上条当麻は苦境に立たされていた。
ここはとある高校の男子寮の自室。
そこで正座を強要され、冷や汗を垂らし身をこわばらせている。
そして小ガラステーブルを挟んでベッド側のほうに座る少女が一人
誰あろう。学園都市第三位の超能力者にして上条宅の掃除と称し上りこんできたストーカー。
今ではただコメカミを引きつらせるだけの爆発秒読みの少女、御坂美琴その人であった。
ガラステーブルの上に置かれるは数冊の写真集
見目麗しい豊満な肢体がこれでもかと踊る肉の祭典
男とは常に肉に惹き寄せられるものであり、肉こそがリビドーの真理
かぶりつける絶対量の差こそが戦力を決定的に指し示すと
強固に自己主張せんばかりの「ソレ」らを前に御坂美琴の前髪は放電を始めていた
「さて、コレは何か説明してもらおうかしら?」
「え、エッチな本です・・・」
上条は、しどろもどろな口調で目を逸らしつつ答えた。
「それだけ?で、コレは何?」
「・・・・・・・・」
「おいコラ目を逸らすな」
御坂美琴は、上条の顔を両手で挟むとぐいっと自分の正面に向き直らせる
「なぜ黙るのかな?ん?」
「・・・・・・・」
「アンタ私と付き合ってるのよね?」
「・・・はい・・・」
「こんなのが必要なの?私に不満?」
「・・・・・・・・・・」
「黙ってちゃわからないでしょ。何とか言いなさい」
「は、浜面が置いていったんだ!」
御坂はおもむろに電話を取り出し、何処へともなくプッシュし始め
自分の携帯を上条の耳元に当てる
『逃げ道は無いぜ大将。アンタも一緒に死ぬんだ』
それだけ言うとプッツリ切れた。何か電話の向こうがやたら騒がしかった気がするが
向こうも向こうで何か大変なことになっているらしい。
「随分巨乳な本じゃない?こういうのが好きなの?」
「・・・・・・・・・・」
「優しく甘えられる年上のお姉さん大集合?・・・私とは正反対ね?ん?
やっぱり乳か。男は所詮乳か。おっぱいの何がいいんだ。そこまでおっぱいか。
無駄な脂肪風情が天下を統べるとかこんな世の中間違っている」
なんかそろそろ論理的に飛躍しすぎて世の爆乳全てを狩りかねない域に足を踏み入れつつある
第三位を前にして賢明に延命の手段を試みる上条当麻であったが、壁越しにモールス信号で
隣人の土御門宅に「S・O・S」をしきりに送るも、返答は「頑・張・れ・カ・ミ・や・ん」のみであった。
もはやこの運命を変える術は無いのか。自分に残された道はDEADENDしかないのか。
上条は意を決し、ガバッと立ち上がりつつ、宣言する。
「いや、違うんだ!実はそれは数ヶ月前までの(記憶の無い)俺の嗜好であってだな
俺はお前と付き合うようになってから貧乳つるぺた萌えに生まれ変わったんだ!」
「貧乳こそ世の宝具!乳の大小で人の価値は決まらないなどというがアレは嘘だ!!
『発達していない乳』には無限の可能性が詰まっている!大は小を兼ねないが小は大を兼ねる!
一度育った乳の可能性はそこまでであり、育たぬ乳には未開発の平原の如き純白のフィールド感がある!
その平原から育つ芽は大きな明日を連想させるであろう!!俺はそいつを育てたいんだ!!」
それは間違いなく『漢』の発言であっただろう
隣の部屋で聞き耳を立てていたメイド妹萌えのロリ星人が涙を流しつつコクコクと頷いていた。
「・・・・・・・」
御坂美琴はしばらく無言だったが。突然すっくと立ち上がったかと思うと
上条の首根っこをむんずと掴み、そのままずるずると引きずって靴を履いてドアを開けた。
「ちょ!?どこへ行くつもりですか御坂さん?心なしか放電の勢いが増しているような?」
「ここでやっちゃうとちょっと被害が大きそうだから何も無い平原に行こうか」
「え?あの何がどうしたの?俺何か対応を間違った?ここは『普通乳万歳!』と褒め称える場面だったか!?
いや違うはず!御坂は普通乳ではないはず!数々のおっぱいを見定めてきた
おっぱいソムリエ(自称)の目が叫ぶ!御坂の乳は紛れも無いちっぱーーーー」
上条が叫べたのはそこまでだった。
その後、地元住人の通報で風紀委員や警備員がとある高校の学生寮に駆けつけた時、
そこには原型を留めない半壊した学生寮の無残な姿があり、第七学区には学園都市観測史上
例を見ないほどの巨大な雷雲からスコールの如き雷が幾つも降り注いだと言われている。