「美琴……好き、だ……」  
 胃の腑に飲み込んだ鉛玉を吐きだすような息苦しさを感じながら自分の正直な気持ちを腕の中の少女に告げた。  
 ただ、これだけの短い単語を告げるのにどれほどのエネルギーを必要としたのか、全身の体力をごっそりと持っていかれたような感覚がある。  
 裸形の恋人は驚いた様子もなくただ優しく微笑んでいた。  
 上条当麻は不幸である。  
 それは心理的なものだけではなく、形而下的なものだ。物理現象と言い換えてもいい。  
 人を巻き込むことすらある。  
 だからこそ、もしこんな言葉を口にしてしまって、大切な少女を巻き込んでしまったのなら。  
 そう思うだけで心臓が握りつぶされそうな気持ちになる。  
 だが、御坂美琴はそのすべてを見透かしていながらもただ優しく微笑んでいた。  
「好き。私も好き……それ以上は考えないで。気持ちってね、口にしたことに意味があるの。  
 だから、私もこの言葉に責任を持つから……だから怖がらなくっていいんだよ?」  
 優しく、そして言葉を重ねがら感極まったように小さくしゃくりあげる。目が滲んできている。  
「私は当麻のものだから……どんなことがあっても離れないから、だから、だからっ、だからっ!」  
 小さく開いた唇から紡がれる言葉は形にならない。  
 怖がっているのは少女の方だ。  
 自分がどれだけ彼女を傷つけていたのかを上条は今更のように知る。己の愚かさに怒りを覚える。  
 両腕で強く抱きしめた。  
 花弁のような唇を再び奪う。  
 不幸だなんて、思えない。  
「あ……ん……」  
 美琴もおとなしく上条に身を任せる。  
 繰り返される口づけに息苦しくなる。それは先程の鉛のようなものとは違う、魂が肉体という器の狭苦しさを訴えるような甘美さ。  
「んむ……んぅ……ふぅ……」  
 柔らかくしっとりとしていて、弾力もある唇。上条の強さにあわせて形を変えて受け入れてくれる。  
 受け入れてくれているのは唇だけではない。  
 裸の、生まれたままの姿で腕の中にいてくれる。  
 そのことに上条はひどく安心した。そして高揚する。正に天に昇るような気持ち。  
 もっと深く、強く、知りたい。  
 再び舌と舌とが絡んだ。  
 敏感な粘膜同士が互いの背中をぞくぞくさせる。  
 はしたなく唾液をすすり合いながら互いの置換した二酸化炭素同士で貌を撫であげる。  
「あふ、ひゃあ……とうまぁ、とうまぁぁ……」  
「くはっ……は、み、みことぉっ!」  
 片方が求めればもう片割れはそれ以上に求める。二人が互いを高めあいながら舌と舌がのたうつ。  
 ざらつく表面の敏感な粘膜が媚薬を生み出し互いの脳を赤く赤く染め上げていく。  
 口移しで飲まされる唾液で思考力が奪われて二人はオスとメスに還元されていく。  
 やがて二人の唇が離れた。  
 濡れた瞳が上条を見上げている。  
 まるで少年のように踵をつけずに走り回る印象の強い御坂美琴だが、今の彼女にその印象は見受けられない。  
 火照りきった顔が上条を求めている。  
 
「……美琴、ちょっと、そこに立って」  
 上条は少女に命じた。おとなしくそれに従う。  
 立ち上がって、背中を壁のタイルにつける。丸いヒップと肩口が支点になる。  
 暗がりの中の初めての交わりでも微かに白く目に映っていた乳房がよりいっそう輝いている。  
 その麗しき膨らみを上条は口と両手とで好き勝手に捏ねる。  
 力を込める、というほどではないのに簡単に形が変わる。一口サイズの柔肉を口に含んで舌で転がすと少女は切なげに頭を振った。  
 その髪を纏めていたタオルはとうの昔に落ちている。  
 上条の股間のタオルも、だ。  
 だがそんなことは二人には気にも留めない。  
 それよりも上条は美琴への愛撫に熱中していた。  
 白い肌にいくつものキスマークが刻まれる。右に左に流されて薄桃色の乳首がつんと硬くなる。  
「ひゃああんっ、や、やだぁ……おっぱい、小さいからぁ……」  
