薄暗い部屋の中、水音が響く。二段ベッドの下段に二つの影が重なりあっていた。  
本来なら1人用の狭い空間で何をしているのか、それは少なくとも彼女たちを知る人でさえ想像しえないことである。  
「駄目ですよ春上さん?」  
初春は虚空へ視線を向けた春上にの乳首を抓る。それが出来ることから分かるように春上は一糸纏わぬ、いや、中から機械音を響かせている外見はゴムのパンツだけは身に付けている。  
「さあ、もう一度チャレンジです。私は何を考えてますか?」  
春上は意識を集中させ、古いラジオの周波数を必死に合わせるように目の前の少女の思考を読もうとする。  
ノイズが消えて行き、鮮明に聞こえそうになった瞬間、思考ごと飛ばされる。  
「正解はですね、『スイッチを最強にしたらどうなるんですかね?』ですよ。駄目ですよ春上さん、ちゃんと止めないと」  
くすくすと楽しそうに、しかし暗く笑う初春は本来なら攻める側の人種ではない。  
何もしなければ躰が疼き、逆の役割を興じれば過去を思い出し、結果的に攻めるしかなかった。  
攻められている春上は被害者かと言えば、そうではない。  
相手側から勝手に送られてくる『声』。自分の知らない誰かとの情事をありありと聞かされるなら、いっそこの行為は救いでさえある。  
少なくとも今、彼女には『声』など聞こえてはいないから。  
「駄目なの、止めて欲しいの」  
声からは恐怖とあるいは別の何かが感じ取れる。それに対し初春は笑顔で応じる。  
 
いつの間にか手に持った低周波治療器の電極を彼女の未熟な胸の外側に貼り付けながら。  
「春上さん、引っ掛け問題とか苦手ですか? ちゃんと、『止めたら今考えた事をする』って、付け足したのに」  
流れた電流は胸を揉みしだくと表現するには、あまりに強く、彼女の声は上擦り、意味をなさなくなる。  
首を振り、声を絞り出し言葉を紡ぎ、止めるように懇願する。  
「考えてる事を当てられたら止めてあげます」  
絶望に染まった表現を見て、微笑みながら言葉を続ける。  
「ただし、思考を限定するのは自由ですけど」  
その言葉を聞き、春上の手が初春の下半身の蕾へと伸びる。  
拙い手付きで愛撫し、初春の思考をそちらへ誘導しようとする。  
感じている、と言うよりはむしろくすぐったそうにしながら初春は笑う。  
「良いんですか? まだまだ色んな事を思いつくかもしれないんですよ」  
部屋の全てを後から来た春上が知り得るはずもなく、どれだけの玩具があるのか考えたくもないだろう。  
慌てて、陰核にもう一本の手を当て、唇と舌、それから歯で乳首をそれぞれに刺激する。  
彼女に取って気の遠くなりそうな程に長く感じる間を経て、やっと初春の思考に繋がる。  
読み取ったそれは、彼女の波長に合わせるように感じ、答えを言う余裕を奪うように高みへ導いて行く。  
短い吐息しか春上の口からは出ず、また彼女自身も答えを言うつもりさえなくなっていた。  
初春は低周波治療器の片側の電極を自分に貼り付けると自分と春上の乳首を重ね、出力を上げた。  
改造されたそれは人二人を通し余りある刺激をもたらし、二人は言葉を失った。  
 
 
しばらくして、意識を取り戻した初春は春上の膣に収まっている物を取り除き、片付けを始めようとする。  
その手を弱く春上が引っぱる。  
「どうしました?」  
暗い表情はなりを潜め、普段のあどけない笑顔を見せる初春。  
それに対して春上は短い言葉を囁く。  
「幸せだったの」  
彼女の手を握り返し、短く優しいキスをして囁き返す。  
「私もですよ」  
隣にいるのは、望んだ誰かとは違くとも、二人の感じたものは嘘ではない。  
幸せだと思う間だけは。  
 

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