「おお、とミサカはミサカは初めて目のあたりにする男性性器に感嘆の声をあげてみたり」  
「ってキャラがちげーし。感情が無いと言う割にはギャグもやるのかペンデックス」  
「ごほん。お願いした状況に違いはないのですがあまりにも衝撃的な光景に思わず付属人格に障害が発生しました。  
 修正は完了しましたのでお気になさらないでください」  
 鼻血はなんとか収まった。間抜けに鼻孔からティッシュが覗いている訳でもない。  
 下半身丸出しとなった上条がインデックス――否、従属人格であるヨハネのペンの前に性器を突き出している。  
 未経験ゆえに淫水焼けなど欠片ほどもない肌色でピンク色の亀頭が露出した性器は雄々しく臍にまでとどかんとしている。  
 もちろん上条に羞恥心が無いわけではないが物事には勢いというものがある。  
 パンツごとパジャマのズボンを下ろすと窮屈を訴えていたペニスは弾けるように飛び出した。  
 幼少時の記憶が無い上条にとっては初めて誰かに見られているということになる。  
 確かに学校の男子トイレで「かみやん意外と可愛いんやね」「いやいや、膨張力がすごいんだにゃー」などという体験はある。  
 が、そんなものは数の内には入らない。  
 そして常日頃皮のうちに隠れているそれが三倍以上に膨らんで銀髪碧眼のシスターがマジマジと見つめている訳である。  
 感情が無いと言ったペンデックスもバグが起こるほどに衝撃的なようだ。  
 膝をついて鼻先のペニスを見つめている。  
 おずおずと手を伸ばして握るとひんやりとした柔らかい手のひらの感触が上条を包み込んだ。  
 両手で掴んで軽く前後に動かす。  
 多少余っている皮がカリ首のあたりを前後した。  
「ううっ……」  
 上条が短く呻く。  
 年頃の少年として当然ながら彼も自慰の経験はある。  
 ペニスを前後に扱くという点では同じはず。  
 否、自分のリズムで動かせるだけ自分でした方が気持ちいいはずなのにインデックスの手のひらは何倍も気持ちいい。  
 ほんのりと頬を染めながらも表情を変えないペンデックスが上条を見上げた。  
 生々しくグロテスクな肉塊をおぞましいと思っていないようだ。  
「これでよろしいでしょうか。魔道書に書かれているのは概要なので繊細な調整は実施中に行わなければならないのですが」  
「いいよっ、気持ちいい――」  
 黙々とペンデックスは手を動かす。  
 どこを触れば少年が感じるのか、その表情を一つたりとも見逃さないよう注意深く上条を見ている。  
 少し、少し、重ねるように力を強く、速くしていく。  
 心なしかペンデックスの吐息が早くなった。  
 当然ながら彼女の肉体はインデックスと同一である。インデックス本人である。  
 大輪の向日葵が似合うような明るく笑う彼女が自分の性器に奉仕している姿に上条の心臓は高鳴る。  
 恋人たる御坂美琴に対する疾しい気持もある。それが気にならないぐらいに気持ちがいい。  
 は、は、と興奮した犬のように呼吸が荒くなる。  
 
「ペンデックス、そろそろ――」  
 あむ。  
 言葉が終わる前に小さな口が開かれてペニスが飲み込まれた。上条が情けなく相好を崩す。  
 当然ながら生まれて初めての体験である。そのはずである。  
 咽るほど喉の奥にまで呑みこんで、ペンデックスは顔を前後に動かし始めた。  
「ん……ちゅう……ん……はむぅ……きもち、いいですか……ちゅう」  
 歯を当てないように、舌を動かし絡ませる。  
 唇がいやらしく動いてペニスを扱く。  
「すごい……ちゅう……味が……んむぅ……します……口の中がいっぱい……です……チロっ」  
 舌が滑るたびに淫らに唇が揺れる。溢れた唾液がつぅと下顎にまで伝わって糸を引いて床に落ちる。  
 とても初体験とは思えない。  
 ぞくぞくと上条の背筋が鳴った。音は立たないがその音を聞いた。  
 ペンデックスの、インデックスの小さな口。泡立った唾液が唇の端で白く光る。  
「ペンデックスの口、上条さんのをめちゃくちゃ吸い込んでいやらしくて気持ちいい――」  
「んちゅぅ……ンぐぅ……ん……さきっぽから、熱い、おつゆが……んむぅ」  
 最初に僅かながらに灯っていた困惑の光が淫蕩なそれに変わる。ペンデックスの無表情な瞳に光る。  
 唇をすぼめ上条の存在をより一層深く咥えた。  
 いかなる魔道書に記載されているのか、本当に魔法のような快楽に上条は震える。  
 右手で小さな頭に触れても快楽は消えない。  
「ペンデックス、そんなに荒々しくしゃぶられたらっ」  
 まるで吸盤。  
 強く甘く蕩けるように舐められ転がされる。  
「んにゅ――ふみゅ――あふ――」  
 脊髄から脳髄まで快楽の信号が駆け巡る。  
 泣きそうな笑いそうな上条の表情にペンデックスの無表情が僅かだが満足げに微笑んだ。ように見えた。  
 唇を割るペニスは唾液まみれでぬれていない場所などどこにもない。  
「んむ……付属人格の、私に、感情はない、はずですが、可愛いですね、上条当麻―――」  
 口をもごもごと動かしながら頭全体を前後させる。  
「可愛い、です……んぢゅ……もっと、震えて、ください……」  
 ディープスロート。  
 喉の奥、食道に飲み込むほどの。  
 生まれて初めてみる――記憶喪失の前にもありはしない――新鮮すぎる光景。  
 いやらしい唇、あどけない顔。無表情でありながらほんのりと染まった頬。滑らかな舌の動き。  
 めくりあがる唇。人形のような愛らしい顔。笑い顔によく映える綺麗な頬。快楽すぎる舌の動き。  
 あふれだす唾液の様すら愛おしく見える。  
 それは快楽がもたらす擬似的なものではある。  
 しかし恋人に対する疾しい気持ちと同量の黄金のような快楽がちかちかと目の前で踊る。  
「んちゅうぅっぅ――第九十、八章、七、十二節、えっちな味、します――」  
 
