上条が目覚めた時、目の前には天使がいた。
(ここは天国か?)
そんな馬鹿げた考えも、ボケっとした頭では事の重大さ――天国イコール死――もどこ吹く風。
それにしてもこの天使は知り合いに似ている。
「とうまぁ」
自分の名を呼ぶ声もそっくりと来ては、彼女に「実は私、天使だったの」と告白されてもなるほどと納得してしまうだろう。そんな天使の顔が近付いて来る。
だが上条はリアクションもせずに、どアップになる顔をぼんやりと見つめていた。
「!?」
唇に柔らかい何かが触れる。
それはとても憶えのある感触。
唇の隙間から舌先へと広がるほのかな甘みにも鮮明に記憶にあった。
これはごく最近憶えた事だから間違える筈は無い。
上条は自ら唇を押し付けると、可憐な唇を割って舌を差し込んだ。
すると、おずおずと舌に返事が返って来る。
どうやら嫌われてはいないらしい事に安堵して、上条は大胆に舌(それ)へ舌を絡めた。
「ぅん」
鼻先を擽る息が心地いい。
絡めたままの舌を引き出して、唇をすぼめてむしゃぶりつく。
「んろ、あぉ……」
じゅっじゅっと吸って、ぷるぷるとした弾力を甘がみしながら楽しんでから、ちゅるっと唇を放す。
「「はあぁ……」」
熱い吐息がお互いの頬を撫でる。
「インデックス」
「とうま」
お互いに名前を呼び合ってから2人はもう一度深く口づけを交わした。
「大丈夫?」
「ん? おう」
インデックスに手を貸してもらって浴槽から体を起こす。
どうやら彼女が機転を利かせ、お湯を抜いてくれたお陰で溺れずに済んだらしい。
(寝床で溺死なんて笑えねぇ……あ、でもここは風呂だっけか? ま、どっちにしても一緒だな、不幸だ……)
上条は洗い場にだらしなく脚を投げ出して一息つく。
するとだらしなく投げだした脚の間に、インデックスがこちらを向いて膝を付いた。
そしてまた口づけをする。
「んく……」
どちらからともなく喉を鳴らしてお互いの唾液を飲み下し合う。
そして唇が離れると上条は、
「まだ人工呼吸の続き?」
とちょっと的外れな事を聞いた。
するとインデックスはキョトンとして、続いて目を横へ逸らす。
その仕草に上条は、
「ん? どうした」
そうして少女の顔を覗き込もうとした。
だが、
「何でとうまはそんなに余裕そうなのかな……。私はこんなにドキドキしていると言うのに……」
そうしてインデックスは上条の手を取ると自分の胸に押し当てる。
掌から感じる鼓動の感覚は確かに早い。
しかし、
「あ、あの……」
それ以上に彼女の硬くなった先端の感触が気になる。
それと同時にぼんやりとしていた頭に血がのぼり始めて、
(あれ……? 何ですかこの素敵空間は……)
生まれたまんまの姿のインデックスが目の前にいて、しかも自ら上条の手を胸に当てさせている光景とは、
「ちょ、ちょっと待って!?」
「?」
上条は今更だが、ここでやっと状況を理解した。
「ゆ、夢か!?」
いや全く理解していなかった。
こんな棚からぼた餅的な事が自分になどあろうはずがない。
高根の花と思っていたのだ。
それ以外にも思う所は多々あったから、だから側にいてくれるだけで満足だと常に言い聞かせていのに、
(それに)
こんな夢なら何度も見たじゃないか。
本来ならここでいつも夢は覚める。
しかし目の前のインデックスは消えない。
驚いた様な顔をしてた少女の顔が、にっこりと笑顔に変わった時、
「夢だと良かった?」
「まさか」
このチャンスを掴まないなら男に生まれた意味は無い。
(覚めない夢だってんなら突き進むまでだ。この幻想だけは誰にもブチ壊させやしない!!)
