まだ太陽が高い位置にある様な時刻。1人歩道を歩いていた白井黒子が立ち止まった。  
「ここ、でしたわね」  
 見上げた先には『Cafe』の看板が。  
 扉を開けばカランコロンと鈴の音が客が来た事を知らせる。  
「いらっしゃいませ!」  
 早速、店員の女性が元気な声で挨拶をして来た。  
 更に席に案内しようと近付いて来るが、白井はそれを片手で制して、  
「待ち合わせしておりますの」  
 そう答えた直後、店の奥から彼女を呼ぶ声が聞えて来る。  
「白井さーん!」  
 席の一角から身を乗り出して手を振る長い黒髪の少女――佐天涙子を見つけた白井は真っ直ぐ彼女のいる席に近付いて行った。  
「お待たせしましたですの」  
「急に呼びだしちゃってすいません」  
 同時にぺこりと頭を下げて、同時に顔を上げてにっこりとほほ笑みあう。  
 店員がお冷を運んで来た時に、白井はコーヒーと言いかけてから、観妙に顔を引き攣らせて注文をケーキと紅茶のセットに変更した。  
 そして店員が下がると同時に白井は佐天に向き直ると口を開く。  
「で、どうしたんですの?」  
「へ?」  
 その一言に、今正にカップを口に運ぼうとしていた佐天の手が止まる。  
 白井は用事があると言われて佐天に呼び出されていた。  
 要件とは何か。些か単刀直入ではあったが、それを聞くのは至極当然のことと言える。  
 それがよもや頬を引き攣らせてギョッとされようとは……。  
(何なんですの一体?)  
 大体何故自分なのか。彼女なら相談に乗ってくれる相手がすぐ身近にいる筈なのだ。  
 それなのに『白井さんだけに相談が』と言う意味――、  
(となればこちらから切り崩しをかけてみますか)  
 白井は軽く咳払いしてこう切り出した。  
「初春がらみ……ですわよね?」  
「あ……」  
 白井のカマかけに佐天は呆然、そしてカマをかけた方はその顔にやっぱりと言う思いで溜息を吐く。  
 初春とは白井と同じ風紀委員(ジャッジメント)であり、また同期でもある少女の名前。  
 そして佐天とは同じ学校のクラスメイトで親友で……佐天と初春は恋人同士だった。  
「あははは……、やっぱり判っちゃいました?」  
 不自然なくらいに明るくふるまう佐天にもう一度溜息を吐いた白井は、  
「あれは佐天さんがらみでしたのね……」  
 片手で顔を覆う様な、頭を抱える様な仕草をする白井に佐天は言葉の意味を聞き返す。  
「初春に何かあったんですか?」  
「様子が変でしたの」  
「様子?」  
「そう。口はともかく仕事でミスなど皆無な初春が昨日一日だけでどれ程のヘマをやらかした事か……」  
 