 上目づかいで見上げる瞳。細い前髪が額に張り付いている。  
 無表情のはずなのに、性的なことを一切感じさせないインデックスの顔なのに匂いたつほどに官能的な視線。  
 コケティッシュな魅力にメスの存在。  
 フレッシュを入れたコーヒーのようにマーブル模様が目に見える。  
 小鼻を膨らませながらペンデックスが奉仕を続ける。  
 火がついたように淫らな水音を立て喉奥まで吸いこもうとする。  
 魔力を得ているのか、快楽なのか、走らせた馬に水を与えているかのように止まらない。  
 あだっぽく、淫らで、懇願しているかのよう。  
 上条の性感は限界だった。  
 舌がうねる。唇が潰そうとする。軽く歯を立てられる。  
「溶けちまいそうだっ」  
「あう……んむぅ……魔力補給のため、射精は、口内でお願いします……はむぅ」  
「わかっ、ああっ、出ちまうぞっ」  
「はいっ、いっぱいだしてくださいっ」  
 人形のような美貌を歪ませてペンデックスが根元までかぶりつく。  
 食いちぎられる、ではない。  
 溶かしつくされる、ような快楽。  
 どびゅっ、びゅるるっ、どくん。  
「んむぅ……ん……」  
 ぶるると上条の太股が震えた。  
 脳味噌をすべて打ち出すような快楽が尿道を抜けて吐き出される。  
 鮮やかなピンク色をした口内でペンデックスは男の汚濁を一滴残らず受け止め、細い喉を鳴らして嚥下する。  
 頭が真っ白になって上条はしゃがみ込みそうになるのを必死でこらえた。  
 その股間でインデックスの顔をしてインデックスの声で囁いた少女は濃厚な白濁汁を受け止め続ける。  
 あまりにも生々しい光景。  
 最後の最後、尿道にのこった僅かな残滓もちゅうちゅうとすすってペンデックスが満足したかのように上条の萎えたペニスから口を離した。  
「す、凄かった……上条さん溶けるかと思いましたよ……」  
 ぜいぜいと荒い息をつく上条当麻。その顔は快楽の余韻に酔っている。  
 一方のペンデックスは相変わらずの無表情だが頬の色は確実に赤かった。  
 生臭い息を吐きながら上条を見上げる。  
「――報告、必要な魔力の三割を補給しました。安定稼働にはまだ不足です」  
 赤く、朱く、紅い頬と耳。  
 銀色の髪にエメラルドの瞳の少女が言う。  
「引き続きご協力をお願いします。上条当麻」  
 わざとだろうか、無意識だろうか。  
 擬似人格がちろりと上唇を舌先で舐めた。  
 その仕草にぞっとするほどの色香を上条は感じた。  
 濃厚なムスクの香りにも似て。  
 ぞくり、と喉が一瞬で乾く。ぞわわと全身の皮膚があわだつ。  
 同時に萎えたはずの肉棒がむくりむくりと元の硬さを取り戻し始めていた。  
 