「大きくはないけど、綺麗だし……すげぇ、興奮する。みことたんの一口ミルクプリン、最高ですよ?」  
「たん、言うなぁあぁ……ああんっ!」  
 綺麗なものを思うがままにしているという子供じみた感覚。  
 上条は酔ったように乳房への愛撫を繰り返す。  
 妖しい輝きをもった乳房の表面に薄く浮かんだ汗のしょっぱさがあるのにプリンと表現したような甘さを感じてならない。  
 膝立ちの股間のペニスはパンパンに膨らんでいる。  
 切ない無ず痒さを感じながらもそれを転換して美琴の嬌声を引き出そうとする。  
 ぴん、と小生意気に勃起している乳首に軽く歯を立て、もう片側を指と指とで摘まむ。  
 ちゅ、ちゅ、と吸いつくと美琴が悲鳴を上げた。  
「やああっ!! 私の胸、おかしくなっちゃ……ああんっ!!!」  
 乳肉と異なりしっかりとした弾力のある乳首。もともと口に含ませるための部位なだけあって非常に馴染む。  
 上条は夢中でしゃぶった。甘噛みして、舌先で突いて、強く吸って。  
 愛撫の仕方を変えるたびに美琴の嬌声も音色が変わる。  
 きめ細やかな乳房の肌に指を滑らせると背筋に鳥肌を立てながら少女は恋人の頭を必死になって抱えた。  
「ひゃああっ、ああんっ! や、やだ、声、おっきくなっちゃうっ!!!」  
 その言葉に上条の興奮がさらに高ぶる。もっと聞きたい。その可愛い声を聞かせてほしい。  
 自然、上条は自分の頭の位置を下げていった。  
「おっぱいばかりじゃ可哀想だもんな。美琴の身体、可愛い場所いっぱいあるんだから」  
 手を胸に残しつつ鳩尾に舌を這わす。  
 乳房と乳房でない部分の境を丹念に舐り、しまったお腹も吸い上げる。  
 縦にすっと切れた臍もその周囲も丹念にキスして細かく浮いた汗を一つ一つ掬っていった。  
 美琴の肌はきめ細かい。  
 乳房の白さに負けていない。  
 濡れた舌を滑らせながら上条はその肌を味わう。  
 すっと滑らかだと思えば微妙に粟立っていたりざらついていたり。  
 同じ場所でもタイミングが異なれば別の顔を覗かせる。その面白さに夢中になる。  
 夢中になりながらも両手は胸への愛撫を忘れない。  
 乳首は指先が独占していた。  
「あっ……ああっ! くすぐったっ! ひゃああんっ! おっぱいも、してるっ! や、ずるいよっ! こんなのっ!!!」  
 それでも、上条の後頭部に流した両手を離そうとしない。むしろ逃がさないと髪に指を押し込んでいる。  
 身を捩りながら硬い壁に美琴は押しつけられる。  
 そして波打つ肢体に少年はますます興奮を加速させた。劣情を加速させた。  
「ひゃあ!? やっ……あンっ!」  
 テクニックなんて、ない。  
 ただただ煩悩のままに従う。  
 ペニスのことを魔羅と表現することがある。  
 この魔羅はマーラを無理矢理漢字表記したもので本来は煩悩や誘惑を誘う魔を指す言葉だ。  
 さらに正確にいえば「魔」という感じそのものがマーラを表現するためだけに創造された漢字だ。  
 それがどうだ、というわけではないが正に言葉というのは認識の器だということが分かる。  
 上条を突き動かしている煩悩は性欲以外の何物でもない。  
 ただ、そこにはどうしようもないぐらいに愛おしい少女を求めているという嘘にはできない真実が混じりこんでいるだけで。  
 
 小悪魔の少女を欲望の悪魔が振り回す。  
 乳房を名残惜しく思いながらも手を離して、顔も両手も少女の一番深い場所へと運ぶ。  
 甘酸っぱい雌の匂いを放つ両足の付け根。健康的な太股に手を添えてゆっくりと開かせる。  
 美琴も覚悟したのか上条の動きに従って足を広げた。  
 それだけなのに、むわ、と蒸せるような匂いが広がる。  
「や……恥ずかしい……」  
 日頃短パンを履いていて、スカートが捲れることなんか気にも留めない色気のないはずの御坂美琴が切なげに身をよじらせる。  
 露骨に腕を組んできたり、積極的に浴室に誘ったりしたのに、今の彼女は初心そのものだ。  