そうしてどちらからとも近付いた2人は、もう何度目になるか判らない口づけを交わした。
そして、唇がそっと離れた後、
「いいのか?」
常に不幸にまみれた少年は、幸せに対して慎重だ。
するとインデックスは予想していたとでも言いたげにふっと笑ってから、
「それはこっちの台詞かも」
そう言って彼女から羽で触れる様なキスをして来た。
(信じて良いんだな……俺が幸せになる未来が有るんだって信じても……)
そんな喜びがじわじわと心から滲みだして来たその時、
「ところでとうま。何であの時キスだったの?」
上条にはその話がトイレでの事だと直ぐに判る。
あの時の状況を思い出しながら、
「うーん……、キスすると落ち付くってどっかで見た記憶が有って……」
「それで私にキス」
「そう」
「あの状況で?」
「う、うん」
目の前の少女は笑っている筈なのに何故か責めれれている様な気がする。
そう感じた矢先に、
「私、ファーストキスだったのに……」
「…………」
全身からどっと汗が噴き出た。
もう幸せのバーゲンセールはおしまいなのか。
天国から転げ落ちて早くも地獄の業火にのみ込まれると言うのか……。
「でも赦します。父なる神もきっと赦してくれるでしょう」
やはり今日のインデックスは天使だ。
「ありがとうございますだお代官様」
「そのリアクションはよく判らないかも」
「ではお詫びに誠心誠意尽くさせていただきます」
「うん♪」
そして2人はお互いに額をこつんとぶつけあって、心の底から幸せを感じて笑い合うのだった。
「あ……、胸ばっかり……ん……吸っちゃだめ……とうまぁ……」
インデックスは自らが上げる嬌声の甘ったるさに驚いた。
(まるで、「もっとして」ってせがんでるみたいなんだよ)
今更ながら己の変化には戸惑ってしまう事ばかりだ。
キスをすれば心が弾み、触れられると息が上がる。
まして硬くなった乳首を執拗になぶられては堪らない。
「はんっ……く、ふ」
我慢する様に唇を噛締めるが甘い吐息が零れ落ちる。
(変わる……私……変えられるんだ……)
だがインデックスには戸惑いはあっても後悔は無い。
人並の恋なんて出来ないと思っていた。
だから自分からは求めずに、上条の方から求めて来るまで待とうと思っていた。
彼には常々大事にされているのは知っていた。でも好かれていると本気で自惚れた事は一度も無い。
だから自由に振舞っているつもりで何処か装っている部分が自分の中に有った。
例えばベッドに上条のスペースを作ってみたり、スキンシップを装って必要以上に体を密着させてみたり。
思い切って肌を晒してみた事もあった。
トイレの一件もそうだ。
何とかして上条に認めて欲しかった――自分が1人の女であると。
だが結局は上条はなびかない。その事に自分に魅力が無いのだと半ば諦めていた。
そこへ降って湧いた今回の一件。
(もしかしたらとうまは変わってくれるかも!?)
自分を女と認め、その魅力を認識してくれるかもしれない。
治療のさ中に未知なる体験を繰り返しながらインデックスはそれに期待していた。
自身の中を指でまさぐられた時、上条も同じ気持ちなのかと期待した。
「ひぁ!? と、とうまぁ……」
「後ろがいいんだろ?」
「……うん」
2度目ともなれば上条の指技は的確だ。
「くふっ……そっ、んっ」
入口を丹念になぞられるだけであの時の痺れるような感じが甦って……いや倍加して襲いかかって来る。
「あ……は……んんっ!?」
弓なりに反った所で上条に乳首を咥えられた。
「や!? あふ……、とうま伸びちゃうよぉ、私のおっぱいが……伸び、ちゃ、ふうっ……」
あの時の沈黙をインデックスは否定されたと思って落胆した。
でも本当は違った。
上条も自分と同じ位に自分の事を愛してくれている……。
「は、んんぅ……」
ぐにゅりと上条の指が中に入って来る。
それだけで体が悦んでしまう。
もう上条無しではいられない……いやあの時、助けられたあの日から上条がいない世界など考えられない。
「んいっ、は、ん……くひっ、うんっ、そこ、いぃ……」
インデックスは無意識に愛撫をねだる。
だが上条と来たら、
「やっぱりここが良いのか?」
