貰い切れない贈り物  
 
カーテンの隙間から、細い光が差し込んで薄暗い室内を照らしていく。  
目蓋に触れた、ほのかな暖かさと明るさに、上条当麻は閉じた目をゆっくりと開いた。  
ぼんやりとした視界には見慣れているようで見慣れていない、自室の天井が映り  
横を向けば、よく見慣れた、けれど見飽きることはないだろう、小さな少女が寄り添っていた。  
目覚めた上条へ、少女は笑いかける。  
「おはようとうま」  
「おう、おはようインデックス。起きてるなら、起こしてくれよ」  
すでに目覚めていたインデックスは、上条の寝顔を見ていたようだった。  
「んー、とうまの眠ってる顔が面白いんだよ」  
「なぬっ、覚えてないけど、変な夢でも見てたのかよ」  
嘘だった。  
普段から騒がしい上条も、眠っている時は静かなものだ。  
ただ同じベッドで眠るようになって、インデックスには気づいた事があった。  
誰かと争い誰かを守った結果の、傷つき痛々しい姿ではない、上条の眠っている顔を  
間近でしっかりと見た事はなかったと。  
本人はやり遂げて満足なのかもしれないが、インデックスにとってそれは心配の種だ。  
だから朝起きて、上条の安穏とした寝顔を見つめるのは、お気に入りの日課になっていた。  
 
「夢って記憶の整理とか不安の表れだから……もしかして……うーむ」  
「嘘なんだよ。とうまはただ眠ってただけ」  
どこか別の思考にいっている上条へ告げると、安心したかのようにそうだよなーと呟いた。  
「……でも寝ぼけてたとはいえ、こんな朝早くから触ってくるのは、流石に恥ずかしいかも」  
「変な夢みるより駄目じゃねえか! どれだけ欲求不満なんだよ俺!」  
「それもうそ〜〜♪」  
「イ ン デ ッ ク スーーッ!」  
横向きに寝たまま、このやろとばかりにインデックスの銀髪を、くしゃくしゃと上条は掻き回すと  
きゃーきゃーと黄色い声をあげながらも、されるがまま。  
「あ、やりすぎた」  
ひとしきり髪を掻き回すと、インデックスの顔は千々に乱れた髪に隠れて  
柳の下の幽霊のごとく、見えなくなった。  
今度は荒さないよう、手櫛でしっかりと撫で付けると、癖のない髪は緩やかに背のほうへと流れていく。  
絹糸のごとき感触を心地よく思いながらも、最後に額を軽く払ってやると  
覗く表情は何故だろうか。  
どこかうっとりとしており、瞳は宝石にも似た魅惑的な碧の輝き。  
(可愛いな)  
そう考えただけなのに上条は、ふらふらと誘われるように顔を近づけてしまい  
インデックスも応じるかのよう目蓋を閉じて。  
 
触れた唇から柔らかくて、暖かくて、もふっとした感触が伝わってきた。  
(もふっ?)  
上条が怪訝げに目を開けると、二人の間でスフィンクスが頭をひょこんと出していたのだ。  
エアコンが効いていたためか、夜の内から二人の布団に入り込んで寝ていたらしい。  
「ってスフィンクスかよ!」  
「おはようスフィンクス」  
切り替えが早いのか、インデックスは何事もなかったかのように抱きしめる。  
スフィンクスは抱かれながらも『おうおう俺がいるからには朝っぱらから  
イチャコラ展開なんて許さないぜ。あ、ついでにご飯マダー』  
と、前足でペシペシと上条の顔を叩いてきた。  
上条は自己主張の強い、ぷにぷにとした肉球の感触を感じながらも、ため息をつくと  
しょうがないといった様子で身を起こした。  
「飯にするか」  
不幸だ、とは言わなかった。  
 
学園都市の夏休みは今日も騒がしい。  
学業と能力開発に追われる少年少女らは、夏の陽気にも負けず楽しそうに道を闊歩していた。  
上条もその例に違わず、インデックスと一緒に休みを出歩いている。  
「とうまとうま、あそこのお店でケーキを食べてみたいんだよ」  
「あれもいいけどよ、そこの駄菓子屋のイカスルメも美味そうだぞ」  
「むむ。そう言ってとうまはいつもいっつも、違う食べ物を…………  
 なんだか面白いものがいっぱいかも!」  
「ほーら、十円の黄な粉お餅だぞー」  
街並みから妙に浮いている、狙って作ってるとしか思えないレトロな駄菓子屋へと  
インデックスをうまいとこ誘導して、安くすませようと画策していたりもしたが。  
そんなこんなで店を冷やかす二人が歩いていると、連れ立って歩く男女の群集に  
混じっているのに気づいた。  
見ると流れは有名なブランドのアイスクリーム屋へと続いていて、そこは値段が高く  
上条は食べるどころか舐めた事もない、通りすがるだけの店だった。  
(まずいッ!)  
上条は即座にインデックスをどう誤魔化すかと考えるが、それは過剰反応だ。  
流石のインデックスだって、値段とお店によっては無理なものは無理と理解している。  
常に食欲魔人とは限らないのだ。  
 
「とうま、これなにかな?」  
「へっ?」  
だから、店頭に張り出されたポスターに、注意を向けた。  
『夏イベント!カップル限定!!全品百円!トリプルも百円!!』  
カラフルなデザインで大々的に張り出された広告は、普段考えられない低価格で  
インデックスを連れた、上条のためにあるかのような値段だった。  
「ええとアイスクリームが凄く安くなるみたいだ。しかも三段重ね可」  
「三段重ねッ!」  
未知の単語に、インデックスの瞳が光って輝きギラついた。  
そうと上条が認識した刹那―――  
「食べたい! いやっ食べるんだよ!!」  
「うおおぉ!?」  
即座に魔人化したインデックスによって、抵抗の余地無く上条が引っ張り込まれてしまったのは当然の事だったろう。  
 
