〜似た者姉妹〜
「黒子の奴、まだ来ないわね」
指をコツコツとテーブルに当てながら、美琴は不機嫌そうに残り少なくなっていたコーラをストローで吸い上げた。
「多分支部の方で、また固法先輩に捕まってるんじゃないかと」
「ああ、それじゃ白井さん、また始末書書かされてるのか」
年下の友人達の説明に、美琴は溜息を吐きながら空になったコップを置いた。
「はあ、毎度の事ながらアイツの横紙破りはちっとも直らないわね。
学習能力無いのかしら?」
「まあまあ、御坂さんを見習っていたら自然とそうなってただけですよ」
「初春、それ全然フォローになってない」
親友に思わず突っ込みながら佐天は視線を美琴に戻すと、なおも指を止めずテーブルを小突いていた。
「でもまあ、白井さんが御坂さん待ってる時もそんな風にイライラしてるから、確かに似ているなあ」
「そうですよね佐天さん、私もさっきから御坂さん見てて同じ事思ってました。
まるで本当の姉妹みたいだなって」
「げっ、私ってそんな風に見えてた訳?」
あの百合要素全開な後輩に似ていると言われ、地味にショックを受ける美琴だった。
「そんな嫌そうな顔しないで下さいよ御坂さん、白井さんに悪いですよ」
「そうは言われてもねえ佐天さん、まるで黒子がああなったのは私のせいだと言われてるみたいで、何か濡れ衣着せられたような気分だわ」
「それだけ御坂さんと白井さんの仲がいいって事ですよ、羨ましいくらいです」
初春から向けられる羨望の眼差しに、美琴は満更でもない表情で口を開いた。
「まあ嫌われるよりはずっといいんだけどさ、私としては佐天さんと初春さんくらいの仲が良かったんだけどねえ」
「あはは、白井さんってば愛情過多ですからね」
「でも気兼ねなく話せる相手っていうのも中々居ないですから、大事にしてあげないと」
「うっ、まあその、悪い奴じゃないのはよく分かってるんだけど、流石に同性愛はちょっとね……」
複雑な表情で答える美琴に、佐天と初春は苦笑するしかなかった。
「あはは、まあ確かにその辺は分からなくもないですけど、白井さんだっていつか真っ当に男の人を好きになりますよきっと」
「そうだといいんだけどね……」
「いやいや御坂さん、そう悲観したものでもないですよ。
人生何があるか分かんないからですね」
「そうですよ御坂さん、現に最近白井さんは――」
「遅れて申し訳ありません。今日もまたあの不幸な殿方のせいで、トラブルに巻き込まれてたもので」
「――とこんな風に満更でもない顔で毎日会ってるみたいなんですよってひいいいい御坂さんの笑顔が怖い!」