その言葉に少し正気が戻った少女は、
「は!? し、知らないっ! 知らないんだよそ、うんっ、あ、あっ……」
必死で否定しようとした所をぐりぐりされて目を白黒させたた所に、
「ほらここ、こうするとビクビクしてんじゃねぇかよ」
「うう、ちが……そんな……ん、ちがう……」
「じゃあもう少し入念に確認してみような」
「だ、だめえぇ――――」
自分の弱い所を突いて来る上条には敵わない。
程なく責め立てられて、潮を吹かされて更に辱められる。
それでも、
「インデックス?」
こうやって最後に心配そうに囁いてくれる、決して突き放さない彼が好きだ。
だから返事の代わりに、上条の首の後ろに手をまわして、自分から唇を重ねてしまう。
「とうまぁ……」
そろそろ体が辛くなって来たインデックスは、甘ったるい声で上条の名を呼んだ。
「そろそろ、いいのか?」
「うん」
それが2人の合図。
「ひゃ!?」
「大丈夫か?」
「う、ごめんね。大丈夫だよ」
熱く硬いものが押し付けられて思わず驚いてしまったインデックスだったが、
(あの、熱くて大きいものが私の中に……)
そう考えるとじんわりと奥が熱くなる。
今日、初めて2人は男と女として繋がるのだ。
ただ、
「こんな時に悪いんだけどさ」
「え?」
上条の声にインデックスは現実に引き戻される。
「いきなりハードル高いと思うんだが?」
「うっ」
インデックスは思わず言葉に詰まる。
と言うのも、
「普通も知らない俺がさ、その……後ろでお前を満足させられっかな? ははははは……いてっ!?」
上条が笑った所で頭に拳を振り下ろしていた。
「とうまは本っ当にデリカシーの欠片も持ち合わせていないんだね!」
無茶なお願いをした自覚はあるが、ここまで来て腰を折るなど許さない。
実はお尻に興味が湧いてしまったとか、本番でいきなりクリーンヒットして重たい女になるのが嫌だとか、新たな秘密を抱えていたりするのだが。
「とうまが嫌なら自分でするんだよ!」
そう言ってインデックスは、最初はおっかなびっくり、
(ううん、迷っていては駄目かも!)
そう心の中で自分に激を飛ばして上条自身をぐっと掴む。
「お、おい、ちょ、ま、お前!?」
戸惑う上条の事など我関せずと自分のお尻にあてがう。
「う」
やはり指とは違う、柔らかいが遥かに熱く大きい塊に息を飲む。
(は、入るかな?)
そう躊躇していると、
「大丈夫か?」
上条が心配そうに声を掛けて来る。
先程までの甘い雰囲気が嘘の様な、まるでさっきの治療の時の様なピリピリとした緊張感……。
「んっ!」
インデックスは先程と同じく覚悟を決めて腰を沈めた。
(!!)
ワセリンと腸液でぬめったそこは、くぷっという小さな音共に容易に上条を受け入れた。
「はぁ」
インデックスはちょっと息を吐く。
思ったより苦しく無い事は僥倖と言えたが、道のりはまだまだこれからだ。
などと考えていると中がもぞっと動いた。
「きゃっ!?」
思わず声と共に震えが来た。
そして原因に目を向けると、何故かそいつは素知らぬ顔でそっぽを向いているではないか。
「とう、ま?」
おずおずと呼びかけると、これが返事だとばかりにまたもぞりと。
「んふっ」
入口を指より太いものでこじられて腰が痺れる。
どうやら上条は焦れているらしい。
(やる気が無い様な事を言って、本当にとうまって判らないかも)
ちょっとムカついたインデックスだったが、それよりも相手が乗って来た事が嬉しい。
何時の時も1人は寂しいものなのだ。
「ふぅ……」
息を吐いて、今度は一気に腰を沈めた。
何処まで入るとか、入らないとか、そんな事は初めてなので深く考えない。
だからドンと壁にぶつかった時、
「「うっ!?」」
インデックスは串刺しにされた気分になった。
「はぁ、うぅ……」
それが段々と納まると、お腹の中に自分の鼓動と違う脈拍が感じられてくる。
「おっき……」
そんな事を漠然と漏らしながらお腹を撫でていると、「無茶すんなよ」と上条に怒られた。
「入ったんだよ」
「判ってるよ」
上条は照れを隠す様にぶっきら棒に返して来る。
「お腹の中がごつごつするね」
「…………」
どうやら彼は拗ねてしまった様子でだんまりを決め込んだ様だ。
