学園都市のバスは無公害仕様となっている。
大型のバッテリーを積み、無人で操作される、言ってみれば大型のリモコンであるそれは市内の各所を循環している。
各学校と各寮とを繋ぐ形のバスが多いため、夕方の帰宅ラッシュを過ぎてしまうと一気に本数が減る傾向があった。
(ガラガラってなもんだ)
その数少ない本数の一本を完全な貸切状態にして、浜面仕上は最後列てあくびをした。
外の光景はオレンジ色で夜の帳の匂いもする。
普段はバスにも乗らない浜面だが今回はちょっとした理由があった。
「たまには浜面と一緒に帰りたい。にゃあ」
そんな、ちょっとした我儘が書かれたメールを今朝方受け取って。
何分、浜面は既に学生という身分から半分ぐらいは足を引き抜いている状態だ。
日銭を稼ぐために取得したいくつかの資格は高卒が条件であったため、学校自体に籍は置いているが何かと学校は休みがちだ。
それにやはり小学生とは時間的に噛み合わないことも多いのだ。
この時間にバスに乗ったのもメールでの指示である。
「んにしても、フレメアの帰宅ってずいぶんと遅いもんだな」
誰に聴かせるというわけでもない独り言。
学校で委員会の仕事があるらしい。
立派なものだと浜面は感嘆する。
ふわふわの金髪の、ボリュームのあるフレアスカートを履いている小さなお姫様が頑張っているのは微笑ましいがそれにしても少々遅すぎではないだろうか。
時間にしては七時を回っている。
ほとんどのバス停を止まらずに通り過ぎ、フレメアの学校の近くにまでやってきて漸くバスが止まった。
フレメアの学校の最寄りのバス停。後部のドアが音もなく開くと軽い足取りでフレメアが飛び込んできた。
「にゃあ! 浜面!」
「おう、フレメア」
目があった瞬間に片手を上げて挨拶を交わす。
私服の学校なのだろう、いつものドレスのようなスカートと膝上まであるロングタイツに引き締まった脚が輝くように美しい。
白いブラウスにレース模様のリボンをタイ替わりにしてかつてのフレンダと同じようなベージュ帽を被っている。
棒きれのように細長い足にうすく肉がついてきているさまはかぶりつきたくなるぐらいに生命力に溢れていた。
背負ったランドセルをくるりと胸元に持ってきて、フレメアは浜面の隣にちょこんと座った。
「ずいぶんと遅いんだな。なんのイベントがあるんだ?」
体育祭である大覇星祭も文化祭である一花覧祭も学園都市全体で行っている。
しかしここの学校での何かしらのイベントぐらいあるのだろう、と浜面は軽く考えていた。
が。
「なんにもない。にゃあ」
フレメアは済ました顔でそう答えた。
「へ? じゃあなんでこんな時間に」
「浜面と一緒に帰りたいから、にゃあ。それに、大体この時間なら誰もいないし」
フレメアはランドセルを脇に置くと浜面に密着するように身体を寄せる。
そして徐ろに白いリボンをほどいてボタンを一つ外して胸元を開けた。
「お、おいおい」
白い肌に薄いブルーの下着が見える。
「この時間は本当に誰もいないんだ。誰もいないの、にゃあ」
艶やかに色づいた唇をそっと浜面の耳元に近づけて囁く。
このような状況を望んでいたのか、と察した浜面は驚愕と確かな興奮を感じた。
「おいおい、それじゃまるで痴女だぞ」
「チジョってなぁに、浜面」
軽く小首を傾けた表情には裏も表も感じさせない。
ただ本能のままに現状を選択したらしい。
小さな体をすり寄せて浜面を見上げる。
浜面はわずかに隙間のあるブラのしたに淡い色の乳首を見た。
ゴクリ、と唾を飲むとフレメアがさも当然のように浜面のズボンに手を置く。
浜面のペニスは幼い少女相手に明確に激っていた。
小さな手が丹念に、そしてなれた様子で陰嚢から亀頭まで暑い生地越しに撫で擦る。
誰も見ていないとは言え公共の場で幼い少女に性器を触らせているのは浜面に妖しい戸惑いを味あわせた。
「あ、あのな、フレメア。こういうことは人がいる場所でやっていいことじゃ」
「誰もいないって言ってるの。大体、浜面はいつも私の話聞いてない」
「いなくたってダメなんだよ! 公共の場所ではエロいことしちゃいけないんだってば」