買い終わった二人が出てくると、先ほどとは違う所があった。  
それは三段に重なったアイスクリームを二人が持っている所と、反対の手が重なっていて  
率直に言えば手を繋いだまま、出てきたのだ。  
「……だからカップル限定なんだな」  
「そうなんだね」  
アイスクリームを食べ終わるまでは、手を繋いでいてくださいね。  
と、店員に言われては逆らえない。  
気恥ずかしいのだろう。  
上条はどことなく落ち着きがなく、インデックスもアイスクリームに集中しきれていないようだ。  
「ほっとくと溶けちまうぞ」  
「う、うん」  
食べながら歩く二人の足取りは、どこかギクシャクとしている。  
「悪い、ちょっと早いか」  
「大丈夫なんだよ」  
手を繋ぎながら歩くのに慣れていないため、歩幅が合わないのだ。  
それでもしばらく経てば、少しずつ上条とインデックスの歩みが重なっていくのがわかる。  
しばらく二人がアイスを舐めながら歩いていると  
「ねえねえとうまとうま、私達はカップルなんだよ」  
インデックスが嬉しそうに笑いかける。  
 
「へ?」  
上条は意識に無かった事を言われて、生返事を返してしまう。  
「アイスクリームを安くしてもらえたんだから、私達はカップルと認められたんだよ」  
そりゃあイベントだから当たり前で、アイスクリーム屋に認められる事に意味はあるのかよ。  
上条はそう言おうとした所で、ふと気づく。  
一緒に寝るようになって、当然寝るだけではない行為を何度もしているのだけれど  
カップルだとか、恋人だとかの意識が、何故だか薄いという事に。  
関係を一気に深めてしまったためか。それとも生来の鈍感さか。そんな想像に及ばなかったのだ。  
思い返してみると、往来で手を繋いだのも初めてのようなもの。  
「そうだな。カップル……なんだよな」  
なんだか煮え切らない上条の言葉に、インデックスは眉を顰めた。  
「む。なにかなその態度は」  
「改めて言われると上条さんはとっても恥ずかしいのです」  
冗談めかした口調だが、意識してしまうと夏の熱気とは別の理由で、顔が暖まっているようだ。  
そもそもデート自体初めての事だった。  
よく二人で公園などを散歩しているのは、上条からするとノーカウントで意識の範疇外だ。  
 
「私もちょっと恥ずかしいかも。でもとうまからちゃんと言ってほしいな」  
「うぐっ……」  
どうやら同じ結論に、インデックスも辿り着いていたようで  
さくりと上条のウィークポイントをえぐってくる。  
もちろん好きという言葉も、気持ちも、通じ合っている。  
しかし恋人という定義では、インデックスの言うとおり少し曖昧だった。  
インデックスはじっーと上条を見つめ(アイスクリームはちゃんと舐めながらも)  
「別にぷろぽーずでも、いいんだよ?」  
「よくねえ! ハードルが山より高く上がってるじゃねえか! こんな街中で言えるか!」  
「街中じゃなきゃとうまは言ってくれるんだね。凄く嬉しいかも」  
墓穴を掘って上条を叩き落す。  
とは言えあっさり言った辺り、上条自身もそういう事なのだ。  
「うぐぐっ……」  
そもそもシスターさんと結婚できるのか、なんて思いつつも  
上条は観念したのか、インデックスに返事をしようとして  
「わかった。えっとだな………………その……」  
口ごもる。  
緊張と勇気を胸のうちに溜め込んだまま、深く息を吸って、息を吐いて。  
「俺と付き合ってくれインデックス」  
ストレートに告白した。  
インデックスは目を瞑り一拍、二拍と余韻まで受け取るように、間を置いて答える。  
 
「うん……とうま。これからもよろしくなんだよ」  
………………しばし上条とインデックスは黙ったまま。ただ二人の顔だけが赤い。  
なんとなく見つめ合ってから、なんとなく笑いあったりして。  
「うわぁぁすっげぇぇぇこっぱずかしいっ!」  
「えへへ私も。だけどとっても嬉しいんだから」  
往来の真ん中で大きく叫んだ。  
これはこれで恥ずかしい事なのだが、周りもカップルだらけのためか、気にしていないようだった。  
「あーもー、世の中の恋人達凄いんだなっ」  
上条はそう思う。  
告白して受け入れられるというのは嬉しいものだが、インデックスが自分を好きだと  
わかっているのに、怖気づいてしまった。  
もしそうでなかったとすれば、告白をできるかどうかもわからない。  
付き合っている恋人達は、みなそんな難関を越えているのだ。  
未だに伝えられない自身の記憶喪失を思えば、情けないとも感じる。  
比べるものではないのかもしれないが、受け入れられるかどうかがわからないという意味では、上条にとって同じようなものだった。  
「ふふ、じゃあとうまも凄いカップルの仲間入りだね」  
「全然凄くなんかねーよ」  
「むー。とうまが凄くなるくらいに、もっと言ってもいいんだよ」  
「勘弁してくれよ。せめて二人だけの時にだな」  
「それじゃあ私から、愛してるんだよとうま…………」  
いつのまにかアイスを食べ終えていたインデックスは、背伸びをしながら空いた手をそっと上条の耳元へ宛てがって囁いた。  
「ふにゅっぐっ!」  
思わず変な声を出してしまう。  
初めて言われたわけではないのだが、インデックスが自分の彼女だと自覚していると  
より特別な意味を感じてしまう。  
上条自身が恋人という関係性について、あまりに初心すぎるためだ。  
「とうまとうま。返事してほしいな」  
うごーと叫びだしたいぐらい恥ずかしいし、インデックスだけ耳打ちはずるくないかとか  
思いつつも、先ほど返事してもらったので  
「お、俺もインデックスを愛してる」  
どもりながらも答えを返した。  
「……うん。返事してもらうのも、嬉しいんだね」  
(ぐっ……なんつーか勝てる気しねーな……)  
うっすらと頬を赤らめ、ニコニコとしているインデックスはとても可愛らしく、今更ながら上条はそう思うのだった。  
 
 
「なあ土御門? ボクの目がおかしくなったんかなー  
 上やんが銀髪シスターのコと、めっちゃストロベってるように見えるんやけど?」  
「いいや、俺の目にも見えるにゃー」  
離れた所で恋人を見ていたのは、青髪ピアスと土御門元春だ。  
二人でさる所へ向かう途中に、仲睦まじいを通り越してバカップルと  
化している上条とインデックスを見かけて、思わず呟いていた。  
土御門は普段と変わらない様子なのだが、青髪ピアスのほうは顔色を自前の髪と同じくらい  
に青ざめさせ慄いていた。  
「か、かみやんはフラグは乱立しても回収はできない、そんな男のはずやろ」  
そのはずなのだが、くだんの二人はいかにも恋人っぽく手を繋ぎ、歩いている。  
ただ歩いているだけなのに二人一緒なら幸せで、何をしていても楽しいんじゃないかとか  
そう思わせる雰囲気があった。一言で言ってリア充。  
 