――――――――――  
 
 魅力的だと思った。  
 四つん這いの丸い尻。何一つ身にまとっていない。  
 最初にぐるりと周囲を回った。  
 長い髪が四方に広がるさまは美しいの一言だった。  
 真っ白でつややかな白い肌がほんのりと桜色に染まっている。  
 湯上りの肌のような艶めかしさを全身から発している。  
 興奮も度を越してしまうと鼻血が出てこなくなるようだ。  
「――注進、どうかしましたか? 早く油を塗りこんでください」  
 上条は今手に食用油を持っている。  
 まさかこんなことに使うことがあろうとは思いもよらなかった。  
 たぷんと肉のついた白い臀部はハートを逆さまにしたように整っていて中央にくすんだ色の蕾がある。  
 それは当然ながら排泄に用いるための器官でセックスのための部位ではない。  
 故に潤滑材を分泌する機能はないためその代替物として油を使うのだが――  
 このような恥ずかしい姿をさらしながらまったく羞恥の色を見せないペンデックスと異なり上条の心臓はがんがんと高ぶっていた。  
 浮かべた笑みも思わず引きつってしまう。  
 細いと思っていた身体だが腰回りからヒップへつながるラインは豊かで魅力的だ。  
 ヒップのすぐ下にインデックスの性器がある。  
 まともに陰毛も生えそろっていない芸術品のような一本線。  
 おそらく頼めば見せてくれるのだろうが、今の上条はそうなったときに理性を保てる自身が無かった。  
 いや、今でも十分狂っているかもしれない。  
「――警告、十分な潤滑材が無ければ損傷し本人格が異変に気づく恐れがあります。過剰と思えるほどに塗り込めてください」  
 言われるがまま油をインデックスの肛門に垂らす。  
 冷たいのか、ひく、と背中が震えた。  
 塗り込めるという言葉通りに可憐な蕾に指を添える。  
 本当に入るのか、と上条は一瞬恐ろしくなった。  
「いいんだよ――な?」  
「構いません。必要な措置です」  
 未成熟なメスの香りがする。ひそかに呼吸するようなアナル穴に上条は幻想を殺しつくす右手の小指を滑り込ませた。  
「はうっ」  
 ペンデックスが短い悲鳴を上げる。  
 意外と思うほどに抵抗は少なくするりと指は飲み込まれた。  
 くすんだ桜色の内側を油まみれの指でなぞる。そのたびに白い背中が波打った。  
 もう片方の左手を尻肉に触れさせるとしっとりとした感触が手のひらに伝わる。  
 滑らかで凹凸の激しさはないが触り心地がいい。  
「け、けいこく、十六章四十九、節――エゼキエル書より、肛腔で交わるときには、指の、二本、は――」  
 ペンデックスの言葉が乱れる。  
 上条は小指を引き抜いて次に太い指――薬指を肛門に差し込んだ。  
 
 次第に黒くて赤い喜びが心の内側に湧いてくる。  
 彼とて性的なことに興味を持つ青少年に違いはない。  
 可憐な少女を弄んでいるという事実は興奮を誘う。  
 同時に切ないぐらい御坂美琴に対する贖罪の意識が湧きあがっていた。  
(上条さん、こんなことしてたら美琴のこと壊しちゃうんじゃないだろうな――)  
 ただでさえ不幸に他者を巻き込むのを嫌う優しさのある上条である。  
 自分が田舎のロバでなくなったときにブレーキを踏めなくなるのではという意識を本能が感じていた。  
 しかし目の前の状況はあまりにも美酒だった。  
 インデックスのヒップは青少年には甘すぎた。  
 なにより、今こうしなければ世界は滅んでしまうのである。  
(ごめん、美琴。上条さん変態になっちゃうかもしれません)  
 小鳥の囀りのような透き通る甘い嬌声。指を出し入れするたびに聞こえるペンデックスの声色が心地よい。  
 電流を流されたかのようにぴくんと背筋が震えている。  
 当然それはインデックスの声でインデックスの背中で、触れてはならない硝子細工のような脆さと美しさを感じさせる。  
 本当に当然なことなのに、インデックスの肛門に指を突っこんでいる上条当麻は気付けない。  
 ただ夢中になって淡い色の肛門に指を出し入れしている。  
 摩擦する肛門部と蠢かせる指の腹。もう中指の第二関節までが飲み込まれていた。  
 太い指が乱暴にかきむしる。しかしペンデックスは苦痛の声を上げない。  
「ひああああっ」  
 肛悦に鳴いた。  
 つつ、とペンデックスの性器から一筋の液体が太股を伝って流れる。  
 ごくり、と上条は何度目かわからない唾を飲み込む。一度肛門から指を引き抜いて伝った淫液を掬いとって肛門に塗り込めた。  
 白い背中はもう汗まみれだ。瞬きすら忘れて見惚れてしまう。  
「二本、いくからな」  
 上ずった声で上条が人差指と中指を肛門に添える。  
 男の太い指を到底のみこめなさそうな小さな場所に。  
 僅かに口を開いてひくついているそこにダメージの内容にゆっくりと慎重に入れていった。  
「ぎっ!」  
 一瞬、歯車が砂を噛んだような悲鳴をペンデックスはあげる。  
 思わず上条の動きが止まる。硬直する。歯車が止まったように。  
「し、失礼しました。問題はありません。どうぞ続けてください」  
「問題ないって――どう考えても今の声――」  
「問題はありません。強いて言うのならばもう少し油を足してくれるとよろしいかと」  
 四つん這いのまま肩越しに振りかえるペンデックスの表情は変わらない。  
 しかし顔面には細かい汗がびっしりと張り付いていた。  
 インデックスと同じ顔。よく笑い怒り噛みつき、悲しい時には本当に悲しそうになる顔を見て上条の心がきゅうと引き締められる。  
 
