「なんでだ・・・」
上条当麻はとあるバスの中でつぶやいた。
「ん?」
その小さなつぶやきに反応したのは上条の隣に座っていた女の子だ。
「なんでお前がいるんだッ!テルノアぁぁぁぁぁ!!!」
疑問形から絶叫に変化していった上条のセリフだが、
彼がそんなリアクションを取ったのも無理は無い。
彼女は名をテルノアといい学園都市の「外」から侵入してきた魔術師なのだ。
一週間ほど前だったろうか。上条は彼女に危うく殺されかけたのだ。
しかも同日、とある理由から学園都市を破壊しようと企てたのも彼女だった。
「だからー、十分反省してますってー。ごめんなさいー。」
反省しているのしていないのか感情が読めない顔でテルノアは話している。
「つか、お前はなんで科学側(こっちがわ)にいるの!?
わたくし上条当麻は切に疑問を投げかけたい!!」
割と全力気味の上条である。
「んー・・・おもしろそうから・・かなー」
本人はあくまで冗談のつもりだったのだろう。しかし
ブチリ
と、不穏な音がバスに響いた。
上条のこめかみから聞こえたような気がする。
すると、その気色が彼女にも伝わったらしく
「な、なんか学園都市の技術とかが外に漏れたらいけないから正式な決定
が決まるまで様子見なんだってさ」
と慌てて付け加えていた。
(なるほどね・・・情報の漏洩か・・・嫌な世の中だよまったく・・・)
思考を巡らせていた上条だったが
何か左側。つまりテルノアがいるのと反対側の座席から痛々しい視線を感じる。
「・・・・・・」
油の切れたぜんまい式のおもちゃのようにギチギチと首を回す。
視線の主は空腹少女改めお怒り少女インデックスだった。
「・・・とうまはこんなときでもとうまなの!?」
ほかの人が聞いたら明らかにおかしいと指摘されるセリフを吐いた
彼女だったが、日常的にこんな会話が行われているらしく上条も
「単に話してただけだろ!つか、お前もなんでテルノアがここに居るのか
知りたくないのかよ!?」
とあくまで普通の切り返しだ。
それは彼女を怒らせないように。
もっと極端にいうとあの「行動」を起こさせないように
上条なりに穏便に、さらに会話を違うことにそらすというダブルのセーフティ
をかけていたわけなのだが。
だが。
「それは知りたいけど!けどとうまがこんなときでもとうまなのは許せないっ!」
最後の言葉を言うや否や、お怒り少女インデックスは上条の頭にかじりついていた。
バスにすさまじい絶叫が響き渡る。
何というか、今日も平和だった。