 それが本当の彼女であるかのように。  
 だとしても健気に美琴は脚を広げたままだ。ただ座り込む形になった上条の後頭部から手を離して顔を隠すように悶えている。  
 その可憐さに上条の胸が苦しくなる。  
 少女の性器はほとんど丸見えだった。  
 性毛がないわけではないが本当にごくごくわずかの薄いもので、黒というよりも茶色に近い。  
 金髪のコーカソイドでも陰毛は黒いことは多い。髪の色とは別物なのだ。  
 だから染めているというわけではない。単純に色素が薄いのだろう。  
「あ……」  
 じ、と見られていることに美琴は震える。だが抵抗はしない。  
 すべて受け入れると決めたのだから。  
 むしろ、ほんの僅かながら、さらに足を広げて空間を作ってさえみせた。  
「これが……美琴の、なのか……」  
 一度身体を重ねたとはいえ股間をまじまじと見るのは上条にとっては初めての経験だ。  
 太股に挟まれた肉の土手は白く柔らかく見えた。  
 こんな可憐な場所が本当に自分のペニスを受け入れたのだろうかと不思議にすら思える。  
 すぅと刻まれた筋の部分がある。まだそこから小陰唇は顔を覗かせてはいない。  
 ただピンク色のクリトリスは僅かながら顔を覗かせててらてらと濡れている。  
「あ……」  
 上条が両手でその肉を広げた。  
 途端、つぅと蜜が溢れて美琴の太股を伝っていく。  
 開いたそこでは赤い肉が息づいていた。粘膜が充血している。  
 初めてのセックスの時の快感が上条の脳裏に蘇った。  
 淫らな匂いも強くなる。発酵した乳製品の匂い。上条のペニスが先走り汁を涙のように流す。鈴口が大きく誇っていた。  
「当麻……好きにしていいから、ね……」  
 両目をきつく閉じた美琴が振り切るように言った。消え去りそうなか細い声。だがしっかりと意思のある声。  
「あ、ああ……」  
 むしろ気押されたかのような上条が美琴の股間に顔を寄せる。真っ赤になった顔の熱がそのまま伝わりそうな距離にまで近づく。  
 だが恋人の肉体は上条に負けないほどに熱い。特に秘肉は唇をつけただけで弾けそうなほどだった。  
「んぐっ……む、ふぅ……」  
 熱と、しょっぱさと、酸味とが上条に伝わる。観念が覆いかぶさってくる。  
 目の裏側がちかちかするほどの脳内麻薬。鼓膜に伝わる嬌声がさらに分泌を促す。  
「ひゃあぅ! んひゃあっ! ひっぃ!!!」  
 喘ぎを少しでも消そう、としているらしい。だがそれは到底無駄なことだ。  
 しかしそれを察した上条はサディスティックな思いを得る。手加減なんかしない。陰唇の谷間にそって舌を動かした。  
 舌と一体化したように滑っている膣口。小さなそこに舌をめり込ませる。  
「あっ……ああっ! わ、私の……ぁそこ、がぁっ! や、ハンっ……声、止まらない……」  
 困惑しながら、だが腰は引かない。太股をぶるぶるとふるわせながらも上条を振り払おうとはしない。  
 調子に乗って、少年は鼻先をも埋める。  
 伸ばした舌先を潜らせながら高くない鼻で紅真珠を刺激する。  
 
「ひゃふぅっ!」  
 途端、裏返ったかのような声を美琴は発した。  
 ぶるっ、と小さく体を震わす。  
「あ……ひゃ……とう、まぁ……」  
 軽く達したのか、細いその肩が震えた。  
 だが上条は止まらない。小さな絶頂で溢れ出た蜜をずずりとワザと音を立てて吸う。息苦しくなるのも構わずに唇全体を使う。  
 舌を猛進させて紅い肉を割り開き敏感な粘膜の間を暴れさせまくる。  
 恥辱を与えながらそれ以上の快楽を与えようとする。  
「ふ、ひゃあああ、と、当麻っ! 強すぎ……」  
 止まる訳がない。  
 恥じらいを表すように震える太股と恥じらいを感じずに快楽を表現する秘肉。  
 もっと舐めてほしいと上条の舌を呑みこむ場所を愛おしく思う。  
 神経のすべてが燻されてただただ舌の動きが加速する。  
 ずずっ、ずずずっ!  
