子どもと二人で留守番させられていた一方通行は、雑誌片手にうとうとしていた。平穏な昼下がりは昼寝日よりとイコールなのである。しかしそののどけさを破る少女の声が、部屋いっぱいに響き渡る。
「ねぇねぇ、今日はあなたにお願いがあるの、ってミサカはミサカは可愛いらしさを武器にとった表情とポーズで可愛らしくあなたにおねだりしてみたり」
「…却下」
「えーっ!?」
あっさりばっさり返事を返す一方通行に対して、大仰な仕草でよよと泣き崩れる振りをしてみせた打ち止めは、すぐに気を取り直した様子で彼のベッドの上に飛びのった。
「何だよ。またゲームの相手でもしろっつーのかァ?」
「違うの、あのね、ミサカはとある筋からおっぱいをおっきくする方法をゲットしたんだけど、男の人におっぱい揉んでもらうとおっきくなるんだって、ってなわけでミサカはミサカはあなたにおっぱいを揉んで欲しいのっ!!!」
自信満々な口調で報告した打ち止めに対し、一方通行は眉根を寄せる。
どこのクソ野郎がこの子どもにそんな情報を吹き込んだのかがまず問題だ。早急にそのロリコン変態野郎は潰す必要がある。だがそれはあくまでも子どもに秘密裏に担う彼の使命でしかない。
目下の所の問題は、突然飛び込んできた彼女のおねだり――彼女に対して並々ではない思いを持つ彼にとってみれば壮絶な据え膳である――に、どう返せば良いのかというその一点につきる。
「何かね、話によると異性におっぱいを揉んでもらうことで女性ホルモンが分泌されて、おっぱいが大きくなるんだって、ってミサカはミサカは受け売りの知識を披露してみる」
「ふゥン」
コンビニで売っている怪しげなノウハウ本も真っ青な理論だが、打ち止めにしてみれば最も手軽な豊胸術なのだ。
彼女自身のサイズは年相応だが、オリジナルである超電磁砲や同一の遺伝子を持つ『妹達』をベースに己の未来を考えれば、胸の成長はあまり望めない。
例外としては番外個体がいるが、その彼女とは調整の条件が異なっているため、あてにならないとのことである。そんなわけで、打ち止めは一方通行の服の裾を掴んでキラキラとした眼差しを彼に送っている。
「…解った」
そして少年は、彼女が思っていた以上にあっさりとその件を了承した。
「ホントにホント?! ひゃっほーいあなたってば優しいのね! ってミサカはミサカは万歳のポーズで喜びを露わにしてみる!」
「どォでもイイからとっととネットワーク切れ。ついでにそのワンピース脱げ」
「え、脱ぐの?! ってミサカはミサカは意外な展開に衝撃を受けてみたり」
「直接肌に触れた方が効果あンだろ普通」
「そっか、さすがあなたいろいろ考えてるのね、ってミサカはミサカはいそいそと着替えを開始してみる」
言われた通りの準備を整えている打ち止めをベッドの上に残し、一方通行はクローゼットを漁る。厚手の黒い生地の服を取り出すと、ビッとそれを裂き始めた。
「何やってるの? ってミサカはミサカは小首を傾げてみる。…って本当に何やってんの?!」
「あァ?」
さも当然のような動作で、その黒い布地を使って、一方通行は打ち止めに対して目隠しをした。視界を突然に塞がれた彼女は、あわあわとした様子で困惑の態度を隠さない。
「視覚ってのは人間の感覚の中でかなりの情報量にあたるもンだ。それを遮断することで触覚がより鋭敏になり、女性ホルモンの分泌も増える。簡単な理屈だな」
「な、なるほど、ってミサカはミサカは納得しつつも先に説明して欲しかったなーなんて不満をもらしてみたり」
丸め込まれておとなしくなった打ち止めだが、逆に視界を塞がれたことに対して不安なのか、指先は不安そうにシーツを弄くっている。
そんな様子をクッソ可愛いなァなんて思いながら、一方通行はそっと彼女をベッドの上に倒す。パンツ一枚の姿で落ち着かなげの子どもは、彼の方に向かって腕を伸ばして寄こす。
「あの、見えないとちょっと怖いかも、ってミサカはミサカは訴えてみたり」
「……」
あやすように頭を撫でると、小さな両手を添えて頬をすり寄せてくる仕草は、甘えたな子どものするような行動だ。しかし可愛らしい顔に一直線に入る黒い目隠しが何ともアンバランスな空気を放っている。
安心したように甘えている彼女とは対照的に、一方通行はその肢体に視線を走らせる。成長途中の子どもの手足は華奢だが柔らかな質感で、肌はどこまでも滑らかだ。甘そうな匂いがする気もする。
本人が気にしている胸元は、絶壁だと思っていたがどうやらほんの僅かではあるが膨らみらしきものは確認できる。桃色の頭頂はなだらかな状態だ。