「回収しちゃったみたいだにゃー。つうかヤってるなアレは。しかも何度も」  
土御門は握った拳の間から、親指を出し入れする下品なジェスチャーをする。  
「……!?」  
驚き過ぎて青髪ピアスの細い目が微妙に開かれる。  
ガーンと書き文字でも背後に出しそうな様子だ。  
「……ボクら生まれし日は違えど、捨てる時は一緒だと公園のエロ本に誓ったやろがーっ!」  
「お前が勝手に言ってたんだろうが」  
実際あったらどんな状況場面なのかと、酷く気持ち悪い絶叫に、つい口調が素に戻る。  
上条のほうは当然、記憶喪失前の誓いなんて覚えてはいない。  
「大体だにゃー、その誓いとやらをした時にはだな、俺はもう捨て終わってたんだぜい」  
いいや捧げたというべきだなと続けて、こちらも微妙に気持ち悪い。  
「……!!??」  
今度は白目を剥き掛けてて、幽霊より恐ろしげな様子だ。  
どれだけショックなのか、身体はグラリと傾き脚はブルブルと震え、悪い病気にかかった獣のよう。  
 
「……………………彼女なん?」  
「そんなもんだにゃー」  
「ボクだけか……」  
しばしの沈黙。  
「ウ、ウソやー! ボクの友達がこんなにリア充なわけがないんやっー!!!」  
突如叫び出し、カップルの群れを掻き分け、グラグラブルブルの脚で青髪ピアスは走り出す。  
嫉妬と悲嘆が凝縮された涙と汗が、きらきらの飛沫となって夏の熱気に散らされていく。  
「薄い本買いにいくんじゃなかったのかにゃー………あっ、こけやがった」  
青髪ピアスはショックを受けながらも、優しい世界へと向かい消えていった。  
ちなみに上条とインデックスは青髪ピアスの奇行には気づかない。  
「ついて行ってもいいんだが……やっぱり舞夏に逢いにいくかにゃー。  
 あいつら見てたら羨ましくなってきたぜい」  
振り返り、青髪ピアスとも上条とも違う道を歩む土御門は、色々な意味で愛している  
義妹の元へと確かな足取りで、向かって行った。  
 
「それじゃいってくる」  
「いってらっしゃい、とうま」  
翌日の朝、食事を終えたばかりのインデックスは、寮の部屋を出る上条の後について見送っていた。  
「ああ―――ってオマエご飯粒ついてるぞ」  
「わわわっ」  
頬についた一粒を上条が手にとって、何の気なしに口へ含む。  
見送る様子はまるで新婚のようだが、今一歩インデックスのほうはカッコがつかないようだ。  
食事も上条が作ったものだし。  
見えなくなるまで手を振っているインデックスが、背後からの足音で振り返ると  
由緒正しい、クラシックなメイド服を着た少女がいる事に気づいた。  
「あ、おはようなんだよ。まいか」  
「おー、おはようインデックス。上条当麻を送っていたんだなー」  
インデックスと同い年くらいの少女、土御門舞夏は、どうやら二人を見ていたようだ。  
「とうまは学校の補習を受けるんだって」  
「兄貴も上条当麻も、勉強ぐらいちゃんとしないとなー」  
義兄である土御門元春も、補習を受けているので知っているのだ。  
 
「なーインデックス」  
「なにかな?」  
「上条当麻と付き合っているのかー」  
突然の言葉に、小首をかしげていたインデックスの顔が強張る。  
「な、ななななにを……」  
「前に見たときとおまえら全然違うんだなー。メイドの目は誤魔化せないぞー。  
 上条当麻はやたらと幸せそうで、インデックスはなんか色っぽいぞー」  
インデックスは恥ずかしそうに自分の身体や顔を触った。  
言われても、自分では違いなどわからない。  
そもそも朝っぱらからイチャイチャしてる様子を見れば、想像できる事だ。  
「えっとね。昨日、とうまと恋人になったんだよ」  
「おー。おめでとうインデックス」  
恋人になったのは昨日なのにヤリまくり(義兄から伝聞)というのはちょっと不思議だが  
舞夏はあまり気にならないようだった。  
嬉しそうなインデックスの様子を見て、うんうんと頷いてる。  
「好きな人とぎゅーっとしてるだけで幸せだもんなー」  
「うん―――ってあれ?」  
インデックスは実感の篭った言葉に頷いた後、不思議そうに舞夏を見る。  
舞夏と話したりご飯を作ってもらったりはするものの、浮いた話なんて聞いた事がないのだ。  
インデックスのほうも、恋愛話を振ったりなんてしないしできない。  
「実はだなー、私も好きというか、付き合ってる人がいるんだなー」  
むしろ言いたかったのだろうか、どこか興奮しているかのようにウキウキとしていて  
普段のマイペースな舞夏とは、少しばかり様子が違っている。  
「兄貴なんだけどなー」  
「………………それはその、すっごく危ない関係かもっ」  
「だろー」  
何故か嬉しそうに答える舞夏に、インデックスは手を祈りの形に組んで驚いていた。  
土御門兄妹が義理の兄妹で、仲がいいというのは知っているが、恋人だなんて想像したこともない。  
なんと言えばいいかわからなくて、黙ってしまう。  
「私の周りには彼氏持ちがあんまりいないから、インデックスに色々聞いてみたいんだぞー。  
 インデックスも私の話に興味があるんじゃないかー?」  
「うーん。少しだけ気になるのかも……」  
そこはインデックスも女の子。惹かれるものがあった。だがしかし  
「それで、上条当麻とはどんなエロい事をするんだー」  
いきなりの言葉に、インデックスの顔が林檎へと染まる。  
舞夏は世の中の女性と違わず、そういった話が大好きだったりする。  
ただ少しばかり禁断とか背徳とかが、枕詞につくドロドロな展開を好むほうで  
上条とインデックスにはそういった要素が薄いので、より直接的な話を選んだのだった。  
 