「うンっ、ひうぁっ! ああんっ!!! ふわあああっ!!」  
 よがり声を切羽詰まらせて美琴が再び頂点へと突き上げられる。  
 敏感な若い肉体は恋人の愛撫に過剰に反応していた。  
 しかし上条はなおも止まらない。  
(そうだ……これ、クリトリス……)  
 ぼう、と赤くなった頭で女性に対する知識を取り出す。  
 なにぶん、経験値は少ない。  
 ただの一回だけだ。  
 その分だけ知っている情報を試したくなる。  
 女性にとって其処がどれほど鋭敏なのか、試したくて仕方がない。  
 膣口に舌を差し込んだまま、右手でその場所を弄った。  
「んふわぁぁっ! い、やっ! そ、そこ……!」  
 すべての幻想を殺す右手が愛しい少女に快楽を与える。太い指が無骨に動くたびに御坂美琴の全身が左右に大きく揺れて痙攣した。  
 だからと言って逃がす道理は無い。  
 左手は彼女の細い腰をしっかりとつかんで逃さない。  
 今度は舌先を伸ばす。  
 こりこりとした部分。まさしく貝の肉に等しい。  
 男性で言えば亀頭そのものがコンパクトに小さくまとまっている部分を上条は何一つの遠慮も知らずに啄ばむ。  
「うわああああああっっ!!! あああああああああっ!!!!」  
 結果、上条ですら驚くほどの大音量で少女は叫んだ。  
 繰り返すが此処は浴室だ。当然音はよく響く。  
 そして防音処置が施されている空間でもない。  
 過剰に増幅された艶やかな嬌声。それが薄い壁しかない寮の中で隣に伝わらないわけがない。  
 一瞬、ぎょっとして自分のしたことを後悔する。  
 するも、やはり美琴をそれほどまでに感じさせたことに酷く満足する。  
 そしてそこまで感じさせる場所を執拗に根ぶり続けた。  
 エクスタシーを極めた華奢な体はそのたびに細かく痙攣しながら筋肉を硬直させている。  
 
「ああ……ああ……」  
 吐く息ですらも感じてしまうとばかりにだらしなく開かれた小さな口。ふにゃふにゃに歪んだ顔。  
 ぶるるっ、と大きく震えて、そして一気に弛緩した。  
 当然、それは全身に及ぶわけで。  
「あ、あああ……や、やだ、出ちゃう……」  
 何が、と問う前にそれが流れ出た。  
 じょろろ、と頓狂な音を立てて愛撫した場所からアンモニア臭のする僅かに黄色がかった液体が流れ始めた。  
 小さな穴から拡散するように撒き散らす。  
 当然、そこには上条がいるわけで。  
「うわっ、なんだ、これっ!」  
「いやあああっ! やだ、止まって、止まってぇ!!!」  
 泣きそうな声を上げて少女が身をよじるがそんな程度では失禁は終わらない。破廉恥な水芸は続いてしまう。  
 完全に弛緩してしまった尿道括約筋は彼女の意思を反映しない。ただでさえ女性の肉体は失禁しやすいのだ。  
 ここまで感じてしまってはいくら御坂美琴と雖もどうしようもなかった。  
(今回のことを恥じて、美琴が事をいたす前にはできるだけ水分の摂取を控えるようになるのだがそれはまさに余談である)  
 もしかしたら体内電流の操作でなんとかなったのかもしれない。  
 だが、そんな発想が湧く状態ではなかった。  
「これ、おしっこ、か……なんか、あったかい、な……」  
 排泄物だ。綺麗なわけがない。  
 だが上条は不快に思わなかった。  
 どうせ浴室である。シャワーで流せば済むだけの話だ。  
 しかしそんな即物的なことよりもフェロモンのたっぷり混じった尿は上条を甚く興奮させた。  
 特段上条の性的趣向が異常だというわけではない。  
 異常だというのならばこの空間そのものが異常なのだ。恋人とともに裸で過ごす世界が日常ではないのだ。  
 理は通用しない。  
「ひっ、ひぅ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい……嫌いにならないでぇ……」  
 だが上条のそんな心理状態を経験の浅い美琴が分かる訳がない。  
 尿を浴びせてしまうという侮辱そのものの行為を愛しい人にしてしまったことで少女は子供のようにボロボロ涙を落とししゃくりあげる。  
 今にも粉々になってしまいそうなほど脆くなっていた。  
「馬鹿、嫌いになんかなる訳ないだろ」  
 アンモニア臭を纏ったままという格好のつかない状態で、上条が実に格好いい言葉を放つ。  
 もしこの場に第三者がいれば馬鹿そのものの光景だ。  
 だが当人同士は実に真面目だった。  
 嘘なんかつけなかった。  
「美琴は、俺にとって一番特別な存在なんだからな」  
 言って、尿の滴の残る陰唇をぺろりと舐め上げた。  
 口先に尿のしょっぱさと苦さが伝わる。  
「いやぁ! だめ、汚いからぁ……」  
 泣きじゃくりながら上条を離そうとする美琴を逃さない。  