仕方なくインデックスはお尻の入口に力を入れてみる。
「うおっ!?」
今度は中にある上条を意識して、下から上へと順番に力を入れたつもりで、
「お、おあ」
上条の様子がおかしくてぷっと噴き出すと「な、何だよ」と睨まれてしまった。
「ごめんね」
あんまり苛めて駄々をこねられるのも困るので、インデックスは本来の行為を始める事にした。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんん」
「こら急になに、を、おお、お」
ずるずると中から上条が出て行く。
「お腹が引っ掻かれてるみたい」
「馬鹿……、お前急に何で動くん……」
「はふぅ、んっ」
「っって言ってる側ああっ!?」
上条が何か言っているが、無視して再び腰を沈めると、
「なんだかさっきよりおっきくなったみたい」
「…………」
上条は赤面して俯いてしまった。
(何だか可愛い)
そんな可愛い上条がもっと見たくなって、
「ん、ううっ」
「お、おいだからちょ、うおぉ!?」
インデックスは上条の制止も聞かずにもう一度中からゆっくりと引き出して、もう一度ゆっくりと中に戻して。
「んん、あ、うん、んっ、とうまっ、すごい、んっ」
「おま、ちょ、はげしいって」
「ん、んんっ、ふっ、ふぅっ」
「だから、まてって、はやいってぇ」
(こんこんがいいっ、このこんこんするのがいいのっ)
「くっ、おまえ、なんだっ、くそっ、く、おおっ」
そんな事をどれ位繰り返したのだろう。
「はっ、はぁ……」
インデックスは、いつの間にか自分が動けなくなってしまった事を知る。
最後の方など大して腰も動いていなかった。
(えへ、ちょっとはしゃぎすぎちゃったかも)
みっちりと中に納まったそれは、今はどちらの肉体か判らない位に少女の中で溶け合っている。
それが楔となって彼女の動きを止めていた。
その上、
(いきそうなんだけど……)
それでチラリと上条を見れば、
「は、ふぅ、ふぅ、ふぅ」
こっちもすっかり出来あがっている様子。
これなら一緒に、とインデックスは胸をなでおろして、
「とうまぁ」
と甘く囁いて彼にしなだれかかると、そのまま口づけをした。
「「んっ、はぶっ、ん、ちゅ、ん」」
お互いの舌と舌とを絡め合って激しくいやらしく唾液を奪い合う。
「ん、はふ……」
「インデックス……」
唇を離して息を整えていると切ない声で名前を呼ばれた。
うん、とインデックスは小さく頷いてから、
「とうまの」
「うん?」
「とうまのしたい様にして」
ここまでしておいてまる投げと言われ様が、初めてが全部自分のリードだったなんて、
(それはちょっと人には教えられないんだよ)
そんなちょっとした、乙女心のつもりだったのだ。
だからまさか、
「いいのか?」
「へ?」
何がいいのか聞き返す間も与えられずに、お尻に手を添えられて体を持ち上げられた。
視線の変化に暫し呆けていたインデックスは、外気に触れた内側の肉の痺れに何が起ったのか理解して、
「あは……、はひ……いぃ……」
頭が真っ白になる。
馬鹿みたいに口を開いて気の抜けた声を上げている事も、気持ち良さにオシッコまで漏らした事もどうでもいい。
(きもちいい)
何もかもがその一言に塗り潰される心地よさに酔う。
「いったのか?」
「うん、いったよ……」
だからインデックスは大事な事を忘れていた。
「そうか」
そう言った上条自身がまだ閉じ切らないすぼまりを狙っている事に。
「!!」
すとん、と落ちた。
本当にパッと手を放された位の感じで輿が落ちた。
淀んだ瞳にはまるで世界が早回しになったかのように見えた。
「こふっ」
インデックスは軽くむせてから、自分の身に起った事を理解する。
「あ、ああ、あ……」
貫かれた。
逝ってからさほど時間の立っていない敏感な肉を貫かれた。
「い」
体が新しい快感に委縮する――その前にまた上条が中から引き抜かれる。
「あ、は」
それを処理しきる前にまた貫かれる。
「ふうっ」
それは先ほどとは逆に、上条がインデックスを責める構図を示していた。
「あ、はげし、いく、いってる、いってるのに、い、くぅ」
