*         *         *  
 
 
ザァーーーーーーーーーーーー…………。  
 
降りしきる雨音を環は夢うつつで聞いている。  
(ん……イタタ……)  
時折下半身から押し寄せる痛みが環を夢から覚まさせた。  
 
「う……う…ん……」  
環が気がつくと、そこは公園の大型遊具の中だった。コンクリート製の洞窟で、その中が  
三次元迷路になっている。その真ん中の広くなっている空洞に環は寝かされていた。  
誰かが額の汗を拭いてくれている。背中やお尻は冷たいコンクリートだが、頭は柔らかい  
太股の上にあった。  
「タカ坊……?」  
「大丈夫、タマ姉?」  
環が視線を上に移すと貴明のホッとした顔が飛び込んできた。伸ばした足の太股を枕に  
してくれていた。二人して目が合うと少し照れるが、環は何事も無かったように振舞う。  
 
「汗を拭いてくれたんだね……アリガト」  
「う、うん……タマ姉、痛くない? さっきの……」  
「アソコ……? ううん、ダメ……まだ痛くて。女の子もここ打つと痛いんだね〜、  
アハハ……アイタタ……」  
笑いでごまかそうとするが、痛くて両手で股間を押さえてしまう。怪我したかどうかが  
少し心配になるが、この状態で見るわけにもいかない。  
(鏡がないと……あ、タカ坊に見てもらうと言う手はあるけどね♪)  
不穏な事を考えてクスクス笑う環を貴明は不思議そうな目で見る。  
 
「そうだ、さっき……」  
環の悪戯心など露知らず、貴明がごそごそとポケットを探り何かを取り出した。  
「あ……」  
それは環の持ち物だった。赤いリボンの髪飾り――さっき喧嘩の最中に落としてしまった  
ものだ。  
「拾ってくれたんだ」  
「うん。タマ姉のお気に入りだしね」  
貴明が微笑みながら環の頭につけてくれた。今度はさっきと違って照れ隠しする事が  
出来なかった。自然と頬が緩み、耳朶の辺りが熱くなってるのが自分でもわかる。  
 
「口元にも血が……痛くない?」  
「大丈夫。いいよ、タカ坊のハンカチが汚れちゃう」  
「そんなの、全然大丈夫だよ」  
貴明は環の口元の血と、頬についていた泥を拭ってやる。環も黙ってされるがままに  
なっていた。さっきと同じく貴明の脚を枕に寝た状態――少し背中がひんやりするが、  
洞窟の低い天井を見上げながら環は安らかな気持ちになる。  
(なんだか、ちょっと幸せかも――♪)  
数年後に彼らはこれと同じ格好で幸せを満喫する事をまだ知らない。  
 
「膝も怪我してる――ちょっと見せて、タマ姉」  
「あ……。もう、せっかくいい気持ちだったのに……」  
「………?」  
枕にしていた脚を退けられ、ちょっと不満そうな環の気持ちに気づかず、貴明は立ち  
上がって環の足元に行き、膝小僧の怪我を見る。その位置からだとスカートの裂け目  
からぱんつが見えてドキッとするが、それをおくびにも出さず、膝の状態を調べた。  
「擦り傷だけど、血が出てる……それに泥だらけ……」  
貴明は洞穴の端から手を伸ばし、降りそそぐ雨でハンカチを濡らすと、固く絞って丁寧に  
環の膝を拭った。  
「消毒してない水だけど、傷口が泥まみれになってるのはもっといけないと思うし……  
そうだ」  
何かを思いついた貴明は傷口に顔を近づける。そして――。  
 
「あっ……タカ坊!?」  
いきなり貴明が環の膝の傷を舐めだしたので、環は動揺して上ずった声を出してしまった。  
「あ、ごめん……いやだった?」  
「そ、そうじゃなくて……」  
環は貴明を意識するのを隠せなかった。貴明は環が嫌がってると思ったのか、膝から  
口を離す。  
「あ、だ、だから……その……嫌じゃなくて……。た、タカ坊の口が……」  
「薬が無くてしょうがない時は唾で消毒しなさいって、前にばぁちゃんに聞いた事が  
あったから……」  
貴明は環が嫌がってるのでは無い事を知ると、またペロペロと傷口を舐めだした。  
(まるで子犬みたい……)  
健気な貴明の奉仕が気持ち良く、環は蕩けそうな気持ちになってくる。大好きな貴明に  
舐められるたびに胸をドキドキさせながら、環は思う。  
(タカ坊って、本当にいい子だ。そんな健気に優しくされたら――)  
 