 執拗に舐めまくる。綺麗にする。  
 繰り返すが上条は変態だという訳でもない。いや、現状から言えば変態そのものだろう。  
 だがそれは相手が御坂美琴だからできることなのであってそれ以外の理由なんてものは無い。  
 やがて尿が完全にふき取られたころには御坂美琴の懇願するような泣き声は享楽を含む鳴き声に書き換えられていた。  
 
「……とうま、私、欲しいよ……」  
 やがて。  
 壁の冷たいタイルに背中を押しつけて、汗で前髪が額に張り付いたままの少女が切なく小さな声で、言った。  
 言って、自分で小さな蜜壺を割り開いて、淫らに懇願して見せる。  
「ここに、当麻のおちんちん、ちょうだい……かき回して……」  
 見るからにへとへとになって、それでも少女は上条を求める。  
 防音と、そしてべとべとになりそうな尿を流すためのシャワーに打たれた上条が恋人を見上げた。  
 その股間は痛いほど勃起していた。  
「休まなくて、平気か?」  
「うん、大丈夫……」  
 気遣うような問いかけに優しい美貌で笑って魅せる。悪戯っぽく瞳を潤ませる。  
「当麻は、私のこと、欲しくないの?」  
「欲しいに決まってるだろ、馬鹿」  
「さっきも言った。私のこと、馬鹿って」  
「馬鹿だよ。俺とおんなじぐらいに馬鹿だ。答えが分かってる質問ばっかりしやがって」  
「だって……やっぱり言葉が欲しいよ。当麻の言葉で聴きたいの……」  
「馬鹿」  
 立ち上がった。  
 さほど背の高くない上条と小柄ではない美琴だが、やはり男と女の高さの違いはある。  
 背中を壁に預けさせたまま右太股を持ち上げた。綿菓子のように軽い。その隙間に身を滑り込ませる。  
 膝を軽く曲げ、ペニスをつかんで亀頭を美琴が開いて見せている白い肉に当てた。  
「いく、ぞ」  
「うん、きて……」  
 正面から互いを濡れた目で見て、求めあう。  
 何となく照れくさい。やはりまだ経験が薄いのだ。なにせ、二回目なのだから。  
 上条は自分の股間に視線を移す。失敗しないようにと慎重に腰を差し入れた。  
 ――くちゅ  
 しかし杞憂だった。  
 小さな膣口は予想外なほどすんなりと上条の亀頭を飲み込んでいく。  
 執拗に愛撫を繰り返してほぐれていたのか、それとも二人の相性がそれだけいいのかはわからない。  
 そもそも分析など無用だ。柔らかな膣肉は最初からそうだったかのように戦慄いて上条を受け入れた。  
「ぐ……うぅ……」  
 上条が唸る。気を抜くともう射精してしまいそうだ。  
 美琴も中学生とは思えないような色っぽい徒な顔をした。  
「入ってる……とうまの、おっきいのが……とうまのおっきなおちんちん、また、はいってきたぁ……」  
 全身に鳥肌を立たせながら上条がペニスをすべて押し込んだ。  
 本能にプログラミングされているのか、美琴の柔らかな肉が亀頭を擽ってくる。  
 じっとなんかしていられない。  
 性急にと欲望が暴走した。  
 窮屈な場所を自分の大きさに広げながら逞しく突き進む。  
 同時に受ける側の肉も遠慮なんかしていない。包み込んで締め付けてぬるぬると刺激して紅く熱く亀頭やカリ首を責めてくる。  
 官能の神経がちりちりと焼かれた。  
「ううっ!」  
 奥歯で何かを噛み殺しながら上条が腰を振る。  
 そんな彼の後頭部に御坂美琴は両手を回した。しがみつく。  
 鈴口が子宮の口に当たる。硬い感覚が鋭敏に愉悦を割り開く。  
 恋人の肉体のすべてが上条を攻めてくる。責めてくる。  
 苦しくて心地よくて切なくて愛おしくて、抱きついてくる少女の唇を奪った。  
「うん……ちゅ、ちゅ……じゅ……ちゅ……」  
 舌と舌。体温と体温。鼓動と鼓動。すべてを交換する。  
「や、はぁぁぁ……とうまのおっきいので、私、征服されちゃってるよぉ…… 当麻のおっきなおちんちんで満たされてるのぉ……!」  
 唾液で大きく濡れた口で女の歓びを少女は歌う。  
 紅潮した恋人を見る。苦しくなる、切なくなる。  
 欲しい。足りない。全部、全部だ。  
 上条はペニスを奥まで埋め込んだまま少女を引き寄せた。  
 右脚を上げて、腕は上条の頭にしがみついた少女が完全に上条と重なる。  
 
「や、脚がくがくなの……ちゃんと支えてて……私は、アンタに支えられてないと生きていけないのぉっ!」  
「分かってるっ! 一生支えてやるっ!」  
 強く、多くの幻想を殺し、多くの人を救ってきた右手。  
 その右手が御坂美琴の腰にまわされている。引き寄せている。  
 離さない。  
 この幻想だけは絶対に殺せない。殺させない。  
 突貫した。  
 ――ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅううっ!  