「は、は、いけ、ん、ふ、もっといけっ、いってくれっ」
上条が荒い息を吐きながら突き上げて来る。
もうとっくに限界だった。
それでも彼が逝けと言うなら、インデックスに「否」と言う言葉は無い。
「ついて、じゃあっ、もっと、たくさん、いっぱい、私を、いか、せてぇっ」
「あ、ああ、いかせる。いくらでも、ずっと、ずっと、たくさんんっ」
その言葉にインデックスは満たされた気持ちになって涙を流しながら、
「うれしい」
すると、
「俺もだよ」
呼応する様に上条が相槌を打つ。
突き上げ、削り取るスピードが増す。
「はひっ、めくれるっ、めくれちゃう、おひりのなかがめくれひゃむ!?」
だらしなく嬌声を漏らす唇を塞がれた。
「んちゅ、はんっ、ちゅ、はふっ、ん、くふっ」
舌をキツく吸われるとお尻が自然と弛み、そこを激しく出し入れされると瞼の奥に光が散る。
「はみゃ、らめ、ばかになっちゃ、ぃぃ……」
狂乱に酔う――とインデックスの体の内にある楔がひと際大きく膨らんで震えた。
「くっ」
上条が慌てて腰を引く。
だが、それより早くインデックスは上条の腰に足をギュッと絡めて、
「だいじょうぶだよ」
そこにどんな葛藤が有ったのか、上条は一瞬だけ躊躇う様に目を見開いてから、少女の最も深い所で弾ける事を選択した。
「「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」」
そこから先は記憶が無い。
それだけがインデックスには心残りであった。
「こら、インデックス!」
「な、何かな?」
背後に立った上条の声にインデックスがビクッとして振り返る。
その顔には既にばれちゃったと書かれている様で、
「何かなじゃねぇだろ? 冷蔵庫に仕舞ってあったプリンはどうしたんですか!?」
「あ、あれは賞味期限がそろそろ怪しかったから始末しておいたよ。偉いでしょ」
本当に後半は褒めてもらいたそうな顔が上条には余計に腹立たしく映る。
「偉いでしょじゃねえ! あれは貰いもんだからちゃんと俺が食べて感想を言わないといけなかったの!」
「全体的に柔らかくて甘くて良かったけど、アレでカラメルが完璧だったら良かったかも」
「うっきー!!」
上条は怒りの余りインデックスが座っていた座布団ごと彼女をひっくり返した。
ごろごろごろっと転がった少女は3回転くらいで復活すると、
「何をするのかな、私はボールじゃないんだよ!」
「うるせえ!!」
「はうっ!?」
「もう怒った……その怒りは堪忍袋の緒が切れ切れにブチ切れて成層圏の彼方まで飛びました」
「そ、それは凄いね」
ちょっとこれはとインデックスの顔が引き攣った。
「晩飯抜き」
「ええーっ!? それは横暴と言うんだよ! たかがプリンにそこまで怒るなんて、とうまちっちゃい!」
「う、うるせぇ、ちっちゃいとかいうな!! こっちはお前のおかげでいい訳を……不幸だ」
「うわぁーん、ご飯ご飯ご飯あああああああああん!!」
突如として駄々っ子の様にジタバタするインデックスに上条は頭を抱えてしまう。
結局2人の関係は相変わらずだ。
こうして些細な事でしょっちゅう言い争いをしてしまう。
(変わらねえよな俺達……あれってやっぱ幻想(ゆめ)だったのかなぁ)
などと考え込んでしまう。
とそんな無防備な背中に何かが飛びかかって来た。
「とうま……女の子がこんなに可愛らしくおねだりしている時に考え事とはいい度胸だね」
「は!?」
「これはもう背信行為と言うか浮気と同義」
「何それ怖い!?」
インデックスの矢継ぎ早の台詞に上条は青くなる。
「でも優しくしてくれたら許さない事も無いかも」
「結局それかよ……」
上条はガッカリとホッとをない交ぜにして複雑な気持ちながら立ち上がった。
「とうま?」
「お嬢様、今晩のお食事は何が御所望でしょうか?」
「お肉!!」
「ばかやろう、せいぜい上条家の財政ではお豆腐ハンバーグです」
「えーっ!?」
「何か問題でも?」
我儘は聞きませんとつれなく返す。すると、
「隠し味に愛情を注いでくれたら我慢する」
「い、いいますねインデックスさん」
2人の間に芽生えたものは、気が付かないどこかで着実に育っていた。
END