115 名前:布束@ 投稿日:2013/05/28(火) 21:49:25.61 ID:110MsQWM 
「……う……くぅ」  
 
殺菌灯だけがついた薄暗い部屋の中で、シェーバーのそれにも似た振動音が鳴り響いている。  
入口の真向かいの壁際には椅子が設置され、そこに学生服の少女が一人座らされていた。  
両腕は椅子の背もたれごと後ろ手に縄で縛り付けられ、同様に左右に開かされた足は、紐のようなもので椅子の前脚に固定されていた。  
卑猥な格好を強いられているせいで、ブラウスの下にある胸が自然と前に張り出され、合わせボタンの隙間が窮屈そうにたわんでいる。  
丈が短い紺のブリーツスカートは左右に開かれた太腿の上で捲れ、中央から白いレースの下着が微かに覗いている。  
スカートの内側、桃色の蝶を思わせるリボンの飾りがついた下着の中では、黒い楕円形の物が蠢動していた。  
それがくっきりと見えるくらい、少女の穿いている下着は濡れほそっていた。  
 
「くっ……う……んふぅっ」  
 
真一文字に結ばれた唇の奥から、苦しげとも切なげともつかぬ吐息が漏れる。  
座らされている椅子からは絶えず愛液が滴り、微かな跳ね水の音が響く。  
ドアのガラス越しにその様子を眺めていた研究者風の男が、ゆっくりとした足取りで室内に入っていく。  
 
「ひっひっひ、頑張るなぁ、布束君。まぁだ吐く気にならんのか?」  
 
不精髭を生やした背の低い中年の男が、にたにたと笑いながら拘束されている少女に歩み寄る。  
布束砥信は閉じていた目を薄らと開き、近づいてきた男に視線を投げた。  
その眼光の鋭さに、男がたじろくように一歩後ずさる。  
 
「……時間の、無駄よ」  
「……まったくもって気に食わん小娘だ。まだ反抗的な態度が治らんとはな」  
 
男は白衣の胸ポケットから覗いているリモコンに手を伸ばし、強気な態度を崩さぬ少女に向けた。  
ぴくり、と布束の頬が微かに引き攣った。  
 
「……またそれ? 芸がないわね」  
「そう強がって、完全に耐えきれたことがあったかのねぇ?」  
 
その言葉に布束が何かを言い返そうとした。が、男に発せられるはずの侮蔑は小さな喘ぎ声に転じた。  
男がスイッチを入れるや否や、布束のブラウス、両脇と乳房の先が微かに震え出した。  
保護テープで貼りつけられていたローターが一斉に作動したのだ。  
 
「くっ……あぁ……んっ!」  
 
休む間もなく秘部を責められた後で、さらに違う場所から快感を引き出されては誰だって溜まったものではない。  
何とか刺激を緩和しようと体を左右に揺するも、床に固定された椅子の脚はほとんど動かない。  
 
「うむうむ、苦しそうだねぇ。どれ、少しずつ目盛を押し上げてやろう」  
「い、いい加減に……ふぅんッ!」  
 
男の親指がじりじりと上がっていくに連れ、ローターの震動音が大きくなっていく。  
先ほどより顕著になってきた刺激に、布束は下唇を咥えて耐え忍ぶ。  
恥辱と未知の感覚に耐えんとするかのように瞳がきつく瞑られ、目に溜まっていた涙が頬を伝う。  
自分の前で、眉目秀麗にして年頃の少女が屈辱に打ち震えている。  
そうした状況に嗜虐心をそそられたのか、男が唇を大きく歪めながら、ブラウスの盛り上がった部分に手を伸ばす。  
 
「……ンッ!?」  
「くくく、控えめだと思っていたが、なかなかどうして」  
「……ッ」  
 
すんでのところで布束は言葉を飲み干した。  
拒絶の言葉を吐き出したところで、この手の男は調子づくだけだ。  
犬歯で唇を強く噛み締め、手にありったけの力を込め、世にもおぞましい感触にじっと耐え続ける。  
男の指がブラウスに埋もれる度に布地の下で胸が形を変える。  
 