 愛液が白い泡を立てる。淫らな音が奏でられる。シャワーの熱い飛沫でも隠せない。  
 無数の壁をエラで掻きわける。それでもすぐに密集して亀頭を責めてくる。  
 呼吸と呼吸が互いを熱くする。視線と視線が互いを熱くする。  
 傍若無人なペニスが我儘に暴れまくり膣肉がすべてを受け止める。  
 一ミリ単位で刻まれる快感。圧倒的な性感が質量をもって塊になる。  
 ちかちかとまぶたの裏側が光った。  
 脳が紅い塊になって心臓がポンプの役割を放棄してただの感情装置になる。暴走して全身がパンクアップする。  
 美琴が腕の力を強めしがみついてくる。  
 腰と腰がぶつかる。熱い胸板に小ぶりな乳房が押しつけられる。小生意気な乳首が上条を擽る。  
「ぐぅぅっ!」  
 手と膣とでしがみついてくる御坂美琴。負けないように太股をもっと高く上げさせてさらに身体を重ねる。一つになる。  
 その体勢でなお突きあげれば背後の壁があるとしても美琴の体重のすべてがペニスに加重される。  
 獰猛に腰を動かすたびに彼女の重さが子宮にぐいとのしかかった。  
「うぁうぅっ! おちんちんがっ! ごりごりいってる!!! ひひゃああっっ!!  
 子宮がっ! 赤ちゃんの部屋が壊れちゃうっ!!! おちんちんが赤ちゃんの部屋に入っちゃうよぉっ!!!」  
 喘ぎが木霊する。ぶるぶると全身が震える。  
 怒張が淫肉を突き破る度に可憐な少女の嬌声が溢れる。  
「美琴…… 俺っ!」  
 ひたすら蜜壺をかき回す。  
 熱くなった芯が鉄杭となって御坂美琴に打ち込まれる。  
 だが熱くなりすぎて内側から溶けてしまいそうだ。  
 事実、上条の精は出口を求めて轟音を立てるかのように唸っている。  
 軋んで歪んで、崩壊は近い。  
「ぐっ! ぐぅぅ! うあっ!」  
 細かく息を刻んで快楽に耐える。耐えながら一層の快楽を求める。  
 それだけではない。やはり感じさせたい。感じさせて染め上げたい。  
 子供じみた感情が上条をより突き動かす。  
 欲しい。愛しい。全部自分のものにしたい。  
 だが、そうだとしても。  
「まだっ! 終わらないからなっ! みことぉ!」  
 緞帳が下りるのには早すぎた。  
 やけくその様に上条は動く。動きまくる。両脚を開いて二人分の体重を支え食いしばる。  
 僅かなサイズの美乳もクッションとなって上条の動きをサポートする。そのたびにこりこりと乳首が跳ねた。  
「んはああっっ!!!」  
 美琴も全身でよがる。上条を締め付ける。亀頭もカリ首も竿も関係ない。すべてを一気に。  
「くわっ!」  
 何処の時代劇だ、と言わんばかりの悲鳴を上げる上条。  
 だが余裕なんてない。  
 ないはずなのだがこの悲鳴とともに上条の動きが僅かに横にずれた。  
 
「ひあっ!」  
 ほとんど同じ、だが今までにない悲鳴を聞いた。  
 発した美琴自身も分かっていないだろう。  
 だがそのことで上条は気付いた。  
 試しに腰を「の」の字を描くように動かしてみる。  
 膣肉を周囲に描き分ける感覚はこれまでと変わらなく心地よいものだった。だが性急過ぎる射精欲求にはつながらない。  
 そしてどこかしら痛みすら訴えさせていたような美琴の悲鳴が心なしか柔らかなものになった。   
 満足感を得られないうちに射精しなくても済みそうだと感じながら、  
(強くするだけじゃダメなんだな……)  
 と凡庸とした頭で理解する。  
「ひゃあっ、な、なんなの、この感じっ! なんか違うよっ! あ、ああっ あぁぁっ!!!」  
 口元の笑みがはしたなく歪む。  
 肢体をくねらせる美琴が甘えた声で訴えた。  
「ああっ、これも気持ちいいよっ! すごいの、当麻っ! 私の知らない私のこと、なんでも知ってるっ!」  
「知らないさっ! でも見つけてやるからなっ! 全部見つけて俺のものにしてやるっ!」  
「して! してぇぇ!! 私を全部当麻のものにしてよぉおお!!!」  