「だったら、私みたいな小さい子とエッチしたりするのはもっといけないことだと思う、にゃあ」
不道徳な興奮を顔に出して、幼いフレメアが浜面を責める。
やはり緊張はあるのだろう、いつもよりやや辿たどしい指使いで早くも呼吸を荒げ始めている。
「ね? 浜面も触って欲しい。大体触りたいって顔してるもの」
微笑む姿は淫靡で淫蕩で。
とても小学生とは思えないほど色香を放っている。
恐らくは、年上である絹旗最愛や黒夜海鳥を上回るほどに。
ゾッとするほどに美しい。
「……なにも、こんなところで、さ」
自分でも乾いた喉だと分かりながら浜面が上ずった声で反論する。
そんなものなんの意味もないと自分でも気づいている。
狂気のような甘え方に心の奥底の火を付けられてしまった。
「大体、私は子供だから。普通にやってたんじゃ勝てない。お金もないから、こういうイベント作るしかないの」
執拗に股間を撫でていた手が離れた。
そして、ゆっくりとスカートの端を両手でつまむ。
ふわふわとしたボリュームのあるスカートが巻き上げられるとそこにはあるべきものがなかった。
「ふ、フレメア、お前っ……」
小さな声で浜面が叫ぶ。
血色のいい太腿と、その付け根と。
そして隠すべき布地は欠片ほども見当たらない。
幼い白磁のような割れ目が何にも守られることなく空気に露出していた。
ふわ、と甘いメスの匂いがする。
浜面は僅かな間、確実に目眩を起こした。
色白の下腹部、無毛の土手。
そして無造作に、それでいながら芸術的に刻まれた女陰。
これまで何度も見てきているそこがバス内という異質な空間で妖艶に香る。
「は、浜面。これ、結構怖いよ。学校でも誰かに見られちゃうんじゃないかってすごくドキドキしてた」
ぶる、とフレメアの華奢な身体が震える。
その瞳は大きく緩んで若干視線が歪んでいた。
今日の一日の大きな興奮の最後の一つの形として浜面にさらけ出したことで精神的に達したのだろう。
まだ性感も発達していない幼いはずのフレメアは確実に色づいている。
「大体、こういうのがチジョっていうのかな?」
どんな魔法かどんな仮面か。
あどけない子供の表情の裏にこのようなハレンチな姿を隠していたフレメアに浜面の首筋が冷たくなる。
だが引きづられた手が谷間に触れ、ぬるりとした感覚が指先に伝わるとそんなものがどうでも良いと思えるぐらいに脳の中が真っ赤に煮えたぎった。
「にゃあ、浜面が、触ってる……」
すぅ、とフレメアの目が細くなる。
母親に頭を撫でられた幼児みたいに安心しきった顔で浜面からの刺激を心待ちする。
それでいながら艶めかしく上気する頬の色に浜面の何かが音を立てて壊れた。
「触りっこ。大体、浜面のは私が触ってあげる」
フレメアが自分の帽子を外して浜面の股間に乗せる。
そして陰になったそこで手探りでベルトを外しジッパーを下ろす。
窮屈そうに自己主張していたそこが空に躍り出た。
「にゃあ。すっごくおっきい」
小さな両手が愛おしそうに浜面のペニスを刺激する。
やわやわと幹を包んで軽く上下に動かし、細い指で輪を作って亀頭の淵に絡める。
先端の尿道口を人差し指でくりくりと刺激し、親指で尿道配管を軽く押す。
勿論、強い刺激ではない。それほど激しくはない。
しかし異常すぎる状況が浜面を著しく興奮させた。
少女の手慰みに劣情を煽られながらも浜面はフレメアの未成熟な牝筋に指を這わす。
まくり上げられたスカートの内側、下着を着けていても禁断の場所に無骨な指を毛虫のように動かして遣わす。
既に淫蜜を含んだ幼い肉谷は固くも柔らかく指先を迎え入れた。
「にゃあ、んン……」
眉間に皺を寄せ、唇を噛んでフレメアが呻きを耐える。
それでも悦びの色を顔に載せながら快感に腰が浮き上がった。
互いの性器を指で刺激し合う二人は変態的な快楽を貪る。
公共の場で、性器を剥き出しにして、刺激し合う。
狂ってるとしか言い様のない情景。
丹念に筋をなぞり生意気に顔を出し始めた淫核を指の腹でなで上げるとフレメアが感極まったように嗚咽を漏らす。
それを誰かが聞くというわけではないがフレメアは必死になって声を押し殺し続けた。