「……ッ、……ん……ふぅ」  
 
散々胸をもてあそんだ男は、その手で布束の胸倉を掴み、作動中のローターが滑り落ちない程度に引っ張り上げる。  
首元と襟の隙間からは、汗ばんだ鎖骨と谷間が覗いていた。  
 
「くっく、ずいぶんと体を火照らせて、そんなに気持ち良かったか? 淫乱な小娘よ」  
「……んっ、薬を使ってこの程度って、ふふっ、よっぽどの下手くそってことね」  
「……なにぃ?」  
「動けない女にこんなことしてる、暇があるならっ、……っ、論文の一つでも書いたら、どう? そのうち研究に落伍してしまう――」  
「黙れッ!」  
 
唐突に顔を叩かれ、布束の顔が横を向く。  
平手ではなく手の甲だったことから痛みは倍増しだったが、布束は態度を緩めず男に向き直る。  
 
「……indeed、図星を突いてしまった、みたいね」  
 
「……よかろう。貴様があくまでそういう態度を貫く気なら、相応の扱いをしてやろう」  
 
苛立たしげに男が携帯電話を取り出し、パネルを弄り始めた。横目で今も快感に耐えている布束を見下しながら、こう言い放った。  
 
「手の空いている研究者たちで慰み物にしてやる、覚悟しておけ」  
 
その暴言に、布束の目が大きく見開かれた。予想内の、しかし最悪の言葉に驚きを隠し切れなかった。先ほどまで感じていた快感を束の間忘れてしまうくらいには。  
微かに震えた唇から男もそれを察したのだろう。口の端を吊り上げて勝ち誇る。  
 
「我々の研究を踏み躙ろうとした罰だ。そう嫌な顔をせず、丁重に受け取ってくれたまえよ」  
 
弱味を見せてはならない。布束はなおも自分にそう言い聞かせた。必死に。  
だが、それでも体の奥底から来る恐怖を止めることはできなかった。  
カタカタと、椅子の足が小刻みに鳴っている。男も当然、それに気づいているだろう。  
 
「おめでとう。名実共に、君の人生は終わる。研究者としても、女としても」  
「……くっ」  
 
十数回にわたって鳴り響いていた携帯のコール音が消え、男が受話器に耳を当てた。  
 
「ああ、私だ。お前たち、これから――」  
 
だがしかし、男は要求を最後まで伝えることができなかった。  
ドアの開閉音がし、男の目が緩慢にそちら側へ動いた。  
次の瞬間、男の視界の中に何かが勢いよく割り込んできた。  
 
「ぐへッッ!!?」  
 
部屋の外から走り込んできた少年の右拳が男の左頬に深々と突き刺さり、いきおい、男の両脚が地面から離れた。  
そのまま数メートルほども後ろに弾き飛ばされ、半身を壁に強かにぶつけてずるずると地に沈んだ。  
白目を剥いた研究者の姿を見て、布束の表情に、監禁されてから初めて希望の色が浮かんだ。  
まさか、助けが来たのか。  
有り得ない可能性に、それでも胸が躍るのを止められない少女は、突如予想だにせぬ感覚に襲われた。  
 
「やっ、やぁぁっ!? ――これっ、何でっ、あッ、あ゛あ゛ッッ!?」  
 
拘束された布束の体が大きく戦慄き、椅子がギシギシと軋んだ音を立てる。  
不運なことに、男が殴り倒された拍子に手の中にあったリモコンが床と接触し、目盛が最大にまで押し上げられていた。  
髪の毛を振り乱して何とか快感に抗おうとするも、助けに入った少年を見て気を抜いた直後では容易に持ち直せない。  
一旦は静まっていたはずの、度重なる陵辱によって引き出された快感が、バイブの振動によって一斉に芽吹いた。  
思わず口を噤もうとするも、腹筋が勝手に律動して歯の根が合わない。  
異変に気づいたツンツン髪の少年が慌てて足元に駆け寄り、拘束を解こうと四苦八苦している最中、それは来た。  
 