「そ、そうなんですか!? け、怪我とかして無いんですよね!?」  
「わたくしなど塩入コーヒーなどと古典的なボケをやられましたですの。ツッコミ所が満載過ぎて疲れましたですわ」  
 白井が先程コーヒーと言いかけて顔をしかめた意味を理解した佐天は、恐縮して身体を小さくする。  
「あ、それはどうも……ご迷惑をおかけして……」  
 しゅんとした相手に白井はもう一度溜息を吐く。  
「それで、初春とは喧嘩でもしたんですの?」  
 その言葉に佐天は更に身を縮めて、  
「はぁ、ええ、まあそんな感じで……」  
「図星、ですのね……」  
 白井は唖然呆然としながらも、「何をなさったんですの?」と続きを促した。  
 すると佐天がその重い口を開く。  
「重福さんて憶えてます?」  
「連続暴行事件の犯人の名前が確かそんな名前でしたわね」  
「い、今はちゃんと更生してるんですよ」  
「その重福さんとやらがどうかしま……え、まさかもしかして……!?」  
「あはははははははははははは、白井さんは洞察力が鋭いから助かります!」  
 こんな時にあっけらかんとしている辺りが佐天なのだが、白井からすれば何の助けにもならない。  
 既に肯定されてしまった観があるがまさか――、  
「うわ、き?」  
「まさか観られているとは思いませんでした」  
 佐天の言葉に白井はガックリと肩を落とす。  
「はぁ……、迂闊ですわ佐天さん。迂闊すぎますの」  
 初春の事を思って白井は遠い目をする。  
 曰く学園都市伝説の天才ハッカー守護神(ゴールキーパー)。  
 曰く目的のためには手段も被害も後も先も考えず即断即決即実行の猪突猛進娘(ミス・ノーブレーキ)。  
「それでもキスしただけなんですよ? それ以外はしていません!」  
 何を自信満々にガッツポーズしていますの、と突っ込みたいのは山々だったが白井にはそんな気力は湧いてこない。  
(浮気とはまた)  
 重々しい言葉がずっしりと何故か自分にのしかかる。  
「……佐天さんから誘ったんじゃないんですのね?」  
「もちろんあたしは初春ひと筋ですから」  
「本人にも言ってやったんですの?」  
「もちろん!」  
 だから何でそんなに元気なんですの、と喉元まで出かかったがそれは何とか飲み込んで、  
「で、それでも納得しなかったと」  
「『だって佐天さん来る者拒まずじゃないですか!』ですって」  
 佐天の言葉に白井はテーブルに勢い良く倒れ込む。  
 確かに彼女の周りには何故か友達が多かった。  
 まさかそれ全部と関係を持ったのでは……。  
「それはもう何と言うか……自業自得ですの」  
 
 白井は初春が何だか可哀そうになって来る。  
 そんな何だかどっと疲れた所にケーキと紅茶のセットが届くと、白井はのろのろと体を起こす。  
 そしてそれを機械的に口に運んでいると、急に佐天がポツリと、  
「言葉では伝わりませんか?」  
「うーん……あの初春を見る限りでは……」  
 白井が思い出すのは幽鬼の様にフラフラとあっちに行ってはぶつかり、こっちに行っては転び、かと思えば……、  
『うふふふ、私から逃げようなんて百万年早いんですよ? ホラホラ仏陀の掌でジタバタするお猿さんの気分を味わわせてあげます、ふふふふふ……』  
 あの矛先が次は誰に向けられるのかと思うと背筋が寒くなる。  
 そんな事を考えていた時だった。  
「判りました!」  
「へ?」  
 妄想から引き戻されると目の前にいた佐天が立ち上がっている。  
「白井さん」  
「はいですの」  
「協力、してくれますよね?」  
 その笑顔に白井はここに来た事を後悔した。  
 
 
 
 
「と言う訳ですの。許して下さいね初春」  
「こ、これが許せると思ってるんですか白井さん!! そ、それに佐天さんも!!」  
 今白井達がいるのは佐天の部屋。  
 初春はそのベッドの上に裸にされて、更に四肢をロープで柵に固定されていた。  
 初春の剣幕に白井はバツが悪そうに言葉を濁す。  
「う、初春、これには深い訳……」  
「ん、ふふふふ……」  
「「!!」」  
 突如部屋に聞えた含み笑いの声に2人が同時に身を強張らせる。  
 そんな中するりと白井と初春の間に割って入った佐天が、そのまま初春を組み敷く様にベッドの上に乗って来た。  
「かーざりん」  
「っ」  
 佐天がそう耳元で囁くと初春が怯えた様に首を竦める。  
「かざりんはあたしのモノよねぇ」  
「…………」  
「かざりんもしかしてあたしの事捨てようと思ってる?」  
「す、捨てようとしてるのは佐天さんじゃないですか!!」  
 言いかえして、そして睨み付けて、それから初春は佐天の無表情な顔にギョッとする。  
「佐天さん?」  
「ひっ!?」  
 