それでも、小さく腰をかくかくと動かして肩を震わせる。
「にゃ、にゃあ。浜面の指、大体、気持ちいい、かも……」
細かく継いだ呼吸で声は小さい。
小さいながらも明確に快楽の音階に乗った言葉に浜面の喜悦も増し、ペニスがますます膨れ上がる。
先ほどの浜面が今の彼を見たらどれほど愚かだと嘆くだろうか。
すっかり先走りの汁を膨らませたペニスをしっかりと小学生の少女に握らせながら興奮に鼻息を荒くする姿は変態そのものだ。
「う、くっ」
少しばかりひんやりとする手のひらが扱き上げるたび、浜面が小鼻を膨らませる。
感動的ですらある心地よい刺激に心臓がばくばくと音を立てる。
そうして、互いにバスの中であるという現実をしっかりと認識しながらも夢中になって刺激し合う。
が。
「にゃ、にゃあ。次で降りないと駄目。次が寮に一番近いバス停」
本格的な刺激が来るか、と浜面が期待し始めた頃、フレメアが慌てて手を離した。
そして数十秒でボタンを止めてリボンを整え、カバンを胸元に抱えて浜面の股間に置いたベレー帽を被る。
当然、それでペニスが露出した浜面も慌ててそれをズボンにしまった。
張り切りすぎていて窮屈だったが、なんとか収める。
収めながら、ペニスに直に触れていたベレー帽を被ることにフレメアは違和感を覚えないのか、と疑問を持った。
スカートの裾を直しながら帽子の位置を調整するフレメア。
すっかり暗くなった外のせいで鏡状になった窓ガラスで姿を確認し、そうして先走り汁で濡れた指先を見せつけるように舐め上げる。
その姿に新たな興奮を覚えた浜面をよそにフレメアは降車ボタンを押した。
自動制御のバスが止まる。
空気が抜ける音と共に後部ドアが開くと浜面とフレメアはバスを降りた。
バス停の周辺には誰もいない。
肌寒い夜風が拭いてバスが去っていくと暗い道に二人だけが取り残される。
「にゃあ。寮まであと少しだけど送ってってね、浜面」
月明かりと街灯の光の中、フレメアが浜面に先立って歩き出す。
そして月と電気の明かり舞台の元でスカートの端をもってくるりと一周、簡単なダンスを踊った。
白い肌が晒され、幼すぎる性器が闇に隠されたままの光景が浜面の目に飛び込む。
そう、寮まではあと少し。
フレメアの住む寮は集団の寮で完全な個室はない。
浜面は上がり込むことはできない。
この、激ったものを開放するのはごく限られたわずかな時間しかない。
誰もいないとは言え、露出した下半身を空気に晒して恍惚の表情をしている少女を存在するかもしれない視線から庇いたくもあった。
揶揄っている。弄んでいる。甘え方を間違っている。
それだけかもしれない。
それでも、だとしても、だからこそ。
絆と束縛。英語では何方も同じ単語。二つの境は曖昧すぎる。
「にゃあ、浜面」
浜面は幼いフレメアの手を握った。握って引き寄せる。
小さな華奢な肢体が檻のような太い腕の中に吸い込まれる。
幼い少女が女の顔で見上げていた。
「こういうの、嫌?」
「嫌、だな。いい気はしない」
「じゃあもうしないよ。しないけど、浜面とふたりっきりの時はするからね? 誰かに見られたりしないときはいっぱい私を見てね?」
「ああ、わかってる」
「いっぱい色んなことしてね? 頑張るから。浜面に応えられる私になるから。にゃあ」
心臓が早鐘のように音を立てる。
この少女がろくな価値もない自分を求めてくれていると浜面仕上は感じた。
同時に、強い庇護欲と独占欲が湧き上がる。
物事を自分の都合のいいように解釈し、想いを寄せてくれる少女たちを己のためだけに利用しているという自覚が浜面にはある。
白と黒との混じりあったマーブル模様の濁った欲望。
その中に確実に脈打つ性欲という獣。
「……浜面、こっちの公園、誰も来ない。清掃ロボットもいないの。約束したばっかりだけど、でも、本当に誰も来ないんだよ?」
さも予測していたと言わんばかりに。
フレメアの甲高い、そして囁く小さな声が夜の闇に染みとおる。
どくん、といううるさいぐらいの心臓の音。
浜面仕上が抵抗なんてできるわけがなかった。