学生寮には似つかわしくない、シスターとメイドの間に長い沈黙が続く。  
「そうだなー。言いづらいよなー」  
こくんとインデックスは頷く。  
「じゃあ私から言うから、その後にインデックスの番だからなー」  
「ち、ちょっとまってっ」  
「最初はご奉仕だなー。兄貴がメイド好きだから、いつもしてあげるんだぞー。  
 裸になってる兄貴の前に座って、じっーと上目使いに見上げてやるとだなー。  
 興奮してる兄貴のが、おっきくなってきて……っんむ」  
「まってまってまいか! 駄目なんだから!」  
インデックスがまいかの口を塞ぐ。  
なにせ朝の学生寮だ。聞いてるだけで恥ずかしいし、そんな話をする場所ではない。  
「なら部屋で話すかー」  
「そういう問題じゃないんだよっ」  
「そっかー。でもインデックスも知っておいたほうがいいかもしれないぞー。  
 色々としてあげて喜んでくれると、こっちも嬉しくなってくるんだぞー」  
「えっ」  
そう聞くとつい関心を示してしまう。  
インデックスだって、上条が喜んでくれるなら嬉しいのだ。  
 
(……それに喜んでもらった事ってあったかな?)  
考えてみると、何かをしてあげて喜んでもらった覚えが無く、むむと唸った。  
流石に自分がいるだけで、とうまは喜んでくれるんだよ、なんて言うほど自信過剰ではない。  
インデックスがただそこにいるだけで、周りの人が何かをしてあげたくなってしまう  
という意味では、実質そんなものだったりもするが。  
「とうまも喜んでくれるのかな?」  
「相手がご主人様じゃなくてもだなー。誰かに喜んでもらえるスキルにかけては  
 メイドの右に出るものはいないんだぞー」  
頼もしさすら感じる言葉にインデックスは  
「じゃあ頑張ってみるかもっ!」  
と、小さな握り拳を両手でぐっと構えて宣言する。  
「おし、お茶でも出すから家で話すかー」  
家主不在の土御門の部屋へ、インデックスを伴って舞夏は入っていく。  
ちなみにメイドの職務にエロいご奉仕は当然含まれておらず、舞夏が話したり聞いたり  
したいだけだと、インデックスは最後まで気づかないようだった。  
 
そして時は流れ夜中。上条家で二人と一匹は夕餉を囲んでいた。  
「今日は学校で、青ピの奴が落ち込んでておかしかったんだよな。  
 死にかけて生気がないつーかよ。土御門はほっといてやれとしか言わないし」  
「ふーん……」  
インデックスはなんだか上の空。  
握った箸をもそもそと口に動かしているだけで、食事にも会話にも、集中していないように見えた。  
(うーん、料理失敗したっけな)  
食べる時はいつも楽しそうなインデックスの、テンションの低さに、上条は疑問を感じた。  
別段失敗はしていないし、そもそもなんでも食べてしまうインデックスだから  
ちょっとやそっとでは気にしないはずなのだが。  
口数が少ない部屋に、テレビの音とたまに、スフィンクスの鳴き声だけが響いていた。  
そうして食事を終えようとする頃  
「あ、そうだとうま。お風呂入れてあげるね」  
何かを思いついたかのように、インデックスは立ち上がってお風呂場へ向かう。  
 
「んー、大丈夫か?」  
「これぐらいはできるんだからっ」  
家事スキル0で、現代社会に適応してなさげなインデックスも  
水道の蛇口を捻るぐらいは当然できるし、自動販売機でジュースだって買える。  
いつかは電子レンジだって、扱えるようになるかもしれないのだ。  
インデックスが風呂場に入り、上条が食器を洗っている最中、熱っ、冷たっ、など聞こえてくる。  
「ちゃんと栓閉めろよー」  
「あ……わ、わかってるんだよっ」  
出てきたインデックスが妙に濡れているのは、お湯を出したまま身を乗り出し栓を閉めたためだろう。  
それでも一応は成功したようだった。  
「ほいっ」  
「むー。そのわかってるみたいなのが、ちょっと許せないかも。でもありがと」  
上条が用意していたタオルを渡すと、インデックスがむくれる。  
予想通りに濡れてしまったのを、少しだけ悔しく思いながらも服を拭いていた。  
「まだかかるからゆっくりしてろって」  
お湯が張り終わっているか、何度も確認に戻るインデックスを制止していると洗い物が終わる。  
まだうずうずと落ち着かないインデックスを尻目に、十数分ほど上条は待ってから  
「できたぞ。先に入っていいんだよな」  
「い、いいんだよっ」  
何故だかまだ落ち着きのないインデックスの様子に、上条は首をかしげながらも  
風呂場へと入っていった。  
 
すくったお湯で何度か身体を流して、上条は湯船に浸かる。  
気持ちよさそうに目を瞑って、風呂を堪能していると  
「とうま」  
硬い響きで外から呼びかけられた。  
「んーなんだー」  
風呂場に反響する間延びした声は、リラックスしているのがよくわかった。  
「わ、私も一緒に入るんだよっ」  
「へっ?」  
戸がガラリと開いて、裸にバスタオルを巻いただけのインデックスが姿を見せた。  
修道服のためか、日焼けをあまりしておらず、元々白い肌が、日焼けした上条と比べると  
驚くほど映えて見えた。。華奢な手足と肢体は、よく食べるわりにはバランスよく整っており  
青みがかかった銀髪と幼い容貌が相まって、どこか妖精めいた印象がある。  
けれども緊張と恥ずかしさをはらんだ表情で、怒っているかのように上条を見つめている  
様子はどこにでもいる、女の子の顔だ。  
「とうま!」  
「はい!」  
ぐっと溜めを作ってから、怒鳴るような響きで呼ばれ、動揺した上条は声を裏返し返事をする。  
「身体を洗ってあげるんだよっ!」  
「はいっ?」  
突然過ぎて理解が追いつかなかった。  
 