 頬を撫でる手に、殴られると思ったのか初春が身を硬くする。  
 だがその手は頬を滑り、顎から喉、喉から肩甲骨、やがてその指先が膨らみの中心で円を描くと、  
「涙子」  
「涙子さ……」  
 初春のオウム返しが終わらない内に、柔らかな頂きに爪が食いこむ。  
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」  
 部屋に響く初春の声。  
 それにかき消されない様に佐天は初春の耳元に唇を近付けた。  
「涙子」  
「る、い゛こ」  
「はい、良く出来ました」  
 パッと離された乳首に残る深い爪痕が力の強さを物語る。  
 そんな初春の、そして佐天の姿に白井は驚愕を隠しきれない。  
 初春には初めからSタチの気があるのは知っていた。  
 だが佐天は比較的普段もアレの時もあっけらかんとして引っ張っている様で流されている、そんな感じだった。  
 それがこのドSっぷりたるや……染まったのか、それとも素質があったのか。  
(初めてでは無いにしてもぶっちゃけこの2人の関係怖いですの)  
 これ以上は巻き込まれまいと心に誓いながらも、何故だか芯が疼いて我知らず内腿をすり合わせてしまう白井であった。  
 などと白井が葛藤しているなどお構い無しに、佐天の傍若ぶりは更にエスカレートを見せる。  
「今日はね、かざりんの体にあたしを刻もうと思ってるの」  
 そう言ってスポーツバックをゴソゴソと掻き回して取り出されたのは、ハサミ、カッター、コンパス、マジックペン等の文房具の数々。  
「「!?」」  
 手にしたそれを見てギョッとする白井と初春を他所に、それをベッドの上に並べ始めた。  
「ちょ、ちょっと待って下さい佐天さん。初春の体に何を刻むつもりですの?」  
「いやだなぁ。まさかあたしが初春の体に傷でも付けると思ったんですか?」  
「「…………」」  
 佐天の言葉に白井と初春は同時に沈黙した。  
 そして、  
「「「あははははははははははははは」」」  
 取り合えず笑おう。笑い飛ばしてしまえと皆で笑いあった。  
 だが、  
「それじゃあ今からかざりんの包茎手術を……」  
「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」  
 チキチキチキ……と出て来たカッターの刃に、白井と初春が同時に絶叫した。  
「嘘嘘。冗談ですよ、じょ、う、だ、ん」  
 先程のカッターも、その他の物騒な品々もまとめて片付けながら佐天はあっけらかんとしてそんな事を言う。  
 だが白井は床に尻もちを着いたまま、  
「と、とても冗談などには見えませんでしたわ……」  
 そして一番の当事者だった初春は、  
「ぐすっ、うう……」  
 
「泣かないでよかざりん……って、今ので漏らしちゃったの?」  
 佐天がそう指摘した通り、初春の股からお尻に掛けてシーツが黒々とシミになっている。  
 まあ、こうなる事はお見通しだったのかシーツの下には介護用の吸水パットが敷いてあった。  
 そんな事より佐天だ。  
「か、かざりん……」  
 何故だか熱い眼差しで初春を見つめたかと思うと自分の肩を抱いてぶるぶるっと身震いする。  
 そして熱い吐息を吐きだすと、いそいそとセーラー服を脱ぎ捨てた。  
 その時白井の目には、尻までビタビタに透けるほど濡れた佐天の下着が。  
「かぁーざりんっ♪」  
「いやぁ……」  
 弱弱しく抵抗する初春を下に敷いた佐天が、上からキスの雨を降らせ始めた。  
 目元、頬、鼻の頭、顎、唇の端。  
「ふあっ」  
 来るであろうそれを受け止めようと初春が舌を出した。  
 だが一向に待てどそれは来ない。  
「?」  
 初春は薄眼を開けて確認しようとした。  
 だがそれより先に口腔に深々と舌が差し込まれたのだ。  
「ん゛っ」  
 更にはその舌を伝って唾液が流し込まれ来る。  
「ん゛っ、ぐむ゛」  
 これでもかと流し込まれる唾液を必死で嚥下する初春。  
 しかしそんな初春に更なる追い打ちが。  
「んがっ!?」  
 唐突に鼻を摘ままれた。  
 それによって息苦しさが増す。  
 唾液は既に飲み下し終えたが、唇は未だ佐天に塞がれたままなのだ。  
「う゛、お゛あ」  
 首を振って逃れようとしたがそれも阻止されると、暴れたせいで酸素を使い果たしたのか急激に頭がぼおっとして来た。  
 そのせいか体も段々とふわふわして来ていい気持になって来る。  
 だが実際体の方はと言うと――、  
「さ、佐天さん!? 初春痙攣していますわよ!」  
 白井が叫ぶのも無理は無い。  
 固く握られて白くなった指。  
 ピンと伸びた脚先の指が何かを掴もうと宙を掻く。  
 体全体が反りかえったその様は正に断末魔の様相を呈していた。  
 初春の瞼の奥で瞳が反転する。  
 意識が消灯された様にふっと暗闇に落ちて行く。  
 そして全身から力が抜ける。  
「初春っ!!」  
 