「いいのかよ、本当に」  
「再度言いますが問題はありません。事実、指が一本の時に性的な快感をこの肉体は感じていました」  
「――っ、おまえ、ペンデックス。本当に恥ずかしがらないのな」  
「私にそのような感情は存在しないと何度も申し上げておりますが」  
 しれっと、何の感慨もなくペンデックスは応答する。しかしその額には新しい大粒の汗が浮かんでいた。  
 羞恥はなくとも痛みは感じるのだろうか。  
「あなたに心痛を与える様な行動をとってしまったことは謝罪します。  
 ですが第十八章二十八節により正しい行動をとるものは最後までやり遂げなければなりません。  
 あなたは協力を承諾したのですから私の魔力が補充されるまで行為を続ける義務があります」  
 ぎゅう、と上条の心が痛む。  
 しかし心を鬼にする。  
 もちろん、そこに疾しい気持を持つ自分自身を認めたうえで。  
「――いいぜ、どうしても魔力の補給が必要だって言うなら最後までやってやるよ。  
 ただし、お前に辛い思いをさせないっていう条件でだ」  
「感謝、します――」  
 上条は一度指を引き抜いた。  
 そして改めて腫れぼった肛門粘膜に指を添える。ただし今度は挿入しない。  
 慎重に、そして大胆に周辺の敏感な粘膜を揉みほぐしていく。  
 さほど広がりはないにせよ、粘膜であることに違いはない。  
「ひあっ」  
 寒気にもにたびりびりする感覚がインデックスでもある体内を駆けた。  
 一撫でするたびにその甘い声が鳴る。皺が撫でられるたびに淫蜜が溢れてくる。  
 自覚こそなかったがペンデックスの乳首は硬く尖っていた。  
「ま、魔力が形成されています! ひあっ、気持ちいいです!」  
 感情が存在しない、と言っていたがどうやらそれは嘘らしいと上条は思った。  
 恐らくは御坂妹と同じく感情の発露の仕方がわからないだけなのだろう。  
 同じハードウェア上の人格なのだからインデックスのように欲望に忠実であってもいいはず。  
 淡々と事実と状況だけを語っているはずのペンデックスの口調がだんだんと色に染まってきているのがその証拠だ。  
 この穴を犯して獣のように鳴かせたい。  
 上条の脳がかっと赤くなった。  
 ずきん、と心臓が痛くなる。今の上条のことを知れば御坂美琴は激怒するだろうか号泣するだろうか。  
 しかし一度崩れた理性の壁は本能に容易く乗り越えられてしまった。  
 左手を淫裂に添える。割れ目をこする。ぬるぬるとしていたそこが嬉しそうにひくつく。  
 肉芽を見つけ出し指先で転がす。  
 
「はぐっ、ひやっ、ひぅっ、そ、そこを触ってしまうと個体名御坂美琴への裏切りとなる可能性が――」  
 元々快楽機関。そしてアナル弄りで火照っていた肉体。乾いた大地に水がしみ込むようにペンデックスは快楽に溶けていく。  
 前髪の生え際に大粒の汗が浮かぶ。前髪が張り付く。わずかに眉間にしわが寄る。  
 まるで後ろめたさを感じているかのように瞳が揺れ動いた。  
 そして。  
 ずぶっ。  
 再度行われるアナルへの二本指の挿入。  
 今度はペンデックスの悲鳴はない。  
「はひゃあぁぁあああっ!?」  
 ただ妖しい疼きに悩めかしいメスの声をあげる。  
 同時に少女らしい丸みを帯びた美脚がぴんと張った。四つん這いの状況から膝が浮く。  
 アナルに指を咥えこんだまま床を蹴っ飛ばした肉体はぴくぴくと痙攣した。  
 無表情であるはずの瞳が快楽に澱んで気だるそうに口元を緩ませる。だらしなく涎が飛び散る。  
「ほ、ほうこく――た、大量の魔力が生成、さ、れました――必須魔力の、八割が、補給されま――」  
 とてん、と重力に引かれてペンデックスが床に転がった。衝撃でアナルから指が抜ける。  
 ちゅぽんという間抜けな音。  
 ひくひくとひくつく穴は物おしそうに何かを強請っている。  
 上条の脳裏でアナルに剛直を突き刺す光景がフラッシュした。  
 ペニスは痛いほど勃起している。  
 がんがんと心臓が痛いほど胸の内側を叩いている。  
 視線はペンデックスの――すなわちインデックスの排泄の、性交の穴に釘付けだ。  
 まるで一輪の花のように可憐に咲いているそこはひくひくと淫らに男を誘っている。  
 瞬間、何もかもを忘れていた。  
「イン――デックス――」  
 避妊或いは病気予防のためのゴムもやっかいなお隣さんも可愛い勝気で泣き虫な恋人も。  
 自動書記もヨハネのペンも。世界を救うというお題目も。  
 すべてが櫛の歯のように抜け落ちて。  
 残った抜け殻がプログラミングされた自律行動を起こす。  
 上条当麻は無意識のうちに脱力したペンデックスの腰を引き寄せ屹立し先走り液を流すペニスを熱い肛門に押しつけていた。  
 灼熱のような亀頭をぐいと押しこむ。  
 