なんてことはない。  
舞夏と話していて、上条が喜んでくれそうなものを行おうとしただけだ。  
根掘り葉掘り、インデックスの赤裸々な話を聞いていた、舞夏曰く。  
「インデックスは受身なんだぞー。喜んでもらうなら攻めの姿勢でいかないとなー。  
 難しく考えなくていいから、触られて気持ちいい所を逆にしてあげるといいんだぞー。  
 兄貴だったら、コスプレとか服装を変えてあげるのも大好きだなー。  
 でも堕天使エロメイドコスを持ち出した時は、ぶん殴ったけどなー」  
メイドさんには、どうやっても譲れない矜持があるのだ。  
そうして義兄にも似た悪乗りが、インデックスを風呂場へと導いたのだった。  
そんなわけで浴室の中、背のインデックスから発せられる圧力に、上条は微妙な緊張を  
感じつつも椅子に座り、身体を洗ってもらっていた。  
「き、気持ちいい?」  
「……ああ」  
泡のついた丸っこいスポンジで、撫でる程度の力で背中を擦られているが  
唐突な展開で、あまりスムーズな流れとはいかないようだった。  
「腕あげてほしいんだよ」  
左腕を洗ってくれていると、タオル越しの慎ましやかな膨らみが横目に映る。  
むくむくっと腹の下から何かこみ上げるものがあった。  
明るい灯の下で裸を見たこともあるのだが、恋人だと思えばやはり感じるものが変わってくる。  
(触っちゃダメかなー、でも洗ってもらってるしなー)  
そんな益体もない事を考えていたが  
「……あのね。私はとうまから貰ってばかりなんだよ」  
「貰って?」  
インデックスを見ると真剣な顔つきだ。  
 
「うん。とうまと一緒に暮らしてて、私からは何もしてあげられなくて貰ってばかりかも。  
 その……彼女だし、まいかみたいにご飯作ってあげたりしたいけど  
とうまみたいにできないから……何かをしてあげたかったんだよ」   
泡立ったスポンジが、背中を撫ぜる感覚が心地いい。  
「あーだからこれか」  
「うん」  
合点がいって安心したのか、上条の緊張が和らぐ。  
「らしくねーし気にしすぎんなよ。得手不得手があるのはしょうがないだろ。  
 食器持っててくれたり、たまに掃除もやってくれてるじゃねえか。  
 今はできなくても、いつかできるようになればいい」  
インデックスは色々とできない事が多かったり、食っちゃ寝してたりもするが  
何もしないというわけでもない。  
実際できるかどうかはともかくとして、完全記憶能力のおかげもあって覚えるだけなら完璧だ。  
 
「大体だ。俺だってインデックスと暮らしてて楽しいし、貰ってるんだよ。  
 あげてばかりなんかじゃねえ」  
上条に言わせれば、インデックスの『貰ってばかり』は全くの見当違いというものだ。  
記憶を失い、悲しませたくなくて、失っていない振りをして。  
貰うという言葉を、そのまま返すのならば、あの日あの瞬間、上条当麻で無くなった少年は  
インデックスから上条当麻である事を貰って、生まれ落ちた。  
上条当麻で在りたいと。心からそう思えた。  
上条にとってインデックスは、自分自身で在るがための、寄る辺になった灯火なのだ。  
インデックスがもしもいなかったならば、実感も何もない、上条当麻という肩書きだけが手元に残っていただろう。  
貰ってばかりだと言われても、上条のほうこそ貰いすぎて、何をあげればお返しになるのかがわからない。  
「……だからそういう言い方はしないでくれ。悲しくなってくる」  
でも、真実は言えなくて短く告げた。  
いつかきっと、言えるチャンスがあるかもしれない。  
今日もまた、そう言い訳をして、勇気なく見送ってしまう。  
「…………ありがと。とうま」  
呟き、時折するようにインデックスは、上条の頭へ顎を乗せて、抱きしめる。  
「ぅぉっ」  
足元にタオルが落ちて、濡れた素肌が背中にぴったりと触れた。  
そんな場面ではなかったはず、と思いつつもボディソープで摩擦ない肌の触れ合いは  
酷く刺激的で、泡に濡れた指先が、肩辺りに触れただけで声が勝手に出る。  
恥ずかしそうにインデックスは俯くが、身体は触れ合ったまま。  
「とうま。正直に言ってね。……もしかしてこういう風にしたほうが気持ちいい?」  
インデックスが頭に載せていた顎を下げながら、上条の耳元で囁いた。  
そうすると、淡くも確かに柔らかい胸が背中をくすぐり、抱きつくような体勢で  
触れられると思考の挟む余地もなく、上条は頷いてしまう。  
 
「そうなんだね……」  
耳元の囁きは酷く甘い。  
鈴を転がしているような、インデックスの声音がじっとりとした熱を帯びる。  
汗ばんでいるためか、普段は意識しない少女の匂いが鼻腔へと広がっていく。  
小さな手の平が、胸板にそっと触れた。  
「ぅっ……」  
ぞくっとする、でも不快ではない感覚に上条は歯を噛み締めた。  
背後から抱きしめられたまま、身体の前面を無頓着に撫でられている。  
それだけで不思議なほどに感じてしまう。  
「とうまの身体……すごくたくましいかも……」  
じっくりと触れた事など無かったのだろう。  
インデックスは陶酔するように呟き、いとおしげに抱きしめると上条は身じろいだ。  
引き締められた肉体は意識して鍛えたものではなく、誰かのために奔走していて作られたものだ。  
今は誰かのためではなく、恋人であるインデックスの手の内にだけあった。  
 
「こっちもしたほうがいいんだよね……」  
「うっ、インデックス……」  
下がった両の手が、上条自身へと触れられて切なげな声が出てしまう。  
鼓動のように脈打ち、硬く主張するモノを、小動物でも撫でるように優しく触る。  
やわい手の平と、泡の層に包まれたそれがびくびくと震えている。  
「すごく、熱いんだよ……気持ちいい?」  
「ぁあっ……」  
手で扱かれる初めての経験に、上条はうわごとのような返事を返す。  
(恥ずかしいけど…………まいかの言うとおりかも……)  
同じく初めてのインデックスが、舞夏に教えられたやり方は拙いものだが  
優しいその手つきは、技術以上の快感を上条へと与えていた。  
まるで、気持ちよくしてあげたいという思いが、上乗せされているかのようだ。  
背後から抱きしめ、伸ばされた両手がモノを握ったまま、上下に動かされると  
小さく細い指から、濁った音とともに快感が引き出されていく。  
上条は与えられる快感を味わいながらも、インデックスの手が己のモノを扱く様を見て、ドクンと鼓動が鳴った。  
あろうことか、組まれた両手は食事の時や毎日の習慣で行っている、祈りの形に  
似たものになって、上条のモノを握っているのだ。  
意図的なものか、それともやりやすいようにやった結果、そのようになったのかは上条にはわからない。  
けれどもシスターのインデックスから、そのようにしてもらっている背徳感と  
見慣れた日常が勃起した自身に重なっている光景に、いやがおうにも興奮を煽られる。  
 