 白井の悲痛な叫びも少女にはもう届かない。  
 勢いの無い尿がしょぼしょぼとだらしなく割れ目から零れた。  
 そして最後の一呼吸をと胸が有りもしない空気を渇望して虚しく震える。  
 だがその時、唐突に鼻を塞いだ手が退けられた。  
 更に口からも大量の空気が送り込まれると、初春の胸はさながら風船にでもなった様にそれらをどっと受け入れ膨らむ。  
「かはっ!」  
 解放された口からむせる様な声が漏れる。  
 そしてひゅっひゅっと喉が笛の様に鳴り、最後ははぁっと大きな溜息が洩れた。  
「う、ういは、る……」  
 白井が震える声で呼びかけると、聞えたかの様に初春が目を開く。  
 するとベッドから降りて何処かへ行っていた佐天がペットボトルを片手に戻って来たかと思うと、それをくいっと煽ってから、そのまま唇を初春に押し当てた。  
 初春の喉が何かをこくこくと飲み込んで行く。  
 そして唇が離れると同時に深い溜息が洩れる。  
「な、何を……」  
「スポーツドリンクです」  
 呆然とする白井にそう答えた佐天は、優しく初春の頬を撫でている。  
「どうだったかざりん?」  
 今の台詞に白井はギョッとした。  
 恋人を殺しかけて『どうだった』とは何事か。  
 所が当の本人は違った様で、緩慢に佐天から視線を逸らすと、ボソリととんでもない事を呟く。  
「……奪われる感じは良かったですけど……、る、るいこのモノにされた感じがありません……」  
「かぁっざりぃーんんっ♪」  
「わひゃっ!?」  
 唐突に感極まった佐天に抱きしめられて初春が悲鳴を上げる。  
「そかそか。かざりんはあたしのモノって証明が欲しいんだ♪」  
「あ、当たり前でっ――」  
 思わず言いかえしそうになって佐天のニコニコ顔に急に声が小さくなる。  
「そ、そんな事言わせないで下さい……はずかしい……」  
 はたから見ている白井からすればもう既に手遅れだと思う。  
 それにしてもと白井は思う。  
 佐天はともかくさっきまで危なかった初春が割と早い段階で復活して来たのが気になる。  
 もしやあのプレイには何かコツの様なものがあるのだろうか。  
 もしくは先程の『スポーツドリンク』に秘密があるのかもしれない。  
(後で……少なくともお姉様が一緒の時にでも確認してみましょう)  
 とても今の2人の間に割って入る行きの無い白井だった。  
 
 
 