「うひゃあああっ!?」  
 めちめち。  
 酸漿の実の様に赤く丸い亀頭がペンデックスの肛門に飲み込まれていく。  
 悲鳴においてキャラクターの崩壊しはじめていたペンデックスが更に頓狂な悲鳴を上げた。  
「――け、警告――、す、既に魔力は過剰なまでに補給され、ていま――」  
「どうせすぐに足らなくなるんだろう。インデックスの心が治るまで」  
「そ、そうですが――ひあっ! だ、駄目です! 予想以上です! 太すぎます、裂けてしまいます!」  
「全然そんな気配ないぞ。うまそうに頬張ってひくついている」  
「そんな訳が――ひあっ!」  
 大輪の向日葵のような青空が似合う笑顔の眩しいインデックス。  
 そんな彼女が、人格は異なれども排泄の穴で上条を受け入れている。  
 抵抗は少ない。欠けていたパーツを埋めるがごとく当たり前のように入っていく。  
 ずくんとペニスがみなぎる。有り得ないほどのエネルギーを感じる。  
 大きく尻穴を開いて自分を受け入れるペンデックスに上条は妖しいトキメキを否定できなかった。  
 だが痛みを与えたい訳ではない。  
 油を自身の肉茎にも垂らす。  
「インデックスのケツの穴に上条さんのが入ってますよ。約束通り最後の最後までやってやるからな」  
 心を奪われてしまった女性の秘密の穴。  
 清浄にして神聖なる、性的な匂いを一切感じさせないインデックスの肉体。  
 そのはずなのに娼婦のように女の匂いを撒き散らしている。  
 上条当麻が初めて感じる女の体の内側に悦楽も興味も幾何級数的に加速していく。  
 肛門周辺の肉を巻き込みながらペニスが埋没していく。  
 異物を受け入れるようにはできていないはずの排泄専門器官。  
 しかしオイルとマッサージの効果、そして強引な上条の挿入でもはや三分の二を受け入れていた。  
「ん……むぐぅ……はぁ……熊野比丘尼によると肛性交は――はうっ!」  
 ずん。  
 最後の三分の一が一気に埋め込まれる。  
 病のように解説をしようとしたペンデックスが口を開いたために一瞬括約筋から力が抜けたのだ。  
「あううっ! は、はいりましたっ!」  
 ペンデックスの尻肉が上条の腰に押しつぶされて開かれて。  
 その状況にペンデックスが背中をそらせてか細い悲鳴を上げる。  
 ぷるぷるとか細い肢体が震えてダイレクトに上条のペニスに伝わる。  
 
「わ、私の中に、お、大きいのが、大きいのがはいってま、す――」  
 唇の端から涎を垂らし体内に感じる異物に驚愕するペンデックス。  
 当然ながら初めて受け入れた男性性器にインデックスとペンデックスの肉体が歓喜の歌を奏でている。  
 苦痛はない。  
 だが大きな肉の塊が自分の内側にあることへの戸惑いは隠せない。  
 いかなる魔道書にもこのような記載はなかった。  
 知識と経験は別物なのである。  
 しかし神裂火織をしてまぎれもなく天才と言わしめた彼女の脳はこの妖しい感覚の手綱を既に握りしめていた。  
「ぐぅ、イン、デックス――」  
 もはや上条にインデックスとペンデックスの区別はついていない。  
 いや、同一人物なのだからそもそも区別が必要だったのだろうか。  
 別人格とはいえども守らなくてはいけない少女に変わりはない。  
 無数の輪ゴムで縛りつけられているような強烈な締め付け。オイル越しに伝わる熱い体温、柔らかい粘膜の感覚。  
 ほんの十数センチに過ぎないペニスがまるで上条の全身になったかの如く苦痛と快感を訴えている。  
 混乱という言葉が一番状況説明に適していた。  
「大きくて、息が、苦しいです――」  
 異物感に小柄な少女が嘆息する。  
 常日頃は小ぶりだが三倍以上に膨れ上がる上条のペニスは極太と呼称するに足る。  
 しかしペンデックスの、インデックスのアナルは限界近くまで引き延ばされながらもどこも出血していない。  
 そして、この違和感は徐々に快楽へと変換されていく。  
「ふあっ……あ……へ、変です。息苦しいのに、なにか、すごく、熱いです。ああっ、気持ちいい――」  
 直腸壁が戦慄き始める。蠢く。お尻の肉が肉棒をきゅっと抱きしめる。  
 そして無意識のうちにか、ペンデックスがゆっくりと腰を動かし始めた。  
 徐々にスピードが上がり肉の摩擦を楽しみ始める。  
 同時に、上条も腰を動かし始めた。  
 初めての経験だ。やり方なんかわからない。それでも本能に焼き付いていた。  
「インデックス――インデックス――」  
 肉棒をつつむ直腸の熱が心地よすぎる。ただただ肉の槍でインデックスの肛門を突き刺す。  
 絡みついてくる腸壁、締め付けてくる肛門。初めてのアナルセックスは少年を虜にする以上に度数の強い美酒だった。  
 ―――ずん、じゅん、ず、じゅずぅっ  
 潤滑油のおかげで抵抗は少なくなっている。  
 それでも肛門はきつく締めつけて少年を甘く誘惑する。  
 上条は無意識のうちにペニスを肉壁に押しつけるように挿入していた。  
「はきゅっ、ひぃ、き、きついです、上条、とうまっ!」  
 ペンデックスの身体も前後に動く。動かざるを得ない。直腸だけでは乱暴なピストン運動を受け止められない。  
「おし、お尻が、こんなに気持ちいいなんて! か、神がメキドの業火を用いるほどの禁断であることが、理解、できます!」  
 
