隣に座っているだけで、幸せ。暗部にいると戦わなくても、そんな時間はすごく大切に思える。
私に残された時間が長くないだろう事をしきりに気にして、何かやりたいことはないか聞いてくる。だけど、今のままで良い。
多分、叶えたら、その時点で終わるから。だから、今のままで。
怒られた。その程度だと思わないで欲しいと力のこもっていない平手打ちまでされた。
同情なら、とっくに捨ててる。誰かを好きだと思う以外に説明なんてできないとも、言われた。
だから、求めた。全てを。
むぎのに呼び出されるまでの数日間、ずっと一緒に居て、色んな事をした。普通の性行為から、媚薬や道具を使ったもの、軽いSMまでやった。攻めたし受けた。
本当に色々した。多分、私が思いつく、傷つけない、傷つかないでできる範囲のことはそれこそ全部。それでも、付き合ってくれた。
誰かを求めて、際限なく求めて、それでも一緒にいてくれる事に、感謝している。
だから、二人を死が分かつまで、付き合って欲しい。
多分、私が先に死ぬことはないから、すぐに追いかけるね。
「浜面、人の秘密を盗み見とか超趣味悪いですよ」
滝壺の古い日記を発見し、読んでしまった俺に対して、絹旗の言葉ももっともだ。だが一つ言わせて欲しい。
滝壺の好きだった、もしくは好きな、奴は誰なんだ? 俺はここまで心許されてる気はしないぞ。
「なあ、絹旗。後で殴るなり好きにして良いから教えてくれ、この日記に書かれてる滝壺を好きな奴って誰だ?」
暗部だからか、明確に人物を割り出せるような情報は書いていない。
麦野に関しては彼女を抑えるのは難しいし、逆に滝壺をどうにかして麦野に対するカードになるとは考えにくいから、気にせずに書いているのだろう。
「あ、あ〜」
聞かれるとは思わなかったのか、切れの悪い呟きの後、しばらく立ち直れそうにない一言が飛んで来た。
「超若気の至りってことで『お互い』水に流しましょう。滝壺さん引き取ってくれてありがとうございました」
言うだけ言って、絹旗は逃げ出した。
お前かよ! ってか、若気の至りとか何だよ!
絹旗の下の名前は飾りか? 愛が重いみたいな態度止めろよ!
ここまで心許されてない俺ですら、ちょっと重いけど大好きな滝壺だし、って時あるんだぞ!