 
「はい、これは何でしょう?」  
 
「ペン、ですか?」  
「ペン、ですわよね……」  
 佐天の手にしたそれに白井と初春の視線が集中する。  
 確かに2人が言う様に、それはどう見ても太いマジックペン。  
 しかもご丁寧にラベルにも『マジックペン』と書かれているのだから、多分2人の答えで間違いは無い筈だ。  
「正解!」  
「だと思いました」  
「まあ何の捻りもありませんでしたけれど」  
 先程の件もあったので、無難なもので白井は取り合えずホッと胸を撫で下ろす。  
 一方、初春は不満げに唇をもじもじとさせている。  
 それを見透かしたように佐天が口を開く。  
「ペンでどうすると思う?」  
「し、知りません!」  
 慌ててプイッと顔を逸らした初春に佐天はキョトンとする。  
 その顔が意地悪な笑みに変わるのを見て、白井が「ひっ」と悲鳴を上げた。  
 その声にハッとして振り返れば初春の目の前には先程のマジックペン。  
「これをかざりんの中にブチ込んであげる。もちろんゴムも何にも付けないでそのまま」  
 元よりそんな使い道など想定されていないペンは、円錐形の蓋が鋭角に広がっている。  
 こんなモノを遠慮も無く柔らかい場所に受け入れたらどうなる事か……初春の喉がごくりと鳴った。  
「欲しい?」  
 佐天の言葉に初春は――――――――――――――――――――、  
「うっそー!」  
「なっ!?」  
 頷いてしまう前に佐天に話を反故にされた。  
「バッカねぇー……。ペンは書くのに使うに決まってるでしょ?」  
 呆れ顔で言われた初春はただ口をパクパクと動かすだけだ。  
 そんな初春を尻目に、佐天はよっとベッドから降りて初春の足元に回る。  
 そしてペンのキャップを外すと、初春の足の裏に何かを書き始めた。  
「きゃふっ!? く、くすぐったい」  
「動かないでよぉ」  
「そ、そんなこ、と、言われて、っう、ん」  
 ジタバタする足の甲を押さえてキュッキュッとペン先を滑らせて行く佐天。  
 やがてそれは書き終ると、  
「よし、出来たぁ!」  
 ガッツポーズで叫ぶ佐天に対して、未だ縛られたままの初春は置いてけぼりだった。  
「な、何を書いたんですか!?」  
「ん? ふふふふふ……ヒ、ミ、ツ♪」  
「うがあああああああああああああああああああああああああ、教えてくださいよぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」「だぁめ☆」  
 ジタバタする初春を見て喜ぶ佐天。だがそれも白井の一言で水の泡に。  
「涙子専用肉便器……」  
 
「…………」  
「ん?」  
 急に沈黙した2人に、ひとり取り残された佐天がキョロキョロする。  
「に、にく……」  
「(いやだ、うれしいです……)」  
「はぁ!? 今何ておっしゃいましたの初春っ!!」  
「!?」  
「さあじゃんじゃん書いて行くわよかざりん♪」  
「はい!! あ、いや、や、やめてくださいそんな……」  
(駄目ですわこのバカップル……)  
 白井が呆れかえる中、佐天は嬉々として、初春は恥ずかしがりながらも大胆に。  
 気が付けば、初春の白い体の服で隠れそうな所は全部、佐天の名前で埋め尽されていた。  
 いや、ある一部だけは違っていた。それは――、  
「初春っ!?」  
「はい?」  
「そこはまずいですわよ!」  
「何がですか?」  
「な、あ……」  
 キョトンと不思議そうな顔で見つめ返されると白井は言葉も出ない。  
 しかし、  
「お、おでこは如何なものかと思いますわよ」  
「え? でもこうしないとアピールが……」  
「何処の誰に何をアピールするつもりですの!? 佐天さんの専用肉便器って誰に!! あ、何でそんな不思議そうな顔する んです? 佐天さんまでそんな顔……あ、もういいです。諦めましたですわ……」  
 白井はガックリと肩を落として部屋の隅に引き下がる。  
 そして今や名実ともに相思相愛となったバカップルの初春と佐天。  
 初春の拘束は既に解かれている。  
 どちらからともなく磁石が吸い寄せられる様に唇を重ねた2人。  
「「ん、ふ、ぅ」」  
 ぴちゃぴちゃと唾液を混ぜ合わせながら舌を絡め合う。  
 そうしながら片方の手のひらを合わせ指を絡め、もう片方の手はお互いの胸をまさぐり合う。  
 やがて2人の唇は離れて、お互いの首筋、そして肩甲骨へと滑って行く。  
「ふ、ん、ん」  
「あ、は、あふ」  
 やや初春が責められているのは既に何度も逝かされて体が敏感になっているせいか。  
 更に2人が感じる場所を求めて体を交差させる。  
「あ、あふ、ん」  
 佐天が初春の乳首を舌で転がす。  
 そして時折乱暴に歯を立てる。  
「はあっ、うぅ、いぃ……」  
 