 後ろの処女。つまりは性器として認められている。  
 元々排泄口と性器は同一のものだということぐらいは上条の薄い知識にも記載されている。  
 空を飛ぶ鳥などは完全にそれが同一化していることを。  
 つまり、直腸で快感を感じるのは生命が本来搭載している機能。  
 処女と童貞はいきなり禁断の果実をかじってしまった。  
 しかし上条の顔に嫌悪感はない。  
 絶対的に興奮している雄の表情だけがある。もう夢中だ。二人とも完全に肛門快楽に囚われている。  
「けいこ、あひっ、だ、駄目です、声が、抑えられません! 気持ち良すぎます、あうっ」  
 無表情の仮面はもう剥がれおちている。  
 そこにいるのはメスの顔をした一人の少女。  
 インデックスと同じ肉体と顔をして、そして男を誘う淫婦。  
 子孫を残すための機能という意味では花は性器とみなすことができる。  
 ならば大輪の向日葵をイメージさせるインデックスは性的であったのだろう。  
 きっと、清浄すぎて気付かなかっただけで。  
「可愛いな、インデックス――」  
 背中からのしかかり、思わず呟いた。  
 それは心からのもので、だからこそペンデックスにも強く響いた。  
 ひあっ、と可愛らしい悲鳴が漏れる。  
「ひ、卑怯です。今そのようなことを言われると、わたし、は――」  
 快感に惚ける呆けるあどけない顔。  
 インデックスの顔なのにインデックスと違う。  
 そして可憐に開いている桃色の唇を見て、瞬間上条は唇を奪っていた。  
「んむっ――」  
 キスは。  
 キスだけは我慢しようと思っていた。  
 しかし耐えられなかった。完全に酔っぱらっていた。  
 ずきん、と今更のように御坂美琴が泣いている光景が浮かぶ。  
 あの鉄橋での寂しく笑いながらも助けを求めていた細い少女。  
 自分は今彼女を裏切っている。  
 顔面にストレートを食らったかのように罪悪感が上条を塗りつぶす。  
 それなのに身体は止まらなかった。  
 くちゅくちゅと唾液を交換する。舌と舌を絡める。  
 
 その間も腰の動きは止まらない。  
 ペンデックスの、インデックスの肉体は正直だった。  
 直腸の壁は蠢いてペニスを扱き美味しそうに頬張っている。  
 上条に彼女を気遣う余裕などない。ただただ自分の快楽のためだけに腰を振っている。  
 カリ首の段差まで引き抜いて一気に押し込んで甘い直腸粘膜を味わっている。甘い摩擦を味わっている。  
 白い尻肉が真っ赤になるほどに音を立ててぱんぱんと腰を打ちつけていた。  
「んむっ、はむっ、はんっ」  
 その間も舌と舌を絡めて。  
 濡れた瞳。媚びるような視線。唇が離れるとものおしそうにちろりと赤い舌が上唇を舐めて。  
 その仕草に上条は加速させられる。  
 呼吸する暇も厭うほどに再び乱暴に唇を奪う。  
 幼い顔。圧倒的な色香。そのギャップが上条の脳を甘い電流で焼く。  
 肉竿が膨らんで睾丸が引き上げられ、熱い塊が今にも飛び出そうだ。  
「可愛いぞ、可愛い、気持ちいいぞインデックス――もう出そうだっ」  
「い、いいです! 出してください! いっぱい、奥に出してください!  
 あひっ、あふぁっ、わらひのおひりに、いっぱい、らしてぇえええ!  
 ああ、わらひもイっちゃいます! 性的な、絶頂が、来ちゃいます!  
 わらひ、付属人格で、こんな気持ちいいこと、搭載されてなひ、はずらのにひぃぃ!」  
 銀色の髪が揺れる。白く細いうなじが見える。  
 きめ細かい肌の背中が反り返って肛門が限界近くまでペニスを飲み込んだ。  
 全身が噴き出す汗で鈍く光っていた。  
「出る! 出すぞ!」  
「はひぃい! 来て、きてくださひぃぃ!!! 、、い、イクっ! イっちゃう! わらひも、イクぅ!!!」  
 腰が溶けるほどの快楽を味わいながらペニスをぎりぎりまで引きずり出して一気に奥底まで突き刺した。  
 濃縮された雄のリキッドが塊になって銀髪碧眼の少女の腸粘膜に打ち込まれる。  
 ―――どくん、どくん、どくん  
「ふわあぁああぁぁぁ、おひりが、あついれふっ! やけどしちゃ、あひっ、気持ちいい!!!」  
 直腸への中出しに華奢な肉体が仰け反る。  
 後背位で上条にのしかかられていて、空間はそんなにないが、その中で大きく強く絶頂を迎える。  
 全身を痺れさせ蕩けたような顔をして、糸が切れたマリオネットのようにとすんと床につっぷした。  
「あひぃぃい、おしり、さいこうれふ……すごい、まりょく、れふ……けど、こわれちゃひます……」  
 ふわりと広がる柔らかな銀色の髪。汗まみれの白い背中。  
 上条も無意識のうちに重なった。  
 快楽の余韻に酔いながら重ねた肌の温もりを感じる。  
 荒い息と苦しい心臓の鼓動。それすらも二人分重ねながら上条は自分が何をしたのかを今更のように理解して背筋を冷たくしていた。  
 