「み……ことっ!!!」  
 何度か腰を回しながら、若干の余裕を取り戻したところで再びピストン運動に戻る。  
 長いペニスを引っこ抜いて限界まで突き刺す。  
「んはああぁっっっっ!!! ひぃっぃっぃ!!!」  
 警告もなしの突然の切り替えに少女は獣のように啼いて震えた。裏返る声は二オクターブも跳ねあがった。  
 荒々しい動きもいい。  
 やはり獣としての人間というものがある。  
 鍛えられた肉体を発条器としてこれでもかといわんばかりに律動して叩き込んだ。  
 エスカレートする。加速する。  
 ぬちゃぬちゃと淫らな水音もする。  
「も、もうっ! なんでこんなに気持ちいのっ! 離れられないよ! 私、もう当麻から離れられないっ!  
 ずっと一緒にいてっ! 気持ちいいのっ! どんどんおかしくなるっ!  
 責任とってよっ! 私だけのものになってぇぇぇ!!!!」  
「あったりまえだっ! もう美琴は俺だけのものだっ!」  
「ああんっ、や、はあぁっ! そ、そうなんだ、はんっ! 私たち、一緒なんだねっ!」  
 愛する人と一緒だと言われて一瞬美琴の目が見開かれた。快楽に染まりきりながらそれでも嬉しそうに微笑む。  
 つぅ、と涙が零れた。  
「ああっ! わたし、いっちゃうよぉっ!! やぁん、びりびりってきてるっ! や、はんっ!!!」  
 ばちっ!  
 小さな火花が散った。  
 上条はそれは自分の脳内の火花かと最初勘違いした。  
 だが己の前髪が焦げる嫌な臭いで現実のものだと理解する。  
「あ、や、やだっ! 能力がっ! 収まんないっ! コントロールできないっ! 漏れちゃうぅ!!!」  
 ボロボロと涙を零して少女が上条を見つめた。  
 懇願する。  
「お、お願いっ! アンタの右手で止めてっ! 暴走しちゃうっ! 気持ち良すぎておかしくなっちゃうっ!!!」  
「ったく、本当に漏らしてばっかりだなっ! 本当にいやらしいな、美琴っ!」  
「いやぁ! 言わないでぇ!!!」  
 言葉で責めて、一層泣かせて。  
 それでも右手は優しく少女の頭を撫でた。  
 途端、青白い火花は消失する。  
 残るのはタンパク質の焦げた臭いとシャワーの音と、二人の籠った匂い。  
「こんなんじゃ、俺以外とできないなっ!」  
「あたりまえじゃない! そんなの! 私はアンタだけがっ! 当麻だけがっ!」  
「そうだっ! 当たり前なんだ! いいか! 俺のものだからなっ!!」  
 上条の強い宣言。  
 御坂美琴は大きく目を見開いて大粒の涙を数え切れないほど零す。  
 そして。  
「私っ! もうイっちゃうっ!! 当麻っ! 私イクのっ!! イクっ! イっちゃうっっ!!!」  
 卑猥な言葉を連呼する美琴。肉体も精神も最高に高められて絶頂が止まらなくなると訴える。  
 その切迫感が上条にも伝わる。  
 上条もずっと限界の土俵際で堪えていたのだ。  
 スペルマも尿道の奥で跳ねあがりそうに出番を待って暴れだしている。  
 
「俺もイクからなっ! 美琴っ! このまま出すからなっ!」  
「うん、うんっ! 出して! このまま中に出してっ! 全部当麻のものにしてよっ!!!」  
 上がった右脚が上条の腰に掛けられた。  
「ぐぅっ!」  
 頭が真っ白になる。  
 そこに少女の嬌声がダメ押しする。  
「お願いっ! わらひのイってるところにっ! びゅくびゅくしてっ! 中に、当麻のものに、わらひぉぉおをっ!」  
 吹っ切れる、もう止められない。  
 が。  
「あ、ああっ……なんでっ!」  
 上条は腰をピストンから「の」の字運動へと切り替える。  
 心地よくないわけではない。だが乱暴さが足りない。物足りなさげに美琴が涙を浮かべる。  
 それを唇で吸い取った。  
 右手が櫛のように柔らかな茶髪を梳く。  
 そして、その切なさをスパイスにして。  
 上条は一気に腰を加速させた!  