 そして攻守を入れ替えて――、  
「ん、いい、もっと、ぉ……」  
 自分には無いボリュームを誇る佐天の乳房を初春は愛おしく飴を転がす様に舐めまわす。  
 かと思えば指先を肉にめり込ませて、零れる感触を堪能する。  
「はぎっ!?」  
「好きですよねこう言うの」  
「すきっ、だいす、きぃ、して、ひてぇっ!」  
 ぐりぐりと同時に捻り上げると、佐天は呆けた様に舌を伸ばして、下からは壊れた蛇口の様に潮を吹いた。  
 そうしてお互いを堪能した2人は、ついにお待ちかねの場所に到達する。  
「はぁ、はぁ」  
 佐天の目の前にはピンク色をしたクレヴァスがぱっくりと口を開けて誘っている。  
「ふぅ、ふぅ」  
 初春の目の前には、自分色に染まった――肥大した小陰唇も大陰唇もクリトリスも、どれ一つとっても中学生とは思えない――佐天のクレヴァスが先程からぽたりぽたりと涎をたらしている。  
 息を合わせた訳でも無く、掛け声を掛け合った訳でも無く、それでも2人はぴったり同時に、目の前のご馳走にむしゃぶりついた。  
「はふっ、あう、ん、うぶっ」  
 佐天は脇目もふらずに突き出した舌を入口を捻じ込んだ。  
 そうしながら鼻先でクリトリスを刺激する。  
すると奥から甘酸っぱい蜜がどんどんと溢れて、舌の動きは更にスムーズになる。  
 初春の奥は浅く、その状態で奥まで差し込むと……、  
「ひゃうんっ!!」  
 今までは違うつるっとした部分。その中心にある穴を舐められるのが初春のお気に入りだ。  
「あぶっ、んちゅ、うん」  
 初春も負けじとむしゃぶりつく。  
 責めるのは硬くなった肉芽だ。  
 口先を窄めてチュウチュウと音を立てて吸うと、すぐさま大きくなって来る。  
 それにころ合いを見計らって白い歯を立てると、  
「ん゛ぎぃっ、ぴきっ」  
 普段の佐天からは考えられない人とも思えない嬌声。  
 その声にうっとりと耳を傾ける暇も無く、初春は蜜つぼに指を深くねじ込んだ。  
 そして奥で指先を鉤の様に曲げて、肉壁を引っ掻く様に出し入れする。  
「はあっ、あん、ん、、んんっ」  
 瞬く間に奥が締まって身動きが取れなくなるが、構わず掻き回し続けた。  
 そうやってお互いにお互いを責め続ける姿を、白井は荒い息継ぎをしながら見守る。  
 いや、ただ見守っている訳では無い。  
 その証拠に白井の手はスカートの奥に消えて――、  
「はぁ、はぁ、2人共凄いですの……あんなに掻き回して……」  
 やがて2人とリズムを合わせるかのように、スカートの中の動きが激しくなる。  
「わたくしも……して欲しいですの……奥を滅茶苦茶に掻き回して欲しいですの!」  
 3人のリズムが速くなる。  
 せり上がって来る快感に、誰もが相手に合わせようとしていた。  
 
 それが、その抑え込む行為が更なる高みへと3人を押し上げる。  
 そして訪れるのは絶頂の崩壊(カタルシス)――。  
「「「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」  
 夜の勢力が増した部屋の中に3つの嬌声がこだました。  
 
 
 