 おう、いっつあ賢者たーいむ。  
 思いっきり射精をして冷静さを取り戻した上条を待っていたのは悔恨と懺悔の世界だった。  
 当たり前である。  
 最初はともかくとして最後の方は自分からペンデックスを求めていた。  
 唇を奪って唾液を交換していた。  
 つまりは完全なる浮気である。  
 緊急避難も何もない。  
 経験があればいざ鎌倉という時に美琴を不安にしなくても済む、なんていうお題目に意味が無いことは上条自身が知っている。  
 あれから二人してシャワーを浴びて汗を流した。  
 ペンデックスは魔法を使い自身の腫れた肛門粘膜を治療した。  
 曰く、自分自身の使った魔法であれば本人格も気づかないでしょう。それよりも違和感を覚えられる方が危険です。  
 治癒魔法が全く効かない、そもそもその必要のない上条だったがペンデックスから放尿をしておくように強く言われた。  
 避妊具もなしに肛門に突っ込んだのである。尿道炎になってもおかしくはない。  
 亀頭を包茎の皮で包んで内部に放尿して洗う酸漿洗いという手段もあるとか。  
 ちなみにこれも魔道書の記載事項。  
 何考えているんだ魔術師。  
 言われるままトイレで用を足そうとするも上条さんちの一人息子はわんぱくでたくましすぎて少しも言うことを聞こうとしない。  
 痛みを覚えるほどまげて放尿し終えるとペンデックスが歯を磨いていた。  
 曰く、精液の匂いがするから、と。  
 生々しい情事の後始末に苦笑しながら上条は再びバスタブの寝床に横になった。  
「本来の魔力生成機構を修復するまでの魔力を補充できました。ご協力に感謝いたします。  
 ――宣言、今後私が出現することはないでしょう」  
 それだけを言い残してベットに戻るペンデックスの後姿。  
 まるで何事もなかったかのようにすたすたと歩く彼女を少しだけ寂しいと思う。  
 それでも上条は目をつぶった。  
 太陽が昇るまでの僅かな時間。  
 興奮冷めやらぬ肉体を必死に眠りに就かせた  
 
 
 数時間後。  
 起床。  
 学園都市でもちゅんちゅんと雀は鳴く。  
「ふわああああ」  
 大きなあくびを隠さないまま上条はじりりとなる携帯電話の目覚まし機能を止めた。  
 見れば、ゆーがっためーるのランプが点灯している。  
 開けるとそこには一件。恋人である御坂美琴より。  
『おはよう。今日は朝ごはんつくりに行くね』との一文。  
 ばわっ、と起きて駆けだすようにリビングに向かえば美味しそうな味噌汁の匂いとともにカエル模様のエプロンを纏った少女がそこにいた。  
 エプロンの下は名門常盤台の制服。型口で整えられた柔らかそうな茶色の髪。白い花弁の髪飾り。  
「やほー。お目覚めみたいね」  
 にこっと笑うのは愛しい恋人の御坂美琴。  
 もちろんここに彼女がいるのは合鍵を渡しているからである。  
 インデックスの事情に関しては了承済みだ。  
 どくん、と上条の心臓が鳴った。  
「や、やほー。朝ごはん作ってくれたのか。忙しいのに悪いな」  
 視線を微妙にそらしながら美琴に返答する上条。  
 ドロドロしたコールタールのような罪悪感が染みついて離れない。  
 ほんの数時間前、ここで、インデックスの別人格と嬌楽を繰り広げていた。  
 そのことが痛いほど心に刺さる。  
「ん? どうしたの? なんか調子悪いのかな?」  
 小首をかしげて人差指で頬を突いて。そんなあざとい恰好をして下から上条を覗きこむ。  
 可愛い、と思う反面黒いものがある上条は何とも言えない顔をした。  
「いやなんというか、その――」  
「もしかして照れてるのかしら。それとも見惚れちゃった? 惚れなおした?」  
「――っ」  
 小さく唾を呑む。  
 まずい。  
 どちらかわからないにせよ今の自分ではろくなことにならない。  
 息苦しい時間の中で何とか言葉を紡ぎだそうとする。  
 
