正月の学園都市のとある公園で、上条当麻はひたすら頭を抱えていた。  
「飲むか?」  
 隣に座った土御門が缶コーヒーを勧めるが、上条は「いいよ」と力なく言って首を横に振る。  
「なあ…教えてくれよ土御門…。昨日俺は何をやらかしたんだよぉ…」  
 悲痛なうめき声をあげる上条。  
 土御門はプシュ、とプルトップをあげてコーヒーを一口口に含んだ。  
「どれから話していいものやら…」  
 小さく息を吐き、土御門は訥々と話し出した。  
 
「昨日の科学・魔術サイド合同新年会はまーそりゃ盛り上がった。超盛り上がった。  
 禁書目録をはじめとする大半の客は12時くらいで帰っちまったもんだが、俺やカミやんみたいに遅くまで残ってた連中をいたわけで。  
 ありゃあ確か深夜1時くらいだったニャあ…御坂が急におなか痛いって言い出して、カミやんは御坂を連れてトイレまで向かったぜよ。  
 それから10分経ってカミやんはそれはそれは嬉しそうな顔をして『御坂は帰ったよ!』と親指立てて報告してきたんだにゃあ。  
 それから少したって五和がトイレに行きたいと言い出して、これもカミやんが肩貸してトイレに運んでいったぜよ。  
 あ、この時になるとほぼ参加者全員べろんべろんによっぱらってたな」  
 
 上条は何一つ口に出さず、ひたすら俯いている。  
 
「んで、10分程度経ってからカミやんだけ嬉しそうな顔して戻ってきて『天草一派は引き上げたって!』と言ってきたぜよ。  
 それと同様に嘔吐間を催したらしい月詠…じゃなかった、黄泉川先生もカミやんが別室に運んで行って、10分後に前二人とは比較に  
 ならないほど爽快な顔で『一方通行が引きずっていった!』と俺に報告。  
 その直後俺は眼前に泥酔した神裂ねーちんに踏み倒されて気絶したんだけど、ねーちんがカミやんの襟首引っ掴んでたことだけは  
 妙に覚えてるのさ。  
 目が覚めた時にはカミやんは半裸で号泣してて、その背中をひたすら浜面がさすってたぜよ」  
 
 そこまで口にしてから再びコーヒーをすすり、土御門は一気にまくしたてた。  
 
「で、二人で「服を探しに行く」って言ってから廊下に消えて、30分経ってからカミやんだけ少しやつれた感じで戻ってきたぜよ。  
 最後に夜明け前にカミやんは小萌先生を連れて近所の安宿へ…」  
「うあああああああああああああああああ!!!!」  
 自らの所業に耐えられず、上条当麻は成層圏まで届きそうなほどの咆哮を上げた。  
 
「畜生ォォォォ!! 朝起きたら全裸の小萌先生が横で寝てたのはそのせいか! 黒子に殺されかけたのも! 御坂が俺を横目で  
 顔赤らめながらしか見なかったことも! 建宮が何も言わずに花束押し付けてきたことも! 一方通行が俺をゴミを見るような目で  
 見てたのもそのせいだったと言うのかあああああ!!!」  
 
 棘棘ヘアーを全力で掻き毟りながら、上条当麻は終わりのない叫び声を上げた。  
 
「まーそういうこって。今度からは5人の嫁と1人の婿を大事に扱ってやれよ」  
「出来るかーーーーっ!! てかお前さんよぉ! 見てたんなら止めろよ! 神裂の所とか完全に俺強姦されてるだろ!  
 あとなんで浜面だけ長いんだよおおおおお!!」  
「…出来ないことなら、するなよ」  
 突如小さく言い残して、土御門は何かの気配に気が付いたかのようにそそくさと走り出していった。  
「あ、おい逃げるなよ! まだ聞いてないこ・・・」  
 そこまで言って、上条は漸く気が付いた。  
 背後からの、強力すぎる気配の数々に…。  
 
「ひっ、ひどい!最低よこの強姦魔! 変態!」  
「私以外の人と…私以外の人と…コロス…」  
「上条くーん、保健体育の追試の時間じゃんよぉー…」  
「い、いや、あの、皆さん、ここはその酒の席だということもありましたので、もう少し穏便に…」  
「おい上条5人の嫁ってどういうことだ! 俺とは遊びだったのかよ! そんな奴だとは思わなかったぜ!」  
「 終 焉 の 時 間 で す よ 上 条 ちゃ ん 」  
 
 ああ、そうか、これが『死』か。  
 薄れゆく意識の中、上条はそう感じ、大地に倒れ伏したのだった。  
 
 
【未成年飲酒 ダメ! ゼッタイ! 〜学園都市制作未成年飲酒撲滅VTRより〜】  
 

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