――つい、いじめたくなっちゃうじゃない。  
 
傷を舐めるのに夢中で、ほんの少し環の目が煌いたのに貴明は気づかなかった。  
 
 
         *         *         *  
 
 
貴明が環を連れて洞窟に入ってから20分ぐらい経っただろうか。雨の勢いは増すばかり  
で止む気配がない――つまり、当面はここから出られないと言う事だ。  
 
 
 
「こんな感じかな……擦り傷だからハンカチは巻かないほうがいいよね?」  
環の膝の傷を綺麗に舐めると、貴明は一息つく。  
 
が――。  
 
「タカ坊、こっちも♪」  
「えっ?」  
環を見ると、唇の端を指差している。確かにそこも相手の踵が当たって傷つき、泥が  
ついていた所だが――。  
「そ、そこはもう拭いたよ」  
「ううん、消毒♪」  
「じ、自分でやればいいじゃないか〜〜」  
ちょっとペロリと唇の端を舐めるだけである。わざわざ貴明が舐めてあげる理由は  
なかった。  
 
「タカ坊にして欲しいの♪」  
環は譲らない。ニコニコと愛らしい笑顔で貴明に迫ってくる。  
「そんなぁ〜〜……」  
貴明は困って真っ赤になった。まるで男の子に言い寄られて困ってる女の子みたい――  
と、環は内心でクスクス笑う。  
 
「じゃあ、間を取って、最初のひと舐めだけ。それならいいでしょ?」  
何が『間』なのかわからないが、どうやらこれ以上環が折れる様子は無さそうだ。  
と言うか、彼女の場合、折れてきた事自体が怪しいのだが……。  
「わ、わかったよ……」  
貴明が諦めて環の顔に自分の顔を近づける。  
「目が合ったら恥かしいよ♪」  
クスクス……と笑いながら環に言われたので貴明の方が意識してしまった。間近にある  
環の顔をまともに見れない。  
 
(しょうがない……)  
貴明は患部の場所に大体の見当をつけ、目を閉じて口元に近づく。すると――。  
 
ちぅ〜〜〜〜〜〜〜ッ……♪  
 
(んぐ!? んぐぐぐ……!!)  
急に口元を塞がれ、吃驚して目を開けると環が唇を重ね合わせていた。それだけで  
なく――。  
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪ タカ坊〜〜♪ ん〜〜〜〜〜〜〜♪」  
きゅ〜〜っと、貴明の首に手を回して抱きしめると、環は長く熱いチューをした。  
 
(ん……!? んんん〜〜〜〜ッ!?)  
とてもとても長いチュー……キスなんて生易しいものじゃない、環がありったけの情愛を  
込めて貴明にぶつける、彼女独特の愛情表現だ。  
 
それが終わったのはたっぷり一分は経ってからだった。  
「ぷはぁ〜〜〜!!」  
ぜぇ……ぜぇ……と、搾りつくされた酸素を求めて貴明が喘ぐ横で、環はにんまりと  
満足そうに微笑んでいた。  
「エヘヘ、引っかかったね」  
環はちっとも息苦しくなかったようだ。肺活量も桁外れなのかもしれない。  
「ご馳走様、タカ坊♪」  
今度はChuッ♪と小さく頬にキスをした。順番が違うんじゃ……と呆れながらも、  
貴明はこの二通りのキスがどちらも、とても心地良かったのを否めなかった。、  
そして、数年後には更に気持ちのいい思いもするw。  
 
「……でね」  
余韻も冷めやらぬ内に環がまだ何か言いたそうだ。小首を傾げて貴明に微笑みかける姿は  
可愛らしいが、小悪魔の要素も秘めている。いや、既に表に出ているか。  
「わたし、もう一箇所、足で蹴られた所あるんだけど……」  
手を後ろに組んで立ち上がり、はにかんだ少女の様に腰を振る。座っている貴明には環が  
言う場所がすぐにわかった。目の前でチラチラしている、裂けたスカートから覗く、白い  
三角地帯――。  
 