「う゛あ゛ッッッ!!!」  
 
先ほどとは比較にならぬ快感の渦に意識が飲み込まれた。  
 
布束の白い喉があらわになり、背骨が弓のように大きくしなる。  
連動して、豊かな双乳が天に向かって何度となく跳ね上がる。  
細い腰の下では、飛沫となった愛液が何度となく下着を叩く様子が、跪いた少年からもはっきりと窺えた。  
 
「あっ、はあっ! う゛あ゛ッ!! と、止まらなッ、あ゛はッッ!! 嫌ッ! も……ぉ、無理、いい゛ぃッッ!!」  
 
プシャッ、プシャアッ!  
十秒近くも続いた連続絶頂の後、布束の体が背もたれに全体重を預けるかのように弛緩した。  
完全に、完膚なきまでに、見られてしまった。自分より年下と思しき少年の目の前で、みっともなく果ててしまった。  
椅子に接触した下着からは、むっとするような熱気とともに、お漏らしをしたかのように愛液がとめどなく溢れている。  
さらにはスカートに大きな染みを作りながら、床に向かって小さな滝を作っていた。  
ちょろろろろ。  
断続的に耳を叩く淫らな水音に少女の頬が紅潮する。  
涙顔で絶頂の余韻に全身を痙攣させている布束から少年は顔を逸らし、黙々と拘束を解く作業を続ける。  
気まずさはどうやらお互い様らしかった。  
その間にもバイブの音は鳴り止まなかったが、さすがに下着の中に直接手を突っ込むわけにもいかないようだ。  
幸か不幸か、よほど先ほどの衝撃が大きかったのか、再度の波はまだ来ていないようだった。  
ややあって、両足が自由になったことに気づいたのか、天井を向いていた布束の顔がゆっくりと少年の側に傾く。  
当然のごとく顔は真っ赤で、涙と涎の痕が見るも痛々しかった。  
 
「……ご、ごめんな、さい。……こんな、無様なところを、見せてしまって」  
 
しゃくるように、それでも辛うじて気丈さを失わずに謝意を述べた布束に、少年は「いや」と小さく首を振る。  
手足ともに非常にきつく拘束されていたせいで、縄の跡が痣となってくっきりと残ってしまっている。  
阻害されていた血流が再開するまでには、今しばらく時間がかかりそうだった。  
ふと少年の方を見ると、おそらく思いついているだろう不遜な提案をするべきか否か、頭を掻きむしっているところだった。  
 
「……はしたないことを言うようだけど、取ってくれない、かしら?」  
 
何を、とはさすがに聞かれなかった。その程度の分別は少年にもあるのだろう。  
 
「……その、手が痺れていて、思い通りに動かないから」  
 
現状を把握し、葛藤した上での頼み事だった。  
少年は黙って膝をつき、布束の下着の中で蠢いている物をつまもうと、そっと下着の横から指を差し挿れた。  
 
押し殺したような声が布束の口から漏れたが、少年は構わず指を奥へ動かした。  
濡れた指先にわだかまる熱を、固い感触を感じたところで、親指で下着と腿の隙間を押し広げた。  
それから人差し指と中指の隙間でローターをつまみ、丁寧に引き抜いた。  
貼られていたテープはびっしょりと濡れていて、もうその役割を果たそうとはしなかった。  
てらてらと濡れ光ったローターを地面に放り捨て、やはり無言で踏み潰した。  
 