「始めるぞ」
両の手のひらをささやかすぎる膨らみに添えて、ふにふにと揉む。二次性徴の兆しか、芯があるようで柔らかな肉の下にしこりのようなものがある。
少々力を入れて刺激すると、打ち止めがバタバタと暴れ始めた。
「痛っ、なんか痛いよ、ってミサカはミサカはあなたの手を押しのけてみるっ」
胸を庇うような動作で刺激から逃れた子どもは、自分の指先でもぷに、と突いて「やっぱりちょっと痛いかも」と騒いでいる。
「これじゃあ揉んでもらえないね、どうしよう、ってミサカはミサカは困った顔をしつつでも目隠しで充分に伝わらないかもって状況に困った顔をしてみたり」
「揉ンで痛ェなら別の方法を考えりゃイインだろ。よォは乳腺だの何だのを刺激すりゃイイってことだからな。つーわけで手ェどかせ」
聞き分けの良い子どもが言いつけに従って動くと、一方通行はぷくりと勃ち上がっている桃色の小さな乳首を、躊躇うことなくぺろりと舐め上げた。
「ひゃんっ! いいいいい今何したの?! ってミサカはミサカは…ふぁ?!」
ぬめった舌の刺激に驚いたらしい打ち止めの背が跳ねる。細い肩をやんわりと押さえつけながら、こんどは唇で緩く挟んで刺激した。
「や、な、何するの?!」
「おとなしくしてろ。また痛い目見ンぞ」
「ううう」
混乱しているらしいが、思った以上に素直に打ち止めは一方通行の指示に従った。もぞもぞと動く手がシーツを掴む。
おっぱい成長計画という目的と、視覚を奪われたという不安な状況、そして与えられる刺激から生まれる感覚への戸惑いが、複雑に絡み合って彼女を動けなくしているのである。
それを良いことに、滑らかな肌を撫でるように優しく揉んでみたり、柔らかな肉に軽く歯を立てるようにしてみたりと、一方通行は好きなように行動を開始した。
なおベクトル操作を使えばより効率的に物事を進められそうなものだが、あえてそんなことはしない。学園都市第一位のこだわりである。未来の嫁のおっぱいは自らの手で丁寧に育てる気満々なのである。
指先でくにくにと乳首を弄るたびに、あるいは周りの柔肉ごとじうと吸い付くたびに、赤く染まった身体を震わせて高い声を上げて、いちいち律儀に反応する少女が可愛らしくてたまらない。
いつの間にか動いた指先が、必死な様子で彼の服の袖のあたりを握りしめている。
「…っ! ひあぁあっ、…やっ」
甘い声は止まらない。パンツを脱がさなくて良かったと一方通行はしみじみ考える。脱がせた状態だったら、所在なげに揺れる腰を押さえつけ、もぞもぞと擦り合わせる膝を割って、最後の一線を越えてしまっていたに違いない。
まだ未成熟で小さすぎる打ち止めに対し、最後まで行為を進めるのは相当な負担だと彼は理解しており、そういったことは数年後まで我慢しようと考える彼は紳士なのである。
色気とはほど遠い可愛らしいキャラクター柄の女児用の下着を、その色気のなさが逆に何かを煽って、はぎ取ってしまいたいという欲求に耐える彼は、繰り返そう、紳士なのである。
「んん…っ、ふ、くうっ…!」
上目遣いで確認した打ち止めは、顔を紅潮させてだらしなく口を開けて息をもらしている。どうやらそろそろいっぱいいっぱいらしい。恐らく黒い布地の下の瞳は涙で潤んでいることだろう。
ちゅ、と音を立てて唇をはなした。てらてらと濡れた胸元は妙な色香を放っている。糸を引く唾液を指先で拭い取ると、シーツに拭い付けた。
「…今日はここまでだな」
一瞬何を言われたのか解らない様子の子どもの瞼に布越しに口付けを落として、目隠しを外す。突然の光に目を瞬かせる打ち止めの濡れた胸元を目隠しで拭うと、適当に畳まれていたワンピースを取り上げて頭からずぼりと被らせた。
「なんかすごかった、ってミサカはミサカはコメントを寄せてみる。これでミサカのおっぱいも大きくなるのかな、ってミサカはミサカは期待してみたり」
案の定涙の滲んだ目元や、赤く染まった頬、そして全体的に桃色に色付いた肌は、十二分に一方通行の興奮を誘うが、理性で色々と押しとどめる。子どもとのお付き合いには長期的な計画性と忍耐が必要だ。
「っつかよォ、ぶっちゃけ一回や二回で結果は出ねェだろ」
「そうなの?!」
「当然だろ。でェ? 次はいつにすンだよ」
あっさりと次回の約束を取り付けることに成功した一方通行は、己と彼女の将来のために、少女の胸を育てるべく次は何をすべきかと、学園都市第一位を誇る演算能力をフル稼働させるのだった。