 
 白井がぼんやりと薄眼を開けた。  
 そして最初に見たのは同性の股間のどアップだった。  
(はて? これは一体何でしょう……)  
 ボケた頭を動員して状況を整理しようとした。  
 だがそれも唐突に股間に走った灼熱感に吹き飛んだ。  
「ひぎゃあ!!」  
 ビクンと上体を跳ね上げようとして身動きが出来ない事に愕然とする。  
 そこへ再び先程の灼熱感が襲う。  
「ぎゃひっ!!」  
 混乱する頭では状況など一つも判らない。  
 ただ誰かが自分の大事な部分に熱い何かを振れさせている。  
 白井はギュッと目を瞑って叫ぶ。  
「だ、誰ですの!? わたくしに何でこんな真似をっ!!」  
 しかしそれは精一杯の虚勢だ。  
 それを証拠に叫んだ後の白井は、歯の根も合わない程唇が震えていた。  
 あわよくば誰かがこの声を聞いて助けに来てくれるかもしれない――そんな望みを掛けた叫び。  
 しかしそれに対して返って来たのは、場違いな程甘ったるい少女の声。  
「あー、白井さん白井さん。あんまり騒ぐと人が来ちゃいますよ?」  
「そうそう。折角かざりんと2人で今回お骨折り頂いた白井さんにお礼をしようって決めたんですから。ここは黙って、ね?」  
「う、初春!? それに佐天さん!」  
 白井は声を上げてから、事の次第を思い出す。  
 自分は確か佐天に頼まれて、初春との関係を修復する手助けをさせられたのだと。  
 そしてそれが思いっきり肉体言語だったと言う事も。  
 白井はビクビクっと体を震わせると、2人の申し出をすぐさま辞退しようとした。  
「おほほほほほ。と、友達じゃありませんのわたくし達? こ、これくらいの事でお礼をして頂くだなんて……」  
「いえいえ」  
「いや初春」  
「遠慮しなくても良いですよぉ」  
「さ、佐天さん? わたたっ、わたくしはお礼が欲しかったんじゃ無くて……」  
「これが欲しいんですよねっ」  
 
 初春の声と共に、白井の顔の横に何かがにゅっと突き出された。  
 太さ5センチくらいの半透明の棒で、先端が俄かに湾曲している。  
 そしてそれは仄かに冷気を放っていた。  
「これ……」  
「凄いですよね。これ全部氷で出来てるんですよ」  
 白井の疑問を解消するかのように佐天が説明してくれる。  
「いや、氷って……はっ!? まさか!」  
「察しが良いですね、白井さん」  
 その直後白井の股間に先程と同じ灼熱感――いやそれは冷たいものを押し当てられたのがそう感じられた錯覚。  
「あびゃあ!!」  
 あられも無い悲鳴を上げて身をよじる白井を押さえつける様に佐天が圧し掛かり、氷の張り型を手にした初春がそれで白井の股間をなぞる。  
「私の手だって冷たいんですから白井さんも我慢して下さいよ」  
「む、無茶を言わないで下さいですの! きゃはっ、そ、そんなもの我慢できるは――」  
 白井が抗議の声を上げようとした矢先、それは無遠慮に体の中に入り込んで来た。  
「んぎゃ、お、おお……」  
 瞬間白井の体がばね仕掛けの様に跳ねあがり、押さえつける佐天の体が僅かに浮いた。  
「すっごい反応。溶けない氷って凶器だね」  
 佐天が興奮気味にそう呟くと、  
「あが……サ、定温保存(サーマルハンド)ぉ……」  
「正解です白井さん。そんな白井さんにはもう一本サービス♪」  
「わぁお☆」  
 初春が取りだしたそれを見て佐天がはしゃぐ。  
「や、やめ――」  
 白井は無駄と知りつつもそう叫ぼうとした。  
 そして思った通り無駄であった事を体感した。  
「えいっ」  
 気の無い掛け声と共に、それはずくりと白井の中に入り込んで来た。  
 しかも、  
「前に2本とは流石大人マ○コの白井さん」  
 佐天が感嘆の声を上げるが、白井には届いてはいない。  
「駄目ですね。完全に気を失っている感じです」  
 手応えで判るのか初春がガッカリした様な声でそう告げる。  
 暫く2人は気を失った白井が何処まで伸びるのか確かめた。  
「凄いですね……どっちも拳が簡単に……」  
「前にもそんな事自慢していたわよ。両方から突っ込んで電撃だって」  
「うわ変態……あ、ピアスが新しい!」  
「良いよねコレ。誰かに選んでもらったって言っていたけど……」  
「御坂さんじゃないんですか?」  
「それが違うみたいなのよねぇ……良いよねペアリングとか……」  
 