組んだ両指がきゅっと軽く圧を加えてきて、白い泡粒が指の隙間から滲み出た。  
優しすぎるくらいの力だが、潤滑油となった石鹸の滑りと、肌の柔らかさはそれだけで  
気持ちがよく、インデックスが両手を動かすたびに、ぴったりと張り付いた身体が上下に揺れた。  
「こう、してるとね……私も気持ち、いいかも……」  
背中に熱い吐息が触れて、すべすべとした肌と小粒の乳首が擦れているのがわかる。  
インデックスが、体重を乗せてくるように抱きつきながらも上下に扱く。  
泡が攪拌されぐじゅぐじゅと浴室内で鳴り響く。  
「もう、出そ、うだ……」  
「わかったんだよっ」  
上条の呻くような呟きに嬉しそうに応えて、擦る速度が増した。  
手の上下動だけではなく、身体全体で愛撫するかのように大きく揺れながら続けられる。  
竿を擦り扱かれる上条の腹の中に、もう一つ心臓があるかのよう、疼きが何度も脈動する。  
何かを堪えるよう、無意識に力が脚に篭り、鼓動が股間へと集中していく。  
「う、あぁっ……!」  
ある一線を越えた瞬間、小さな手の中で上条は昂ぶったものを爆発させた。  
「わっ……!」  
「そのまましてくれ!」  
別の生き物のようにインデックスの手の中で、何度も動き暴れ回るモノに驚いて  
手を離そうとするが、上条は自らの被せて押さえる。  
重ねた手の上から、前後に擦って絞り出すように放出を続ける。  
震えのたび、撃ち出されるような白濁が手の中を汚していく。  
数秒の射精ののち、ため息をついた上条が股間を見ると、インデックスの掌中は  
固形物のような白い塊でいっぱいになってしまっていた。  
 
「わ、わりぃ。今すぐ洗ってやるから」  
気持ちがよすぎて、インデックスの手を使うような形で射精をしてしまった。  
身を退けて蛇口をひねり、シャワーからお湯を出そうとする。  
「……なんかもったいないかも」  
「な、なんでだよ」  
「だって、とうまが気持ちよくなってくれた証なんだよ」  
インデックスは誇らしげに両手を胸元に掲げた。  
これが綺麗な水などであれば、ある意味絵になる図かもしれないが  
生憎と手の上のものは、発散された男の性そのものだ。  
「んー? せーえきってなんか変な匂いだよね」  
「―――もったいなくありません」  
「あっ」  
インデックスが匂いを嗅ごうと顔を近づける前に、シャワーで洗い流す。  
ほんの少しだけ、眼前の光景がエロいとか思わなくもない上条だったが  
罪悪感と背徳感と恥ずかしかったりとで、水で流すしかなかった。  
そういうものが、興奮に繋がっていたのは見ない振りだ。  
「ぶー」  
「ほら汚いから石鹸で洗えよ」  
「汚くなんかないんだよ」  
「俺には汚いんだよ」  
 
不承不承ながらも、インデックスは言うとおりにシャワーで手を洗う。  
先に洗い終えていた上条は、風呂椅子に座り足元に落ちていたスポンジを拾った。  
(気持ちよかったよな……)  
ぎゅっと握ると泡がもこもこと膨れてくるのが、先程の行為を彷彿とさせるものがあって  
一度出したばかりだというのに、まだまだ欲求は膨れ上がって止まらない。  
「ひゃんっ……! と、とうま?」  
おもむろにインデックスを抱き上げ、向き合うように膝へ座らせた。  
よく食べるわりには軽く、とろっとした感触が膝に触れる。  
「濡れてるな」  
「…………とうまが気持ちよさそうだったんだもん」  
インデックスは恥ずかしげに、ぷいっと横を向いた。  
身体を洗ってくれてる時からそうだったのだろう。  
上条が悦んでいる様子に、インデックスも欲情していた。  
「……じゃあ今度は俺の番だよな」  
「でもっ、今日は私がとうまにしてあげるって……」  
「俺もインデックスに気持ちよくなってほしいんだよ」  
「むー。それは嬉しいんだけれど……」  
喜べばいいのか不満を見せればいいのか、変な顔のインデックスへと  
上条は笑いながらスポンジを向けた。  
 
「んっくぅ……」  
泡をたっぷりと含んだスポンジで胸を擦られて、インデックスは声が漏れ出た。  
すでに身体には熱が篭っていて、気持ちがいいようだ。  
スポンジを持った右手が淡い膨らみを擦り、たまに指で堅くなった乳首を摘み弄る。  
左手が脇腹や腰の辺りを撫でると、すべすべとした肌触りが心地よい。  
子供体型に見えて、腰のくびれは女の子らしい曲線を描いているのが、触るとよくわかる。  
今まで何度か裸を見た事があるものの、こういう関係になるまで上条はそうとは気づいていなかった。  
「食いしん坊のくせに、ここ細いよな」  
「運動とか……えっと、えくささいずだってしてるもん」  
「ウソつけ」  
「ひゃん……」  
テレビでも見たのか変な言い訳をするインデックスの腰を撫でながら  
ほんのりと赤くなった耳を咥えると甘い声があがる。  
普段のお返しのように甘噛みしながら、耳朶を舐めると気持ちよさそうに身を震わせている。  
「暴れると、落ちちまうぞ」  
「で、でもぉ……ぁっ、んぅ」  
そうして触れるたびに、仰け反ったり身をよじらせたりと、落ちてしまいそうなので  
左腕で腰を抱きなおし、愛撫を続けながら上条はニヤリと笑う。  
「手とスポンジどっちで洗ってほしい?」  
「ふぇ……? え、えっと……」  
悶える様子が可愛らしくてつい意地悪な事を聞いてしまう。  
インデックスは自身に触れている、感じるものを比べて迷う。  
どちらが気持ちいいと言うとどっちもがよくて。  
 
