?無理しないで帰れよ。」  
「そ、そんなことないわよ。」  
そう言う美琴がぶるっと身震いをするの上条は不審そうに眺めた。  
「やっぱおかしいぞ、お前。大丈夫か。」  
「ま、まああんたがそこまで心配してくれるってんなら私もその気遣いに甘えざるおえないわよね?」  
「?まあそうだな。」  
「じ、じゃあちょろーとそこのベッド借りるわよ。」  
 
「あ、おい!」  
上条が止めようとする前に美琴は上条のベッドに飛び込んだ。  
そして枕に顔をうずめてぐりぐりした後、上条から見て彼女は何故か不満そうに枕から顔をあげた。  
「なんか女の子みたいな匂いするわ、あんたのベッド。」  
「キノセイデスヨ。ヤダナーミサカサン。」  
上条は目を全力で明後日の方向に向けながら一息で言った。  
「そう?洗剤のせいかしら?」  
「ま、まあそうかもな。」  
(あぶねー。上条さんは九死に一生を得ましたよー。  
女の子と同棲もどきしてるなんてばれたらレールガンキャッチボールが始まるに決まってるし!)  
「というか御坂さん?その態勢は少しまずいのでは?」  
そこにはピュアボーイ上条の目の前には彼の理性を焼切らんとする光景が広がっていた。  
美琴はベッドの縁から手をだらんと垂らして、テーブルを挟んで上条と向かい合っていた。先ほどボタンをはずした伏線がここで回収される。  
同年代の女の子の中では長身である美琴にはかなりつらい態勢であるはずなのだが。  
要するに  
(む、胸が見えそうであります!軍曹!)  
ということだった。  
彼は顔も知らない上官に状況を報告している間に美琴の顔がさらに真っ赤になったのを見逃した。  
逆に言えば、上条はそれくらいテンパっていたわけで。  
(ええええ。どうなってんのこれ!故意!?故意なんですか御坂さん!?いやいやそれはないないない煩悩を抱くな!上条当麻!)  
「まずは俺のその幻想をぶち壊す!」  
ゴキッ、とまず一般的な寮の一室では聞けない音と共に彼は自分の拳できりもみしながらノーバウンドで飛んでいき、玄関の扉に衝突して止まった。  
「おーけおーけ。御坂。上条さんはこれくらいじゃ屈しませんよ。お前は意図してやってるわけじゃないんだろうけどな!俺は負けないぜ!」  
「うわーん!全然効果ないじゃない!チクショー!」  
むくりと起き上がる上条の発する謎の気迫にあてられてか、疑似ストリッパーはそんな叫びを残して部屋を勢いよく出て行った。  
「はあはあ。か、勝った。」  
上条はよくわからない勝利の感触に浸りかけて、やめた。一つだけ疑問があったのだ。  
「あいつに何しに来たんだ?」  
 
「う。うううう全然ダメだった...」  
その日の夜、美琴は  
「鈍感なカレをオトすマル秘☆テクニック」  
と大きく銘打たれた雑誌をしわくちゃになるまで握りしめて枕を濡らしたという。  
 
 
 

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