「……あ、ありがと」  
 
顔もまともに見られないというふうに、布束が俯き気味に礼を述べた。  
 
「……私、布束砥信。あなたの名前は?」  
「か、上条当麻だ」  
「……そう、何年生?」  
 
他にも色々聞くべきことがあるのだとわかってはいたが、頭が回らなかった。  
着ている制服からとある高校の生徒だということはわかっていた。上条と名乗った少年もそのことに気づいた様子で、  
「一年っす」  
そう短く返してきた。  
「……indeed、なら、上条君ね。私は三年だけど、この先あなたにだけは長幼の序を守りなさい、とも言いづらいわね」  
「ん、何でだよ?」  
「……だって、こんな無様な姿を晒しちゃったわけだし」  
「心外だなぁ、先輩。俺が人の弱味につけこむような真似をする野郎に見えますか?」  
「……見えない、というか、そう願いたいけど」  
「なら良かった。んなことより、歩けそうか?」  
 
少年の言葉に、布束は一瞬顔を上げ、小さく首を振った。  
 
「……無理ね、足に全然力が入らない。一週間近く、この姿勢だったから」  
「……そっか。じゃあ、おんぶとお姫様だっこと、どっちがいい?」  
 
あっけらかんとした言葉に、布束の眉根がひどく狭まった。  
 
「ちょ、ちょっと。まさか担いでいく気なの!?」  
「これでも体力には自信があるんだ。まぁ大船に乗ったつもりで」  
「そ、そうじゃなくて! ……いや、それもないことはないのだけど」  
 
体重は、ここ一か月の監禁生活でかなりやせ細っている自信はある。だが、それでも――  
 
「……さっき言ったでしょ。一週間、シャワーもろくに浴びてないの。さすがに、女として抵抗が」  
 
身を抱きすくめるようにしながら、布束が消え入りそうな声を出した。当の上条は肩をすくめるばかりだった。  
 
「別に、臭いなんて気にしねえけど?」  
「わ、私が気にするのよ! ……いや、その、私のあ、あれとかで、服だって汚れてしまうでしょう」  
 
さすがに淫語をそのまま口にするのは恥ずかしかったのか、布束がもごもごと言葉を濁した。  
 
「四の五の言ってる暇はねえぞ? また捕まって、今度こそ取り返しのつかないことされちまったらどうすんですか?」  
「……そ、それは、そうなのだけど、でも」  
「あぁ、そうだ。ちょっと待ってくれよな」  
 
おもむろに上条がポケットに手を入れ、何か白い物を取り出した。見ると、ドラッグストアなどで売られているデオドラントシートだった。  
 
「あ、あの、これは」  
 
差し出されたビニール製の容器に、布束が小首を傾げた。  
 
「残り少ないから全部使っていいぜ。それで拭けば、少なくとも臭いはマシになるだろ?」  
 
布束は一瞬躊躇う素振りを見せたが、やっと得心したのかシートを受け取った。  
 
「……少しの間だけ、後ろ、向いててくれる?」  
 
上条は黙って扉の方に向き直った。遅れてしゅるりと、衣擦れの音が響いた。  
 
夜光が差し込んでいる。外は近い。  
本当に、逃げられるのだ。その実感がようやく激情となって込み上げた。  
腕の中で再びしゃくり始めた布束に、上条が気遣うような視線を寄せる。  
 
「ご、ごめんなさい。ここから出られるんだと思ったら、急に」  
「……ずっとあんな暗いところで、ひどい目に遭わされてたんだもんな。無理もねえよ」  
 
何の変哲もない、しかし優しさのこもった言葉に、布束は胸が熱くなるのを感じた。  
上条は視線を前に戻しながら、微かに笑みを浮かべ、  
「もう大丈夫だ」  
力強く頷いた。  
 
「……ありがとう。助けてくれて」  
感謝の言葉に応えるように、腕に込められた力に、布束は逆らおうとしなかった。  
ただ、されるがままに涙ぐむ顔を、その半身を上条の胸板に委ねた。  
上条の鼓動が一段と早くなる様子が、押し付けた乳房から伝わってきた。  
意外と可愛いところもあるのかも知れない。  
 
以前同級生たちの前で公言した好みの男性のタイプを、今日から撤回しなければならないだろうか。  
場にそぐわぬことを脳裏に浮かべつつ、布束は上条の腕に抱かれたまま、深い眠りに落ちていった。  
 

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