「手の……ほうが、とうまを感じれていいかも……」  
「あーもー! インデックスさんはいやらしいな!」  
「やぁ……わた、し、いやらしくなんて、ないんだよ……ふぁ……!」  
気持ちの問題だったのだが、あまり説得力がなかった。  
ぎゅっと抱きしめられ、お尻を両手で撫でられるだけで高く声があがってしまう。  
肉付きが薄く張りのある肌は泡と相まって、揉もうとしてもふにふにと指が滑っていく。  
続けて、腹や胸を撫でるように手を走らせては、摘んだりと、もう洗うというよりは  
上条がそうしたいだけと言った動きなのだが  
「もう……とうまのほうが……えっちなんだから……」  
気持ちがいいらしく、微笑を浮かべて見上げる瞳には悦びが見え隠れしている。  
「ね……とうま……」  
楽しそうに触っていた上条の、笑みがわずかに強張った。  
上条を見つめている涙で揺れる翡翠は蕩けるような光を放ち、ほころんだ頬は桜色に染まっている。  
清らかさと色香を併せ持つ、少女の表情に引きこまれそうだと、唾を呑み込んだ。  
見蕩れる上条の視界いっぱいに、艶めいたインデックスが映り  
「ちゅっ……んっ……」  
キスをされた。  
柔らかい感触と共に、愛しさが伝わってくるようだった。  
お互いの吐息を吸って、唇を擦れ合わせて、どちらからともなく舌を伸ばす。  
 
「ぴちゃっ……はぁ、ん……ちゅっ…………」  
絡ませあった舌が少し離れて、また繋がって、濡れた音を響かせる。  
「…………インデックスはキス好きだよな」  
唇が離れると上条は誤魔化すように早口で呟く。  
可愛らしいどころか、誘惑されるような色気すら感じ、惹かれてしまった。  
責めているつもりが、あっさり返されたようで少し恥ずかしいとも思う。  
「だって……大好きなとうまとキスできるんだもん。嬉しいに決まってるんだよ……」  
なのに、インデックスは幸せそうに微笑んでいて。  
建前染みた上条の心中など内から弾け吹き飛んで、我知らずのうちにまたキスをしていた。  
「……ん……じゅじゅっ、ちゅっ……ぴちゅ、ん……」  
唇を触れ合わせるだけではもどかしく、先程よりも深く舌を差し入れ、口内を掻き回す。  
どこもかしこも柔らかいそこを愛撫して、トロトロの甘い唾液を味わう。  
舌で口腔をすくい吸い付き、飲み込んで水音を響かせる。  
触れ合わせ、重なった舌が混じって、溶け合いそう。  
抱きしめる腕に力が篭り、インデックスの吐息が唇から零れる。  
 
「洗ってあげたかったけど我慢できなくなった。……いいか?」  
「大丈夫かも……きて、とうま……」  
上条の首に腕が回されて、インデックスの脚を下から持ち上げ開く。  
毛も生えていない、まだ幼い造りのそこは興奮のためか、白い肌がうっすらと桃色に染まっていて、  
上条を待ち望んでいるように、小さな膣口がわずかに開いていた。  
「ん、あぁっ……!」  
上条は腕をゆっくりと下げて、貫いていく。  
慣れつつはあるが、まだ狭隘なそこを割り開き、腰を進めていくと  
抱いた身体がぞくぞくぞくと、震えているのが伝わる。  
インデックスが感じているのがよくわかって、上条は腰を使い始めた。  
「ひゃぅん……! あっあ、んぁっ……!」  
(とうまのが、いっぱい……!)  
速い抽挿に、喘ぎが勝手に漏れ出る。  
柔い肉襞が絡み付いて、ぐちゃぐちゃと淫らな音を響かせる。  
小さなインデックスの中は、上条で埋め尽くされていく。  
インデックスが上条の形へと、変えられていく。  
「すっげー締め付けられてめちゃくちゃきもちいいっ!」  
「わた……しも、っん、いいんだよ……!」  
上条はただ上下に動くだけではなく掻き回すように腰を捻り、インデックスも  
動きに合わせて身体を揺らし、お互いの粘膜を強く触れ合わせた。  
 
「んぁっ……! そこ! すごくいいかも……!」  
「……こうか?」  
「ゃぅ……!」  
エラばった亀頭が臍の裏側を擦ると、悲鳴とともにインデックスは仰け反る。  
瞳が揺れ、唇の端から涎がタイル床へと零れ落ちる。  
本人も上条も知らない性感帯に触れたのだ。  
「あっ! ひぃああぁぁ…………!」  
上条はインデックスの背を反らさせるように抱いて、ぐりぐりとその部分を擦ると大きな声があがった。  
インデックスの視界はチカチカと明滅し、照明が幾つも増えては消えるような錯覚が生まれる。  
腹の中から溢れていく快感が脳までを犯し、指の先までが蕩けていくように感じる。  
擦り、突き上げられる衝撃が浮遊感へと変わって、インデックスの身体が痙攣するように大きく震えて、一気に強張った。  
「あっぅ……! ゃぁぁぅぅっ…………!」  
無意識に力の入った指が、上条の肩に軽い引っかき傷を作り、脚は上条を掻きいだくように組まれて、背に×の字を描いた。  
そんな全身の力みに連動するよう、膣壁が上条自身を絞り上げていく。  
しばらく経って、強く抱きしめていた力が少しずつ抜け、弛緩しきると  
幼い貌は快感に溶けきり、だらしなく開いたままの口からは、涎が垂れ落ちていた。  
 