 そんな世間話をしながら、  
「あぎ! い、いぐっぅぅ!! いぐううううううううううううううううう……」  
 時折半覚醒する白井を強制シャットダウンに掛けていた。  
 そんな時、声を上げたのは佐天だった。  
「そうだ!」  
「え?」  
 キョトンとする初春。  
「いい事思い付いた」  
「いいこと?」  
 嬉々としてそう言う時は警戒しないといけない、と初春はちょっと身構えた。  
 すると佐天はそんな初春の手を取ると、失神したままの白井の前の穴にズボッと突っ込んだ。  
「ギィ!!」  
「さ、あう……、る、るいこ?」  
 どもりながらも名を呼ぶ初春を置いて、佐天はもう1つの穴に自分の手を突っ込んだ。  
「あ゛、が」  
 白井がヒクヒクともがく。  
「あ、あの、これが何か……」  
「ちょっと待ってなさいっ、と、よ」  
 いぶかしむ初春に佐天はウインク1つすると、差し込んだ腕をこじる。  
 その度に初春にも薄皮越しに感触が伝わって……とその急に何かに巻き取られる。  
「お゛、ごご……」  
 何か獣の断末魔に似た声が聞える中、驚いた初春は佐天を見た。  
 すると佐天もこっちを見て、その顔は何故か恥ずかしそうに笑っている。  
「白井さんにはちょーっと悪いんだけど、ペアリングになってもらいました」  
「ペア、リン、グ?」  
「ど、どうかな?」  
 初春はその言葉に佐天の顔と、無様に伸びた白井の姿を交互に見やってから、  
「白井さんには悪いですけど、私的にはもうちょっと軽い方が良いですね」  
「あー、それは確かに白井さんには言えないわ」  
 そう言いあってから2人はくすくすと笑い合う。  
「じゃあ最後は白井さんの望み通り」  
「2人の共同作業で昇天させちゃいましょうか、ね、白井さん?」  
「あふ、もうお腹いっぱいですわ……」  
 
 まだ夢の中にいるらしい白井に、佐天と初春は優しく呼びかけた。  
「「白井さん」」  
「はう!? こ、これは夢なんですよね」  
 寝ぼけながらもそうのたまった白井だったが、そんな彼女に少女達はにっこりとほほ笑むと、お互いの手をしっかりと携えあった。  
「!!」  
 惜しむらくはそれが白井の中で有り、2人の手の中には大切なものが挟まれていた。  
 それさえなければ白井も少しは祝福出来たかも知れない。  
 だが、  
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ー」  
 
 
 
 
「酷い酷い酷すぎますの!!」  
「ごめんなさい」  
「反省してます」  
 2人を床に正座させた白井は怒りをぶつけまくっていた。  
 さもあろう。白井は危うく壊される所だったのだ。  
 あれから色々大変だった。  
 大変過ぎて思い出したくも無い事が沢山だ。  
 そして、やはり無茶をするのは男より女なのだと実感した。  
 それから、2度とこの2人と関係はもつまいと……。  
「無茶をしないで下さいまし。わたくしとて人並の体しかしておりませんの。どこぞの殿方じゃあるまいし壊れたら取り返しが付きませんの」  
「ちょっと調子に乗りました。深く反省しています」  
「ごめんなさい。二度としません」  
 何度聞いたのかこの台詞。  
 きっと自分が気を引き締めないと、またいつかこんな目にあわされるかもしれない。  
(いや、もしかしてこの場にいる事自体が既に危険なのでは……)  
 チラッと2人を見ると、じっと此方を見ている視線とばっちりあってしまう。  
「い、いいですわ。気を付けていい、頂けるなら結構ですの」  
 何とかそれだけは言いきった。  
 後はそそくさとこの場を立ち去ればいい。  
 よりも戻った様だしもう自分の出番はこれでおしまい。  
「所で白井さん」  
「は!? 何ですの初春っ!」  
 白井の頬が盛大に引き攣る。  
「門限、過ぎていますよね?」  
「お、お気遣いなくですの!」  
「なーるほど、そういう事か」  
「な、何がそう言う事なんですの佐天さん!?」  
 
 ビクビクっとあからさまに怯える白井は、ずりずりっと後ずさって壁に行く手を阻まれた。  
「聞きたいですか?」  
「聞きたくありませんけど、聞かない方がもっと怖いですの」  
 その言葉に佐天と初春は顔を見合わせて、  
「それじゃあ白井さん」  
「お望みとあれば言って聞かせあしょうかぁ!」  
 
 
 
END  
 
 

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