 しかし。  
「あーあ、朝っぱらからごちそうさまなんだよ。砂糖はきそう」  
 そこに白生地に金糸の刺繍の入ったシスター装束に着替えたインデックスが現れた。  
 もちろん、数時間前の痴態の面影などない。  
 性的な匂いなど一切させない幼くあどけなく清浄なインデックス。いつものインデックスだ。  
「い、いんでっくす?」  
 ぎぎぎ、とオイルの切れたブリキロボットのように不自然に上条が首を動かす。インデックスを見る。  
 いつもの、いつものインデックス。  
 一瞬あの嬌勢を重ねるもイメージが一つにならない。  
 それぐらいに違和感がある。  
 本当にいつもの性的な匂いを一切放たないインデックスだ。  
「おはよーの一言ぐらい欲しいかも。  
 あとみこともご飯作ってくれるのは嬉しいけど朝っぱらからいちゃいちゃしないでほしいかも」  
 ぶすー、と言わんばかりに頬を膨らませて食台の席に座った。  
 おいでー、と声をかけてスフィンクスという名前のネコを膝の上に座らせる。  
「とうま。おはようは?」  
「お、おはようインデックス」  
「? 変なとうま。なんかきょどきょどしてるんだよ」  
 インデックスは怪訝な顔をしていぶかしむもすぐに興味をなくす。  
 テレビのリモコンを手にとって電源をつけてチャンネルを切り替え始めた。  
「今日の占いはどうなってるのかな。あ、とうまはいいことがある日だって」  
 きゃっきゃとはしゃぎながら笑う姿はいつものインデックスだ。  
 数時間前のことが本当にあったのか、と思わず思ってしまうぐらいに普通の、いつもの光景。  
 はは、と上条は笑う。  
 あれは夢だったんだな、と。  
 淫夢と割り切ることはできないがもう終わったことなんだ。  
 恋人である美琴に対する申し訳ない気持ちはまだまだあるが、それは時間が解決してくれるだろう。  
「当麻ー、運ぶの手伝ってー」  
 ご飯、豆腐とわかめの味噌汁、アジの開き、納豆。  
 どこにでもありそうな和風の朝食。  
 ちょっと違うのはどでかいどんぶり飯が一つあることだがあまり説明の必要はないだろう。  
 小さな食台に並べていく。  
 こうした朝食はもう三度目になるだろうか。  
 常盤台のお嬢様は意外と家庭的なのだ。ちなみに味噌はお隣さんの手作り品である。  
 更に余談を言えば上条の弁当とインデックスの昼食も作ってあったりする。  
 将来は素敵な奥さん間違いなしの御坂美琴の到着を待って三人が箸を持った。  
 
「じゃあ、いただ――」  
 さぁ食事というその前に。  
「ちょっとごめんね、みこと。とうまに言っておきたいことがあるんだよ」  
 インデックスが流れを止めた。  
 疑問符が空間に浮かぶ。  
 小さな猫がにゃーと鳴いた。  
 
「ごちそうさま、なんだよ」  
 ちろり、と赤い舌で上唇を舐めて。  
 
 瞬間、上条の背中に冷たいものが流れる。脊髄に氷の塊を突っこまれたかのような。  
 
 ――同一の肉体である以上記憶の交錯の可能性があることにご注意ください――  
 
 そんなことを言っていなかったか?  
「ん?」  
 なんのことだろうと御坂美琴がいぶかしむがインデックスはその時間を与えなかった。  
「いただきますなんだよ! みことのご飯はとうまのより美味しいから好きかも!」  
 がつがつむしゃむしゃ。  
 漫画のような大喰らい。  
 はは、と思わず上条が反射的に笑った。笑うしかない。  
「当麻? 食べないの? やっぱり体調がおかしいの?」  
 心配そうに自分をうかがう恋人に上条は何とか作り笑いを見せる。  
「大したことではありませんのことよ?  
 いやぁ、ちょっと上条さん調子悪いから美琴たんの美味しい手料理で元気取り戻しちゃうぞー」  
「たん言うな」  
 お椀と箸とを手にとってさも美味しそうに上条は食べ始める。  
 嬉しそうに御坂美琴がその姿を見ている。  
 インデックスの食欲は言うまでもない。  
 それでいながら剣呑な光で上条を見ている。そう感じてしまう。  
 心なしか頬が赤いような。  
(ふ、不幸――とは、口が裂けても言えない!)  
 一歩踏み抜けば地獄に落ちる。とんでもない爆弾を抱えていては味なんかわかるわけがなかった。  
 

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