「よかったか?」  
「ん……気持ち、よすぎるのも……辛いかも……」  
ようやく、と言ってもいい時間が経ち、忘我の淵に佇んでいたインデックスの意識が戻る。  
肌にはどろっとした汗が流れていて、お互いの体臭を心地よく思う。  
繋がったまま二人は動きを止めていたが、上条はまだ終わっていない。  
「俺もいきたいから、頼む」  
「……うん……わかったんだよ」  
「ここに手をついて尻向けてくれ」  
「こ、こう?」  
上条はインデックスを風呂桶の縁へ導いて、背後から貫いた。  
「―――っ!」  
インデックスから息が強く漏れ出るような、声にならない悲鳴があがる。  
絶頂したばかりの身体は敏感なのか、快感という暴力で殴りつけられているかのよう。  
「ごめん。けど、がんばってくれよ……」  
「あ、ん……ぅあ……」  
満足に返事できない様子だが、上条は上条で我慢ができない。  
少しの罪悪感と、大きな興奮を感じながらインデックスを責めていく。  
「んんぅああぁっっ……!」  
抽挿を続けながらも、小粒の乳首と、堅くとがった陰核を擦る。  
小さく敏感な二つは摘みやすくて、弄れば弄るほどインデックスの声が増していくようだ。  
「あっ! と、うま……! そこ、いっぱっ……い……! 」  
次は子宮まで突き上げんとばかりに深く貫けば、上体が弓のようにしなった。  
乱れた銀髪が背に張り付き、覗く肌には大粒の汗が流れ出しては、愛液と混じり脚へと垂れていく。  
責めれば責めるほど、インデックスの膣内は気持ちよく変わっていく。  
トロトロのそこは湯のように熱くなって、腰を振るたびに膣壁が絡み付いてはきゅっきゅっと締め付けてくる。  
 
「またいってるよな」  
「……う、ん……たって……られにゃい、んだよ……」  
苦しさすら感じさせながらも、喘ぐインデックスに上条は情欲を抑えられない。  
(可愛すぎてとめらんねえよ……!)  
可愛らしいから責めたくて、責めるとより可愛らしくなっていく。  
大好きな女の子が、自分の手で、自分のモノで、悦んでいる様子を見て止められる男があろうか。  
愛しさと欲望がドロドロに入り混じって、煮えたぎる想いが、ボルテージをドンドンと上げていく。  
「激しくいくぞ!」  
「やぅっ! ふぅ、んぁっ! あっ、あっあっ、ああっ!」  
上条がインデックスの両手首を握ると、背後へと引っ張った。  
インデックスの背が優美な曲線を描き、無理矢理に胸を張ったような体勢となって  
握った手首と繋がった部分を支点に、振り子のように何度も何度も揺らされる。  
繋がった部分から、肉がぶつかり合う音が響いて、小振りな尻肉が上条の腹筋に押し歪められて、わずかに震えている。  
ふにゃふにゃに砕けてしまっている脚は今にも崩れそうなのに、背後からの激感で強引に  
立たされるような形になり、へたり込むのを許さない。  
止まれない欲望のまま、インデックスを食らい、味わい、貪るように、上条は頂点へと向かっていく。  
「とうまっ……! いいんだよ! もっとしていいから!」  
まるで少年が少女を、強引に犯しているような光景だったが、インデックスは嬉しかった。  
こんな風に激しく求められて、気持ちよくて、気持ちよくなってくれているのだ。  
少しだけ、またしてもらってばかりだと申し訳なく思いながらも、愛されて、愛している実感が、幸せだった。  
「でる……!」  
「ひぁ、ぅんっ……! あ、んんぁっ……! う、ん……きて、ほしいんだよ! とうまっ!」  
ぐつぐつと、射精欲求が込み上がってきて、深い所で津波のように堤防を決壊させた。  
「あ、あああぁぁっっ―――!!!」  
マグマのように噴火し、身体の内側を灼かれる感覚にインデックスも絶頂へと導かれる。  
奔流が小さな器を埋め尽くさんと注ぎ込まれていき、膣壁が蠢いてはこくこくとそれを飲み込んだ。  
射精しながらも、より気持よくなろうと上条が腰を使うと、混ざった体液が撹拌され  
濁った音が結合部から響くのすら快感に感じた。  
上条は子宮の中まで精で満たしている事に、男としての充実感と愛慕の念を募らせながら、全てをインデックスの中へと吐き出していった。  
長いようで短い射精が終わり、上条はインデックスを抱きよせタイルに座り込む。  
無言のまま、唇が交差して、一時の間、お互いの想いと愛を交換し合う。  
充実した疲労感と、それを上回る幸せに二人はずっと微笑んでいた。  
 
「……ふぃ〜〜極楽極楽」  
「髪が崩れちゃうんだよ」  
上条とインデックスは身体を洗ってから、一緒に湯船へ浸かっていた。  
さほど広くないそこでは、上条の脚の間にインデックスが座っており、普段とは逆に  
タオルが巻かれたインデックスの頭の上へと、上条が顎を乗せている。  
やってみるとインデックスの髪は柔らかくて、なんとなく収まりがよいと感じた。  
「……なあ」  
「ん……?」  
そのままの姿勢で、湯にたゆたっていた上条がぽつりと語りかける。  
リラックスしていたはずが、言葉にはほんの少しの緊張があった。  
「さっき、貰ってばかりって言ってたじゃねえか」  
「うん……面目ないけど、そうなんだよ」  
「じゃあさ……俺が代わりに何か貰いたいって言ったら、くれるか?」  
「私があげれるものなら、なんでもとうまにあげたいかも。でも何かあるかな?」  
インデックスが首をかしげて、上条の頭も一緒に傾く。  
代わりの何かと言われても、現状インデックスは何も持ってないし、舞夏のように技術があったりもしない。  
そう考えた所で  
「―――!」  
「ストーップ。動くんじゃありません」  
何かを思いついて、上条を見ようとしたが、頬に手を当てられ止められる。  
「その、とうまが欲しいんじゃなくて、私があげたいものだったりするかも」  
「……インデックスが欲しいんじゃなく、俺があげたいとも言えるかもしれないな」  
「とうまの顔を見ながら、聞きたいんだよ」  
「まだ、だ……もうちょっと待ってくれ。心構えができてねえ」  
インデックスの瞳が、宝石よりもキラキラと光っている気がした。  
上条の顔は茹蛸のように赤く染まっている。  
往生際の悪い上条ではあったが、続く言葉を、最後まで告げるしか道がないのは  
他ならぬ上条が、よくわかっていたことだった。  
 

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