「大事な所だから泥がついてたら大変だし、誰か見てくれないかな〜〜?」  
環がわざと貴明を見ずに嘯く。  
(そんな事言われたって……)  
流石にそれはまずいだろう、と貴明は考える。勿論考えるまでも無くまずい――その  
常識がこの女ジャイアンに通じればいいのだが。  
 
「タカ坊、見てくれない?」  
勿論、通じなかった。悪戯心でキラキラした瞳でまじろぎもせずに貴明を見つめる。  
逃げられない――と、言いたいが、流石にこの要求は肯んじえる事は出来なかった。  
「だ〜め。自分で見てよ。俺、後ろを向いてるから」  
珍しくきっぱりと言い、問答無用で外の方を向いてどっしりと座る。貴明にしては  
超珍しい頑なな態度だ。  
 
「ムッ……。タカ坊のクセにナマイキ〜〜〜」  
環が聞こえるように口に出しても貴明は振り向かない。地蔵の様に固まって降りしきる  
雨を見ているだけだ。  
(このタマお姉ちゃんを無視すると、どういう目に遭うか。覚悟しなさいよ、タカ坊)  
キラーン☆と両目を輝かせ、環はスカートをたくし上げ、ぱんつに手をかけた。  
 
 
 
「タ・カ・坊♪」  
環がこういう声を出すのは何か悪戯を思いついた時だと考える間もなく――。  
「え〜〜い!」  
いきなり貴明は視界を奪われた。手ではなく、何かの布で。薄い綿の布が頭からすっぽり  
と被せられたが――。  
「う……ぷっ! な、何だよ、これ〜〜!?」  
その布を取ろうとするが、環が被せた状態で引っ張るので取れない。  
「た、タマ姉! やめてよ!」  
「アハハ! お姉ちゃんを無視した罰だよ〜〜。ウリウリ♪」  
「じょ、冗談じゃないよぉ〜〜!」  
貴明にも何が被せられたかはすぐにわかった。環のぱんつ以外ありえない。  
 
「フフフ♪、タカ坊、漫画のヘンタイオジサンみたい。キャハハハ……!!」  
環は無邪気に笑っているが、貴明はそうはいかない。ジタバタ抗ってみるが環の力には  
簡単には勝てない。  
漫画と言えば、二人してぱんつを被った主人公のバカ漫画を読んだ気がする。  
(すぐに影響受けるんだから〜……もう〜〜!)  
環は調子に乗ってうつ伏せの貴明に馬乗りなり、轡の様に被せたパンツを操ってはしゃ  
いでいた。しかし、貴明は――。  
 
(せ、背中――タマ姉〜〜!)  
ぱんつを脱いでいると言う事は、環の下半身は裸だと言う事だ。その状態で馬乗りに  
なられたら……また偶然にも貴明のTシャツが捲れている所にどっかりと座っている  
ので、すべすべしたお尻の感触が直に伝わっている。  
そして、押し付けられたぱんつは丁度股布の部分が貴明の鼻に当たっていた。環の  
汗と、そして仄かな別の匂いが混ざって鼻腔をくすぐる。  
(これが……タマ姉の匂い?)  
背中の感触の事も合わせ、貴明は何か陶然とした気持ちになってきた。  
 
「コラ、タカ坊! 何ウットリした顔をしてるの?」  
咎める様なからかう様な表情で環が貴明の顔からぱんつを外す。貴明は馬乗りになられた  
まま、否定しない。  
「お姉ちゃんのぱんつ被せられて変な気持ちになった? やーらしぃんだ、タカ坊は。  
無邪気な悪戯なのに〜」  
タマ姉は無邪気の意味を間違って覚えてるに違いない、と貴明は思う。  
「フフフ……お姉ちゃんのぱんつ被ってどうだった?」  
環が追い打ちをかけようとばかりに耳元で囁く。  
「…………タマ姉の匂いがした」  
貴明がぼうっとした声で呟いたのが聞こえて、環が急に真っ赤になる。  
「ば、ばか! 急に恥かしくなっちゃったじゃない!」  
ポカッ!と貴明の頭をはたいてから環は馬乗りの状態から飛び退いた。ぱんつは握り締めた  
ままだ。  
(そんな事言われても、知らないよ〜〜……)  
貴明は恥かしそうに色んな言い訳をする環の声を背後に聞きながら、さっきまでの  
背中の感触を思い出していた。  
 
 
 

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