「ぅはぁぁぁっ! ひぃぉ! ひゃああっっっ!!!」  
 真上を見上げ白い喉を覘かせて紅い舌先が口から突き出て。  
 びくんびくんと美琴の身体が震える。  
「かっ、はっ……ひ、あ、あ……」  
 もう悲鳴にすらならない。ただの音の羅列。  
 全身が硬直した。眼が見開かれ指先が震えた。  
 そして膣肉が万力の力で上条を締め付けた。  
「ぃいっ! ぐぅぅっ!」  
 堪らない。  
 一瞬意識が遠くなる。白くなる。  
 止められなかった。  
 ―――どくん、どく、どくぅ! びゅるるるっっ!!! びゅるるっ! どくんっ!  
 子種が一気に尿道を駆け上がった。一気に昇天した。全身の水分が瞬時に乾いてしまうかのような圧倒的な質量。  
 濁流が美琴の膣の一番奥で弾ける。  
「うぁああぁんっ!! ああぁんっ! あんあんっ!!! 出てるっ! 出てるよぉ! 嬉しいっ! 嬉しいのっ! わたし、しあわせぇぇえええぇ!!!」  
 脳髄を痺れさせながら上条が腰を持ち上げた。  
 男と女の脚の長さの違いで美琴の肉体が完全に浮かび上がる。  
 果てる最中でさらに子宮に強い衝撃を受けて美琴の世界が真っ白に弾けた。  
「ひあああああああああっっっ!!!!! ああああああああっっっ!!!」  
 射精をしながらそれでも硬さを失わない。  
 硬いままのペニスが御坂美琴を持ち上げる。美琴の体重でペニスがへし折れそうになるも若さと力強さが子宮口をこじ開けた。  
 
「くうぅぁああああっ!!!」  
 ―――どびゅびゅっ! どびゅぅぅう!!! びゅるるるうっ!!!!  
 再度の射精。  
 本来ならあり得ない子宮口の中に直接精液が打ち込まれる。  
 全身の細胞の生命力のすべてを吐きだす。  
 ペニスが軽くなる。  
 軽くなりながらも膣肉はきつく甘く締め上げてくる。  
 ありったけの最大限の快楽が上条のスペルマを限界以上に引きずりだそうとする。  
「う、あ……」  
 穿ったままの上条が美琴にしがみつくように硬直した。  
「あああ、とうまぁ……」  
 同じように硬直していた美琴がぶるぶると肩を震わせながら弱ってしまった両手で、それでも必死に切なくしがみつく。  
 可愛い、と上条は思った。  
 出したばかりなのに、その絶頂を漂っている最中なのにもう次のことを考えてしまう。  
 ペニスは、今でも硬さを失わない。  
 もっと捻じられたいと訴えている。  
「あ、あああああ……」  
 ぶるぶると、ぶるぶると震えつづける美琴。だらしなく口元が開いている。目の焦点が合わない。  
 まだ達しているのだろう。  
 上条は女性の性的絶頂が男のそれとは違うということを今更思い出した。  
 だが。  
「ひぁ! とう…… んあっ!? ふっ、ぎぃ! ひはっ! おぉぉはぁっ!!!」  
 上条は絶頂の最中の美琴を再度突きあげ始めていた。  
 あっという間に果てる寸前までのペースに戻る。  
 たっぷりと放出した精液のせいで滑りは粘っこい。二人の細かな汗が絡み合う。  
 過激な体位は変わらない。  
 子宮口が打ち込まれる。  
 御坂美琴は絶頂の浮遊感から落ちないまま更に新たなアクメに打ち上げられた。  
「イっ! イクっ!!! ひあぁああああっ!!! イクイクっ!!! イクの、終わらな…… あああんっっ!!!」  
 不安定な体位。  
 それでも本能が動かすのか御坂美琴は不慣れなはずの性交で腰を使った。  
 ペニスも止まらない。  
 がつがつと互いを貪る。  
 ―――さらなる射精まで時間はかからなかった。  
 

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